【完結】では、さっさと離婚しましょうか 〜戻る気はありませんので〜

なか

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最終話

 復讐を終えてから、半年が経っただろうか。
 シルウィオ殿下の言う通り、私には多額の遺産が返ってきた。

 望めば、豪邸すら建てられるほどの両親が残してくれた遺産だ。
 復讐も終わり、一人で生きていく財も手に入れた……そうなれば、いよいよ彼の元で過ごす訳にはいかない。
 元々、協力関係だった間までの仮住まい。

 だから今日。
 私はジェラルド様との共同生活を終える。


「お姉さん! 言っちゃうの? やだよー!」

「ごめんね、グレイン。いつまでも迷惑をかけるわけにはいかないから」

「レティシア、俺は迷惑など……」

 ジェラルド様の言葉に、私は首を横に振る。

「いえ、私がずっと邸に居れば……ジェラルド様も婚期を逃してしまいますよ」

「……」

 なにか、言いづらそうにしているジェラルド様。
 そんな彼を見つつ、私はジェラルド様とグレインに礼をして、荷物を持つ。
 そして、足元に寄ってきた白猫のハクちゃんを抱きかかえながら頭を下げる。

「お世話になりました。ジェラルド様、グレイン」

「お姉さん……本当に行くの?」

「ふふ、いつでも会えるわよ。暫くは宿で過ごすもの」

「レティシア……」

「ジェラルド様、また何かあればいつでも言ってくださいね。私も協力できる事はしますから」


「それでは」と告げて、私は歩いていく。
 復讐を終えて、協力関係は終わった。
 だからもう……私がここにいる資格はない。

「どうしようかな……これから」

「ナーン」

「暫くは、ハクちゃんとゆっくりとやる事でも考えようか」
 
 復讐を終え、やる事を求めて吐いた言葉。
 一人で生きて行く事に心配はない、前世の本郷美鈴としての記憶が私を支えてくれるはずだ。

 だけど……ただ一つ、気掛かりがあるならば。

 ジェラルド様と離れることが、寂しいと感じる私がいることだ。
 でも、仕方ないこと。協力関係は終わったのだから。

 すっかり寒くなってきた季節、白い息を吐きながら一人で、ゆっくりと歩いていく。








 ……











 はずだった。



「レティシアッ!!!!」

「っ!?」

 突然、後ろから腕を引かれる。
 振りかえれば、これまで見た事がないほどに顔を赤くして……ジェラルド様が見つめてきていた。

「ジェラルド様?」

「こ、これからは……レティシアの前でずっと笑う」

「え?」

「願うなら、なんだってする」

「何を言って……」

 そう呟きながらも、流石に分かる。
 ジェラルド様の視線が熱を帯びて、私を見つめていることを。
 あまりこのような言葉を告白するのに慣れていないのだろう。
 巨大な体躯でありながらも、私を握る手は少し震えていた。

「剣を向け、君に酷い事をした俺に……そんな資格はないかもしれない」

「ジェラルド様……」

「だが、レティシアが構わないなら。ずっと傍に居させてほしい。復讐など関係なく……ずっと」

 真っ直ぐに見つめてくる彼の視線が、私を射貫く。
 その言葉に「はい」と答えたい私がいるのも事実だった。

 だけど、私は性格が悪いから。
 欲しい言葉を彼に求めてしまうのだ。

「どうして、傍に居て欲しいのですか?」

「っ……」

「ジェラルド様、どうして?」

 ニヤニヤと、私が答えの分かっている質問をすれば。
 彼は決意したかのように、私へと言葉を告げた。

「す、好きだから……」

「聞こえません」

「君に惹かれている。レティシア……誰かを愛してると、初めて想えた」

「ふふ」

 その言葉を聞ければ、私は充分だった。
 彼に駆け寄って、今まで出来なかった接触をする。
 彼の胸へと顔を寄せ、微笑んで見上げる。

「では、これからも一緒にいましょうか!」

「レティシア……」

「ずっと笑ってくださいね、ジェラルド」

 敬称を無くして呼び掛けた名前。
 彼は顔を赤くしながらも、慣れてきた笑みを私に見せてくれる。
 そして、私とハクちゃんをまとめて抱きかかえて、再び邸へと戻るのだ。

「お姉さん! やっぱりジェラルド様と一緒に住むの?」

「ええ、ジェラルドが望んでくれたから、そうする事にしたの。それに私も実は一緒にいたくてね」

「いつまでいてくれるの!?」

 幼きグレインの屈託のない質問。
 その意味をまだ知らぬのだろう、いつまでと聞かれて……私はジェラルドを見つめた。

「いつまでですか? ジェラルド」

「……ずっと、ずっとだ」

 彼はそう言いながら、私を強く抱きしめた。
 今までの気持ちを伝えるように、愛を私へと向けてくれる。




 もう、ここに私達を蔑む者も、虐げる者もいない。
 この平和と平穏は……私達が戦い、護り通したものだから。

 これからの平和は……ジェラルド様達が守ってくれる。
 
 私はもう、復讐とは無縁の幸せを過ごしていくだけだ。









  -fin-










 
  ◇◇あとがき◇◇


 読者の皆様。
 最後まで読んでくださり、ありがとうございます。

 お気に入りや、エール、しおりなど。
 読んでくださった皆様のおかげで最後まで書く事ができました!

 復讐というテーマ。どうしても重くなりますが、なるべく明るくなるように意識した本作。
 レティシアという、できる主人公。
 そして、デミトロという失敗ばかりの彼。

 対極的な二人ですが、私はどちらかと言えばデミトロに共感を抱いてしまう人間です。
 失敗が多く、誰かのせいにしてしまった方が楽ですから。
 言えないだけで、弱い人って私も含めてきっと多くいるかもしれません。
 
 とはいえ、デミトロの思い込みや逆恨みは許されるものではなく、酷いことをした人です。
 だけど、どうしようもなくなった人生でも前を向ければ、きっと救いがあるのかも?
 と……あのラストを書きました。 
 


 さて、今作は、あらすじにも書いてある通りに私の作品。
『死んだ王妃は二度目の人生を楽しみます』に登場するキャラのスピンオフ+新作としても描いておりました。
 予想を超えて、多くの方々に読んでもらえてうれしいです。

 今作は一時完結としますが、後日談も幾つか投降予定です。

 また『死んだ王妃~』は今作の登場人物達の未来を描いております。
 ジェラルドをはじめ、レティシアも今後は登場する予定ですので、良ければ読んでくださると嬉しいです!



 それでは、長いあとがきとなってしまいましたが……
 今作を見つけてくださり、読んでくださった皆様。
 本当に、ありがとうございました!
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