12/10^16のキセキ〜異世界で長生きすればいいだけ……だけど妹たちに手を出すなら容赦しない!〜(カクヨム版)

嘉神かろ

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最終章 軌跡の終着点

第6話 3人の旅路

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8-6

『――というわけだ』

 大陸よりも少々強い日の光の中、深い青色の海原を行くスズネたち。
 出発から既に数日が経過している。

 意気込み十分に出発したものの、激しく動くには狭すぎる程のスペースしか無い中で、暇を持て余さないはずがなかった。
 初日はアルジェから聞いていた情報をもとに打ち合わせなどをして時間を潰していたのだが、二日目以降はただボンヤリ海を眺めたり、たわいも無い話をしたりすることが多くなった。

「……そんな理由だったの…………」

 そのたわいも無い話題の一つが終わり、アルティカが頭を抱える。

「なんていうか、ある意味すごいよね」
「うん……」

 スズネやブランも微妙な顔をしている。

『言えておる。土龍のやつの怠惰具合には度々苦言を呈していたのだが、流石に数千年寝むり続けてそのまま餓死するなどとは思わぬ』

 ミズナは群青の鱗に覆われた顔を少し下げ、嘆息した。

 その【調停者】の怠惰によって現在代理を務めなくてはならなくなっているアルティカからすれば、嘆息で済む話では無い。
 基本的には、ただ存在すればよいのであるが、時々バランス調整に動かなければいけないのでそれなりに負担がある。アルティカの場合、これに加えて女王の仕事や【管理者】セフィロスに仕える者としての仕事もあるのだから尚更だ。

 そんな話をしていると、ミズナの瞳に一つの影が映った。

『さぁ、見えてきたぞ』

 二種類の青だけが広がっていたそこに見える、灰色の何か。
 それは、東西二つの大陸の真裏にある、三番目の大陸。

『あれが、禁足地。境界の門がある、第三の大陸だ』


◆◇◆

 この名もなき大陸は歪な円のような形をしており、外周は険しい山々に囲われている。さらに海岸は、全て海面より百メートル以上高い位置にあるので、もし船でこの大陸を発見したとしても、大半の人間は上陸を諦めざるを得ないだろう。
 そもそも、この大陸の周辺海域の潮の流れは特殊で、船どころか海の魔物たちですら近くことが困難だ。それこそ水龍ミルズネアシアのような超常の存在でもなければ。

 これだけ厳しい環境の上に認識を阻害する結界まであれば、そのもしも自体起きないと思った方が良いだろう。

「大陸の中央を目指しなさい。そこに、お主らの目指す物がある。…………死なぬように、な」

 大陸の北西、二つの岩山の陰になっているところから上陸した三人に、ミズナが告げる。

「うん、ありがとう、ミズナさん」
「ありがとうございます」
「あ、ありがとう……」

 ミズナは一つ頷くと、崖の上まで伸ばしていた体を翻し、海中へと姿を消した。

 大質量が海に落ちた音を聞きながら、その気配が遠ざかっていく先をしばらく眺める。

「……それじゃあ、いきましょうか」
「……うん、そうだね。……あ、帰り、どうしよう?」

 スズネがアルティカの方へと振り返りながら言った。

「ここで魔力を発して呼べば来てくださるんじゃないかしら? あの様子なら」
「気づいて、くれる……?」

 コテンっと首を傾げてブランが疑問の声をあげる。
 尤もな疑問だろう。いくら【調停者】の中でも最上位にあたるミズナといえど、世界の裏側の魔力を察知する事は難しい。そこが海上でなければ、だが。

「大丈夫よ。海は全て、あの方の領域だから」
「ふーん……やっぱり【調停者】ってめちゃくちゃだね」
「あの方たちと一緒にされると困るけどね」

 アルティカは意味ありげな視線を向けてきたスズネに肩を竦めた。属性を司るような最上位存在と比べると、同じ【調停者】といえど力の差が大きいのは確かだからだ。

 アルティカはそのまま二つの山の間に伸びる細い道の方へと歩みを進める。スズネとブランもそれに続いた。

 その道は曲がりくねりながら山の向こうへと向かっている。
 左右には切り立った岩の壁が反り立ち、薄暗い影を落とす。

 辺りには魔物の気配どころか、草木もない。
 命の気配を一切感じないその細道に三人の足音だけが響く。

「なんにもいないね。……ここには」
「うん…………でも」
「……」

 想定していた強力な魔物の襲撃もなく、旅路はすこぶる順調のはずだ。しかし三人の浮かべる表情は、決して明るくない。

「……ふぅ。どうせ一週間はかかるから、今から気を張り続けてたらもたないわ。以外には何もいないみたいだし、気楽に行きましょ」
「そだね」
「うん」

 三人は強張っていた表情を緩めた。
 細道が終わり、目の前に荒野が広がる。

 相変わらず命の気配はなく、目指す彼方から感じるモノも変わりない。

 それでも三人は、歩みを止めない。
 僅かな不安を心の奥底へとしまい込み、揺るぐことのない思いと共に、その地へと進む。

 そして、一週間が経った――。

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