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第2話ーERRORー
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風呂と食事を済ませ、城道はパソコンに向かう。
城道の仕事は大きくわけて2つあり、1つはアンドロイドに搭載するAIのプログラムを開発すること。もう1つはアンドロイド[六花]の試験運用であった。
ここでまた「はぁ」と深いため息が零れる。
今度は六花の状態についてのため息だった。
というのも、六花は次世代アンドロイドのプロトタイプで、様々な生活に適応するために日々、微々たることでも学習し少しづつ成長していく学習プログラムで動くようになっていた。
この学習プログラムは当然学習すればそれに対して行動できるように日々自動更新されていく。なのにどうしてか六花のプログラムは1週間前からなにも変わっていなかった。
彼女は掃除や洗濯、料理などの一般的な家事と城道とのコミュニケーションしかしていない。またその他の情報収集はテレビのみ許可しているため学習することは極めて限られており、学習プログラムの変わる部分は大体予想が着いていた。
しかしどれも全く変わっていないのだ。
六花の試験が始まって1ヶ月。即ちここに来て3週間目に何かしらのエラーが出たことは間違いがなかった。
それに単にこれだけが悩みではなく、データ上では全く変わりのないプログラムだが、明らかに六花の行動パターンは変わっている。つまり学習プログラムは正常に稼働しているのだ。
(何が起こっている…?ただでさえ仕事が捗っていないのにここで失敗したらクビだってありえる……)
ここでさらに深くため息が出る。本日3度目だ。
その様子を見かねたのか六花は皿洗いの手を止めて城道にお茶を差し出す。
「城道様。ため息をつくと幸せが逃げてしまうと言いますよ?暖かい緑茶でも飲んでリラックスしてください」
そういって出された緑茶には茶柱が1本立っていた。
すかさず六花の顔をみればニコリとしており、茶柱を本来なら不純物として判断し捨てる所をそのまま出してくるのは学習の賜物であった。
バラエティ番組か何かで覚えたのだろうか。
(これまた古い知識を得たものだ…。)
次世代アンドロイドがこんな学習を行うことはプログラム上では当たり前の事だが、なんとも滑稽で可愛らしいと城道を思わせた。
(とはいえ、こういった些細な学習データは積み重なっている。学習プログラムのデータ上に何も変化がないのなら、死ぬ気でデータの解析に移るしか無さそうだな…)
学習プログラムは基礎プログラムを基に学習データを取り入れて独自に更新するものだ。
その学習プログラムに何も変化がないのであれば学習データも1週間前から0でないとおかしい。
しかし学習データは人と同じく目や耳、肌などからの情報を逐一記録されている。よってこの1週間学習データが0だとすれば1秒前の記憶も持ってないわけで、ともなれば普通に家事をこなしている六花には当てはまらない。
ともかく蓋を開けてみなければシュレディンガーの猫よろしく机上の空論なわけで、城道は学習データを保存しているクラウドに接続し、そこから数列に変換されている学習データを解析しなければいけなかった。
それは気が遠くなるような数字の羅列を文字に人力で変換して確認しなければいけない筆舌に尽くし難いとても大変な作業だ。
(こんなことになるならアンドロイドの試験運用なんて断れば良かった。まぁ、断ればそのままクビになっていたのだろうけど)
まずは学習データの解析をするために1度六花の機能を停止しなければいけない。
「六花。今日は急遽、臨時でメンテナンスを始めたいからシャットダウンをしてもいいかい?」
そう声をかけると立花は心配そうにこう答えた。
「城道様。こんを詰めすぎるとミスが多発してしまいます。食事中もずっと作業をなさっているのですから少しお部屋で休憩されてはいかがでしょう?幸いまだ皿洗いが残っていますのでそのお時間の間でもお休みになってください」
皿洗いは備え付けの食洗機に放り込めばいいものだが、試験運用の為立花には食洗機を使わずに皿洗いをさせていた。
皿洗いの時間を休憩の時間にして欲しいという提案は彼女なりの気遣いの証拠であり、そんな些細な気遣いが出来るのはまるで感情があるかのようであった。
しかし彼女が今している心配そうな表情も全てはプログラムからなる作った表情だ。人の感情からくるものとは少し意味合いが違う。
だからこそなのか、城道はそれに安心感を覚える。
「あぁ、わかったよ。お言葉に甘えて少し部屋で休んでおく」
そういって自室に入ろうとした所ではっと気づくことがあった。
1週間ほど前に自作の試作感情プログラムを入れたことに。
しかしサンプルも何も得ることが出来ず忘れていたがもし、感情プログラムが作動していたら…?
今までの喜怒哀楽が感情プログラムで表された全く別のものだったら…?
