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第5話 父と元婚約者へざまぁ
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期待の滲む声だと、ラミス自身感じた。
「それもあるね」
心が踊って、口元が奇妙に歪んだ。慌ててクッキーの袋で隠したが、老紳士には見られてしまっただろうか。
「それともう一つ」
もう一つ? と首を傾げる。
「僕の、妻になってほしい」
「ほぇぁっ⁉︎」
ラミスは顔を苺のように染めて袋を口に押し付けた。揶揄われているのだろうか、とエンリケの顔を伺えば、ブルーベリー色の瞳が真っ直ぐ彼女を見つめてくる。
老紳士を見ても、当然の如く頷かれた。
では夢なのだろうか。死ぬ間際に見る幻なのだろうか。そっと頬をつねってみる。
「痛い……」
「もちろん断ってもかまわない。その場合でもこの世界で暮らしていいし、お菓子作りに不自由しないよう手配する」
どうしてそうまでしてくれるのか、ラミスには分からない。
ただ、エンリケが真剣なのは理解できた。
(受け入れても、いいのかもしれない)
エンリケの笑みは、優しい。オーガストと違って上部ばかりには感じない。
役割も、今のところは求められていない気がする。
何より、お菓子を美味しそうに食べてくれる。
ラミスが受け入れるには十分な理由だった。
(でも、一つだけ……)
「どうして、私なんですの……?」
もっとお菓子作りの上手い人間だっているはずだ。人間社会での階級なんて関係ないはずだし、ラミスでなくてもいいはずだった。
「言っただろう。ずっと見ていたって。僕は、君の心の美しさに惹かれたんだ。僕たちは物に込められた人の心を感じ取れるからね」
ラミスは静かに目を瞑る。心は、すぐに決まった。
「よろしくお願い、いたします。エンリケ様」
「ああ、うん、よろしくね、ラミス」
ラミスのその花のような笑みは、幼い頃以来浮かべたことのない、心からの笑みだった。
それからの日々は、人間の貴族だったならきっと手に入らなかっただろう、ケーキのような日々だった。
毎日好きな時にお菓子を作って、エンリケや仲良くなった精霊たちに持っていく。そうすると皆、嬉しそうな笑みを浮かべ、美味しそうに食べてくれる。
人間の世界にいた頃のことがどうでも良くなってしまうくらいには、幸せな日々だった。
「今度の人間たちの祭典で君のことを紹介しようと思ってるんだけど、どうかな?」
「それは、私がいた国の?」
「うん、そこ」
エンリケの顔がいたずらっぽく歪んで、ラミスも倣らう。
「ええ、いいかもしれませんわね」
だって、そこにはきっと、オーガスト皇子やバウマフィン伯爵もいるのだろうから。
「それもあるね」
心が踊って、口元が奇妙に歪んだ。慌ててクッキーの袋で隠したが、老紳士には見られてしまっただろうか。
「それともう一つ」
もう一つ? と首を傾げる。
「僕の、妻になってほしい」
「ほぇぁっ⁉︎」
ラミスは顔を苺のように染めて袋を口に押し付けた。揶揄われているのだろうか、とエンリケの顔を伺えば、ブルーベリー色の瞳が真っ直ぐ彼女を見つめてくる。
老紳士を見ても、当然の如く頷かれた。
では夢なのだろうか。死ぬ間際に見る幻なのだろうか。そっと頬をつねってみる。
「痛い……」
「もちろん断ってもかまわない。その場合でもこの世界で暮らしていいし、お菓子作りに不自由しないよう手配する」
どうしてそうまでしてくれるのか、ラミスには分からない。
ただ、エンリケが真剣なのは理解できた。
(受け入れても、いいのかもしれない)
エンリケの笑みは、優しい。オーガストと違って上部ばかりには感じない。
役割も、今のところは求められていない気がする。
何より、お菓子を美味しそうに食べてくれる。
ラミスが受け入れるには十分な理由だった。
(でも、一つだけ……)
「どうして、私なんですの……?」
もっとお菓子作りの上手い人間だっているはずだ。人間社会での階級なんて関係ないはずだし、ラミスでなくてもいいはずだった。
「言っただろう。ずっと見ていたって。僕は、君の心の美しさに惹かれたんだ。僕たちは物に込められた人の心を感じ取れるからね」
ラミスは静かに目を瞑る。心は、すぐに決まった。
「よろしくお願い、いたします。エンリケ様」
「ああ、うん、よろしくね、ラミス」
ラミスのその花のような笑みは、幼い頃以来浮かべたことのない、心からの笑みだった。
それからの日々は、人間の貴族だったならきっと手に入らなかっただろう、ケーキのような日々だった。
毎日好きな時にお菓子を作って、エンリケや仲良くなった精霊たちに持っていく。そうすると皆、嬉しそうな笑みを浮かべ、美味しそうに食べてくれる。
人間の世界にいた頃のことがどうでも良くなってしまうくらいには、幸せな日々だった。
「今度の人間たちの祭典で君のことを紹介しようと思ってるんだけど、どうかな?」
「それは、私がいた国の?」
「うん、そこ」
エンリケの顔がいたずらっぽく歪んで、ラミスも倣らう。
「ええ、いいかもしれませんわね」
だって、そこにはきっと、オーガスト皇子やバウマフィン伯爵もいるのだろうから。
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