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黒豚令息の領地開拓編
覚悟の重さ
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夕刻近く、いつもならそろそろヴィオラと夕飯を食べている頃かとデイビッドが天井を眺めていると、廊下からパタパタと軽い足音が聞こえてきた。
「デイビッド様、ひと休みして下さい。旦那様は僕が見張ってますから。」
「いいのか?」
「ヴィオラ様をお呼びしました。」
「ヴィオラ?なんでだよ!?」
「先程学園へ戻りまして、部屋にデイビッド様がいない理由をお話したら、ご自分からこちらへ来たいと。ご一緒に夕食など召し上がって来てはいかがですか?」
「わかった…」
長い事缶詰めだったので、身体を伸ばしながら格子を開けて外へ出ると、おずおずとこちらの様子をうかがうヴィオラと目が合った。
「来てくれたのか…悪いな心配かけて…」
「いえ!お仕事ですもの。それにエリック様が良いと言ってくれたので、思い切って来てみました。」
「王都側は嫌じゃないか?」
「元凶の教会がなくなっちゃいましたから、大手を振って歩いてやろうと思って!」
「たくましいなぁ…さ、行こう。夕飯はどっか店でも行こうと思ってたんだ。何がいい?」
「そう言えば、デイビッド様とお店でご飯なんてほとんどありませんでしたね!!デート!これってご飯デートですよ!?」
「いや…夕飯食うだけだろ。」
「おすすめのお店とかありませんか?」
「まぁなぁ…ヴィオラの口に合えばいいけど…」
2人が商会の外へ歩いて行くと、再び部屋の格子が音を立てて施錠された。
「えー?!なんでデイビッドだけ?」
「旦那様などはパンと水で十分では?」
「酷いな!エリックまでそんな事を言うようになったのか!?お前、私の従者だろう?!」
「その件についてもお話がありますので、こちらの書類を先に片付けて下さい。ちゃっちゃと!」
「すごい圧だな…性格まで変わってしまったのか。いったい何があったんだ?」
「旦那様の下にいたのでは決してできない経験を少しばかり…」
「えー?私といるより凄い経験なんてできたのかい?せいぜい他国と繋ぎが取れるくらいだと思ってたのに。」
「貴方は…ご自身の子息が何をしているのか、全くご存知ないのですね。」
「いやいや、評価はしているよ?スラムの立て直しに、海洋事業なんかは有名だし、結局父上の悲願だった運河の最終工事の指揮はアイツだったしね。でも、そのくらいの功績で満足されてはデュロックの名は背負えんよ。」
「いつの話ですかそれ?旦那様こそ、ご自分の過去の栄光にしがみついてばかりで、次期当主の足を引っ張られては困りますよ?!」
ニッコリと笑顔を貼り付けたエリックが手元にドサッと書類を追加すると、ジェイムズはそれ以上何も反論できず、またペンを握り直した。
その頃、商会の被服部門で着替えさせられたヴィオラは、豪華な馬車に揺られ、商会から少し離れた一等地に聳えるホテルの2階、輝く庭園と夜景を臨むレストランの個室へ通され、固まっていた。
「わぁ…緊張します!」
「個室だし、外からは見えねぇから安心しろよ。」
こちらも恐らく商会のおばさま方に捕まったのだろう、いつもより小綺麗にされたデイビッドが、向かいに座っている。
「普通の貴族令嬢とかって、こんなところでデートするんですね…」
「どうかな?ここはどっちかっつーと人目に付きたくない貴族が使う事が多いかな?」
「…そんなとこ予約して下さったんですか?」
「いや、ここは特別客専用のプライベートルームだから予約はいらないし、顔の利く奴しか入れない。王族とか、オーナーの関係者用だな…」
「デイビッド様は…?」
「元々俺の爺さんが作った店なんだよ」
「すごい…」
料理が運ばれて来ると、ヴィオラは一層緊張してカトラリーを手に取った。
「久しぶりなので上手くできるかどうか…」
「基礎はしっかりしてるから、今日は気軽でいい。マナーばっかり気にしてると味が分かんなくなるだろ?」
「でもデイビッド様はキレイに使ってますよね!?」
「年季が違うからなぁ…条件反射みたいなもんだよ。」
数種類の前菜の後にスープと、その後にメイン料理がやって来る。
「本日のヴィアンド、子羊のパイ皮包み、ラスプーチンソースでございます。」
ウェイターが去るとヴィオラは皿の上の肉をじっと見つめていた。
「お肉…」
「羊肉だと。」
「ちっさいお肉…」
「ちっさい言わないで!」
「貴族になったらこんなのを食べて生きていかなくちゃいけないんですか…?」
「およそフルコースのメインに対する感想じゃねぇな。」
「だって…デイビッド様のお部屋にいたら、これの5倍くらい大きいの作ってくれそうで…」
「しまった、俺のせいか!」
「あ…でも、このソース、よく鹿肉とかにかけてあった奴に似てる。」
「まぁ、そうだよ。ここの元シェフが色々教えてくれたから、野営料理以外も作れるようになったんだ。」
「おいしいです!」
「なんだ、テーブルマナーも所作もきちんとできてる。すっかり淑女だなぁヴィオラは…」
「はい!頑張りました!!」
「これなら独り立ちしても、田舎貴族なんて馬鹿にする奴はいないだろ…」
「え?」
「ヴィオラ、商会に戻ったら大切な話がある。少し付き合ってくれるか?」
「は、はい…わかりました…」
何か異様な雰囲気に、ヴィオラはその後運ばれて来た料理もデザートのソルベの味もほとんどわからなくなった。
街の光が輝く夕間暮れ、馬車道の通りには貴族の馬車が行き交い、周りに見せつけるように伴侶や婚約者を連れ歩く姿がたくさん見える。
誰が誰を伴い何をしているのか、貴族にとってはそれさえ重要な広告となるため、誰もが美しく着り、どれだけ派手な買い物ができるか競い合っている。
それらを横目に商会へ帰ったヴィオラは、そのまま静かな廊下の先へ案内された。
奥の部屋を開けると、デイビッドがランプに火を灯す。
魔導式でないランプを見て、ここはデイビッドの部屋だとヴィオラにはすぐにわかった。
使い込まれたデスク。壁の本棚。手前に置かれた猫足のローテーブルにはラタン製の足の低い椅子が添えられている。
「座っててくれ、今、確認して欲しい書類を用意するから…」
デイビッドは手元の書類を順番通りに並べながら、新しい女性用の書類鞄を手に取った。
ラタンの椅子に座ったヴィオラは、部屋の中を見回し、初めて入るデイビッドのプライベートな空間にさっきとは違った緊張でドキドキしていた。
(ここがデイビッド様のお部屋なんだ…)
一度デイビッドの家について聞いてみたが、長い事国を出ている間に曖昧になり無くなってしまったと答えられたヴィオラは、初めて他の誰の物でもないデイビッドの私室というものに少し浮かれていた。
「待たせた。この書類を隅から隅までよく読んで持ってて欲しい。」
「これ…は…」
紙には【婚約解消・破棄、又は継続の終了に関する手続き】とある。
「こ…婚約…解消…?!」
「まじめな話、俺はヴィオラの足枷にだけはなりたくない。だからこれはヴィオラに預けとく。明日以降、貴族院に出せばいつでも受理してくれるはずだ。」
「デイビッド様…なんで…?」
「この先何があるかわんねぇからだよ。明日いきなり俺が死ぬことだってないとは言い切れないんだ。いつ俺の存在がヴィオラにとって邪魔なものになるかだって…その時は迷わず出して欲しい。」
「邪魔なんて…そんな事…だったらデイビッド様の分は!?私だけ持ってるなんて不公平で…」
「この婚約に俺の意思は反映していない。最終決定は親父が下した。俺の気持ちなんてその程度の扱いだ。貴族なんてそんなもんだよ。」
確かに、どの書類にもデイビッドのサインはなく、デュロック側の欄には代わりに当主印が押されている。
「こ、こ、これ…どうしたらいいんですか!?」
「これが婚約解消、こっちは婚約解消後の資産の受け取りについて…」
「資産!?」
「即金で金貨500枚。これは婚約を一度は受けてくれた事に対する謝礼だと。それから俺の収入の2割を毎月ヴィオラ個人に支払うことになってる。死亡時には資産の半分。これはその同意書だよ。」
「なんで!?」
「なんで…って、言ったろ?何があっても生涯守るって、親父さんにそう誓ったんだ。その約束が果たせないなら、せめて金銭で示すくらいしないと。」
「自分を裏切った相手に…一生お金を払うんですか…?」
「もうそれに見合う対価は受け取った。それに…ヴィオラになら捨てられても構わないと俺は思ってる。その上でこれは預けておくよ。」
手元には薄っぺらい紙切れが全部で5枚。
ヴィオラはあまりにも重いその重要書類を急いで鞄の中に詰め込んだ。
「デイビッド様、ひと休みして下さい。旦那様は僕が見張ってますから。」
「いいのか?」
「ヴィオラ様をお呼びしました。」
「ヴィオラ?なんでだよ!?」
「先程学園へ戻りまして、部屋にデイビッド様がいない理由をお話したら、ご自分からこちらへ来たいと。ご一緒に夕食など召し上がって来てはいかがですか?」
「わかった…」
長い事缶詰めだったので、身体を伸ばしながら格子を開けて外へ出ると、おずおずとこちらの様子をうかがうヴィオラと目が合った。
「来てくれたのか…悪いな心配かけて…」
「いえ!お仕事ですもの。それにエリック様が良いと言ってくれたので、思い切って来てみました。」
「王都側は嫌じゃないか?」
「元凶の教会がなくなっちゃいましたから、大手を振って歩いてやろうと思って!」
「たくましいなぁ…さ、行こう。夕飯はどっか店でも行こうと思ってたんだ。何がいい?」
「そう言えば、デイビッド様とお店でご飯なんてほとんどありませんでしたね!!デート!これってご飯デートですよ!?」
「いや…夕飯食うだけだろ。」
「おすすめのお店とかありませんか?」
「まぁなぁ…ヴィオラの口に合えばいいけど…」
2人が商会の外へ歩いて行くと、再び部屋の格子が音を立てて施錠された。
「えー?!なんでデイビッドだけ?」
「旦那様などはパンと水で十分では?」
「酷いな!エリックまでそんな事を言うようになったのか!?お前、私の従者だろう?!」
「その件についてもお話がありますので、こちらの書類を先に片付けて下さい。ちゃっちゃと!」
「すごい圧だな…性格まで変わってしまったのか。いったい何があったんだ?」
「旦那様の下にいたのでは決してできない経験を少しばかり…」
「えー?私といるより凄い経験なんてできたのかい?せいぜい他国と繋ぎが取れるくらいだと思ってたのに。」
「貴方は…ご自身の子息が何をしているのか、全くご存知ないのですね。」
「いやいや、評価はしているよ?スラムの立て直しに、海洋事業なんかは有名だし、結局父上の悲願だった運河の最終工事の指揮はアイツだったしね。でも、そのくらいの功績で満足されてはデュロックの名は背負えんよ。」
「いつの話ですかそれ?旦那様こそ、ご自分の過去の栄光にしがみついてばかりで、次期当主の足を引っ張られては困りますよ?!」
ニッコリと笑顔を貼り付けたエリックが手元にドサッと書類を追加すると、ジェイムズはそれ以上何も反論できず、またペンを握り直した。
その頃、商会の被服部門で着替えさせられたヴィオラは、豪華な馬車に揺られ、商会から少し離れた一等地に聳えるホテルの2階、輝く庭園と夜景を臨むレストランの個室へ通され、固まっていた。
「わぁ…緊張します!」
「個室だし、外からは見えねぇから安心しろよ。」
こちらも恐らく商会のおばさま方に捕まったのだろう、いつもより小綺麗にされたデイビッドが、向かいに座っている。
「普通の貴族令嬢とかって、こんなところでデートするんですね…」
「どうかな?ここはどっちかっつーと人目に付きたくない貴族が使う事が多いかな?」
「…そんなとこ予約して下さったんですか?」
「いや、ここは特別客専用のプライベートルームだから予約はいらないし、顔の利く奴しか入れない。王族とか、オーナーの関係者用だな…」
「デイビッド様は…?」
「元々俺の爺さんが作った店なんだよ」
「すごい…」
料理が運ばれて来ると、ヴィオラは一層緊張してカトラリーを手に取った。
「久しぶりなので上手くできるかどうか…」
「基礎はしっかりしてるから、今日は気軽でいい。マナーばっかり気にしてると味が分かんなくなるだろ?」
「でもデイビッド様はキレイに使ってますよね!?」
「年季が違うからなぁ…条件反射みたいなもんだよ。」
数種類の前菜の後にスープと、その後にメイン料理がやって来る。
「本日のヴィアンド、子羊のパイ皮包み、ラスプーチンソースでございます。」
ウェイターが去るとヴィオラは皿の上の肉をじっと見つめていた。
「お肉…」
「羊肉だと。」
「ちっさいお肉…」
「ちっさい言わないで!」