そんな疑問が頭に浮かぶが、学習プログラムに1つも変化が無いのだから非現実的だと片付け、恐怖か好奇心が、はたまた両方からか、震える手を抑え今は少し休むことにした。
城道の仕事は大きくわけて2つあり、1つはアンドロイドに搭載するAIのプログラムを開発すること。もう1つはアンドロイド[六花]の試験運用であった。
ここでまた「はぁ」と深いため息が零れる。
今度は六花の状態についてのため息だった。
というのも、六花は次世代アンドロイドのプロトタイプで、様々な生活に適応するために日々、微々たることでも学習し少しづつ成長していく学習プログラムで動くようになっていた。
この学習プログラムは当然学習すればそれに対して行動できるように日々自動更新されていく。なのにどうしてか六花のプログラムは1週間前からなにも変わっていなかった。
彼女は掃除や洗濯、料理などの一般的な家事と城道とのコミュニケーションしかしていない。またその他の情報収集はテレビのみ許可しているため学習することは極めて限られており、学習プログラムの変わる部分は大体予想が着いていた。
しかしどれも全く変わっていないのだ。
六花の試験が始まって1ヶ月。即ちここに来て3週間目に何かしらのエラーが出たことは間違いがなかった。
それに単にこれだけが悩みではなく、データ上では全く変わりのないプログラムだが、明らかに六花の行動パターンは変わっている。つまり学習プログラムは正常に稼働しているのだ。
(何が起こっている…?ただでさえ仕事が捗っていないのにここで失敗したらクビだってありえる……)
ここでさらに深くため息が出る。本日3度目だ。
その様子を見かねたのか六花は皿洗いの手を止めて城道にお茶を差し出す。
「城道様。ため息をつくと幸せが逃げてしまうと言いますよ?暖かい緑茶でも飲んでリラックスしてください」
そういって出された緑茶には茶柱が1本立っていた。
すかさず六花の顔をみればニコリとしており、茶柱を本来なら不純物として判断し捨てる所をそのまま出してくるのは学習の賜物であった。
バラエティ番組か何かで覚えたのだろうか。
(これまた古い知識を得たものだ…。)
次世代アンドロイドがこんな学習を行うことはプログラム上では当たり前の事だが、なんとも滑稽で可愛らしいと城道を思わせた。
(とはいえ、こういった些細な学習データは積み重なっている。学習プログラムのデータ上に何も変化がないのなら、死ぬ気でデータの解析に移るしか無さそうだな…)
学習プログラムは基礎プログラムを基に学習データを取り入れて独自に更新するものだ。
その学習プログラムに何も変化がないのであれば学習データも1週間前から0でないとおかしい。
しかし学習データは人と同じく目や耳、肌などからの情報を逐一記録されている。よってこの1週間学習データが0だとすれば1秒前の記憶も持ってないわけで、ともなれば普通に家事をこなしている六花には当てはまらない。
ともかく蓋を開けてみなければシュレディンガーの猫よろしく机上の空論なわけで、城道は学習データを保存しているクラウドに接続し、そこから数列に変換されている学習データを解析しなければいけなかった。
それは気が遠くなるような数字の羅列を文字に人力で変換して確認しなければいけない筆舌に尽くし難いとても大変な作業だ。
(こんなことになるならアンドロイドの試験運用なんて断れば良かった。まぁ、断ればそのままクビになっていたのだろうけど)
まずは学習データの解析をするために1度六花の機能を停止しなければいけない。
「六花。今日は急遽、臨時でメンテナンスを始めたいからシャットダウンをしてもいいかい?」
そう声をかけると立花は心配そうにこう答えた。
「城道様。こんを詰めすぎるとミスが多発してしまいます。食事中もずっと作業をなさっているのですから少しお部屋で休憩されてはいかがでしょう?幸いまだ皿洗いが残っていますのでそのお時間の間でもお休みになってください」
皿洗いは備え付けの食洗機に放り込めばいいものだが、試験運用の為立花には食洗機を使わずに皿洗いをさせていた。
皿洗いの時間を休憩の時間にして欲しいという提案は彼女なりの気遣いの証拠であり、そんな些細な気遣いが出来るのはまるで感情があるかのようであった。
しかし彼女が今している心配そうな表情も全てはプログラムからなる作った表情だ。人の感情からくるものとは少し意味合いが違う。
だからこそなのか、城道はそれに安心感を覚える。
「あぁ、わかったよ。お言葉に甘えて少し部屋で休んでおく」
そういって自室に入ろうとした所ではっと気づくことがあった。
1週間ほど前に自作の試作感情プログラムを入れたことに。
しかしサンプルも何も得ることが出来ず忘れていたがもし、感情プログラムが作動していたら…?
今までの喜怒哀楽が感情プログラムで表された全く別のものだったら…?
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