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7代目デュロック辺境伯爵編
本物の卵泥棒
すぐに戻って来たグリフォンは、馬車の幌にしがみつき、屋根を剥ぎ取ろうと躍起になっている。
そこをまた銃で撃たれて離れて行った。
(狙いが肉ならまず人間か馬を襲うはずだ…でもあのグリフォンは後ろの積荷にしか気が行ってないようだ。何度も撃たれた跡があったが全く怯んでない…グリフォンがここまで執着する物って…?)
中身が欲しいなら馬車ごとひっくり返してしまえばいい。
それができない体格差ではないはずだ。
ファルコでさえ馬車を持ち上げることができる。それをグリフォンがわからない訳はない。
(怪し過ぎる…)
デイビッドはこの馬車の積荷に何かあると確信し、もう一度ファルコを近づけた。
「おい、進行方向を変えろ!この先は港だ!突っ込んだら人死にが出る!」
「知るもんか!こっちだって2人殺られてんだ!!あんなのが入って来りゃ誰か追っ払ってくれるだろう!」
「人の居ない方に誘導する!被害が出てからじゃ遅いぞ!?」
「関係ねぇな!テメェも邪魔するならコイツの餌食にするぞ?!」
御者台の男が遂にデイビッドに向かって銃を向けた。
「クズ共が…お前等、商売人じゃねぇな?!ただの運び屋なら仕方ねぇ、悪く思うなよ?!」
デイビッドはファルコから馬車の上に飛び乗ると、幌を引き裂いて上から一番大きな木箱に縄を括り付けた。
「なにしやがる!!」
「やめろ!その箱に触るな!!」
騒ぐ男共を無視して厳重に鎖で巻かれた箱に素早く縄を結わえると、上に合図を送る。
何発も銃弾が飛んで来るが、箱を気にしているからか掠りもしない。
遂に短銃ではなく、大型の散弾銃を向けられたが、引き金が引かれる前にデイビッドの姿は木箱共々上空へ釣り上げられ、見えなくなった。
「チクショウ!!荷を盗られた!」
「ドロボー!!返せっ!!そいつは俺達のもんだ!!」
がなり立てる馬車が今度はデイビッドを追う。
グリフォンも目的を馬車からデイビッドに移し、一直線に飛んで来た。
「思った通り!よーしいい子だ…そうそう真っ直ぐこっちについて来い!」
デイビッドは自分の領地のいつもの草原ではなく、森の方へ誘導すると、繁った木々の間に木箱を降ろし、鎖の隙間から箱の蓋を愛用の手斧でこじ開けた。
中に詰められていたおが屑や藁をむしり取ると、中から何やら丸い物が現れる。
「これは……卵!?」
一抱えもある大きな卵。
デイビッドも現物は初めて見るそれは、間違いなくグリフォンの卵だった。
グリフォンは指定の取り引き禁止魔法生物。その卵も然り、特殊な許可と特別な事由なくして取り扱われるものでは無い。
ましてやこんな箱に雑に詰めるなど言語道断だ。
箱を全て壊して鎖を外すと、卵は全部で4つも出て来た。
可哀想に、1つは割れて駄目になってしまっている。
「そりゃグリフォンがブチ切れるワケだ…」
「キュピィッ!キュピルルルッ!」
上空で必死にグリフォンの気を引いていたファルコは、強大なグリフォンの猛攻に遂に音を上げかけたが、主人の口笛の音を聞き森の外へ向かった。
「キィィィィッッッ!!」
グリフォンは一際大きな声で鳴くと、デイビッドにはもう一瞥もくれずに卵の元へと降りて行った。
