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第3章 二つの輝き
第19話 迷宮のシンオウ
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3-19
ブランを残し、再びあの結界の前にやってきました。
宿代を二週間分払って、ブランにも手持ちのお金をほぼ全て置いてきました。
ギルドの職員の方には、今回は長くなると伝えてあります。
食料も、これまで狩った魔物の肉に加え、野菜や調味料の類も買い込んであります。
普段使わないポーション類の準備もしてきました。
準備は万端です。
通路へ進む前に、改めて、結界を鑑定します。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
〈封獄結界〉耐久値 2.99×10^16/3.00×10^16
迷宮の最深部を封じるための結界。
膨大な耐久値を備えたそれは、侵入を妨げるのと同時に、試練へと挑むものの選別を行う。
《通過条件》
・Oの名を持つ神の加護を持つ
・百年以上前の縁者の魂と交流したことがある
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
バカみたいな大きさの耐久値は、減ったり増えたりしてます。
ですが、問題はそこではありません。
通過条件のところです。
『Oの名を持つ神』というのは、原初、この世界の創生に関わった最高位の神々のことです。
私の場合はタイトゥース様――たぶん管理者さん――の加護である【副王の加護】が条件を満たしたソレですね。
二つ目は、以前暴走した時にあったジジイのことでしょう。確かに、“縁者”です、
これらの二つは、どちらも達成することは困難です。
どちらか片方なら実はそれなりにいるらしいです。
両方というのは、長いスパンでみても二桁になることはないでしょうが、いることにはいます。
ここで終われば、何も疑問は抱きませんでした。
では、その二つの条件を満たし、かつ、あの隠し階段を発見出来る人は?
もちろん、私がブランにそうしたように、階段を発見出来る人を連れていれば可能ではあります。
しかし、これではまるで…………。
……余計なことを考えるのはここまでですね。
瘴気が一気に濃くなりました。
階層間の通路をぬけ、魔物の領域にたどり着いたんです。
ここからは攻略に集中しましょう。
幸いここでも、上の階同様の方法で先へ進めそうです。
◆◇◆
右手側から迫る骨皇帝(Aランク)の腕を斬り飛ばし、バランスを崩した所を引き寄せて青白色に輝く人魂(B+ランク)が吐き出した火球の盾にする。
白炎によって燃え上がった骨を、大剣へと形状を変化させた『ソード・オブ・ムーン=レンズ』で吹き飛ばして、迫ってくる古代喰屍鬼(A-ランク)の集団へと放り込めば、一気に五体の魔物の火葬が済んだ。
――まったく、キリがありませんね。
斬っても切っても次々現れるので、今は移動しながら戦っています。
あちらの世界でも、戦場では普通にやってた事です。
そろそろ階段が見える筈、と思ったら、[転移]の気配、古代死魔霊です。
あなた、50層のボスでしょう!
こんなとこで何サボってるんですか!?
[転移]してくる所の空間を〈空間魔導〉で歪めれば、勝手にその身をバラバラにしてくれます。
空間属性は単純に“空間の操作”です。
紙に描いた二つの点を重ねるように、空間という名の紙を折り曲げてやれば[転移]になり、切り取ってやれば[空間断絶]になります。
転移先の空間が歪んでいれば、その通りに体も歪んで自壊するのは当然です。
[転移]は奇襲に便利ですが、自分以上の使い手には諸刃の剣、どころか針山に自らダイブするようなものです。
残念な死体魔導師の事は放っておき、先へと進みます。
素材を回収する暇なんてありません。
なるほど、確かにコレは試練です。
む、この気配は……!
大剣を刀に変形してスピードを上げ、仇敵に肉薄。
刀の腹をぶち当てるようにフルスイングしつつ、形状を大剣に戻せば、ほら、ホームラン。
上位吸血鬼(A+ランク)の肉団子の出来上がりです。
ちっ、忌々しい吸血鬼めが、まだ生きていますか……!
