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黒豚令息の領地開拓編
雨の間に
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人との関わりに何も期待せず、淡々と日々を過ごす中、突如もたらされた他者からの好意は、地獄に灯る光の様なものだったろう。
“愛”とは時に猛毒だ。たった一度手にした喜びが人生が塗り替えてしまう。
デイビッドはヴィオラを手放そうとしながら、その手を離せずにずっと苦しんでいる。
(今のが本音なの?あれだけ過保護に囲っときながらまだ片想いのつもりでいるとか!…)
(本音と言うか、深層心理ですね。常日頃から他人に惚れられる要素ゼロだと自分で言い切ってましたから。気の迷いが少し長続きしてるだけだと思い込むことで、万が一その時が来てしまった時の言い訳にしようとしてるんですよ。)
(ヴィオラが可哀想よ…どんなに思いをぶつけても、ひとつも伝わってないなんて!)
(伝わってはいますよ。ただ受け取る勇気が無いだけで。)
(女々しいわね!!イライラするわ!)
小声で言い合う2人の前からフッと人の気配が消え、気が付くとデイビッドはすっかり寝落ちていた。
「あーつまんない。大した話聞けませんでしたね。始めの頃はもう少し夢があったのに、今じゃすっかり現実に囚われて面白くなくなっちゃった。」
「人を愛せない病気かなんかなの?捻くれ過ぎて自分が迷子になってない?」
「ずっと迷子のままですよ。何を成しても無能の底辺と言われ続ければ、自尊心だって育ちません。」
「無能…って…コイツの何を以て無能なの?!」
「父親の天才的頭脳とカリスマ性、母親の高位魔力と独創的魔術センス、両親の美貌と貴族としての統率力、何ひとつ受け継がなかった無能力者。それがデュロック家でのこの人の評価です。」
「これだけ成果出してもダメなの?」
「この程度の成果、出せて当然という家ですから…」
「コイツこそどんな血筋の生まれなのよ!本気で怖くなってきたわデュロック家…」
「ジメジメしちゃいましたね!飲んで忘れましょ?そのためのお酒なんですから!」
嫌な気分を払拭するかの様に、この夜眠るデイビッドを他所に、エリックとシェルリアーナは下らないお喋りをしながら飲み明かした。
「どんだけ飲んだんだコイツ等!?」
朝になり、テーブルの下に置かれた 空き瓶を片付けながらデイビッドはため息をついていた。
(まずいな、俺もなんも覚えてねぇ…ヘタなこと喋ってなきゃいいが…)
目覚ましにミントを効かせたハーブティーにハチミツを溶かしていると、ヴィオラが起き出して来た。
「おはようございます!」
「おはよう、ヴィオラ。」
「起きてすぐデイビッド様の顔が見られるの、幸せ!」
「そんなもんか?」
「今朝は何を作るんですか?」
「スープはできてるし、卵とソーセージはあるんだが…メインはまだ考え中だな。」
「だったらパンケーキがいいです!厚くてフワッフワのパンケーキに目玉焼きと大きなソーセージのっけて食べたいです!」
「よし、決まりだな。」
ボールにしっかり泡立てた卵白の気泡を潰さないよう丁寧に材料を混ぜ入れ、フライパンにたっぷり流し入れて気泡が浮いてきたらひっくり返し、ふっくら焼き上げる。
リコッタチーズを加えると焼き上がりが揺れる程ふわっとできるので、ヴィオラはこれが楽しみでならない。
しかし、真似して焼いてみたら上手く膨らまず、裏返しで失敗し、いじけてしまった。
「機嫌直せよ!ホラ、ふわふわ2段重ねにバター乗せるぞ!?」
「なんでデイビッド様のはこんなに膨らむんですか?」
「ひっくり返すタイミングと弄り過ぎない事かな?気泡が潰れないよう最低限の返しで焼くから少し難しい。でも味は変わんねぇよ?」
デイビッドはヴィオラが焼いて潰れた方にソーセージを挟み、マスタードを効かせてペロリと食べてしまう。
ヴィオラもバターたっぷりのパンケーキと黄身のこぼれる目玉焼きを頬張った。
「今日は何しましょう!」
「うーん…それなんだけどよ、どうも一雨来そうなんだよな…」
