【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか

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二巡「変化」

15話

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「ふ、ふざけるな! お前は……俺を脅して、罪を隠蔽しようというのか?」

「やってもいないことに抗議するため、民に事実を公表するだけよ」

「黙れ! なにをしようと……俺は必ずお前の罪に報いを与えてみせる!」

 レオンの継いだ記憶を持つ今、彼の気持ちに少しは共感できる。

 アンネッテが殺害され、疑惑の存在である私を悪人と思い込むことで、悲しむ気持ちに蓋をしたのだろう。
 だから、復讐心に駆られるのも理解は出来る。

「アンネッテを殺したお前だけは……絶対に許さない、セレリナ」 

「……」

 だけど、理解はしても、今までの行為の数々を受け入れられる訳じゃない。
 彼は一度も私を信じようともせず、怒りに身を任せて貶めてきた。
 そのせいで、前回の私は死んでいる。
 もう……情けをかける気持ちなんてない。

「私は、貴方の方が許せませんよ」

「……っ」

「私は王妃として民や貴族からも信頼をいただき、この国や貴方を支えてきた自負があります」

「……」

「貴族たちともあらゆる事業を推し進めて……この国に多大な利益をもたらし、貴方の立場が盤石なものにまでしてきた」

 自慢ではなく、これらは事実。
 私が……アンネッテの遺言のため、レオンのために続けてきた努力の成果だ。

「だ、黙れ……そんな事は、今は関係な」

「いえ、関係あります。貴方のために尽力してきた私を……不確かな証言だけで断罪するなど、あまりに人道に反している」

 レオンは明らかに動揺しており、言い返す言葉もなく歯を噛み締める。

「だから貴方に、相応の報いを与えるだけです」

「そっ!? そんな事を許してなるものか。お前は確かに罪を犯したはずだ! 俺の考えに間違いはないはずで……」

「その通りよ。レオン」

 ……面倒な人が新しくやって来た。
 レオンの肩に寄り添うのは……前王妃ミランダ。
 継いだ記憶の中で知った、最も警戒すべき人物だ。

「セレリナ、罪を認めなさい。証言が出たのよ? この事実を国民に公表すれば、困るのは貴方よね?」

 ミランダは私を嘲り、詰め寄って言葉をまくしたてる。

「貴方の功績なんて、殺人の前ではゴミに等しい評価に成り下がるわ。えらく威勢を張っているけど、味方なんて誰もいなくなるのよ……だって手を血で汚した妃なんて、誰も愛さないもの」

「……」

 脅すような物言い。
 ミランダは私が怯えると踏んでの発言しているようだ。

「これでもみっともなく無実を主張するのなら、私が民達へ貴方の罪を公表するわよ? いいのかしら?」

 勝ち誇ったような笑みを浮かべているが、好都合だ。

「ふふ……やってみてはいかがですか?」

「…………は?」

「貴方が疑う内容を、国民へ公表すればいいじゃないですか、ミランダ様」 

「な、何を言っているの! 貴方の立場は崩れ去るのよ!?」

「私はこの国の民をよく理解しております。レオンや貴方のような、人道反した方々ではない事をね」

 微笑みと共に呟けば、ミランダは私の反応に不快感を示す。

「分かっているの? 貴方は民から非難される悪妃となるのよ? 立場が悪くなるのは貴方よ!」
 
「あら、それはミランダ様の事でしょう?」

「は?」

 私は、そっとミランダの耳元へ近づく。
 そして……継いだ記憶の中で手に入れた情報から、脅しの言葉を吐く。

「私を責めた事実を作ったのです。これでもう、レオンだけに責任をなすりつけるのは出来ないですね?」

「なっ!?」

「なにやら画策しているようですが……私が知らぬと思いましたか?」

「っ!?!?!」

 驚きのあまりによろめき、しりもちをつくミランダ。
 明らかに動揺して、視線が泳いでいる。

「な、なんで……」

「さぁ? なぜでしょうか」

「は、母上? どうしたのですか? 何を言われて……」

 尋ねたレオンに、ミランダが答えられるはずもない。
 なにせ彼女にとってレオンは捨て駒。
 真相を知られる訳にはいかないだろう。

「レオン……今はセレリナの相手などしていられないわ。一旦戻るわよ……!」

「え……母上?」

 分が悪いと判断したのか、ミランダは部屋を出て行こうとする。
 一旦の幕引きを考えているのだろうが……逃がすはずがない。

「待ってください、ミランダ様」

「な、なに? セレリナ……貴方の断罪は一度止めると言っているのよ、感謝をしなさい」

「いえ、逃がしませんよ」

「なっ……」

 驚くミランダへと歩み寄り、目と鼻の先まで近づき微笑む。
 彼女は目線を泳がせ、俯いてしまった。
 先程までの威勢はどこへいったのやら。

「私を不当に疑い、処刑しようと動いていたのですよね? 相応の責任をとってもらなければ事は収まりませんよ」

「な、何が言いたいの––」

「王妃を不当に断罪しようとしたです……レオンには王権のはく奪を、貴方は王家からの追放……いや、極刑でも望みましょうか」

「そ、そんな事を認めるはずがないわ!! ふざけないでよ!!」

「それでは、私は本日をもって今までの辱めを全て公表して王妃を降りることをゴルド様に伝えます。もう王妃にしがみつく必要はないもの」

 私の言葉に、二人は明らかに動揺をみせる。
 レオンはともかく、ミランダは私の功績を知っているからこそ身体を震わせて焦りを見せた。
 それもうだ。
 私が全て公表して王妃を辞めれば、レオンの前回の記憶のように、皆の怒りが二人に向くのだから。

「っ!?!? わ……分かったわよ……謝罪すればいいのよね? 仕方がないから謝罪してあげるわ」

「要りません。私は貴方達が責任をとる事だけを望みます」

「っ!!!!」

 私は、ミランダへとさらに歩み寄る。
 明らかに動揺して恐怖の表情を浮かべている彼女へ、言葉を続けた。

「いずれ、アンネッテの死を利用した貴方には真実を語らせます。裏にいる協力者とともに潰してみせますよ」

「え……あ……」

「責任から逃れるためには、貴方は私を糾弾し続けるしかありませんよ?」

「あ……あぁぁ」

「でもそれは……私のために怒る国民や貴族たちを敵に回す事だと、貴方はよく理解しているでしょう?」

「いや……そんなはずが、私は、あの人の言う通りに……」

「せいぜい、必死にその人に助けを乞うてみれば?」

 身を震わせたミランダは、慌てて逃げ去る。
 レオンもその様子を心配してか、彼女の後を追いかけていった。
 
 良い結果だ。
 これでミランダとレオンが責任から逃れるために私と対立し続ける構造ができ、それは彼らにとって茨の道。
 でも彼らは行動するしかなく、ミランダが自然と頼るであろう裏で糸を引く者もいずれ炙り出される。


「お……おっかねぇ女だな。お前」
  
 悪魔が私の傍で呟くが、私は笑って返す。

「むしろここからよ」

「は? 何する気だ」

「言ったでしょう? 彼らを追い込むため、さっさと王妃を辞めてしまうのよ」

 私が生きるために。不幸の種を全て潰すと決めた。 
 そのために妃を辞めることに、後悔などない。
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