邪悪な私だけが勝つ話です、他人の巻き添えとかゴメンですわ

メッタン

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邪悪な私だけが勝つ話です、他人の巻き添えとかゴメンですわ

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「オーッホッホッホッホッホ」


 私の名は公爵令嬢スカーレットよ。人は私を優雅な華と呼びますけどね、本当の自慢はそんなことじゃないの。

 状況を巧みに見抜く大人の直感、これは私の可愛い妹8歳にはできない、素直じゃないからこそできる、大人のダークな直感力こそ、自慢なのよ。


 もう少し大きくなったら可愛い妹にも伝授してあげないとね。


 そんな私の華麗なる活躍、見て下さるかしら、「オーッホッホッホッホッホ!」



 早速私は社交の場に華麗に出向くわ。


 そしてさっそく私を慕うもの達が集まってきて、「スカーレット様本日も美しい」などと言ってきますわ。


 オーッホッホッホッホ当然よ!って言いたいけど、そこを頭の中だけで留めるのが、賢い令嬢なのよ。



「あら、そう言って貰えて嬉しいですわ」



「流石スカーレット様、いつも奢らずに心まで美しい!」



 馬鹿じゃないの?そんな奴いるわけないでしょ!

 自分の美しさを自覚してないとか馬鹿の馬鹿よ!

 自覚してるからこそ、今日もしっかりオシャレをしてきてるのよ。


 そんな事も分からないなんて馬鹿じゃないかしら!


 かといってそれを指摘せずに、心がキレイな振りをするからこそ、こんな馬鹿な子達が私を慕うの!それが大人の邪悪な直感力って奴なのよ。


 大人の嗜みよ、妹が大きくなったらちゃんと教えてあげないとね。素直で可愛いのは今だけなんだから!



 すると最近何か評判の男爵令嬢がやってきて、少し離れた場所で転んでるでは無いか……


 何か最近殿方達に騒がれて可愛いとか言われている子ですわ……



「あいつ、また殿方の前で転んでアピールしてますわ、いやらしい!」


 取り巻きの1人が怒っていますわ。みんなあの令嬢が嫌いですからね……


 そして当然私も大嫌い、かわい子ぶるなんて浅い振る舞い、私の可愛い妹の真の可愛さの下位互換のくせに、いい大人がアホらしい!


 だから嫌いなのだが、騙される馬鹿男もいるし、さらに私がここで何か言おうものなら評判が落ちてしまいますわ。


 あんな小物ごときのために、このスカーレット様の評判が落ちるなんて損なのよ!

 ってことで私は普段から、周りの者が陰口叩きまくりの中、微笑むだけにとどめているのである。

 時にたしなめたりして、流石スカーレット様と言われているのである。


 私は立ち位置に気を配ってるの!それが邪悪な大人の直感力なのよ!


「スカーレット様、そろそろあの馬鹿女にお灸をすえたほうがいいのでは?調子に乗り過ぎですわ」


 あらあら、この子本当にあの男爵令嬢が嫌いみたいね。まぁ分からなくはないわ。

 でもね私はあんな雑魚のために評判を落としたくないの!

 この私が手を出した何て悪評、我慢なりませんわ、ということで……




「オッホッホ、根がきっと平民と変わらないのでしょう、貴族令嬢たるものいちいち目くじら立てることはありませんわ!」



「流石はスカーレット様、でも私は未熟だからやはりムカつきますわ!」




「オッホッホ、気持ちは分からなくもないけど、貴族令嬢がそんなはしたないことを言ってはいけませんわ」


 私の優雅な対応によって、この取り巻きも黙った。


 オッホッホ、別にあんな男爵令嬢どうでもいいんですけどね、何ならいじめられろと思ってますけどね、私が関わる必要は無いのよ!

 だってあんなものと私とでは格が違うから、関わるだけ損なのよ!




 すると私の婚約者の王太子様がやってきた……



「今日もスカーレット綺麗だよ……」



「あらありがとうございますわ、王太子様、王太子様にそう言われることだけが、私の喜びですの」



 ほほ、ソツのない対応でしょう?


