悪役令嬢なんて呼ばせない！

気付いたら転生してました。

8.シャロン先生爆誕

私の意向を無視し、シャロン先生爆誕！！

って、シャロン今、6歳ですよね？6歳児に文字の読み書きを教わるってどうなの！？


そんなことを思う私は今、書庫におります。横にはシャロン先生がいらっしゃいます。
先日と違うのは、私達の前に、お父様が用意した教材とレミが用意してくれた温かな紅茶とクッキーがあること。

「ねぇ、これ読める？」

シャロンは、ノートに見慣れない記号を数個書く。

「わかんない。」

「ふ～ん。本当に全然読めないんだね。」

しょうがないじゃない！こんな文字見たことないわ。ゲームは日本語だったし！
メリーは、勉強はそこまで好きじゃないから逃げ回ってたらしいし…。もしかして、それが原因か？6歳のメリーが少しでも、勉強に勤しんでいてくれたら、シャロン先生が爆誕することも無かったのでは？

「メリーラントって書いたんだよ。」

「はぁ。」

「その返事、アホっぽいよ？文字は組み合わせて使うんだ。例えば、メリーのメは、この文字とこの文字。」

アホっぽいとか失礼な。突っ込む前に、話を進めていくシャロン。「メ」に当たる文字を囲む。なるほど最初の2文字が「メ」ね。

「じゃぁ、これとこれで、リ？」

私が「メ」の横の2文字を囲む。

「おお！割と冴えてる。正解って言えなくはない。ただ、メリーだから、リーって音が伸びるだろ？それもくっつけて書かないといけなくて。この文字も合わせて書く。」

私が囲んだ文字に、さらに1文字合わせて一括りに囲む。ふむふむ。「割と」は余計だけど、「冴えてる」はちょっと嬉しい。

「なら、ノートって書くなら、ノの後に、この文字を書いて、次にトの文字になるのね？」

「その通り。だから、ノートはこう書く。」

5文字をノートに書きつけた。

なるほど。もしかしてローマ字表記と似てる？

「何となく、分かったかも！」

「本当に？」

「ねぇ、あいうえおって書いて～。」

ジト目で私を見るシャロン。お願い通りに文字を書いていく。ノートにはまた5つの文字が並んだ。

「次は、かさたなって書いて～」

素直に書いてくれる。続いて、はまやらわん、を書いてもらう。

「ありがとう！ちょっと待って……。」

ローマ字表記と似ているなら、これと、これと…。1文字1文字、シャロンが書いてくれた文字から拾い、ノートに書き写していく。
ペン先を見つめるシャロンは、途中から何を書いているか分かったようだ。少し息を呑んだのが聞こえた。

「できた！どう？これで、しゃろん、でしょ？」

「……。」

返答がない。
シャロンを見ると、書かれた文字を見つめたまま固まっている。
私の凄さに、驚きで声も出ないのか？(ニヤニヤ)

「ねぇ！合ってるでしょ？」

「…あぁ、合ってる。」

「やったぁ！私って天才じゃない！？」

「…ん、そうだね。…メリー、このページちょうだい。」

「へ？」

急に何を言いだした、シャロン。

「え～、せっかく、あいうえお、とか書いてもらったのに。」

「次のページに、いくらでも書くから！」

シャロン、必死過ぎ。

「わかったわ、どうぞ。」

お父様が用意してくれたノートは、何枚かの紙に紐を通してまとめられたものだ。
シャロンにノートを渡すと、すぐさま紐を解き、ページを抜き取った。

「メリーが初めて書いたのが、僕の名前…。」

漆黒の瞳は、私が見よう見まねで書いた文字を捕らえて離さない。

ちょっと先生？呆けてないで、ちゃんと書き写して！