デイビッドは割れた卵を抱え、ファルコに乗るとさっきの馬車を探した。
街道へ出ると、馬車の男共が卵を抱えているデイビッドの姿を見つけ、また銃を撃って来る。
「テメェッ!!ただじゃ置かねぇぞ!?」
「ぶっ殺してやる!!あのお宝を取り返せ!!」
デイビッドはそのまま港街までまっすぐファルコを飛ばすと、入り口の検問の前に降りて馬車が来るのを待っていた。
馬車が着くと、男共は銃をしまい、鎧を身に着けた憲兵達に口々に訴えた。
「兵士さん!聞いてくれ!この男は強盗なんだ!!」
「俺達の荷物を盗みやがった!」
「早くしょっ引いてくれ!!」
「その前に、入港許可証か、積み荷の依頼書と検分証を見せろ。」
憲兵は男達の言葉には耳も貸さず、まず荷物の安全性を認める証明と依頼書を見せろと言う。
「それは、その男に盗まれて…」
「そんなもんどこにもなかったぞ?」
「だ、そうだが?お前達、少しこちらで話がある。全員ついて来い、」
何を言っても憲兵はデイビッドの肩を持つ。港には顔も素性も知れているのだから当然だ。
「お、俺達はただ荷物を運べと言われただけで何も悪くない!!」
「街道でグリフォンに追われている馬車が港へ向かっているという情報は入っていた。何故ここへ来ようとした?」
「こ、ここでならなんとかしてくれると思って!」
「こちらの被害も考えず?魔物は本来縄張りから出てまで獲物は追わない。万が一の際には街には近づかず、救難の信号を上げるものだ!荷運びなら常識だろう!?」
「知らなかったんだ!いきなり襲われて逃げるのに必死で…」
「荷主は誰だ?」
「し…知らない…」
「依頼主は?」
「酒場で行きずりの男に頼まれて…金は払うからと…」
御者の男がペラペラ喋っていると、後ろの3人が素早く逃げ出し、馬車に乗り込んで来た道を戻ろうと馬に鞭を当てた。
「待てっ!!」
「大丈夫、逃がしゃしねぇよ。」
デイビッドが軽く口笛を吹くと、ファルコが勢い良く馬の前に飛び出した。
驚いた馬達はてんでに逃げ出そうとし、御者台の男が振り落とされる。
落ちた男を見捨てて走り出す2人もファルコが追いかけ、1人の頭をくわえ、もうひとりを鉤爪に引っ掛け戻って来た。
ファルコを追って行ったデイビッドが落ちた男を縄で縛り、残る2人も数珠繋ぎにして憲兵の所へ戻ると、残された御者も既に縄を打たれて青褪めていた。
「キュピィッキュルピィィィッ!!」
「おう、お手柄だったなファルコ!」
「ギュピィッ!キュピピピィッ!ギュピィィッ!!」
「どうした…?ファルコ、落ち着けよ…」
ファルコは毛を逆立てて男達に威嚇している。
様子のおかしいファルコを宥めようとして、デイビッドはある事に気がついた。
「まさか…コイツ等なのか?!お前をここへ連れて来たのは!」
「キュルピィ…」
「なるほど…コイツ等組織の下っ端か…ってこたぁ絞れば幾らか情報も掴めるかもな…」
ファルコは元々輸送中に盗まれた闇取り引きの商品だったが、密輸の最中に麻酔が切れて見捨てられ、本来なら討伐されても仕方がないところをデイビッドに命を救われて引き取られた過去がある。
当時の運び屋は、ファルコが運河の港で暴れた時は取り逃がしてしまったが、今度はがっちり捕まえる事ができた。
デイビッドは憲兵の詰め所で、魔物の闇取り引きに関わっている事も含めて話し、男達を引き渡すと再び領地へ戻って行った。