 でもね王太子だからって、この男が安泰ってわけじゃないのよ。

 周りの令嬢達は「王太子様、私達は失礼します」などと言って気を利かせて去ったつもりで、かつ王太子様と婚約している私と繋がっているから安泰みたいに油断してるけど、これって勘違いなのよ。



 何でこれが分からないかなと思うのである!



 何故なら、この王太子様は、はっきりいってセコイ!

 王の器としては、ちょっと怪しいと思いますわ?


 接する私には何となく分かるの。


 え?家臣のくせに無礼じゃないかって?


 もちろんそんなこと直接は言いませんわ。でもね、邪悪な大人の直感力で大事なのは状況を見抜くこと、鑑定することなのよ。


 だからこの王太子様がどういう立ち位置か、それを鑑定しないと駄目なのよ!


 そして鑑定した結果、こうなっているのよ、聞いて下さるかしら?




 まず王太子様の有利な点は、

 1、長男である
 2,王妃様の息子である
 3、だから王太子に選ばれている


 これによってみんな安泰と勘違いしてるけど甘いのよ!

 私は懸念をちゃんと見破っているのよ!



 まず陛下は英雄色を好むとか言いますけどね、若い側妃に最近夢中になりつつあると私は知っていますわ。

 もちろんそれだけで後継者を変えるなんてことはないけど、当然その夢中な側妃が生んだ末っ子の王子様を今一番可愛がっていますわ。


 つまり何かがきっかけで変わる可能性があるってことよ。



 そしてそれだけじゃないわ、王妃様でも愛され側妃でもない別の側妃から産んだ三番目の王子様が、明らかに優秀なのよ!

 これは陛下も全貴族も認めることであり、この方が後継者のほうがいいのでは?って薄々思われている空気があるの!



 つまり、正当性では王太子様の勝ち、能力ならば三男の王子様の勝ち、愛されならば、末っ子の王子様の勝ち。


 ほら、雲行き怪しいでしょう?それなのに大丈夫なんて思っていて、王太子様と一緒に沈むなんてまっぴらごめんですわ!


 陛下もさるもの、貴族が動向をチェックしているのを見切ってらっしゃるのか、特に表立っては何も示していないけど、どうも最近長男である王太子様への扱いが軽い気がするのよ……


 何故なら問題が起きた時にまず相談するのは三男の優秀な王子様だし、これだけなら優秀だからってことかもしれないけど、王太子様を呼ばずに話し合ってるみたいなのよ。これまずくないかしら?



 次に外国からの贈り物の勲章すら、末っ子の王子様にプレゼントしてしまったのは驚きですわ。国の友好の証を気軽に手放していいものかしら!


 これってもしかして、内外に彼こそが後継者であるって言うための布石では?



 ということで私はどうあるべきか考えないといけないの!


 一緒に沈むなんて馬鹿のすることなのよ!


 それをしないのが邪悪な大人の直感力なのよ、オーッホッホッホッホ!



 ということで私は表面的にはご兄弟だからって理由で、第三王子様と末っ子の王子様と親しくなっておけばリスクヘッジになるのでは?と考えることにした。


 問題は第三王子様は鋭いので、そういう浅い視点を見抜いてくるかもしれないので、子供の末っ子の王子様と仲良くなってから考えようと思うのであった!


 私は妹に愛されていて、子供の扱いは上手いのよ!さぁ見ていなさい!

 妹と培った世話力を発揮してみせますわ!




 ということで偶然を装って、丁度末っ子の王子様、ピーター様と遭遇することに成功をした!



「ピーター様こんにちは、私はスカーレットですわ」


 渾身の笑顔で対応をして、これで大丈夫と思ったら……



「おばさんだぁれ?」


 お……おばさん!?

 わ……わたしがおばさんですって!?


 ……ありえないわ!くっそ!ぶっ飛ばしてあげたいくらいムカつきますけどね、


 そんな事をすることは論外として、何とかしないと……



「い……いいえ私はお……お姉さんなのよ……!」



 ま……まずい1回落ち着いてから言うべきだった!まだ怒りが残った声になってしまった!



「な……なんかこわーい!」


 逃げていったではないか!


 しかもピーター様のお付きの者にも何か不審がられるし、印象最悪だ!

 どうしよう……なんてことだ、まさかこんなところで私が躓くなんて!




 ……すぐにでも誤解を解きたいが、最悪不審者扱いされてしまう……


 なんせピーター様が私を拒絶したら、どうしようもない!


 私が家で悩んでいると、私の可愛い妹が声をかけてくるじゃないか!



「スカーレットお姉様どうしたの?」



 あ~癒し癒し!本当に可愛いったらありゃしない!



「お姉ちゃんはね、仲良くなりたい人となれなくて困ってるのよ」




「え~お姉ちゃんが?どんな人なの?」



 はっ気が付いたけどピーター様の年齢は4歳でしたわよね。

 もしかして我が妹ならばうまくお姉さんとして機能して仲良くなれるのでは?


 そうすれば私のことをとりなしてもらえるし、完璧じゃない!


 良しそれで行こう!我が妹よ、お姉ちゃんのために、初めて仕事をしてもらうわよ!




「ピーター様は知ってるよね?」



「王子様でしょ?」



「そうよ、私ピーター様に誤解されて嫌われちゃったみたいなのよ、代わりに仲良くなれないかな?」



「え~お姉ちゃんいい人なのに!分かったやってみるね!」



 ああ~なんて素直ないい子なのだろう、このまま大きくなったら悪い奴の食い物にされるに違いないから、私がきっと生き方を伝授してあげますわ、数年後にね!




 我が妹は上手くやってくれたらしく、おかげで私もピーター様とお知り合いになれたのであった……


 よしよしこれで最低限のリスクヘッジはできたし、ピーター様と仲良くなることで、どれくらいピーター様が後継者になりうるのか予測が立てやすくなりましたわ。

 若い側妃の人とも間接的に知り合いになれましたし、色々情報網が増えましたわね……


 こうやって私は上手く立ち回るのこそ、邪悪な大人の直感力なのよ!

 オーッホッホッホッホ!


 問題は第三王子様のヘルム様なのよ。

 あの方は派閥を作らない方というか、王子様としての自負が強くて、貴族と群れたりしない孤高の方なのよ……


 それでいて、明らかに、ハッキリ言って陛下よりも優秀な方だから、誰も何も文句は言えない人なのよ。


 どうやって近づけばいいの?



 媚びた近づき方をして、冷たく振られた令嬢なんて何人もいることも知ってるのよ……


 そうヘルム様は貴公子らしい王子様というよりは、もっとなんていうか誇り高い王子様って感じで、どうにかなるような人じゃないの!


 かといってヘルム様が後継者になった時に、私が落ちぶれるなんて嫌よ!


 もしもヘルム様が後継者になるのであれば、それに気づく前から、ヘルム様こそ次期陛下に相応しいと思っていたので~って顔をして、お近づきになっておきたいのよ。


 それならいくらヘルム様でも、私を無下にはできないと思わない?



 かといって、年齢も王太子様や私と2歳しか変わらないヘルム様相手に、過度に近づきすぎたら周りに不信がられるし、ピーター様とはその辺りも違う!


 うーんどうしたらいい案が無いではないか!


 この私の邪悪な大人の直感力が発揮できないなんて!




 私がそのように悩んでいると、王妃様から久しぶりに呼ばれることになった。


 何だろうか?妃教育の類なら嫌だけどサボっていませんわ。


 だってこれしないと困るの私ですからね!





「王妃様ゴキゲン麗しゅう……」



 私が挨拶をすると、またいつもの愚痴っぽいことを言い出した!



 この人、他に話せる人があまりいないせいか、たまに私が捕まるのよね……


 身近な侍女には言いにくいこともきっとあるのでしょうけど……




「あら、スカーレットさん御機嫌よう、最近は陛下もすっかり来ることも無くて暇だったので呼んでしまいましたわ……」



 ……まぁこの愚痴のおかげで、陛下と王妃様があまりうまく行ってないことがよく分かるので、聞く価値はあるんですけど、これが王妃様のただの愚痴か、本気で陛下は王妃様を軽視しているのか、これを見極めないといけないのである!




「心配する必要は無いと思いますよ、ちゃんと王妃様の息子の王太子様が王太子になっているではないですか!」



 ……これは私の半分カマかけである、これで不安をそう出さないのであれば、安定だが、反応がおかしかったら、いよいよもって王太子交代もありえるからだ!



