死んだ王妃は二度目の人生を楽しみます お飾りの王妃は必要ないのでしょう?

なか

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書籍化記念話

閑話ーなぜ、貴方に忠誠を誓ったのか①ー

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グレインside



「そういえばグレインは、どうしてシルウィオを慕っていたの?」

 いつもの茶会。
 皇帝であるシルウィオ陛下と、皇后のカーティア様。
 二人の憩いの時間である茶会を護衛する俺へ、話の種にとカーティア様が投げた疑問。

 その問いへの、理由を聞いた。

「陛下を慕っている理由……ですか?」

「ええ、私と会った頃はシルウィオを恐れていたけれど、確かに忠誠はあったから気になって」

 確かに、カーティア様が来る前の陛下には皆が恐れていた。
 笑わぬ冷血の皇帝に、自身も恐怖を抱いてのは事実だ。
 その状況下、俺が陛下を慕っていた理由……か。

「その理由は簡単です、カーティア様」

「?」

 シルウィオ陛下は、今もカーティア様を愛しそうに見つめている。
 その横顔に微笑みつつ、俺は理由を答えた。

「陛下に忠誠を誓うのは、俺が帝国の剣だからこそです」

「剣?」

「はい」

 そう、俺はアイゼン帝国の剣。
 シルウィオ陛下の力の象徴そのもの。
 
 その誉れを与えてくださり、俺を携えてくれる陛下に……
 忠誠を誓うのは当然だ。
 カーティア様に答えながら、俺は忘れもしない過去の出来事へと思いを馳せた––
 


   ◇◇◇
  

 ––グレイン、護衛騎士就任前。


「平民上がりの騎士が、俺達と同じく陛下と謁見とはな」

「反吐が出る。栄えある陛下の護衛騎士選抜に、青き血の流れぬ者が居るなど……光栄な場が台無しだ」

 シルウィオ陛下との謁見。
 そこへ向かう騎士達の侮蔑に、俺は返答しない。
 場違いであるのは、自身でも分かっているからだ。

 即位して間もないシルウィオ陛下が、護衛騎士を所望した。
 故にアイゼン帝国で名のある騎士が候補となり、陛下との謁見にて光栄ある護衛騎士が選抜された運びだ。
 俺以外の騎士は貴族家出身であり、若き頃から剣術大会などで力を証明してきた騎士達。

 そこに混じる俺は異物。
 周囲の騎士が遠ざけるような、帝国領内の辺境地での危険な賊討伐の任等により。
 泥臭くも積み上げた武功だけで、この場に選ばれたに過ぎない。

「……」

 だからこそ、侮蔑や嘲笑には言い返さない。
 安い挑発で陛下の護衛騎士に選抜される誉れを、簡単に失う可能性があるからだ。

「まぁ。騎士団の剣術大会という場で、強者と腕を比べた我らではなく。低俗な弱者の賊討伐ごときで選ばれた者など、選ばれぬ事は明白だ」

「確かに、そうだな」

 自信に満ちた騎士達がその結論を出した頃、玉座の間へと辿り着いた。
 そしてシルウィオ陛下の御前へと、歩みを進める。

「……」

 一目見て、その方が我が国の皇帝陛下だと直ぐに分かった。
 その理由は服装や、いで立ちからではない。

 俺達を鮮血がごとき紅き瞳で捕え、身が震えるような威圧を醸す姿に皇帝としての威厳が伝わったからだ。
 それは周囲の騎士も同じく、陛下の威圧に皆が表情を固める。

「よく来てくれた、アイゼン帝国の英傑達よ」

 陛下の傍に立つ、宰相––ジェラルド様の言葉で、皆が跪く。
 彼は宰相でありながら、かつては騎士団長だった異色の経歴を持つ方。
 俺も幼き頃から剣術を指南してもらい、騎士として拾ってもらった恩がある。

「皆を招集したのは他でもない。新しき帝国の皇帝陛下の護衛騎士を選抜するためだ」

「「「光栄です!」」」

「では陛下、彼らの紹介をいたします……右から、第一騎士隊長であり、剣術会で一位の成績を収めた。ステイン伯爵家の子息である––」

 ジェラルド様が、この場に集まった騎士の紹介を始める。
 俺と違い、周囲に集まる騎士達には名声、成績、身分と誇れるものがある。

 だからこそ、皆がはやく自身の紹介をしてくれと期待で待つ。
 が、その中でシルウィオ陛下は無表情のまま初めて口を開いた。

「いらん」

「へ、陛下?」

「ジェラルド……過去の経歴になんの意味がある?」

「……」

「必要なのは、今この瞬間……力を証明できる者のみ」

 なにを言っているんだ?
 そう、思った時だった。


「っ!!」


 感じたのは、幾度もくぐり抜けてきた死線の中と同じもの。
 強烈な殺気が、自身に向けられた感覚だ。

 その瞬間、謁見の場である事も厭わず……俺は鞘を払った。
 危機感、咄嗟の判断による条件反射に近い動きだ。
 そうして感じていた殺気に対応して振るった剣が、確かな感触と共に何かをはじいた。

「なに……が?」

 俺が弾いたのは、短剣だった。
 魔法により動かされていた物が、幾つも自身に向かっていたのだ。
 殺気で気付き、弾くことが出来たようだ。



 そして……これが、決め手となった。

「ジェラルド。護衛騎士の選抜は終わりだ」

 『終わった』と言った意味は、周囲の結果で嫌でも分かった。
 恐らく、陛下の魔法により放たれたいくつもの短剣。

 胸、頭、首元と急所へと飛来した短剣を弾けた騎士は、俺一人のみ。
 他の者は、皮一枚の距離まで迫った刃に、怯えた表情を浮かべているのみ。
 実力は、歴然と結果となって可視化された。
 
「名を言え」
 
 陛下に尋ねられ、跪く。
 栄えある名誉を手にした実感は未だ薄いが、命令されるままに名を答えた。

「グレインです。シルウィオ陛下」

「今日から、お前が俺の身を護る剣であり……アイゼン帝国の武の象徴だ」

「有難き光栄です。皇帝陛下……」

「これから俺は……この国の皇帝として腐敗した帝国を正す。その際、お前には相応しい期待している」

「……もちろんです!」

 騎士となり、危険な任に志願を続けて手に入れた。栄光ある護衛騎士の地位。
 俺の胸に誇れる誉れを、陛下が与えた事が嬉しくもあった。


 だが、その名誉と同時に。
 俺に……一つの不幸が訪れる。

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