痛めつけてやりたいところですが、そんな暇はありません。
少々過剰に魔力を込めた黄炎で焼き払います。
うん、吸血鬼の絶叫が心地いいです。が、流石に吸血鬼に会うたびにコレでは保ちません。制御しなくては。
と、下への階段です。
後ろから迫る屍将軍(A-ランク)を無視して階段へ駆け込み、少し乱れた息を正します。
この通路は安全地帯ですから。
十秒ほどで息を整え、先へ。
感じる魔物の気配は変わりません。種類は同じでしょう。
しかし、変化がないわけでは無いようです。
初めに私を迎えてくれたのは、上の階でもご一緒した骨将軍。ですが、武具がすこし良いものになっています。
魔法への耐性もついているようですが、誤差ですね。
その後方からは、様々なアンデッドが集まってくるのが見えます。
〈隠密〉や〈隠蔽〉は発動しているのですが、迷宮の機能ですかね? こちらの場所は直ぐばれてしまいます。
とはいえ、近接時に認識をずらすのは有効なのでスキルは切りません。
さて、ここは強風を起こして後ろのに骨をぶつけてやりますか。
ただでさえ軽い骨は、鎧で風を受ける面が広がっていたこともあって面白いように飛んでいきました。
後方へのダメージは軽微。でも、多少はばらけてくれましたね。
では。
近づいて来た順に、大剣で切り飛ばしてやります。
あーもう! うざったい!
アンデッドってドンだけタフなんですか!?
真っ二つにしてるのにまだ生きてるとか!
しかも、高位の不死者ですから魔法が使えます。
しっかり殺さないと突然氷の槍が飛んできたりするんですよ!?
再び強風で吹き飛ばして、後から迫って来ていた群とともに水蒸気爆発で消しとばします。
酷い爆音が響きましたが、どうせ位置はバレてるんです。関係ありません!
一瞬敵が途絶えた隙に駆け抜けます。
……おかしいです。先ほどまでひっきりなしに寄ってきていた魔物が散発的になっています。嫌な予感がします。
うげ、アレは……。
先ほどまで無秩序に襲いかかってきた魔物たちが、隊列を組んでいます。
先頭に盾持ちの骨と屍。その後ろに槍をもった同種。そしてその奥には人魂やリッチ。
後ろからも来てますね。多分、剣もちや素手の骨と屍でしょう。
吸血鬼は流石にいませんが、コレは厄介です。
迷宮の理性のない魔物たちが、組織立って動いている。これはある魔物の存在を示唆しています。
その魔物は、単体ではCランクでしかありません。ゾンビ系統の、特殊な進化をした魔物で、ただのゾンビ種より知恵がまわり、下位のアンデッドを統率する能力があります。
この能力によって軍勢をもったソレの脅威度はそれでも、Bランクでしかありません。
しかし、迷宮内に限り、Aランク以上の判定を受けます。
それは何故か。
簡単です。
そいつが下位の魔物しか操れないのは、Bランク以上の魔物には――屍や骨にさえ――多少なりとも理性があるからです。
では、迷宮内の魔物は?
