12/10^16のキセキ〜異世界で長生きすればいいだけ……だけど妹たちに手を出すなら容赦しない!〜(カクヨム版)

嘉神かろ

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第6章 アーカウラの深き場所

幕間⑥

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「約定違反なのはわかっていますね?」

 薄暗いその広間の片隅で、空に出来た玉虫色の穴の向こうからそんな声が掛けられる。

「あれくらい見逃してもらいたい所ですがね。っと、わかってますよ。わかってますから、そんな物騒な物を向けないでください。ククク」
「…………暫くはそこで、本来の役目を果たしなさい。

 それだけ残して穴は閉じる。
 黒い紳士はそれを見届けると、視線を広間の中央へ向けた。
 そこにあるのは、一つの玉座と、それに座るある存在。
 その周りを数多の異形達が囲み、奇妙な動きを続けている。

「ふっ」

 黒い紳士はまず異形の存在を鼻で笑い、そして視線を輪の中心の存在へと向けた。
 その少し温かみを持った瞳に宿る感情は、嘲り。そして……。


◆◇◆

 深い、深い樹海の奥。そのモノがゆっくりと目を開ける。
 深緑色の鱗に覆われた巨体を震わせ、その九眼の頭部を二十メートルを超える木々の上に出した。

『集え』

 大樹海を震わせたのは、金属どうしを擦り合わせたような甲高い咆哮。そのモノの同族にのみ伝わる、意思を乗せた叫びだ。

 その声に従い、一体、また一体と最強種達が集まってくる。

 翼のあるモノ。無いモノ。
 分厚い岩のような鱗で覆われたモノ。薄い鋭利な鱗で覆われたモノ。
 体の大きなモノ。小さなモノ。

 姿形は様々にして、その数は両の手で数え切れないほどだ。

『時は来た』

 そのモノの九つの眼が集まった其々を見る。

『今こそ、この世界の病原体たる人間達を滅ぼすのだ……! 行け、我が同胞らよ!!』

 今、絶望が始まる。
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