見上げると、マロニエの向こうの空が朝から薄曇り、遂に黒雲が見えて来ている。
「馬車閉じて移動するか?」
「大丈夫です!雨の日の対策もしてきましたから!」
広げていたハンモックとテーブルを引き上げ、念の為折り畳みのキッチンも閉じてしまい、外には竈門の焚き火と背もたれ付きのベンチ、そしてデイビッドのチェアだけが残された。
ファルコとムスタは馬車の横に座り込み、大砂鳥達は簡易の藁小屋で身を寄せ合っている。
その時、片付けを手伝っていたヴィオラが何かをデイビッドに差し出した、
「デイビッド様、バスケットの中に何かいっぱい入ってます…」
「あ~…なるほどな。大丈夫、変なもんじゃねぇからよ。」
昼食用に使っていたバスケットには、いつの間にかヤマモモがぎっしり詰め込まれていた。これは恐らくジーナの仕業だろう。
大鍋に洗ったヤマモモを移し、砂糖をまぶしていると、とうとうポツポツと雨が落ちて来た。
「お、来たか。」
「デイビッド様…あっちからも何か来ました!」
ヴィオラが驚いている先を見ると、グランドシェーブルの群れがこちらへ向かって歩いて来ている。
群れは馬車と反対側の木陰に入ると、仔山羊を遊ばせながら木に寄りかかり目を閉じた。
(完全に馴染んでやがる…まさかコイツ等も精霊絡みじゃねぇだろうな…)
ムスタもファルコは気にもせず毛繕いなどしているので大丈夫だろう。大人しくじっとしているなら、お互い無理に干渉する必要もない。
デイビッドは仔山羊にだけ気を配りながら、また鍋の元へ戻った。
やがて雨足はどんどん強くなり、風も出て雨煙がカーテンのように草原を揺らめき始めた。
その中を大喜びで走り回るアリーと歩き草の集団が、見え隠れしている。
(雨乞いが効いたな…)
コトコトと鍋から立ち上る甘い匂いと、木陰にこもる焚き火の熱が心地良い。
ヴィオラが馬車の窓から外を覗いていると、強い雨の音に混じり、微かに何かが聞こえてきた。
耳に魔力を集め、雨音を掻き分けて隠れている音を探ろうとするが上手くいかない。
(うーーん…これ以上精度が上がらない…でもこれ、デイビッド様の声だ…)
よく聞くと、叩きつける雨の音に紛れて、デイビッドが何か歌っているのだ。
今まで鼻歌すら聞いたこと無く、音楽とは縁遠いと思っていたデイビッドが、小声で何か口ずさんでいる。
じっと窓辺から身を乗り出したヴィオラが、歌に集中していると、不意に後ろから肩をつつかれ飛び上がってしまった。
「ヒャァァッ!!」
「おや、すみませんねぇ。驚かせちゃいましたか?」
「エリック様…びっくりしましたよ!」
「おはようの時間を過ぎてしまいましたね。今日はこの雨じゃ何もできませんし、課題でも進めますか?」
「そのつもりです。でもその前に気になる事があって…」
「ああ…珍しいですね。あの人が歌ってるなんて。」
「エリック様、聞こえますか!?」
「はっきりとではありませんが、何度か耳にしたことがあるので…アレは古い舟唄ですね。」
「舟唄…」
「海に出た時にでも覚えたんでしょうね。南方の海で漁師達が歌っているのを聞いたことがありますよ。“錨を引け 帆を上げろ 波に唄えば明日も海の上 一足先に船出した同胞達も ほら 海原の底で笑っていやがるぜ”」
エリックが歌ってみせると、ヴィオラは何か難しい顔をしてデイビッドの背中を見つめていた。
「一度も聞いたことがないんです。デイビッド様の歌声…」
「そうですね、僕もほとんどありませんよ。音楽関係はあまり得意じゃ無いそうですからね。」
「そういうのも知らないんです、私…デイビッド様の事もっとちゃんと知りたいのに…」
「いつか話してくれますよ。」
エリックは大きな丸パンの薄切りに、バターとジャムをたっぷり塗ってかじりながら、沸かし直しのミントティーを飲んで自分の本を読み始めた。
ヴィオラは雨音とデイビッドの歌を聴きながら、残りの課題に取り組んでいたが、しばらくするとスヤスヤ眠ってしまった。
窓の下では竈門から下ろした鍋を冷ましながら、煮沸消毒した大瓶にヤマモモを詰めるデイビッドが忙しそうにしていた。
(アチチッ!こんなもんか…?)