ええそうです。理性がないんです。
BランクだろうとAランクだろうと。一切。
つまりは支配下におけるという事。
証拠は、今私の目の前にありますね。
その証拠を構成するのは、最低でもB+ランク。大半がAランクで構成されています。
脅威度はSランク。
その首魁となる魔物の名は、蘇屍。
まったく、嫌な予感程よく当たります。
余談ですが、外で会うレヴナントは、生前の意思を持っています。
とは言え、多くの場合怨みなどの負の感情によって擬似的に蘇生されていて理性は薄いので、人間に友好的な個体はかなり稀です。
閑話休題。
さて、通路いっぱいに詰まってるので一番いいのは魔法で吹き飛ばす事ですが、アレだけ魔法への耐性がある盾を綺麗に並べられたらまあ、無理ですね。可能ではありますが、後が続きません。
私が使う魔法の多くは物理現象を利用してます。しかし、[魔法耐性]とは即ち“魔力による干渉を阻害し、自然な状態にするもの”ですから、かなり威力は削られます。
アリエルも魔法耐性を持った防具を装備していましたが、それを加味しても、アレを凌いだのはおかしな話なんですよね……。
それはともかく、魔法がダメなら、次点は一点突破で大将首をとる事です。
難しそうですが、まともにやりあってたら次から次へと敵が集まってきます。
やるしかありませんね。
まずは質量攻撃です。
〈物質錬成〉で大きめな投槍を作ります。
イメージとしては、硬く、重く、投げやすく、貫き易い槍。
こんな曖昧なイメージでは魔力消費がバカになりませんが、そこには抜け道があります。
〈物質錬成〉の真髄となる、“魔素の拡散を防ぐ外殻の構成”を完全にしなければ、かなりの魔力消費を抑えられるのです。
もちろん、これでは直ぐに霧散してしまうのですが、一度投げるだけなら十分。
魔力の関わらないただの物質として、中途半端にですが、確立されているので[魔法耐性]の影響もほとんど受けません。
私が投げた槍は、壁の中央を吹き飛ばします。
しかしこれは直ぐに埋められました。
うん。わかりました。
様子見はココまでですね。
♰♰♰
先程同様に投槍を生み出し、投げる。
今度は三本連続だ。
同時に走り出す。
1度目より大きく穴が空いたそこへ飛び込み、低く這うような体勢で大剣を振り回した。
足を斬り飛ばしただけだが、この狭い空間で魔法を発動するなら周りの魔物どもにあたる。
知恵が回るとは言え、所詮は迷宮産のレヴナント。見事に同士討ちしてくれる。
後ろは気にせず、神聖属性の魔力を纏った大剣を前方に全力で叩きつけてやる。
盾の内側に入ったとは言え、まだ多少阻害されるが弱点属性なら十分。
それに、かなり密集しているから振れば当たる。
更に獲物に近づいた。
足は止めない。
後ろから飛んでくる魔法は、音を頼りに避ける。
左右から槍が繰り出されるが、そんな窮屈な突き、当たるものか。
大剣を一見無造作に振って、槍ごと骨を粉砕してやる。
ひときわ弱い気配を感じた。
――見つけた。
レヴナントだ。
逃げる気はないらしい。
周りの魔物を特攻させてくる。
――時間稼ぎか。
人魂とリッチの魔力が高まっていくのを感じる。一つにまとめる様に魔力を練っている様だ。
どれだけ切られようと突っ込んでくる骨や屍が鬱陶しい、
目の前の二体を同時に切り飛ばし、返す剣で骨を殴り飛ばしてリッチにぶち当てる。
それでも詠唱は止まらない。
――これは、マズイ? 仕方ない。
自分の足元で爆発を起こし、一瞬の隙を作る。
ダメージは少ないようだが、問題ない。
距離が空いた隙に〈創翼〉で翼をつくり、〈飛行〉する。
天井は低いが、十分だ、
後ろや前方の一部から魔法が飛んでくるが、胴体にくるのはドレスに任せて無視する。
顔に来るものも、掠るだけなら無視して気配を探る。
――いた!
