65 / 145
第3章 二つの輝き
閑話 第二王女
しおりを挟むえ? なんで私がこんなにアルジェの事を気にかけるかって?
そうね……、直接言うのは恥ずかしいし、私の話を聞いて感じ取ってちょうだい。
初めて会ったのは、二ヶ月近く前になるかしら?
あの日は、リリに会いにくるついでにリベリアに公務に来てたんだけど……普通逆? いいのよ!
リリが拐われかけたって聞いた時点で犯人達をぶっ飛ばしに行ったから、レオンおじさまからの褒美の話には同席しなかったのよね。
今思えば失敗だったかも? とは思うのだけれど、その後を考えれば大した問題じゃないわね。
そう、これは種族的な関係だったのかもしれないけど、なんか、こう、ビビッと来たのよ。
彼女なら、きっと……てね。
それからリベリアを出るまでは、ほぼ毎日屋敷に遊びに行ったわ。もちろん、視察を終わらせた後よ?
なんだかんだ、アルジェも歓迎してくれたし、まぁ、その、楽しかった。
なんかだんだん、扱いが雑になっていったような気もするけど……。
それはそれで新鮮だったから、いい……のよね?
ギルドでアルジェがよくわからない事になったって聞いた時は肝を冷やしたけどね。最悪、アルジェを討たなきゃならないって話だったから。
尽力してくれた二人には、キッチリお礼をしておいたわ。
ブランちゃんには出来てないけど……。
だ、だって、ブランちゃんにお礼したら、アルジェにも伝わるじゃない? それは、ちょっと恥ずかしかったから……。
それから、アルジェ達が旅立つ少し前の日に王都に戻ったから、見送りは出来なかったけど。代わりに王都で出迎えられたからセーフね!
それにしても、〈魔力視〉ってスキルには驚いたわね。
リベリアにいる時に、ポロっとかなり上位権限の〈鑑定眼〉を持ってるってことは話してくれてたけど。
そこで思ったの。もうこれ、アルジェに隠し事とか意味ないんじゃないの? って。
それからはもう格段に気楽だったわ。
ほら、私の役職上、かなり話せないことが多かったから。
国のこととは言え、友達に隠し事ってなんか嫌だったし。
アルジェを連れて王都を回るのも楽しかったわ。私のせいでアルジェが変な目で見られてたみたいだけど、しょうがないしょうがない。
その後の王城でのアレコレでも驚かされたわね。
アリエルとあそこまでやりあえるほど強いなんて思ってなかったし。
魔力は馬鹿みたいに高かったし、制御も完璧だったから、初めて会った時から強いのは知ってたわよ?
大剣が使えるのも、もちろん調査したから知ってるわ。
刀については、レオンおじさまとの手合わせを見たから。
本人以上に本人の評価を知ってる自信もある。調べまくったから。…………ストーカーじゃないからね?
でも、だってアリエルよ?
あの人間兵器。剣の神とまで呼ばれたあの子と、剣でやりあえるなんて、思うわけないじゃない。
でも、それ以上に驚かされたことがあったわ。
まさか、アルジェが【転生者】だったなんてね。
アリエルとの試合の後に教えられたアレコレを考えれば、納得はできるんだけどね。
それに今考えれば、副王様の加護を受けてるあの子なら、探知魔法から隠れられたとしても不思議ではないしね。
それからしばらくは、ブランちゃんと迷宮に潜ってたみたい。
どっかのバカがアルジェにブラッドサッカーをけしかけたみたいだけど、ホントにバカじゃないかしら?
いくら【転生者】でも、そう言う種の根底にまで刻み込まれた本能からは逃れられないってのは有名な話。
なら、そいつらがどうなったかなんて予想するまでもないわね。
しばらくアルジェに会えなくて寂しかったから、スカッとしたわ。
二週間前にアルジェたちが迷宮を踏破したって聞いた時は喜んだわね。
Bランク以下の二人組としては、最速踏破みたいだからお祝いでもしようかなって色々考えてたんだけど……、アルジェったら、何故か一人で迷宮に潜り始めちゃったから……。
さ、寂しかったわけじゃないのよ?
もちろん、仕事だってしっかりやってたわ。
怪しい三人組がいるって情報が入ったのが、一週間前ね。
これはいい口実がで……じゃなくて、アルジェにも伝えておいた方がいいと思って『竜垂庵』に行ったんだけど、まだアルジェは帰ってなかったみたいなのよ……。
とりあえず、ブランちゃんに伝言を頼んだわけだけど、おかしいのよ。
ブランちゃんまで私の扱いが適当になってる気がしたの。
そう思って、スプーファー――焼き鳥の屋台をやらせてたアイツよ――に聞いてみたんだけど、『気のせいじゃないですか?』って……。
ま、まあいいわ。
今回はアルジェに会う機会を逃しちゃったけど、まだ王都にいるみたいだし、次の機会を待つつもりだったわ。
アルジェに気づかれないレベルの子がいればいいんだけど、お母様くらいだからね。
それに、もし居てもそんな私的な事には使えないし。
そして、一週間前だったわ。アルジェが酷く焦った様子で私のところへ来たのは。
あんなに取り乱したアルジェなんて、初めて見た。
短い付き合いだけど、そう言うのとは無縁に見えてたから。
なら、私が力にならないわけがないよね?
今日だって、あんなにボロボロになって帰ってきた。
頼ってはくれる。
でも、肝心な、一番危ないことは自分だけでやろうとするの。
もっと、いくらでも頼ってくれていいのに。
心配でたまらなかった。
だって、王家の血筋に連らない人で、初めての対等の友達よ?
親友だと思ってるくらい。
特別扱いしちゃってもしょうがないじゃない……。
……て、結局言っちゃったじゃない!
うぅ、恥ずかしい……。
他にも色々口走ってた気がするわ……。
いい!?
今言ったこと、アルジェには内緒だからね!
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる