【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?

嘉神かろ

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第51話 クライアントの言う無茶みたいなんだがぁ?

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 一番の問題は、滞留してる膨大な魔力。これをどうにかしないと何をどうしてもゲームオーバーだ。
 僕たちどころか、街も、学園も、リリアだって粉々に吹き飛んで消えてしまう。

 それじゃあ何のために女神の依頼を受けたのか分からなくなるねぇ。

 独立した問題としては、もう一つ。
 この神獣を解き放つと、街の動力源がなくなって、防衛もインフラも停止しちゃうってことかなぁ。

 回路を見た感じ、水道やら灯りやら、一部の魔道具もこの神獣からの魔力で動かしてるみたいなんだよねぇ。

 まぁ、これに関しては僕の手持ちの魔石を使うなり、僕自身が一時的に魔力を共有するなり、いくらでも延命手段はあるから、その間に解決すればいいか。

 となると、考えるべきはあの魔力溜まりだけでいいねぇ。

 原因となってるのは神獣の魔力を吸い出している装置の制御不良だから、その機能を代替できればいいわけだ。

「フィア、コペン、僕らであの魔力、制御できると思うかい?」
「んにゃ!」
「にゃぁ……」

 コペンはいける。フィアは難しい、か。

「フィアに同意だねぇ。自分の魔力ならともかく、他者の魔力はなぁ」

 リリアの時はコペンに協力の意思があったからどうにかなってたけど、あれだけ敵意満タンだと余計にねぇ。

 じゃあどこかに流す?
 どこに?

 これだけ溜まってたら、別の道を作った瞬間そっちで暴発する。
 上手くすれば爆発位置をずらせるかもしれないけど、多少ずらしたところで意味ないだろうからなぁ。

 正直、計算するまでもないよ。

 空間転移系のスキルじゃ、エネルギーである魔力単体を転移させることはできないし……。

 もう少し構造を観察したいところだけど――

「グルル……」
「おっと」

 ダメだねぇ。この感じで暴れられたら、神獣の寿命が縮む。

 神獣自身の敵意も問題だねぇ……。

 正直、フィアたちの存在で心を許してくれないかって期待はあったんだけどねぇ。

 ああ、もう、無意識のうちに二本目いっちゃってたよ。

「ふぅ……。やるしかない、かぁ。痛いのは嫌なんだけどねぇ」

 残ったタバコは、魔法で燃やしきればいいか。

「んにゃっ!?」
「にゃ」
「ありがとう、フィア。そのままコペンを抑えておいててくれるかい?」
「にゃぁ」

 本当に、察しが良くて助かるねぇ。

「グルル……」

 鋭い牙だねぇ。あれに噛まれたら痛いんだろうなぁ。
 フィアの二回りくらい大きいし、僕の頭ぐらいなら丸呑みにできちゃいそうだよねぇ。

「大丈夫。僕ぁ、敵じゃない。女神ジルゲッティンリヒトの協力者だ」
「ガウッ!」

 あら、敵意が増した。もしかして、同じことを言われて捕らわれたかな?

「嘘じゃぁない。君を傷つけるつもりはないよ。むしろ、助けた――っ!」

 くぅっ、やっぱり痛いねぇ。
 左肩、これ、治療しないと動かないヤツだよ。

 腕ごと食いちぎられなかっただけマシかねぇ。

 めちゃくちゃ痛くて泣いちゃいそうだけど、ここで動じちゃダメ。

「――いんだ。だから、君に繋がってる装置を見せてほしくてねぇ」

 逃げようとしたら不信感を与えてしまう、っていうのは分かってるけど、それでも痛いものは痛い。
 
 ダメージを抑える意味でも、犬系の顎の構造上、むしろ深く突っ込んだ方がいい。いや、でもここまで牙が食い込んでたら変わらない気もするなぁ。

「ウゥゥウゥ……!」
「大丈夫だから。僕ぁ、君を捕らえた奴らとは違う」

 声音もできるだけ、落ち着かせたままで……。
 いやぁ、脂汗が出てきたねぇ。

 たぶんこれ、HPもゴリゴリ削れてるよ。
 危険ラインに入る前に納得してほしいところだけど、難しいかぁ?

「大丈夫、大丈夫だ」
「ニャァ」
「ウゥゥ……」

 ナイスアシストだよ、フィア。
 噛む力が弱まった、気がする。

 正直、もう腕の感覚がない。

「僕ぁ、彼らと友誼を結んでいるんだ。決して、無理矢理従わせてるわけじゃない」
「……ガウ」
「……ふぅ、良かった。信じてくれたんだね」

 神獣がようやく、腕を放してくれた。服が血でべっとりだ。けっこう良い素材を使ってはいるのに、しっかり貫通してる。

 さすが、ってところだねぇ。

 ともかく、信じてもらえて良かった。
 自らあの魔力が暴走しないよう制御してたあたり、悲観はしてなかったけど、それでも賭けには違いなかったからねぇ。

「ありがとう。それじゃあ、調べさせてもらうよ」

 返事は、なし。でも威嚇もしてこないってことは、いいってことだろうねぇ。

 最低限の治療だけして、手早く調べてしまおう。

 まず拘束具。
 ……驚いた。オリハルコン合金製だ。

 住人で加工できる人がいたとはねぇ……。
 万全の神獣なら引きちぎれないこともない強度だけど、多少でも弱ってるなら難しい。

 自力で脱出できなかった理由はこれだねぇ。

 次は、血液を抜いてるチューブ。
 こっちは大した特徴がないねぇ。せいぜい、針がまたオリハルコン合金製ってことくらい。

 いや、中空の針に加工できてるとなると、相手の技術力をさらに上方修正しないといけないかぁ。

 魔法があるから地球にあった程度の金属なら、むしろ要求される文明レベルは低いんだけど、オリハルコンみたいな魔法金属系は別だからねぇ。

 で、問題の魔力関係。
 吸収機構は、単純な密着型か。それほど強力にはできないタイプだ。

 これは、暁光の部類かな。

 伝達機構も特に珍しいものじゃない。

 肝心の制御機構は……、ダメだね。一度バラして魔力回路を修正しないと直せそうにはない。
 なるほどねぇ……。

「ありがとう。もう少し待っててくれるかい? 解決策を考えてみるよ」

 考えてみる、とは言ったものの、実はもう一つ、方法を思いついてるんだなぁ。
 問題は、その難易度。

 魔道具を使った方法だけど、僕ぁ機甲師系や魔道具師系じゃなくて大賢者だからなぁ。
 一応、錬金術師の系統ではあるから、多少の補正は乗るとはいえ、本職程じゃぁない。

 その僕の腕で、こんな劣悪な環境で、目的の魔道具が作れるかどうか。

「まぁ、これもやるしかないんだけどねぇ」

 なぁに、今度のは別に痛くはない。
 失敗したら、認識する間もなくお陀仏するだけさぁ。



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