レヴナントだ。
見えるならこっちのもの。
即座に[短距離転移]を発動し、レヴナントの真後ろへ。
そのまま、レヴナントの首を切り飛ばし、紅炎で焼き尽くした。
その瞬間、アンデッドどもの魔力が乱れた。
制御を失った膨大な魔力が暴走を始める。
――これに巻き込まれるのはダメ。
すぐさま奥へと走り、ついでに後方へ適当に魔法をばら撒いて足止めしてやる。
その時は十秒も経たないうちに訪れた。
迷宮内が白く染まる。
音はない。いや、聞こえないのか。
凄まじい魔力の嵐が、迷宮を揺らす。
避けきれなかった。
大きく吹き飛ばされてしまったが、翼を出したままにしていたため壁にぶち当たる前にブレーキをかけられた。
後ろから魔物たちが追ってくる様子はない。
傷も既に塞がり始めた。
♰♰♰
ふう。……うん、今日はココまでですね。
そろそろ階段も見つかるはずです。
ブランを残し、再びあの結界の前にやってきました。
宿代を二週間分払って、ブランにも手持ちのお金をほぼ全て置いてきました。
ギルドの職員の方には、今回は長くなると伝えてあります。
食料も、これまで狩った魔物の肉に加え、野菜や調味料の類も買い込んであります。
普段使わないポーション類の準備もしてきました。
準備は万端です。
通路へ進む前に、改めて、結界を鑑定します。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
〈封獄結界〉耐久値 2.99×10^16/3.00×10^16
迷宮の最深部を封じるための結界。
膨大な耐久値を備えたそれは、侵入を妨げるのと同時に、試練へと挑むものの選別を行う。
《通過条件》
・Oの名を持つ神の加護を持つ
・百年以上前の縁者の魂と交流したことがある
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
バカみたいな大きさの耐久値は、減ったり増えたりしてます。
ですが、問題はそこではありません。
通過条件のところです。
『Oの名を持つ神』というのは、原初、この世界の創生に関わった最高位の神々のことです。
私の場合はタイトゥース様――たぶん管理者さん――の加護である【副王の加護】が条件を満たしたソレですね。
二つ目は、以前暴走した時にあったジジイのことでしょう。確かに、“縁者”です、
これらの二つは、どちらも達成することは困難です。
どちらか片方なら実はそれなりにいるらしいです。
両方というのは、長いスパンでみても二桁になることはないでしょうが、いることにはいます。
ここで終われば、何も疑問は抱きませんでした。
では、その二つの条件を満たし、かつ、あの隠し階段を発見出来る人は?
もちろん、私がブランにそうしたように、階段を発見出来る人を連れていれば可能ではあります。
しかし、これではまるで…………。
……余計なことを考えるのはここまでですね。
瘴気が一気に濃くなりました。
階層間の通路をぬけ、魔物の領域にたどり着いたんです。
ここからは攻略に集中しましょう。
幸いここでも、上の階同様の方法で先へ進めそうです。
◆◇◆
右手側から迫る骨皇帝(Aランク)の腕を斬り飛ばし、バランスを崩した所を引き寄せて青白色に輝く人魂(B+ランク)が吐き出した火球の盾にする。
白炎によって燃え上がった骨を、大剣へと形状を変化させた『ソード・オブ・ムーン=レンズ』で吹き飛ばして、迫ってくる古代喰屍鬼(A-ランク)の集団へと放り込めば、一気に五体の魔物の火葬が済んだ。
――まったく、キリがありませんね。
斬っても切っても次々現れるので、今は移動しながら戦っています。
あちらの世界でも、戦場では普通にやってた事です。
そろそろ階段が見える筈、と思ったら、[転移]の気配、古代死魔霊です。
あなた、50層のボスでしょう!
こんなとこで何サボってるんですか!?
[転移]してくる所の空間を〈空間魔導〉で歪めれば、勝手にその身をバラバラにしてくれます。
空間属性は単純に“空間の操作”です。
紙に描いた二つの点を重ねるように、空間という名の紙を折り曲げてやれば[転移]になり、切り取ってやれば[空間断絶]になります。
転移先の空間が歪んでいれば、その通りに体も歪んで自壊するのは当然です。
[転移]は奇襲に便利ですが、自分以上の使い手には諸刃の剣、どころか針山に自らダイブするようなものです。
残念な死体魔導師の事は放っておき、先へと進みます。
素材を回収する暇なんてありません。
なるほど、確かにコレは試練です。
む、この気配は……!
大剣を刀に変形してスピードを上げ、仇敵に肉薄。
刀の腹をぶち当てるようにフルスイングしつつ、形状を大剣に戻せば、ほら、ホームラン。
上位吸血鬼(A+ランク)の肉団子の出来上がりです。
ちっ、忌々しい吸血鬼めが、まだ生きていますか……!
