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第15話 モブサブの初採掘!
⑮
頭上からは本物としか思えないような陽の光が降り注ぎ、眼前には色鮮やかな亜熱帯の森が広がる。その木々の隙間に見える青い煌めきは、どこまで続くかも分からない大海原だ。
森へ視線を戻せば、迷宮の中のはずなのにモンスターでもなんでもない鳥や虫が枝と枝、花と花の隙間を飛び回る。その色は赤に黄色、青、果ては紫まで、目に痛いほどカラフルだ。
カラフルなのは木になる実も同じ。かつては背景に過ぎなかったフルーツたちがたわわに実り、風に揺れる。
よく見ると齧られたものがあるから、モンスターか、もしかしたら動物の食料になっているのかもしれない。人間にも毒が無いと知れたなら食べてみたいものだ。
あと、海の幸も。
ゲームの頃もあの海には魚がいた。こちらは獲ることができたし、ぜひ狙いたい。
沖に行けば大きな魚もいるかもしれない。本当に、どこまで続いているか分からないから。
昔誰かがどこまで行けるか検証していたが、結局どこにも辿り着けなかったらしい。当時はリソース的な都合でループさせられていたんだとは思う。なら、現実になった今は、どこに続いているのか。
分からない。分からないくらいに、広い。
まるで一つの世界がそのまま迷宮の中に入れられてしまったかのように。
この三十一階層だけでこれだからな。案外本当に、いくつもの世界が迷宮の中にあるのかもしれない。
いつまでも呆けてるわけにはいかないな。泊まりの必要は無いにしても、目的地までは多少距離がある。
この三十階層台は推進の浅い部分を探しながら島嶼を渡っていく必要があるから、他より少し時間がかかるしな。
「人の気配は、無いな。モンスターも近くにはいない、と」
これなら堂々と進んでも大丈夫そうだな。常設の迷宮でこんなに人の気配が無いなんてゲームの頃じゃ無かったから、なんか新鮮だ。素材が決まった場所のうちの何カ所かにランダムで湧くって仕様だったのもあって、移動範囲には大抵誰かがいた。
もし似たような感じなら、競争相手がいることも考えてたんだが、杞憂だったらしい。ゲーム時代みたいな、一人が採取した直後でも別の人は同じように採取できるって仕様は、現実になった今じゃあり得ないだろうからな。
「たしか、階段はこっちだったな」
階段と言っても、見た目は迷宮の入り口と同じような門なんだが。昔のRPGの名残なのか、みんな階段と呼ぶんだよな。
目的地は四十階層以降。ただ、今後のことを考えたらこのあたりの素材も補充しておいた方がいいだろう。道中にあるやつは見かけ次第回収していくか。
「ん? あっ!」
あれは魔鉄の大鉱床じゃないか!
三十一階層でポップするなんて珍しい。これは採らない手は無いぞ。精霊銀であの様子なら、魔鉄はきっとボリューム層の上位が欲しがる武器の素材になる!
ああ、くそ、この足の遅さはどうにかならないのか。こんなことなら残りのパッシブも回収しとくんだった!