「そうかしら、陛下のことだからどうせもう可愛くないんですわ!」





 うーむ、ひねくれ方が微妙過ぎて、すねているだけなのか、もう本当に王太子様を軽視しているのか分からないですわ!



 どうやってより追求すべきだろうか?


 ここを上手くやってこそ大人の邪悪な直感力なのよ!



 ここは白々しいけど、王妃様にならきっと通じるでしょう!


 これも邪悪な大人の直感力による王妃様の鑑定なのよ!




「……そんなことありませんわ!きっと陛下は王太子様を一番愛されているはずです!」



 ……自分で言ってて、王妃様だから通じるって自信が無ければ、媚びすぎてて気持ち悪い……


 でもこれくらい踏み込まないと、この人の言うこと愚痴が多すぎてよく分からないからね!


 これでどう反応が来るかで分かることもあるでしょう……!





「……そううまくいかないのよ、貴女が折角婚約者になっているのに、きっと陛下は王太子をやめさせて、第三王子に与えてしまうのですわ!」




 ……マジ?これ王妃様の言ってることが勘違いじゃないのだとしたら、かなり決定的な所に近づきつつあるってこと!?



 ……どうする?どれくらい王妃様を信用すればいい?


 この方が私を罠にはめて試しているなんてことはほぼ無いですわ……


 でも思い込みが激しい方だから、本当に陛下がそんな気が無いのに、勘違いして言っている可能性もある……


 でもヘルム様の具体性が妙に信ぴょう性があるのよね……


 よしもう1回試そう!




「……あのですね、王妃様、恐れながら、ヘルム様がいかに優秀だと有名な方とは言え、王妃様の息子であり、長男である王太子様を後継者から外すなんて考えられませんわ!陛下は道理を重んじる方ですから!」



 ……これでどういう反応が来るか次第!




「いいえ、もう私は年を取ったから陛下から愛されていないのです!」



 ……あのさぁ色々おかしくない?もしも愛されていることが陛下の後継者の基準なら、ヘルム様ではなく、ピーター様になるのでは?

 だってピーター様もその母も、今一番愛されているのだから……


 やはり支離滅裂だ……


 でも逆に言えば、ヘルム様の名が出るってことは、どこかそういう兆候があるのかも?



 ……もう少し、もう少し探らねば!



「あの恐れ入りますけど、王妃様の事を陛下も一番愛されていらっしゃると思いますし、それにどうしてヘルム様なのです?だってヘルム様の母に当たる方が、今陛下に強く愛されているとは思えないのですが……」



 私は上手く矛盾をついてやった。
 この反応によって見えてくることがあるはずだ……




「……違うのよ、私への愛を失ったから、王太子を交代しちゃうのよ、でも陛下は愛だけで後継者を決めるような甘い方じゃないの!だから第三王子にするに違いないわ!」




 ……一見おかしいけど、でもこれ根本的なことを聞いてしまったのでは?


 つまり落ち着け、まとめると、




 王妃様が仰るには自分がまだ愛されていたから王妃の息子ということで王太子様が後継者となっていた。


 しかし愛が無くなったので優先順位がさがり、正当性だけではヘルム様の優秀さに勝てなくて逆転が発生した……


 こういうことかしら?

 これならばすべて辻褄が合うし、王妃様の仰ることと全部整合性が取れる……


 なんてことだ……このままでは泥船で一緒に沈んでしまう!


 しかもよりにもよってヘルム様なんて……


 私あの方苦手なのよ……


 というか、私以外の貴族も大抵の人が苦手だと思っているから、
 その辺りはまだみんな平等だから救いだけど、どう取り入ったらいいの?


 そもそも王妃様には悪いけど、負け犬王太子(廃嫡予定)何かと婚約者にいたら、私が大損じゃない!何とか損切りをしないと!



 こうしてうまい所言い訳を言ってさっさと立ち去り、対策を考えるのであった……




 家に帰って私は考える……


 私のすべきことは2つよ。


 まずはあの役立たず王太子と上手く婚約を破棄すること、ただし私に非がある形ではダメですわ。それで一緒に沈むことを回避しないと。


 もう1つはこっちのほうがより難しいが、あのヘルム様に上手く取り入ること!