痛めつけてやりたいところですが、そんな暇はありません。
少々過剰に魔力を込めた黄炎で焼き払います。
うん、吸血鬼の絶叫が心地いいです。が、流石に吸血鬼に会うたびにコレでは保ちません。制御しなくては。
と、下への階段です。
後ろから迫る屍将軍(A-ランク)を無視して階段へ駆け込み、少し乱れた息を正します。
この通路は安全地帯ですから。
十秒ほどで息を整え、先へ。
感じる魔物の気配は変わりません。種類は同じでしょう。
しかし、変化がないわけでは無いようです。
初めに私を迎えてくれたのは、上の階でもご一緒した骨将軍。ですが、武具がすこし良いものになっています。
魔法への耐性もついているようですが、誤差ですね。
その後方からは、様々なアンデッドが集まってくるのが見えます。
〈隠密〉や〈隠蔽〉は発動しているのですが、迷宮の機能ですかね? こちらの場所は直ぐばれてしまいます。
とはいえ、近接時に認識をずらすのは有効なのでスキルは切りません。
さて、ここは強風を起こして後ろのに骨をぶつけてやりますか。
ただでさえ軽い骨は、鎧で風を受ける面が広がっていたこともあって面白いように飛んでいきました。
後方へのダメージは軽微。でも、多少はばらけてくれましたね。
では。
近づいて来た順に、大剣で切り飛ばしてやります。
あーもう! うざったい!
アンデッドってドンだけタフなんですか!?
真っ二つにしてるのにまだ生きてるとか!
しかも、高位の不死者ですから魔法が使えます。
しっかり殺さないと突然氷の槍が飛んできたりするんですよ!?
再び強風で吹き飛ばして、後から迫って来ていた群とともに水蒸気爆発で消しとばします。
酷い爆音が響きましたが、どうせ位置はバレてるんです。関係ありません!
一瞬敵が途絶えた隙に駆け抜けます。
……おかしいです。先ほどまでひっきりなしに寄ってきていた魔物が散発的になっています。嫌な予感がします。
うげ、アレは……。
先ほどまで無秩序に襲いかかってきた魔物たちが、隊列を組んでいます。
先頭に盾持ちの骨と屍。その後ろに槍をもった同種。そしてその奥には人魂やリッチ。
後ろからも来てますね。多分、剣もちや素手の骨と屍でしょう。
吸血鬼は流石にいませんが、コレは厄介です。
迷宮の理性のない魔物たちが、組織立って動いている。これはある魔物の存在を示唆しています。
その魔物は、単体ではCランクでしかありません。ゾンビ系統の、特殊な進化をした魔物で、ただのゾンビ種より知恵がまわり、下位のアンデッドを統率する能力があります。
この能力によって軍勢をもったソレの脅威度はそれでも、Bランクでしかありません。
しかし、迷宮内に限り、Aランク以上の判定を受けます。
それは何故か。
簡単です。
そいつが下位の魔物しか操れないのは、Bランク以上の魔物には――屍や骨にさえ――多少なりとも理性があるからです。
では、迷宮内の魔物は?