一緒に煮込んだレモンの薄切りを一番上に乗せ、瓶の蓋を閉めて逆さにすると、鍋に残った赤い煮汁に赤ワインと砂糖を更に加え、切ったスモモを並べて今度はワイン煮を作っていく。
鍋を見ながら粉を捏ねていると、転移門が僅かに光ってベルダが現れた。
“愛”とは時に猛毒だ。たった一度手にした喜びが人生が塗り替えてしまう。
デイビッドはヴィオラを手放そうとしながら、その手を離せずにずっと苦しんでいる。
(今のが本音なの?あれだけ過保護に囲っときながらまだ片想いのつもりでいるとか!…)
(本音と言うか、深層心理ですね。常日頃から他人に惚れられる要素ゼロだと自分で言い切ってましたから。気の迷いが少し長続きしてるだけだと思い込むことで、万が一その時が来てしまった時の言い訳にしようとしてるんですよ。)
(ヴィオラが可哀想よ…どんなに思いをぶつけても、ひとつも伝わってないなんて!)
(伝わってはいますよ。ただ受け取る勇気が無いだけで。)
(女々しいわね!!イライラするわ!)
小声で言い合う2人の前からフッと人の気配が消え、気が付くとデイビッドはすっかり寝落ちていた。
「あーつまんない。大した話聞けませんでしたね。始めの頃はもう少し夢があったのに、今じゃすっかり現実に囚われて面白くなくなっちゃった。」
「人を愛せない病気かなんかなの?捻くれ過ぎて自分が迷子になってない?」
「ずっと迷子のままですよ。何を成しても無能の底辺と言われ続ければ、自尊心だって育ちません。」
「無能…って…コイツの何を以て無能なの?!」
「父親の天才的頭脳とカリスマ性、母親の高位魔力と独創的魔術センス、両親の美貌と貴族としての統率力、何ひとつ受け継がなかった無能力者。それがデュロック家でのこの人の評価です。」
「これだけ成果出してもダメなの?」
「この程度の成果、出せて当然という家ですから…」
「コイツこそどんな血筋の生まれなのよ!本気で怖くなってきたわデュロック家…」
「ジメジメしちゃいましたね!飲んで忘れましょ?そのためのお酒なんですから!」
嫌な気分を払拭するかの様に、この夜眠るデイビッドを他所に、エリックとシェルリアーナは下らないお喋りをしながら飲み明かした。
「どんだけ飲んだんだコイツ等!?」
朝になり、テーブルの下に置かれた 空き瓶を片付けながらデイビッドはため息をついていた。
(まずいな、俺もなんも覚えてねぇ…ヘタなこと喋ってなきゃいいが…)
目覚ましにミントを効かせたハーブティーにハチミツを溶かしていると、ヴィオラが起き出して来た。
「おはようございます!」
「おはよう、ヴィオラ。」
「起きてすぐデイビッド様の顔が見られるの、幸せ!」
「そんなもんか?」
「今朝は何を作るんですか?」
「スープはできてるし、卵とソーセージはあるんだが…メインはまだ考え中だな。」
「だったらパンケーキがいいです!厚くてフワッフワのパンケーキに目玉焼きと大きなソーセージのっけて食べたいです!」
「よし、決まりだな。」
ボールにしっかり泡立てた卵白の気泡を潰さないよう丁寧に材料を混ぜ入れ、フライパンにたっぷり流し入れて気泡が浮いてきたらひっくり返し、ふっくら焼き上げる。
リコッタチーズを加えると焼き上がりが揺れる程ふわっとできるので、ヴィオラはこれが楽しみでならない。
しかし、真似して焼いてみたら上手く膨らまず、裏返しで失敗し、いじけてしまった。
「機嫌直せよ!ホラ、ふわふわ2段重ねにバター乗せるぞ!?」
「なんでデイビッド様のはこんなに膨らむんですか?」
「ひっくり返すタイミングと弄り過ぎない事かな?気泡が潰れないよう最低限の返しで焼くから少し難しい。でも味は変わんねぇよ?」
デイビッドはヴィオラが焼いて潰れた方にソーセージを挟み、マスタードを効かせてペロリと食べてしまう。
ヴィオラもバターたっぷりのパンケーキと黄身のこぼれる目玉焼きを頬張った。
「今日は何しましょう!」
「うーん…それなんだけどよ、どうも一雨来そうなんだよな…」
見上げると、マロニエの向こうの空が朝から薄曇り、遂に黒雲が見えて来ている。
「馬車閉じて移動するか?」
「大丈夫です!雨の日の対策もしてきましたから!」