生産職のSPDの低さに内心悪態を吐きつつ、崖際に見えた黒い塊に走る。これでもたぶんそこらの傭兵よりは早いのだろう。それでも近接戦闘をメインにしてたメインには及ばない。
「おおっ、背より高い。特大サイズだ」
ストレージから取り出したドワフアイアンのツルハシを振りかぶり、カンっと甲高い音を響かせる。手に伝わる痺れるような感覚は、ゲームの頃には味わえなかったものだ。
職業で取得したりツルハシに付いてたりする採掘数増加のスキルが発動しているのかは分からない。ただ、甲高い音を響かせる度にゴロゴロと転がり出てくる鉱石は削れた範囲よりも多い気がする。
重なったときに隙間ができる分、増えたように見えるだけだと言われたら否定はできないにせよ、こうもたくさん出てくると、なんだか楽しくなってくるな。
手に取ってみた感じ、質も良い。つまりは要らない混ざり物が少ない。いいぞ。これをインゴッドにしたら、なかなかの剣が打てそうだ。
うん? おっ、あっちにも鉱床があるな。
あれは、金鉱床か。魔道具なんかの魔力回路に使えるな。もっと良い素材もあるが、外に出す用ならあれでも十分すぎる。確保だ。
「よっ、ほっ」
カン、カンっと。ははは、こっちもゴロゴロ。これが地球なら大金持ちだったな。ゴールドラッシュが始まってもおかしくない。
む? モンスターの気配。
そういえば消音スキルを使うのを忘れていた。これだけ大きな音を響かせてたら寄ってきて当たり前だよな。
「グルル……」
青緑色の毛に黄色い瞳の狼、アイランドウルフの群れか。数は、十くらいか? なかなか大きな群れだな。
後ろ側を取り囲んでいて、前には崖。絶体絶命、に見える構図だ。
実際アイランドウルフたちも勝ちを確信しているような雰囲気がある。
だがそれは、そこらの傭兵だったらの話。俺ならこいつらくらい、共通スキルすら使わずに剣を振り回してるだけでも勝てる。
勝てるんだが、しない。する必要がない。
アイランドウルフ達に睨み付けられる中、それを無視してツルハシを振り上げる。それ、カン、カンっと。
「ガウッ!」
痺れを切らしたのか、無視されていることに苛ついたのか、若干怒りを感じるような声を上げながらアイランドウルフたちが飛びかかってきた。爪を振り上げ、牙を剥いて俺の背を襲う。
前世だったらまず避けられなかっただろう凄まじいスピードと、岩すら切り裂く鋭い爪や牙。上級職になりたてくらいの頃は、これでよくリスポーンさせられたものだ。
でもそれはもう昔の話。
当時より職業も増え、上限レベルも上がった。つまりはステータス上昇系のパッシブスキルも増えてるわけで、さらにはマスタークラスと呼ばれる最上位職にも就いてるのだから、当時とは基礎ステータスが天と地ほども違う。
その上、装備の性能も段違いだ。たかだか三十一階層の敵の攻撃、ダメージを受けるはずがない。
「ガルルっ! ……グルァ!?」
「よっ、ほっ、せいっと」
うんうん、大量大量。一カ所からこれだけ採れたら十分すぎるな。
アイランドウルフの方は、なんだ? 牙と爪が折れてる? 今の俺ってそんなに堅いのか……。
まあ、せっかくだし貰っておくか。このレベルのモンスター素材なんて、それこそ在庫不足だしな。
「悪いな、落ちてるヤツ、拾わせてもらうぞ」
「グルル……」
いや、後ずさらなくても良いと思うんだが。別に何もしてないし。
あ、そういえばこいつの毛皮って夏用のカーペットに良いってなんかのクエストで聞いたな。獲っとくか?
「あっ! ……逃げられた。判断が早い」
生産職の足じゃさすがに追いつけない。仕方ない。諦めるか。
「よし、気を取り直して行くか」
四十階層まではサクッとだな。……お? あれは魔鉄鉱床か。小さいけど、一応とっておくか。通り道だしな!
四十階層のボス部屋もダメージを受けることなく突破して、四十一階層へ。想定していた時間の倍近くかかった理由は、俺には分からない。分からない、ということにしておく。
階段を通りぬけると、そこは上下左右、どこを見ても岩の壁しかない地底世界だ。しかし暗いなんてことはなくて、視界は十分。光源となっているのは、壁そのものとそこら中に生えたピンク色の苔だ。
壁の方は白というか、淡く透明な光だから、薄暗くはあってもチカチカはしない。問題は苔の方だ。わりとしっかりピンクだから、苔が多すぎると目が痛くなる。
その目が痛くなることにすら懐かしさを覚えながら先へ進めば、水のせせらぎが聞こえてきた。あちこちに流れるこの川もまた地の底を照らす光のひとつで、色は青。苔と違って非常に目に優しい。
他にも光源となっているものはいくつかあるから、明かりを用意する必要がない新設設計だ。
えっと、ここの採取ポイントは、一番近いのはあっちか。
「――!」
お、今のは人の声だな。スキルには反応があるが、声の聞こえる距離ではない。反響してるのか。
これは毎回採掘前に消音スキルの効果時間を確かめた方が良さそうだ。
しかしこれ、戦ってるのか?