ええそうです。理性がないんです。
BランクだろうとAランクだろうと。一切。
つまりは支配下におけるという事。
証拠は、今私の目の前にありますね。
その証拠を構成するのは、最低でもB+ランク。大半がAランクで構成されています。
脅威度はSランク。
その首魁となる魔物の名は、蘇屍。
まったく、嫌な予感程よく当たります。
余談ですが、外で会うレヴナントは、生前の意思を持っています。
とは言え、多くの場合怨みなどの負の感情によって擬似的に蘇生されていて理性は薄いので、人間に友好的な個体はかなり稀です。
閑話休題。
さて、通路いっぱいに詰まってるので一番いいのは魔法で吹き飛ばす事ですが、アレだけ魔法への耐性がある盾を綺麗に並べられたらまあ、無理ですね。可能ではありますが、後が続きません。
私が使う魔法の多くは物理現象を利用してます。しかし、[魔法耐性]とは即ち“魔力による干渉を阻害し、自然な状態にするもの”ですから、かなり威力は削られます。
アリエルも魔法耐性を持った防具を装備していましたが、それを加味しても、アレを凌いだのはおかしな話なんですよね……。
それはともかく、魔法がダメなら、次点は一点突破で大将首をとる事です。
難しそうですが、まともにやりあってたら次から次へと敵が集まってきます。
やるしかありませんね。
まずは質量攻撃です。
〈物質錬成〉で大きめな投槍を作ります。
イメージとしては、硬く、重く、投げやすく、貫き易い槍。
こんな曖昧なイメージでは魔力消費がバカになりませんが、そこには抜け道があります。
〈物質錬成〉の真髄となる、“魔素の拡散を防ぐ外殻の構成”を完全にしなければ、かなりの魔力消費を抑えられるのです。
もちろん、これでは直ぐに霧散してしまうのですが、一度投げるだけなら十分。
魔力の関わらないただの物質として、中途半端にですが、確立されているので[魔法耐性]の影響もほとんど受けません。
私が投げた槍は、壁の中央を吹き飛ばします。
しかしこれは直ぐに埋められました。
うん。わかりました。
様子見はココまでですね。
♰♰♰
先程同様に投槍を生み出し、投げる。
今度は三本連続だ。
同時に走り出す。
1度目より大きく穴が空いたそこへ飛び込み、低く這うような体勢で大剣を振り回した。
足を斬り飛ばしただけだが、この狭い空間で魔法を発動するなら周りの魔物どもにあたる。
知恵が回るとは言え、所詮は迷宮産のレヴナント。見事に同士討ちしてくれる。
後ろは気にせず、神聖属性の魔力を纏った大剣を前方に全力で叩きつけてやる。
盾の内側に入ったとは言え、まだ多少阻害されるが弱点属性なら十分。
それに、かなり密集しているから振れば当たる。
更に獲物に近づいた。
足は止めない。
後ろから飛んでくる魔法は、音を頼りに避ける。
左右から槍が繰り出されるが、そんな窮屈な突き、当たるものか。
大剣を一見無造作に振って、槍ごと骨を粉砕してやる。
ひときわ弱い気配を感じた。
――見つけた。
レヴナントだ。
逃げる気はないらしい。
周りの魔物を特攻させてくる。
――時間稼ぎか。
人魂とリッチの魔力が高まっていくのを感じる。一つにまとめる様に魔力を練っている様だ。
どれだけ切られようと突っ込んでくる骨や屍が鬱陶しい、
目の前の二体を同時に切り飛ばし、返す剣で骨を殴り飛ばしてリッチにぶち当てる。
それでも詠唱は止まらない。
――これは、マズイ? 仕方ない。
自分の足元で爆発を起こし、一瞬の隙を作る。
ダメージは少ないようだが、問題ない。
距離が空いた隙に〈創翼〉で翼をつくり、〈飛行〉する。
天井は低いが、十分だ、
後ろや前方の一部から魔法が飛んでくるが、胴体にくるのはドレスに任せて無視する。
顔に来るものも、掠るだけなら無視して気配を探る。
――いた!
レヴナントだ。
見えるならこっちのもの。
即座に[短距離転移]を発動し、レヴナントの真後ろへ。
そのまま、レヴナントの首を切り飛ばし、紅炎で焼き尽くした。
その瞬間、アンデッドどもの魔力が乱れた。
制御を失った膨大な魔力が暴走を始める。
――これに巻き込まれるのはダメ。
すぐさま奥へと走り、ついでに後方へ適当に魔法をばら撒いて足止めしてやる。
その時は十秒も経たないうちに訪れた。
迷宮内が白く染まる。
音はない。いや、聞こえないのか。
凄まじい魔力の嵐が、迷宮を揺らす。
避けきれなかった。
大きく吹き飛ばされてしまったが、翼を出したままにしていたため壁にぶち当たる前にブレーキをかけられた。
後ろから魔物たちが追ってくる様子はない。
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♰♰♰
ふう。……うん、今日はココまでですね。
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