12/10^16のキセキ〜異世界で長生きすればいいだけ……だけど妹たちに手を出すなら容赦しない!〜(カクヨム版)

嘉神かろ

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第5章 時は隔てる

第26話 終止符

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5-26

「…………き、き、決まったぁぁぁぁぁぁァァアアアア!! 今大会の優勝者は、突如現れた美姫、アルジュエロ・グラシアだぁぁぁあああ!!」

 残心を解き、納刀すると同時に司会者の声が響きます。

 最後は細かい制御勝負だったので、地に足を付けているか否かで差が出た形になりましたね。

 しかし、あの謎スキルは強力でしたね。恐らく〈勇者〉スキルですが、私にも〈魔王〉スキル発現しないですかね? その内負けそうで嫌なのですが。

「それではこのまま表彰式に移ります!」

 司会がそう言うと、両側の入口からスズを含め、本戦出場者たちが入ってきます。

「お姉ちゃんお疲れー。完敗だよ」
「それ程差は無かったわよ。ところで、あの身体強化は〈勇者〉スキルなのかしら?」
「あれ? お姉ちゃんまだ鑑定してないの?」
「したけどわからなかったのよね」

 また見えないものが増えましたね。〈勇者〉には他にも何かあるとは思っていましたが。

「アレに関してはお姉ちゃんの思ってる通り、〈勇者〉スキルだよ。スキル制御を応用してみたら、なんか出来た!」

 なんか出来たって……。まぁこの子らしいですね。

「姉様、スズ姉様、お疲れ。凄かった」
「ありがとう、ブラン」
「ブランちゃんありがと!」

 ブラン達もきましたね。コスコルが軽くお辞儀をしてきたので手をあげて応えます。アリスは選手ではないので来ていません。

「そろそろ始まるわね」

 新しく入ってくる選手がいなくなったところで、司会が式の始まりを告げました。
 それから大臣らしき人物が順位を発表し、皇帝からの言葉がありました。さぁ、メインイベントです。

「――さて、大会を制し、素晴らしい戦いを見せくれた彼女には褒美をとらせなくてはならないだろう。……何でも良い。願いを言ってみよ。可能な限り叶えると、このドラグリエル八世の名にかけて誓おう」

 その言葉で会場全体がざわつきます。優勝賞品が明かされないのは例年のことですが、賞金や強力な武具なのが常。なんでも願いを叶えるなんて事はありませんでしたから。

「では、とある偽りを正し、広め伝える事にご助力いただく事を願います」

 拡声の〈風魔法〉が使われたのを確認してから、話始めます。

「ほぅ……ではその偽りとやらを申してみよ」
「はい。その偽りとは、『真川上流』が彼の武神、ゲンリューサイの後を継いでいるという事です」

 私のその言葉で再び会場がざわつきます。嘘をつくな、ふざけるな、なんて野次も聞こえますね。その大半は真川上流のゴミ屑のようですが。

「ふむ。何故そう言えるのかという根拠が無ければ、その願いを聞くことは叶わんな」
「簡単でございます。我が師ゲンリューサイから第十五代師範を任されたのは、この私めですので」

 これにはゴミ屑以外の『龍人族ドラゴニユート』も怒り心頭。色んなものが飛んできます。……ガリュウ、でしたか? 何も言ってきませんね。
 あ、ちょ、今この石を投げたやつ、出てきなさい! ブランに当たりかけたではないですか!!

 私がちょっとイラっとなって、[恒星の裁き]を発動しかけた時です。

 凄まじい音と光を放ちながら、天へといかづちが翔け上がって行きました。その出所は、アルティカ。会場が一瞬で鎮まります。

「静かに、なりましたね」

 ……誰ですかあの人。あんな言葉遣いをする人なんて知りませんよ? ーーぐふっ!! 今お腹を打ったはアルティカの風弾……この距離でも心を読んできた!?

「今の話、この私が、ゲンリューサイの妻として保証しましょう」

 ……観衆に意識を向ければ、誰も開いた口が塞がらないようですね。というかその妻というやつ、国家機密じゃありませんでしたっけ?

「今までは他国の、その一流派の話ですから。例え愛する夫の事と言えど黙認してきました」

 惚気にしか聞こえないです……。

「ですが、この際にハッキリしておきましょう。『真川上流』の祖となった者は、かつてゲンリューサイがその才無しと弟子入りを認めなかった者です。『真川上流』が奥義とする技の殆どは、『川上流』の基本技やその派生に過ぎません」

 その通りですね。

「【転生者】、ゲンリューサイの後を継いだのは、彼の前世における実孫である、彼女で間違いありません。……アルジュエロよ、亡きあの人の技、よくぞ継いでくれました。貴女のお祖父様の後妻として、あなたの義祖母として、礼を言いましょう」

 アルティカはそれだけ言って、皇帝に向き直ります。

「……グローリエス帝よ、失礼をしました」
「…………いや、手間が省けた。礼を言おう、アルティカ女王よ」

 …………いやいやいやいや! 失礼を言いましたじゃないですよ! なーに色々バラしてくれっちゃってるんですか!?  さっきまでと違う感じに騒ついちゃってるじゃないですか!

「兎も角、これで真実は証明された! 〈鑑定〉にも、確かに【川上流正当継承者】とある。皇帝としての全てを以て、お主の願いを叶えよう!」

 そこはちゃんと見えるようにしてあります。そもそも予定では、この鑑定結果で証明することになっていましたし。

 さて、私たち以外にとって肝心の第二皇子は……彼ですか。何やら焦っていますね。

 表彰式はこれで終わりのようですし、仕上げにかかりましょうか。


◆◇◆(※ここから政治の話になります。末尾で簡単に書いていますので、面倒だったら次の◆◇◆まで飛ばしてください)

 場所は変わって、帝城内の会議室。竜を模した燭台から発せられる光が照らすのは、大きな丸テーブルとそこに座る三人の国主です。

 私はアルティカの後ろに待機。他の三人は宿に帰っています。

「それでは、セフィロティア、テラリア、そしてグローリエス帝国による三国友好条約について最終確認に移ります」

 そう言ってツラツラと条文を読み上げているのは帝国の宰相。名前は……まぁ覚えなくて良いでしょう。
 細かな条文も含めて読み上げられていきますが、私の目的として重要なのは……残りの二つの項目ですね。

「続いて、三カ国間における関税の条件付き撤廃。輸入国の特産指定品を除き、全商品に関税をかけないこととします」

 各国がそれぞれ指定する数点よ特産品を除き、輸出入時の関税を無くす条件付きの条項ですが、この三カ国だと無条件に等しいでしょう。主要産業はほぼ被りませんから。
 唯一懸念があるとすれば、地理的にあまり影響はないとは予想されますが、農業大国であるリベルティアに損失が出る可能性があり摩擦の原因になりかねない、ということです。しかしこれは私が話をつけてきたので問題ありません。リベルティアのスタンスからすれば、戦火を広げられる方が問題ですしね。

 そしてこの項目の真の目的は、国境付近に領地を持つ第二皇子派貴族を、彼から離反させる事。
 関税撤廃は、国境付近の領地にとって利益に繋がりやすいです。
 あんな計画にのる貴族はどうせ野心家ですから、侵攻に参加しない方が利益を得られるなら、参加しないでしょう。
 中には種族としてのプライドで動く者もいるでしょうが、戦力を削れれば問題ありません。

「最後に、緊急時相互援助協定の締結。スタンピード等の緊急時、セフィロティア提供の軍事規模空間転移装置によって即時援軍を送るものとします。転移装置の設置場所は事前に協議した位置とします」

 セフィロティア提供とありますが、正確には私とアルティカですね。今この場の関係者で転移系の魔法を使える者は、私たちだけですから。そのアルティカも、〈空間魔導〉はまだ持っていません。

 この項目、この場の三国の戦力を考えれば然程さほど意味はありません。それぞれが自国で対応出来ないなら、他の国にとっても危険な状況なのでどの道援軍を出すことになります。

 グローリエス帝国内の設置場所は、南の魔境『龍王大火山』に繋がり帝国領を東西に分ける山脈の、その切れ目の西側。第二皇子派ではない貴族の領地です。

 セフィロティアとテラリアの転移装置の位置は今回関係ないので割愛します。

 この条項の目的は、第二皇子自身の動きを制限する為です。
 第二皇子の本拠地は、山脈の切れ目にあります。もし第二皇子が進軍を開始すれば、テラリアは皇帝に要請して転移装置を起動。侵攻軍を挟み撃ちにするのも、第二皇子の拠点を強襲するのも簡単です。

 装置を破壊されるリスクについては考えなくて良いでしょう。私とアルティカが本気で対策しましたから。寧ろ壊せる者なら壊してみなさいと言うところです。

 なお、転移時には転移先による操作が必要な設計になっています。進軍に使われても迎撃しやすい地形に設置する事になるでしょうしね。

「――この条約に反対の場合は挙手をお願いします。…………はい、それでは、この形で契約成立とさせていただきます」

 さてさて、ここでの用事は終わりですかね。戦ってみたい相手もいますが……流石に一国の元帥や将軍ですから。諦めるとしましょう。

◆◇◆
「さて、会談は終わりだ。アルジュエロ、だったな。君も席に着きなさい」

 皇帝が許可したなら問題ないでしょう。

「では、失礼します」
「アルジェちゃーん! お疲れさごふっ!?」

 席についた瞬間アルティカが飛びついてきたので、とりあえずお腹にカウンターを叩き込んでおきます。周りの目もあるので顔面は避けました。それでも空気がざわつきましたが。

「うぅ……酷い! お祖母ちゃんなのに!」
「色々バラしてくれた分よ」

 そういう事です。

「それはあなたが大魔法ぶっ放そうとしたからでしょ! 寧ろ感謝してほしいわ!」
「うっ、それは、まぁ……」

 だって、ブランに石をぶつけられかけたんですもの……! 反省はしなくもないですが!

「んんっ」

 おっと、再起動したテラリアの王に咳払いをされてしまいました。

「失礼しました」
「いや、よい」
「ああ、我も気にしていない。それよりも、一つ聞きたいことがある」

 はて、聞きたい事ですか。皇帝に聞かれるようなことなんてありましたかね?

「なんでしょうか」
「お主は、【転生者】だとアルティカ様は仰ったが、いつからこの世界に存在するのだ?」

 ふむ? アルティカに様を付けているのは、ある程度大きな、或いは古い国の王が【調停者】の事を知っているからです。しかし、いつから、ですか。

「三年程前、になります」
「三年前……意外と最近だな。しかし我々の探知装置に転生者が現れた反応は無かった」

 そう言ってドラグリエル八世はテラリア王を見ます。

「私のところもなかったな」

 探知装置……やはりありましたか。

「当然よ。この子には副王様の加護があるんですもの」
「「!?」」

 管理者さんの加護……あぁそう言えば。〈死者Necroの書nomicon〉を取得した時に隠蔽がどうたらと聞こえましたね。

「なるほど、ならば納得だ。……心配は要らないと思うが、今夜は気をつけなさい」

 グローリエス帝として、ですね。この言葉は。

「はい、お気遣い感謝します」

 その夜、ドラグリエル八世の忠告通り元『真川上流』の連中が襲撃してきました。まぁ問題があるはずもありませんが。
 彼らの称号にはまだ【真川上流】がありますが、これも次期に消えるでしょう。【調停者】としてアルティカが動いてくれるそうですので。

 また、件の第二皇子ですが、自身の派閥だった貴族たちが離れていく事や身動きを封じられた事にすっかり意気消沈してしまったようです。これであのゴミ共の終わりは確定だと思ってよいですね。

 さてさて今回の一件、中々良いものでした。ブランやコスコルの成長は喜ばしいものでしたし、課題も見えました。そして何より、スズと全力で戦えたのが楽しかったです。

 次の目的地も、きっと楽しい筈です。楽しみですね。

~~~~~~~~
☆◆◇◆→◆◇◆のまとめ
三国友好条約結んだよ!
→関税無くして第二皇子派の一部貴族が参戦しない方が良い状況を作った!
→転移装置を設置して第二皇子が動いたら即潰せるようにした!

以上!
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