 これが成功すれば将来は安泰ですわ!


 もちろん私の推理が間違っている可能性もあるけど、よく考えれば仮にヘルム様が後継者になれなかったとしても、ヘルム様の存在を国は無視することができないはずですわ。断トツに優秀な方なのだから……


 逆に王太子から脱落したあの役立たずは、マジで無価値、王太子である事しか意味が無い。


 ならばヘルム様ならば、勝ったら最高、負けても最悪は免れる。


 私は何故今気づいたのだろう!もっと前から気づいていれば、とっくに取り入っていたし、難しいかもしれないが、馬鹿王太子の婚約者になるよりも前から、ヘルム様の婚約者だって狙ったというのに!

 年齢が2つ私が上な点だけは不利ですが……



 翌日になっても考えがまとまらない……


 どうすれば私の非が無く、あのクソ王太子と婚約破棄できるのか……


 ヘルム様以前にこっちを先に片づけたほうがきっといいだろう!

 あらぬ疑いをより回避するためにも!




 そんな事を思いながら、今日も社交の場に来たら、取り巻きの令嬢が本気で怒っていた!



「皆様聞いて下さる?私の婚約者が、あの忌々しい泥棒猫のフランソワとデートしていたのですわ!」


 フランソワとは男爵令嬢のことである。



 なるほど、それは堪忍袋の緒が切れるのは分かりますね……


 私はそれどころじゃないので、関係無い所でやって欲しいですが……



 他のものは、浮気された令嬢に同情しているようだが、私がいつになく反応が薄かったのか、浮気された令嬢が、少し強い口調で私に同意を求めるでは無いか!

 しまった!やらかした、普段の私ならもう少し上手いフォローを入れたというのに……

 これもすべてはあの役立たず王太子のせいですわ!



「スカーレット様!聞いて下さいますか?今度という今度は勘弁なりませんわ!」




 ……まずいわねここで止めたら、この子怒ってるから、私にまで逆切れしかねないわ……


 かといって私は面倒は嫌なのよ……



 ……いや待てよ!?


 あのクソフランソワ利用できないかしら?


 あいつどんどん殿方のランクを上げてるから、あいつが王太子と浮気すればいいのよ。

 そうすれば私は堂々と大義名分をもって婚約破棄できるじゃない!被害者ってことで!


 その路線どうかしら?上手く行くかは分からないけど、このまま何もしないよりはいいわ!


 さてどうしたものか……



「スカーレット様!」


 しまった考えていたら浮気された令嬢にせっつかれた!


 いいわ、何とかして見せる!


 ここからが真の大人の邪悪な直感の発揮しどころなのよ!




「……貴女の怒りはもっともだわ、私もね、可愛い友人がコケにされて我慢なんてできないの、だから私に任せて頂戴!今すぐに抗議して差し上げますわ!」




「……流石スカーレット様、そこまでお考えになっていたのですね!」


 みんな私に感動する……



「……ごめんなさいね、どう抗議するか頭で考えていたから、反応が遅くなったのよ!」



「そうとは知らずに、焦らせてしまい大変申し訳ありませんでした!」


 ……よしうまくこの子達へのフォローも成功したわ。


 私を舐めるな!



 そしてフランソワめ、上手く奴を焚きつけてやる!



 こうして取り巻きを連れてフランソワの前に私達は向かったのであった!




 フランソワの前に私達が現れると、フランソワは一瞬ビクッという顔をしたがすぐに形を作って、



「なんのようですかぁ?」


 などと舐め腐った甘ったれた声をしている。



 なるほど、すぐにでも殴り飛ばしたくなるキモさですが、それがいいって男もいるのでしょうね。アホらしい。


 私の愛しい可愛い妹の天然な可愛さに比べると、こんな人工物のどこが可愛いと思うのか、理解できませんけどね。




「貴女とてもおモテになるんですってね……」



 私の意外な言い方に、警戒しているようだが、



「そんなことないですよぉ?」


 なんて舐め腐ったことを言っている……




「あら?そんなことありませんわ、だって多くの殿方を虜にしてるって有名ですもの……」



 取り巻き達は私がこういう言い方をした後に、どこかできつい一撃を入れることを知っているからか、あえて黙ってくれている、それでいいのよ!