「貴族になったらこんなのを食べて生きていかなくちゃいけないんですか…?」
「およそフルコースのメインに対する感想じゃねぇな。」
「だって…デイビッド様のお部屋にいたら、これの5倍くらい大きいの作ってくれそうで…」
「しまった、俺のせいか!」
「あ…でも、このソース、よく鹿肉とかにかけてあった奴に似てる。」
「まぁ、そうだよ。ここの元シェフが色々教えてくれたから、野営料理以外も作れるようになったんだ。」
「おいしいです!」
「なんだ、テーブルマナーも所作もきちんとできてる。すっかり淑女だなぁヴィオラは…」
「はい!頑張りました!!」
「これなら独り立ちしても、田舎貴族なんて馬鹿にする奴はいないだろ…」
「え?」
「ヴィオラ、商会に戻ったら大切な話がある。少し付き合ってくれるか?」
「は、はい…わかりました…」
何か異様な雰囲気に、ヴィオラはその後運ばれて来た料理もデザートのソルベの味もほとんどわからなくなった。
街の光が輝く夕間暮れ、馬車道の通りには貴族の馬車が行き交い、周りに見せつけるように伴侶や婚約者を連れ歩く姿がたくさん見える。
誰が誰を伴い何をしているのか、貴族にとってはそれさえ重要な広告となるため、誰もが美しく着り、どれだけ派手な買い物ができるか競い合っている。
それらを横目に商会へ帰ったヴィオラは、そのまま静かな廊下の先へ案内された。
奥の部屋を開けると、デイビッドがランプに火を灯す。
魔導式でないランプを見て、ここはデイビッドの部屋だとヴィオラにはすぐにわかった。
使い込まれたデスク。壁の本棚。手前に置かれた猫足のローテーブルにはラタン製の足の低い椅子が添えられている。
「座っててくれ、今、確認して欲しい書類を用意するから…」
デイビッドは手元の書類を順番通りに並べながら、新しい女性用の書類鞄を手に取った。
ラタンの椅子に座ったヴィオラは、部屋の中を見回し、初めて入るデイビッドのプライベートな空間にさっきとは違った緊張でドキドキしていた。
(ここがデイビッド様のお部屋なんだ…)
一度デイビッドの家について聞いてみたが、長い事国を出ている間に曖昧になり無くなってしまったと答えられたヴィオラは、初めて他の誰の物でもないデイビッドの私室というものに少し浮かれていた。
「待たせた。この書類を隅から隅までよく読んで持ってて欲しい。」
「これ…は…」
紙には【婚約解消・破棄、又は継続の終了に関する手続き】とある。
「こ…婚約…解消…?!」
「まじめな話、俺はヴィオラの足枷にだけはなりたくない。だからこれはヴィオラに預けとく。明日以降、貴族院に出せばいつでも受理してくれるはずだ。」
「デイビッド様…なんで…?」
「この先何があるかわんねぇからだよ。明日いきなり俺が死ぬことだってないとは言い切れないんだ。いつ俺の存在がヴィオラにとって邪魔なものになるかだって…その時は迷わず出して欲しい。」
「邪魔なんて…そんな事…だったらデイビッド様の分は!?私だけ持ってるなんて不公平で…」
「この婚約に俺の意思は反映していない。最終決定は親父が下した。俺の気持ちなんてその程度の扱いだ。貴族なんてそんなもんだよ。」
確かに、どの書類にもデイビッドのサインはなく、デュロック側の欄には代わりに当主印が押されている。
「こ、こ、これ…どうしたらいいんですか!?」
「これが婚約解消、こっちは婚約解消後の資産の受け取りについて…」
「資産!?」
「即金で金貨500枚。これは婚約を一度は受けてくれた事に対する謝礼だと。それから俺の収入の2割を毎月ヴィオラ個人に支払うことになってる。死亡時には資産の半分。これはその同意書だよ。」
「なんで!?」
「なんで…って、言ったろ?何があっても生涯守るって、親父さんにそう誓ったんだ。その約束が果たせないなら、せめて金銭で示すくらいしないと。」
「自分を裏切った相手に…一生お金を払うんですか…?」
「もうそれに見合う対価は受け取った。それに…ヴィオラになら捨てられても構わないと俺は思ってる。その上でこれは預けておくよ。」
手元には薄っぺらい紙切れが全部で5枚。
ヴィオラはあまりにも重いその重要書類を急いで鞄の中に詰め込んだ。
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