けっこう激しそうだ。それに、近づいてきてる。
どうするか。どの採取ポイントに向かうにしてもかち合う可能性がある方向だぞ。
「……仕方ない。隠れてやり過ごすか」
まあ、悪いことばかりじゃない。
この世界の今の水準をこの目で見るいい機会でもある。
通路の少し先まで進んで岩のくぼみに身を潜め、上位職ファントムの隠蔽スキルを発動する。共通スキルとして覚えるやつだから、ファントムの他のスキルに比べたら隠蔽効果は弱いが、この辺りなら十分だろう。
「――攻撃魔法の用意を! 俺が受け止める!」
来たな。撤退戦というわけではなさそうだ。
相手は、長い手足のよく分からないクリーチャー。顔だけ見ればアリクイに近い気もするが、それにしては首から下が細いし、骨格的に人型と言えなくもない。名前は、ネブリアンだったか。
なるほど、素早いあいつの動きを限定するために狭い通路に誘い込んだのか。戦い慣れてるな。
リーダーは、さっき叫んでた金髪碧眼の、まさに勇者みたいなイケメン。両手持ちの剣でネブリアンの爪を受け止め、押し合いをしてる。
そこへツバの広い、魔法使いっぽい帽子を被った男が炎系の魔法を撃ち込んだ。
イケメンの後ろから迫る大火球。このままだとイケメンに当たる。そう思った直後、イケメンは飛び退いた。
急に支えを失ってよろめいたネブリアン。当然、火球を避けられるはずもなく、全身を焼かれる。若干の生命反応は残ってるが、所々が炭化していてプスプスと煙をあげているから、じきに息絶えるだろう。
なるほど、思ったよりも余裕があるな。
四十一階層ってことを思うと、おそらくあれが上澄みの実力者なんだろうが、それにしたってだ。
レベル的に言えば、六十階層に到達していてもおかしくない。
ただ、装備がだめだ。三十階層台なら適正って程度の武器と防具。よくもまあ、あれでこの階層を攻略できるもんだな。
それだけ戦い慣れてるってことなんだろうが、もったいない。
彼らが相応の武器を持ったなら、それこそこの世界の主役になるのかもしれないな。
まあ、俺には関係の無いことだ。それより、目当ての素材を探そう。
もうイケメンたちも移動してしまったみたいだし。
頭上からは本物としか思えないような陽の光が降り注ぎ、眼前には色鮮やかな亜熱帯の森が広がる。その木々の隙間に見える青い煌めきは、どこまで続くかも分からない大海原だ。
森へ視線を戻せば、迷宮の中のはずなのにモンスターでもなんでもない鳥や虫が枝と枝、花と花の隙間を飛び回る。その色は赤に黄色、青、果ては紫まで、目に痛いほどカラフルだ。
カラフルなのは木になる実も同じ。かつては背景に過ぎなかったフルーツたちがたわわに実り、風に揺れる。
よく見ると齧られたものがあるから、モンスターか、もしかしたら動物の食料になっているのかもしれない。人間にも毒が無いと知れたなら食べてみたいものだ。
あと、海の幸も。
ゲームの頃もあの海には魚がいた。こちらは獲ることができたし、ぜひ狙いたい。
沖に行けば大きな魚もいるかもしれない。本当に、どこまで続いているか分からないから。
昔誰かがどこまで行けるか検証していたが、結局どこにも辿り着けなかったらしい。当時はリソース的な都合でループさせられていたんだとは思う。なら、現実になった今は、どこに続いているのか。
分からない。分からないくらいに、広い。
まるで一つの世界がそのまま迷宮の中に入れられてしまったかのように。
この三十一階層だけでこれだからな。案外本当に、いくつもの世界が迷宮の中にあるのかもしれない。
いつまでも呆けてるわけにはいかないな。泊まりの必要は無いにしても、目的地までは多少距離がある。
この三十階層台は推進の浅い部分を探しながら島嶼を渡っていく必要があるから、他より少し時間がかかるしな。
「人の気配は、無いな。モンスターも近くにはいない、と」
これなら堂々と進んでも大丈夫そうだな。常設の迷宮でこんなに人の気配が無いなんてゲームの頃じゃ無かったから、なんか新鮮だ。素材が決まった場所のうちの何カ所かにランダムで湧くって仕様だったのもあって、移動範囲には大抵誰かがいた。
もし似たような感じなら、競争相手がいることも考えてたんだが、杞憂だったらしい。ゲーム時代みたいな、一人が採取した直後でも別の人は同じように採取できるって仕様は、現実になった今じゃあり得ないだろうからな。
「たしか、階段はこっちだったな」
階段と言っても、見た目は迷宮の入り口と同じような門なんだが。昔のRPGの名残なのか、みんな階段と呼ぶんだよな。
目的地は四十階層以降。ただ、今後のことを考えたらこのあたりの素材も補充しておいた方がいいだろう。道中にあるやつは見かけ次第回収していくか。
「ん? あっ!」
あれは魔鉄の大鉱床じゃないか!