「それはぁ私が可愛いからでー仕方なくないですか?」




 ……明らかに浮気された令嬢がブチ切れた雰囲気をしているが、私がそれを手で暗に止めて……



「……本当に可愛くて素敵ですわ、私なんかじゃとても敵わないと思いますわ、だって私はたかが王太子様程度の婚約者で、貴女ほどおモテにならないのだから、これは失礼しましたわ!」




 私がこう言って取り巻きを促して立ち去らせたが、遠くで明らかにフランソワがイライラしているのが伝わった……

 というかきっと切れてるでしょうね……



 だって私の言ったことは、私は王太子様の婚約者で貴女とは格が違うのよって宣言なのだから!


 そして取り巻き達は言う……



「流石スカーレット様最高ですわ!王太子様相手では誰も勝てないから、あのブス超悔しがっていますわ!」



「おほほほ、私そんな意地悪は言ってないのですわ、ちゃんと褒めて差し上げたじゃない」



「そうですねおほほほほ」


 貴族流嫌味の仕方、分かったでしょう?


 これで仲間内の義理を見せた上に、あの馬鹿女、絶対に王太子を奪いたいって気持ちになったはず!

 期待してるわよ……

 ちゃんとそのキモイ可愛さで、王太子に浮気をさせなさい……



 そして案の定あの馬鹿女、王太子様に近づいているでは無いか!


 流石に王太子もすぐに浮気するほどウツケではないけれど、優柔不断な男ですからね、そのうち落ちるでしょう、後は駄目押しとばかりに偶然を装い、私も無理に予定を入れて、会う機会を減らすことにした。


 これできっと、ふらっとしてしまうに違いないですわ!


 そういう男であることは私が一番よく知っているのだから……


 所詮身近な女に弱いタイプの男なのよ。


 今までは私がそうだっただけに過ぎない、私も王太子になると思っていたから、すり寄っただけですけどね!


 だってあの男に何の魅力も感じないのだから……




 そしてある日、私が偶然1人で作業をしていると、丁度あのフランソワが、きっと私を探していたのだろう、見つけるなり勝ち誇るような顔をしてきた。



「あらスカーレット様、最近王太子様との仲は大丈夫なんですかぁ?」



 ありがたい!こいつわざわざそろそろうまく行きますよって私に知らせてくれたのか!

 これでこっちもいつでも、浮気やら、婚約破棄の準備ができるってものでは無いか!


 こいつが悔しさのあまり、私に煽りにまで来てくれるなんて、本当に最高よ!


 とは言えそれに敬意を表して(笑)悲しんだ振りくらいして喜ばせてあげますか。




「あら、フランソワさん、残念ながら最近上手く行ってないのよ……おモテになるあなたが羨ましいですわ……」


 私が天然ボケ令嬢を装ったので、フランソワも少し毒気に抜かれた顔をしているが、それでも嬉々とした感じで、



「あらスカーレット様元気を出してください、きっといいことありますから」


 などと気味悪い笑顔を浮かべて去って行ったのであった……


 なるほど、これは相当2人の関係が上手く行っていて、自信があるからあの笑顔なのね……


 本当に想像以上に使えたわ、感謝して差し上げますわ。

 そのダメ王太子(廃嫡予定)貴女にあげますから、王太子じゃなくなった後も愛してあげて下さいね。きっと無理だと思うでしょうけど(笑)



 さてこうなったら王太子様がどういう行動に出るかは知らないが、婚約破棄を相手から言ってきても良し、私が浮気を理由に婚約破棄を希望しても良し。


 うむ、私に非が無い形が上手くできたのである。



 あの時確かにフランソワを煽ったのは、友人の仇を取るために多少やり過ぎてしまった、これで十分通る範囲であるから問題になることも無い!


 オーッホッホッホッホ!私の勝ちなのよ!



 そしてこれを手土産にすることはできないだろうか?


 ようはヘルム様に告げるのだ、貴方の兄である王太子様は浮気をしていて、婚約者とすら上手くいかない失点をしていて、浮気された私も許せないので、貴方に忠誠を誓うし、追い落とすのなら協力しますと……


 これならば恩を売れる形となり、取り入ることができるのでは?


 ふふふ……やっとヘルム様と繋がる当てまでできたじゃない!


 勝ったわ!私の勝ちよ!


 こうしてヘルム様の元へ向かうことを誓ったのであった……




「ヘルム様恐れ入ります、スカーレットです、お話させて頂いてよろしいでしょうか?」



 ……何て言うかやはり緊張をする、この方の気位の高さは半端なく、身分差もあってどうしても圧倒されてしまう!


 しかし今回は手土産があるから歓迎されるはずよ!





「……何の用かは知らぬが、手短に頼むぞ……!」




 ……やはり話しにくい!
 何て言うか徹底的に打ち解ける気を感じない!




「ヘルム様にとって大変ありがたい話です、保証します!」



 私が期待を盛り上げようとすると……




「ならばさっさと述べよ、前置きは不要だ……!」



 うぐ……マジで普通の感覚が通じない!


 この人とどう接すれば……いや狼狽えるな、言われた通り答えればいいのだ!



「あのですね、王太子様にヘルム様がなれると思います!」




「……貴様、家臣でありながら、王族に対してそのような出過ぎたことを考えているのか?」



 し……しまった!私の馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿物事には順番ってものがあるでしょうが!

 つい答えろと言われた圧に負けて、正直に言いすぎた!?

 間抜け~何とか挽回しないと!



「も……申し訳ありません!私の間違いでしたそういう意味ではありません!」



 私がもう平謝りをすると(これ以外方法が浮かばなかった情けない!大人の邪悪な直感力が……)




「……いいだろう何が言いたいのかもう一度述べよ!」



 一応見逃してもらえたので、今度こそ説明をしようと思うのであった……




「あのですね、正直言いますと、どうやら私の婚約者である王太子様が浮気をしているようなんです、私は浮気に耐えられませんし、こんな失点許されないと思うんですよ……」




「それはお前の怒りとしては分かるが、私には関係が無い……!」



「いえいえそういうことではなく、チャンスでは無いですか?だって王太子様が失脚して、ヘルム様が王太子に……」




「黙れ!」



「ええ……」



「先ほども言っただろう、そのようなことを臣下が画策していいと思っているのか!」



 ……まずいこういう方だった、私は何て間抜けを晒してしまったんだ。

 もう一度謝らないと!何でこうも上手く行かないの!?




「申し訳ありません、そういうつもりでは無いんです、浮気された怒りの余りつい口走ってしまったんです!」


 ……よしギリギリ通るラインの言い訳が言えたはずだ。

 多少恥ずかしいが、感情的なバカ女だと思って見逃してください!




「……嘘をつくな、お前は大方、兄上よりも私のほうが後継者になれると見て取り入ろうとしているだけであろう!」



 バレている……ヤバい!?



「え……あのその……」




「……いいだろう、おそらく父上はそう言うつもりであることは私も分かっている、本来このような挙動をする貴族は不快であるが、お前が独自の情報網、それからそれを利用した度胸それだけは買ってやろう!」



「はぁ……」



「そして私はどれほど人格が悪かろうが、私と王家を裏切らない限り許容する……分かったな?」



「は……ハイ分かりました!」



 ……何とかなったのかな?


 邪悪な大人の直感力が全然発揮できなかったけど、何か見逃された上に、

 私の性格が悪いことを承知で、認めたらしい……



 そしてその後陛下から正式な通達が出て、私との婚約破棄も、王太子変更も全部決まった……



 ヘルム様は相変わらず恐ろしい方だが、私の性格の悪さをとがめたりしないので、そういう意味ではある意味楽な方だし、こういう方が王になってくれたほうが、将来どんな脅威があるかもわからず、外国の敵何かの時に頼もしいので、やはり忠誠を誓って正解だと思ったのであった……



 私の狙い通りとはいかなかったけど、これが大人の邪悪な直感の勝利なのよ。

 オーッホッホッホッホ!


 そういえば、元王太子様、フランソワに見捨てられなくて意外でしたわ。

 案外情けない男フェチだったのかしら、そこだけは意外でしたわ。
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どうやらお前、死んだらしいぞ? ~変わり者令嬢は父親に報復する~

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