森の中ではグリフォンが卵を守る様に蹲り、腹の下で温めている。
本来は番で卵の世話をするため、雌が卵を温める間、餌を捕るのは雄の役目だ。
なんとかならないかと様子を見ていると、いつの間にか居なくなったファルコが、口にチャージラビットを咥えて戻って来た。
「クルルルルル…」
「大丈夫か?お前ごと食われたりしないよな!?」
ヒョコヒョコとファルコがグリフォンに近づくと、鋭い目で威嚇はされたが、獲物を置いて距離を取ると、首をもたげてファルコをじっと見つめていた。
禽翼類の中でも最大最強種のグリフォンは、ファルコの2倍以上の大きさはあり、迫力も段違いだ。
大きなウサギ肉を一飲みにすると、両の目にファルコを映し、また卵の世話に戻る。
(あれじゃ卵が温まり切らない…やっぱり巣が無いと…)
本で見るグリフォンの巣は岩山の上にツタや木の枝で台座を作り羽毛や毛皮を敷いた物だった。
(なんか…なんとかできねぇかな…)
心配ながら昼前には帰ると約束した手前、正午の鐘がなる前に学園へ戻ると、デイビッドは予想以上の疲労感に襲われた。
ファルコを離して部屋へ入るとライラを抱いたヴィオラが顔を出す。
「お帰りなさい!今日のお昼は、夏野菜とソーセージたっぷりのスープと、ライラちゃんも捏ねてくれたバターロールです!」
「作ってくれてたのか!」
「たまにはゆっくりして下さい!」
「きゃーーう!」
ヴィオラとライラの笑顔が嬉しくて、デイビッドは思わずライラごとヴィオラを抱きしめた。
「!!デイビッドさま!???」
「あ、悪い!…ぼーっとしてた…」
慌てて離れたが自分でも信じられない行動に、どうして良いかわからず、あたふたしているとヴィオラがクスクス笑ってデイビッドにライラを渡した。
「最近お疲れなんですよ。ずーっと動き回っててお部屋にいませんし、考え事も増えました。もう少し自分を労って下さい。一休みも大切だって、いつも言ってくれるじゃないですか!」
「あ…ああ…」
今度はライラを抱いたデイビッドにヴィオラが抱きついた。
片手づつにライラとヴィオラを抱えた状態で、固まるデイビッドを、シェルリアーナが後ろから睨んでいる。
「私、お邪魔?」
「今はそっとしといてあげましょうよ…こっちに気が付かないくらい疲れてんですよアレは…」
「疲れてるっつーか、なんか上の空なんだよなぁ。」
「今日は誰に会って来たんですか?」
「ん?ホラあれだよ、例の断罪王子の本家の方。」
「ちょっと!幽閉中の王族に会ったの?!」
「もう除籍されてんだろ?それに、何がどうしてかこっちに囲っちまってたぞ?アイツ腹の内側どうなってんの?やっぱ人間ってわかんねぇや…」
「わかんないのは基本あの人だけですよ。」
「そうね、何考えてるかさっぱりなのよねぇ…」
ただ、魔女の眼には最初に出会った頃の危うさが消え、深淵に背を向けて光を見上げているような印象が強く映る。
ただし、足元の暗闇は影になり、更に色を濃くしている。
何に囚われているのか、はたまた踏み出せないのか…恐怖は未だ腹の底で燻っているようだ。
そこをまた銃で撃たれて離れて行った。
(狙いが肉ならまず人間か馬を襲うはずだ…でもあのグリフォンは後ろの積荷にしか気が行ってないようだ。何度も撃たれた跡があったが全く怯んでない…グリフォンがここまで執着する物って…?)
