136 / 145
最終章 軌跡の終着点
第7話 4つ手の門番
しおりを挟む
8-7
土と岩ばかりの荒野の真ん中、星々の見守る中、アルティカとスズネ、ブランの三人は焚き火を囲んでいた。
三人は既に、目的の門から半日のところまで来ている。
「……やっぱり、あそこから動く気は無いみたいだね」
「うん……」
スズネとブランが、今日までの進行方向に顔を向けながら言う。二人にしては珍しい、鋭い視線だ。
「アレは門番だから。それより、早く食べて休みましょう」
そう言って一人澄ました顔で手を動かしているアルティカ。三人の手には、焚き火で温め直した野菜ベースのスープが入ったカップや、鳥型魔物の串焼きが握られている。
「そうだね。……うん、上出来!」
スズネはカップに口をつけ、自作のスープの出来に満足の声を漏らした。
「ほんと。うちのシェフといい勝負なんじゃないかしら?」
「本当? えへへへ!」
祖母に褒められ、スズネは照れた。ブランも尻尾を揺らす。
そうして、その夜は和やかに更けていった。
◆◇◆
二つ目の太陽が天頂を超えた頃、三人は荒野の先に二つの影を見つけた。
一つは、白く四角い建造物。
そしてもう一つは、二対の腕を持った人型の何かだ。
歩みは止めない。
三十分近く歩き続け、ようやく白い建造物の目の前まで来た。
不気味な白色をした建造物には、文字のような模様が刻まれており、その中央、スズネの目の高さ辺りに一つの鍵穴がある。
見上げなければならない程に巨大なそれの前で仁王立ちしているのは、ヴェールを纏う四つ手の巨人を模した石像だ。
「ブランちゃん、間違いない?」
アルティカが一応というように確認した。
「……うん。あの時見たのと、同じ」
ブランがその建造物、門を見上げながら、確かな確信を持って答える。
「……そっくり、だね。あの鍵に」
そう言ったスズネの脳裏に浮かんでいたのは、長姉の持っていた鍵の模様。他の二人も頷いて同意を示す。
そうやって三人が門を見つめていると、石像が振動を始めた。それに合わせて大地が揺れる。
石像がヒビ割れ、砕けていく。いや、その存在を覆っていた石が剥がれていっているのだ。
しかしその存在を知覚していた三人は慌てない。
まずスズネとブランが視線を石像に移し、やや遅れて、何か考え込んでいる様子だったアルティカが二人に倣う。
石の下から現れたソレの身体は、スズネたちの目にハッキリと映らない。空間が捻れたような、人型の歪みがそこにあるだけだ。
ハッキリと認識できるのは、門と同じような白のヴェール。そしてその身体を構成する、計り知れないエネルギー。
「窮極を超え、副王への謁見を望む者よ」
門番の声が大気を震わせる。
「我は第一の門を守る者。鍵を示せよ。さすれば、誘わん」
その巨大な門番は、三人を見下ろしながら告げた。
その声に従い、スズネは〈ストレージ〉から一本の鍵を取り出して掲げる。アルジェのと共に転移してしまった筈の、その鍵を。
スズネの顳顬を汗が伝う。
「…………確かに、それは門の鍵」
三人の顔が綻んだ。
「だが、」
門番が自身の顔を隠すヴェールに手をかけた。
それを見た三人は苦い顔をし、すぐに距離をとる。
「鍵の機能しかない紛い物。汝らを通す事は、許されぬ!」
土と岩ばかりの荒野の真ん中、星々の見守る中、アルティカとスズネ、ブランの三人は焚き火を囲んでいた。
三人は既に、目的の門から半日のところまで来ている。
「……やっぱり、あそこから動く気は無いみたいだね」
「うん……」
スズネとブランが、今日までの進行方向に顔を向けながら言う。二人にしては珍しい、鋭い視線だ。
「アレは門番だから。それより、早く食べて休みましょう」
そう言って一人澄ました顔で手を動かしているアルティカ。三人の手には、焚き火で温め直した野菜ベースのスープが入ったカップや、鳥型魔物の串焼きが握られている。
「そうだね。……うん、上出来!」
スズネはカップに口をつけ、自作のスープの出来に満足の声を漏らした。
「ほんと。うちのシェフといい勝負なんじゃないかしら?」
「本当? えへへへ!」
祖母に褒められ、スズネは照れた。ブランも尻尾を揺らす。
そうして、その夜は和やかに更けていった。
◆◇◆
二つ目の太陽が天頂を超えた頃、三人は荒野の先に二つの影を見つけた。
一つは、白く四角い建造物。
そしてもう一つは、二対の腕を持った人型の何かだ。
歩みは止めない。
三十分近く歩き続け、ようやく白い建造物の目の前まで来た。
不気味な白色をした建造物には、文字のような模様が刻まれており、その中央、スズネの目の高さ辺りに一つの鍵穴がある。
見上げなければならない程に巨大なそれの前で仁王立ちしているのは、ヴェールを纏う四つ手の巨人を模した石像だ。
「ブランちゃん、間違いない?」
アルティカが一応というように確認した。
「……うん。あの時見たのと、同じ」
ブランがその建造物、門を見上げながら、確かな確信を持って答える。
「……そっくり、だね。あの鍵に」
そう言ったスズネの脳裏に浮かんでいたのは、長姉の持っていた鍵の模様。他の二人も頷いて同意を示す。
そうやって三人が門を見つめていると、石像が振動を始めた。それに合わせて大地が揺れる。
石像がヒビ割れ、砕けていく。いや、その存在を覆っていた石が剥がれていっているのだ。
しかしその存在を知覚していた三人は慌てない。
まずスズネとブランが視線を石像に移し、やや遅れて、何か考え込んでいる様子だったアルティカが二人に倣う。
石の下から現れたソレの身体は、スズネたちの目にハッキリと映らない。空間が捻れたような、人型の歪みがそこにあるだけだ。
ハッキリと認識できるのは、門と同じような白のヴェール。そしてその身体を構成する、計り知れないエネルギー。
「窮極を超え、副王への謁見を望む者よ」
門番の声が大気を震わせる。
「我は第一の門を守る者。鍵を示せよ。さすれば、誘わん」
その巨大な門番は、三人を見下ろしながら告げた。
その声に従い、スズネは〈ストレージ〉から一本の鍵を取り出して掲げる。アルジェのと共に転移してしまった筈の、その鍵を。
スズネの顳顬を汗が伝う。
「…………確かに、それは門の鍵」
三人の顔が綻んだ。
「だが、」
門番が自身の顔を隠すヴェールに手をかけた。
それを見た三人は苦い顔をし、すぐに距離をとる。
「鍵の機能しかない紛い物。汝らを通す事は、許されぬ!」
0
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました
久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。
魔法が使えるようになった人類。
侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。
カクヨム公開中。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
傷物転生令嬢マグダリーナと原初の魔法使いエステラの幻想譚-女神とスライムの光とともに- (旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
※他サイトでも掲載しています
※ちょいちょい手直ししていってます
2026.12.14 タイトル変更 旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる