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第27話 誤解だったらしい?
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㉗
「手荒な真似をして申し訳ない」
「いやぁ、うちの上司から貴方がたの護衛を仰せつかっておりまして」
「それがどうして魔法飛び交う闘争劇になったのさ?」
正論である。
まことに遺憾ではあるが、正論である。
なお、私のことは上司で通せと伝えてある。サプライズだ。
む? 私と駄エルフたちは初対面になるだろう?
……まあ、その通りではあるが。
「あのお方って意外とお茶目なんですねー。ちょっと親近感」
「不敬だぞ」
……コホン。
兎も角、余興はここまでだ。
五人のエルフたちには後で追加の礼をせねばな。
「それ、で、その……」
「これからどうしたらいいの? その上司さんのとこ行けばいいの?」
それはまだ早いな。
せっかく来たのだ。純粋に、この国を楽しんでほしい。
「いや、先にこの国を楽しんで欲しい、というのが我々の上司の意向だ。然るべき後に、お連れする」
「ふーん? あっ! 宿!」
時刻は間も無く、夕方と言っても差し支えない時間だ。この国ならば、まともな宿は埋まってしまっていてもおかしくない。
「その点は心配いらない。既に一部屋、宿をおさえてる」
あのような闘争劇を繰り広げることになってしまったからな。別の者をいかせたのだ。
「それは、嬉しいけど。……どうしてそこまでしてくれるの? あなた達の上司さんにとって、私は何?」
「トキワ、くん……?」
トキワの瞳が、不安に揺れる。初めて見る彼の姿に、シュアンもまた、声を震わせた。
そうか、トキワは、その身がどうして生み出されたのかを知らない。誰かの身体を奪ってしまったのではないかと、以前、思い悩んでいた。
普段であれば、その勘違いによるすれ違いを楽しむところだ。
だが、これはそうもいかないだろう。
……これから告げる内容を、トキワに伝えよ。
「トキワ殿、我らの上司から伝言がある」
「え、う、うん」
「貴方の身体は、他の誰のものでもなく、貴方自身のものだ。案ずる理由はない」
だから、憂うことなく、この国を楽しんでくれ。
「……どうして、んーん、分かった。ありがとう」
シュアンなどは首を傾げているが、当然だ。その意味を伝えるかは、トキワに委ねよう。
今はそれよりも、観光だ。
「さて、そろそろこの国を案内したい。とは言えこの大所帯で彷徨くわけにもいかないからな。誰か一人を同行させ、他は初めのように隠れて護衛する」
「あ、あー、うん、ありがとう」
頬を朱に染め、気まずげに礼を言う駄エルフ。自らの勘違いを思い出して恥ずかしくなったか。
「それで、同行者の希望はあるか? 指揮をとる必要がある故、私以外でだ」
「それじゃそっちのお姉さ――「トキワ君?」……黄色い髪のお兄さんで」
シュアン、瞳の闇を抑えるのだ。護衛達が引いている。……指名されかけた副隊長だけ頷いているのは何故だ?
「おっ、俺ですか? りょーかい。任せてください!」
こやつか。私のことをお茶目などと言っていた男だ。
そちらの世界でいう銀杏のような髪色の彼は、実力で言えば三番目。隊長、副隊長に次ぐ。
近接戦が得意なことも踏まえて、側で守るにはちょうど良いだろう。
「それでは一度、宿へ寄ろう」
さて、ようやくマトモな観光だな。
それなりに豪華な宿に喜色を浮かべた二人は、部屋の探検もそこそこに荷物をおいて外へ出る。なお、彼女らが羽織っている揃いの外套も、こちらで用意させたものだ。
宿の前に残っていたのは、案内役に選ばれた、黄色い髪の男だけ。護衛のうち隊長たちは既に姿を隠していた。
「改めて、よろしく頼みます。俺はキイチです!」
「よろ、しく、お願い、します」
「よろしく! ……私たちの名前はもう良いんだよね?」
私が伝えているからな。
先ほど隊長が口にしていた為に気がついたのだろう。
「はい、大丈夫です。えーと、上司からはあまり特別扱いしすぎるなって命じられてるので、お互い気楽に行きましょう」
「はい!」
自己紹介も済んだところで一先ずは、行き先を決めねばなるまい。
私が勧めたいのは、ナミキ国立公園の展望台だ。世界樹を眺める為に作られた場所で、エルフであるトキワならば精霊たちによって照らされる世界樹の姿を望めるだろう。
とはいえ、ここは暗くなってからが良い。
ふむ、一先ずはこのキイチに任せてみるか。
「時間的に、まずは晩飯ですかね。近くに美味い店があるんすよ!」
「へぇっ! じゃあそこで!」
「わ、私も、それで、大丈夫、です」
じゃあ決まりで、と元気の良い声を響かせて、キイチが先導する。
夕食か、失念していた。そのあたりは、私が食事を必要としていない故に思いつき難い部分だ。任せて正解だったな。
「そういえばだけど、さっきのお姉様ってさ」
おい駄エルフやめろ。シュアンがピクリと反応している。
「彼氏とかいるのかな!?」
グリンとなったぞ、シュアンの首。恐ろしい。特に目が。
「あー、副隊長ですか?」
おいキイチ、何故普通に答える。お前も駄エルフなのか!?
「副隊長はやめた方がいいっすよ。なんせ、物凄い気軽にかつ無言で雷を落としてくるオ、ニッ!?」
やはり駄エルフだな貴様!?
近くにその副隊長もいるのを忘れたか!?
「ね、あぶぅっ!? ないっ、でしょっ!?」
「う、うん、そうだね……(確実に仕留めようとする意思を感じる……)」
駄エルフが二人。
非常に、不安である。
「手荒な真似をして申し訳ない」
「いやぁ、うちの上司から貴方がたの護衛を仰せつかっておりまして」
「それがどうして魔法飛び交う闘争劇になったのさ?」
正論である。
まことに遺憾ではあるが、正論である。
なお、私のことは上司で通せと伝えてある。サプライズだ。
む? 私と駄エルフたちは初対面になるだろう?
……まあ、その通りではあるが。
「あのお方って意外とお茶目なんですねー。ちょっと親近感」
「不敬だぞ」
……コホン。
兎も角、余興はここまでだ。
五人のエルフたちには後で追加の礼をせねばな。
「それ、で、その……」
「これからどうしたらいいの? その上司さんのとこ行けばいいの?」
それはまだ早いな。
せっかく来たのだ。純粋に、この国を楽しんでほしい。
「いや、先にこの国を楽しんで欲しい、というのが我々の上司の意向だ。然るべき後に、お連れする」
「ふーん? あっ! 宿!」
時刻は間も無く、夕方と言っても差し支えない時間だ。この国ならば、まともな宿は埋まってしまっていてもおかしくない。
「その点は心配いらない。既に一部屋、宿をおさえてる」
あのような闘争劇を繰り広げることになってしまったからな。別の者をいかせたのだ。
「それは、嬉しいけど。……どうしてそこまでしてくれるの? あなた達の上司さんにとって、私は何?」
「トキワ、くん……?」
トキワの瞳が、不安に揺れる。初めて見る彼の姿に、シュアンもまた、声を震わせた。
そうか、トキワは、その身がどうして生み出されたのかを知らない。誰かの身体を奪ってしまったのではないかと、以前、思い悩んでいた。
普段であれば、その勘違いによるすれ違いを楽しむところだ。
だが、これはそうもいかないだろう。
……これから告げる内容を、トキワに伝えよ。
「トキワ殿、我らの上司から伝言がある」
「え、う、うん」
「貴方の身体は、他の誰のものでもなく、貴方自身のものだ。案ずる理由はない」
だから、憂うことなく、この国を楽しんでくれ。
「……どうして、んーん、分かった。ありがとう」
シュアンなどは首を傾げているが、当然だ。その意味を伝えるかは、トキワに委ねよう。
今はそれよりも、観光だ。
「さて、そろそろこの国を案内したい。とは言えこの大所帯で彷徨くわけにもいかないからな。誰か一人を同行させ、他は初めのように隠れて護衛する」
「あ、あー、うん、ありがとう」
頬を朱に染め、気まずげに礼を言う駄エルフ。自らの勘違いを思い出して恥ずかしくなったか。
「それで、同行者の希望はあるか? 指揮をとる必要がある故、私以外でだ」
「それじゃそっちのお姉さ――「トキワ君?」……黄色い髪のお兄さんで」
シュアン、瞳の闇を抑えるのだ。護衛達が引いている。……指名されかけた副隊長だけ頷いているのは何故だ?
「おっ、俺ですか? りょーかい。任せてください!」
こやつか。私のことをお茶目などと言っていた男だ。
そちらの世界でいう銀杏のような髪色の彼は、実力で言えば三番目。隊長、副隊長に次ぐ。
近接戦が得意なことも踏まえて、側で守るにはちょうど良いだろう。
「それでは一度、宿へ寄ろう」
さて、ようやくマトモな観光だな。
それなりに豪華な宿に喜色を浮かべた二人は、部屋の探検もそこそこに荷物をおいて外へ出る。なお、彼女らが羽織っている揃いの外套も、こちらで用意させたものだ。
宿の前に残っていたのは、案内役に選ばれた、黄色い髪の男だけ。護衛のうち隊長たちは既に姿を隠していた。
「改めて、よろしく頼みます。俺はキイチです!」
「よろ、しく、お願い、します」
「よろしく! ……私たちの名前はもう良いんだよね?」
私が伝えているからな。
先ほど隊長が口にしていた為に気がついたのだろう。
「はい、大丈夫です。えーと、上司からはあまり特別扱いしすぎるなって命じられてるので、お互い気楽に行きましょう」
「はい!」
自己紹介も済んだところで一先ずは、行き先を決めねばなるまい。
私が勧めたいのは、ナミキ国立公園の展望台だ。世界樹を眺める為に作られた場所で、エルフであるトキワならば精霊たちによって照らされる世界樹の姿を望めるだろう。
とはいえ、ここは暗くなってからが良い。
ふむ、一先ずはこのキイチに任せてみるか。
「時間的に、まずは晩飯ですかね。近くに美味い店があるんすよ!」
「へぇっ! じゃあそこで!」
「わ、私も、それで、大丈夫、です」
じゃあ決まりで、と元気の良い声を響かせて、キイチが先導する。
夕食か、失念していた。そのあたりは、私が食事を必要としていない故に思いつき難い部分だ。任せて正解だったな。
「そういえばだけど、さっきのお姉様ってさ」
おい駄エルフやめろ。シュアンがピクリと反応している。
「彼氏とかいるのかな!?」
グリンとなったぞ、シュアンの首。恐ろしい。特に目が。
「あー、副隊長ですか?」
おいキイチ、何故普通に答える。お前も駄エルフなのか!?
「副隊長はやめた方がいいっすよ。なんせ、物凄い気軽にかつ無言で雷を落としてくるオ、ニッ!?」
やはり駄エルフだな貴様!?
近くにその副隊長もいるのを忘れたか!?
「ね、あぶぅっ!? ないっ、でしょっ!?」
「う、うん、そうだね……(確実に仕留めようとする意思を感じる……)」
駄エルフが二人。
非常に、不安である。
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