広げていたハンモックとテーブルを引き上げ、念の為折り畳みのキッチンも閉じてしまい、外には竈門の焚き火と背もたれ付きのベンチ、そしてデイビッドのチェアだけが残された。
ファルコとムスタは馬車の横に座り込み、大砂鳥達は簡易の藁小屋で身を寄せ合っている。
その時、片付けを手伝っていたヴィオラが何かをデイビッドに差し出した、
「デイビッド様、バスケットの中に何かいっぱい入ってます…」
「あ~…なるほどな。大丈夫、変なもんじゃねぇからよ。」
昼食用に使っていたバスケットには、いつの間にかヤマモモがぎっしり詰め込まれていた。これは恐らくジーナの仕業だろう。
大鍋に洗ったヤマモモを移し、砂糖をまぶしていると、とうとうポツポツと雨が落ちて来た。
「お、来たか。」
「デイビッド様…あっちからも何か来ました!」
ヴィオラが驚いている先を見ると、グランドシェーブルの群れがこちらへ向かって歩いて来ている。
群れは馬車と反対側の木陰に入ると、仔山羊を遊ばせながら木に寄りかかり目を閉じた。
(完全に馴染んでやがる…まさかコイツ等も精霊絡みじゃねぇだろうな…)
ムスタもファルコは気にもせず毛繕いなどしているので大丈夫だろう。大人しくじっとしているなら、お互い無理に干渉する必要もない。
デイビッドは仔山羊にだけ気を配りながら、また鍋の元へ戻った。
やがて雨足はどんどん強くなり、風も出て雨煙がカーテンのように草原を揺らめき始めた。
その中を大喜びで走り回るアリーと歩き草の集団が、見え隠れしている。
(雨乞いが効いたな…)
コトコトと鍋から立ち上る甘い匂いと、木陰にこもる焚き火の熱が心地良い。
ヴィオラが馬車の窓から外を覗いていると、強い雨の音に混じり、微かに何かが聞こえてきた。
耳に魔力を集め、雨音を掻き分けて隠れている音を探ろうとするが上手くいかない。
(うーーん…これ以上精度が上がらない…でもこれ、デイビッド様の声だ…)
よく聞くと、叩きつける雨の音に紛れて、デイビッドが何か歌っているのだ。
今まで鼻歌すら聞いたこと無く、音楽とは縁遠いと思っていたデイビッドが、小声で何か口ずさんでいる。
じっと窓辺から身を乗り出したヴィオラが、歌に集中していると、不意に後ろから肩をつつかれ飛び上がってしまった。
「ヒャァァッ!!」
「おや、すみませんねぇ。驚かせちゃいましたか?」
「エリック様…びっくりしましたよ!」
「おはようの時間を過ぎてしまいましたね。今日はこの雨じゃ何もできませんし、課題でも進めますか?」
「そのつもりです。でもその前に気になる事があって…」
「ああ…珍しいですね。あの人が歌ってるなんて。」
「エリック様、聞こえますか!?」
「はっきりとではありませんが、何度か耳にしたことがあるので…アレは古い舟唄ですね。」
「舟唄…」
「海に出た時にでも覚えたんでしょうね。南方の海で漁師達が歌っているのを聞いたことがありますよ。“錨を引け 帆を上げろ 波に唄えば明日も海の上 一足先に船出した同胞達も ほら 海原の底で笑っていやがるぜ”」
エリックが歌ってみせると、ヴィオラは何か難しい顔をしてデイビッドの背中を見つめていた。
「一度も聞いたことがないんです。デイビッド様の歌声…」
「そうですね、僕もほとんどありませんよ。音楽関係はあまり得意じゃ無いそうですからね。」
「そういうのも知らないんです、私…デイビッド様の事もっとちゃんと知りたいのに…」
「いつか話してくれますよ。」
エリックは大きな丸パンの薄切りに、バターとジャムをたっぷり塗ってかじりながら、沸かし直しのミントティーを飲んで自分の本を読み始めた。
ヴィオラは雨音とデイビッドの歌を聴きながら、残りの課題に取り組んでいたが、しばらくするとスヤスヤ眠ってしまった。
窓の下では竈門から下ろした鍋を冷ましながら、煮沸消毒した大瓶にヤマモモを詰めるデイビッドが忙しそうにしていた。
(アチチッ!こんなもんか…?)
一緒に煮込んだレモンの薄切りを一番上に乗せ、瓶の蓋を閉めて逆さにすると、鍋に残った赤い煮汁に赤ワインと砂糖を更に加え、切ったスモモを並べて今度はワイン煮を作っていく。
鍋を見ながら粉を捏ねていると、転移門が僅かに光ってベルダが現れた。
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