三十一階層でポップするなんて珍しい。これは採らない手は無いぞ。精霊銀であの様子なら、魔鉄はきっとボリューム層の上位が欲しがる武器の素材になる!
ああ、くそ、この足の遅さはどうにかならないのか。こんなことなら残りのパッシブも回収しとくんだった!
生産職のSPDの低さに内心悪態を吐きつつ、崖際に見えた黒い塊に走る。これでもたぶんそこらの傭兵よりは早いのだろう。それでも近接戦闘をメインにしてたメインには及ばない。
「おおっ、背より高い。特大サイズだ」
ストレージから取り出したドワフアイアンのツルハシを振りかぶり、カンっと甲高い音を響かせる。手に伝わる痺れるような感覚は、ゲームの頃には味わえなかったものだ。
職業で取得したりツルハシに付いてたりする採掘数増加のスキルが発動しているのかは分からない。ただ、甲高い音を響かせる度にゴロゴロと転がり出てくる鉱石は削れた範囲よりも多い気がする。
重なったときに隙間ができる分、増えたように見えるだけだと言われたら否定はできないにせよ、こうもたくさん出てくると、なんだか楽しくなってくるな。
手に取ってみた感じ、質も良い。つまりは要らない混ざり物が少ない。いいぞ。これをインゴッドにしたら、なかなかの剣が打てそうだ。
うん? おっ、あっちにも鉱床があるな。
あれは、金鉱床か。魔道具なんかの魔力回路に使えるな。もっと良い素材もあるが、外に出す用ならあれでも十分すぎる。確保だ。
「よっ、ほっ」
カン、カンっと。ははは、こっちもゴロゴロ。これが地球なら大金持ちだったな。ゴールドラッシュが始まってもおかしくない。
む? モンスターの気配。
そういえば消音スキルを使うのを忘れていた。これだけ大きな音を響かせてたら寄ってきて当たり前だよな。
「グルル……」
青緑色の毛に黄色い瞳の狼、アイランドウルフの群れか。数は、十くらいか? なかなか大きな群れだな。
後ろ側を取り囲んでいて、前には崖。絶体絶命、に見える構図だ。
実際アイランドウルフたちも勝ちを確信しているような雰囲気がある。
だがそれは、そこらの傭兵だったらの話。俺ならこいつらくらい、共通スキルすら使わずに剣を振り回してるだけでも勝てる。
勝てるんだが、しない。する必要がない。
アイランドウルフ達に睨み付けられる中、それを無視してツルハシを振り上げる。それ、カン、カンっと。
「ガウッ!」
痺れを切らしたのか、無視されていることに苛ついたのか、若干怒りを感じるような声を上げながらアイランドウルフたちが飛びかかってきた。爪を振り上げ、牙を剥いて俺の背を襲う。
前世だったらまず避けられなかっただろう凄まじいスピードと、岩すら切り裂く鋭い爪や牙。上級職になりたてくらいの頃は、これでよくリスポーンさせられたものだ。
でもそれはもう昔の話。
当時より職業も増え、上限レベルも上がった。つまりはステータス上昇系のパッシブスキルも増えてるわけで、さらにはマスタークラスと呼ばれる最上位職にも就いてるのだから、当時とは基礎ステータスが天と地ほども違う。
その上、装備の性能も段違いだ。たかだか三十一階層の敵の攻撃、ダメージを受けるはずがない。
「ガルルっ! ……グルァ!?」
「よっ、ほっ、せいっと」
うんうん、大量大量。一カ所からこれだけ採れたら十分すぎるな。
アイランドウルフの方は、なんだ? 牙と爪が折れてる? 今の俺ってそんなに堅いのか……。
まあ、せっかくだし貰っておくか。このレベルのモンスター素材なんて、それこそ在庫不足だしな。
「悪いな、落ちてるヤツ、拾わせてもらうぞ」
「グルル……」
いや、後ずさらなくても良いと思うんだが。別に何もしてないし。
あ、そういえばこいつの毛皮って夏用のカーペットに良いってなんかのクエストで聞いたな。獲っとくか?
「あっ! ……逃げられた。判断が早い」
生産職の足じゃさすがに追いつけない。仕方ない。諦めるか。
「よし、気を取り直して行くか」
四十階層まではサクッとだな。……お? あれは魔鉄鉱床か。小さいけど、一応とっておくか。通り道だしな!
四十階層のボス部屋もダメージを受けることなく突破して、四十一階層へ。想定していた時間の倍近くかかった理由は、俺には分からない。分からない、ということにしておく。
階段を通りぬけると、そこは上下左右、どこを見ても岩の壁しかない地底世界だ。しかし暗いなんてことはなくて、視界は十分。光源となっているのは、壁そのものとそこら中に生えたピンク色の苔だ。
壁の方は白というか、淡く透明な光だから、薄暗くはあってもチカチカはしない。問題は苔の方だ。わりとしっかりピンクだから、苔が多すぎると目が痛くなる。
その目が痛くなることにすら懐かしさを覚えながら先へ進めば、水のせせらぎが聞こえてきた。あちこちに流れるこの川もまた地の底を照らす光のひとつで、色は青。苔と違って非常に目に優しい。
他にも光源となっているものはいくつかあるから、明かりを用意する必要がない新設設計だ。
えっと、ここの採取ポイントは、一番近いのはあっちか。
「――!」
お、今のは人の声だな。スキルには反応があるが、声の聞こえる距離ではない。反響してるのか。
これは毎回採掘前に消音スキルの効果時間を確かめた方が良さそうだ。
しかしこれ、戦ってるのか?
けっこう激しそうだ。それに、近づいてきてる。
どうするか。どの採取ポイントに向かうにしてもかち合う可能性がある方向だぞ。
「……仕方ない。隠れてやり過ごすか」
まあ、悪いことばかりじゃない。
この世界の今の水準をこの目で見るいい機会でもある。
通路の少し先まで進んで岩のくぼみに身を潜め、上位職ファントムの隠蔽スキルを発動する。共通スキルとして覚えるやつだから、ファントムの他のスキルに比べたら隠蔽効果は弱いが、この辺りなら十分だろう。
「――攻撃魔法の用意を! 俺が受け止める!」
来たな。撤退戦というわけではなさそうだ。
相手は、長い手足のよく分からないクリーチャー。顔だけ見ればアリクイに近い気もするが、それにしては首から下が細いし、骨格的に人型と言えなくもない。名前は、ネブリアンだったか。
なるほど、素早いあいつの動きを限定するために狭い通路に誘い込んだのか。戦い慣れてるな。
リーダーは、さっき叫んでた金髪碧眼の、まさに勇者みたいなイケメン。両手持ちの剣でネブリアンの爪を受け止め、押し合いをしてる。
そこへツバの広い、魔法使いっぽい帽子を被った男が炎系の魔法を撃ち込んだ。
イケメンの後ろから迫る大火球。このままだとイケメンに当たる。そう思った直後、イケメンは飛び退いた。
急に支えを失ってよろめいたネブリアン。当然、火球を避けられるはずもなく、全身を焼かれる。若干の生命反応は残ってるが、所々が炭化していてプスプスと煙をあげているから、じきに息絶えるだろう。
なるほど、思ったよりも余裕があるな。
四十一階層ってことを思うと、おそらくあれが上澄みの実力者なんだろうが、それにしたってだ。
レベル的に言えば、六十階層に到達していてもおかしくない。
ただ、装備がだめだ。三十階層台なら適正って程度の武器と防具。よくもまあ、あれでこの階層を攻略できるもんだな。
それだけ戦い慣れてるってことなんだろうが、もったいない。
彼らが相応の武器を持ったなら、それこそこの世界の主役になるのかもしれないな。
まあ、俺には関係の無いことだ。それより、目当ての素材を探そう。
もうイケメンたちも移動してしまったみたいだし。
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(1話2500字程度、1章まで完結保証です)