中身が欲しいなら馬車ごとひっくり返してしまえばいい。
それができない体格差ではないはずだ。
ファルコでさえ馬車を持ち上げることができる。それをグリフォンがわからない訳はない。
(怪し過ぎる…)
デイビッドはこの馬車の積荷に何かあると確信し、もう一度ファルコを近づけた。
「おい、進行方向を変えろ!この先は港だ!突っ込んだら人死にが出る!」
「知るもんか!こっちだって2人殺られてんだ!!あんなのが入って来りゃ誰か追っ払ってくれるだろう!」
「人の居ない方に誘導する!被害が出てからじゃ遅いぞ!?」
「関係ねぇな!テメェも邪魔するならコイツの餌食にするぞ?!」
御者台の男が遂にデイビッドに向かって銃を向けた。
「クズ共が…お前等、商売人じゃねぇな?!ただの運び屋なら仕方ねぇ、悪く思うなよ?!」
デイビッドはファルコから馬車の上に飛び乗ると、幌を引き裂いて上から一番大きな木箱に縄を括り付けた。
「なにしやがる!!」
「やめろ!その箱に触るな!!」
騒ぐ男共を無視して厳重に鎖で巻かれた箱に素早く縄を結わえると、上に合図を送る。
何発も銃弾が飛んで来るが、箱を気にしているからか掠りもしない。
遂に短銃ではなく、大型の散弾銃を向けられたが、引き金が引かれる前にデイビッドの姿は木箱共々上空へ釣り上げられ、見えなくなった。
「チクショウ!!荷を盗られた!」
「ドロボー!!返せっ!!そいつは俺達のもんだ!!」
がなり立てる馬車が今度はデイビッドを追う。
グリフォンも目的を馬車からデイビッドに移し、一直線に飛んで来た。
「思った通り!よーしいい子だ…そうそう真っ直ぐこっちについて来い!」
デイビッドは自分の領地のいつもの草原ではなく、森の方へ誘導すると、繁った木々の間に木箱を降ろし、鎖の隙間から箱の蓋を愛用の手斧でこじ開けた。
中に詰められていたおが屑や藁をむしり取ると、中から何やら丸い物が現れる。
「これは……卵!?」
一抱えもある大きな卵。
デイビッドも現物は初めて見るそれは、間違いなくグリフォンの卵だった。
グリフォンは指定の取り引き禁止魔法生物。その卵も然り、特殊な許可と特別な事由なくして取り扱われるものでは無い。
ましてやこんな箱に雑に詰めるなど言語道断だ。
箱を全て壊して鎖を外すと、卵は全部で4つも出て来た。
可哀想に、1つは割れて駄目になってしまっている。
「そりゃグリフォンがブチ切れるワケだ…」
「キュピィッ!キュピルルルッ!」
上空で必死にグリフォンの気を引いていたファルコは、強大なグリフォンの猛攻に遂に音を上げかけたが、主人の口笛の音を聞き森の外へ向かった。
「キィィィィッッッ!!」
グリフォンは一際大きな声で鳴くと、デイビッドにはもう一瞥もくれずに卵の元へと降りて行った。
デイビッドは割れた卵を抱え、ファルコに乗るとさっきの馬車を探した。
街道へ出ると、馬車の男共が卵を抱えているデイビッドの姿を見つけ、また銃を撃って来る。
「テメェッ!!ただじゃ置かねぇぞ!?」
「ぶっ殺してやる!!あのお宝を取り返せ!!」
デイビッドはそのまま港街までまっすぐファルコを飛ばすと、入り口の検問の前に降りて馬車が来るのを待っていた。
馬車が着くと、男共は銃をしまい、鎧を身に着けた憲兵達に口々に訴えた。
「兵士さん!聞いてくれ!この男は強盗なんだ!!」
「俺達の荷物を盗みやがった!」
「早くしょっ引いてくれ!!」
「その前に、入港許可証か、積み荷の依頼書と検分証を見せろ。」
憲兵は男達の言葉には耳も貸さず、まず荷物の安全性を認める証明と依頼書を見せろと言う。
「それは、その男に盗まれて…」
「そんなもんどこにもなかったぞ?」
「だ、そうだが?お前達、少しこちらで話がある。全員ついて来い、」
何を言っても憲兵はデイビッドの肩を持つ。港には顔も素性も知れているのだから当然だ。
「お、俺達はただ荷物を運べと言われただけで何も悪くない!!」
「街道でグリフォンに追われている馬車が港へ向かっているという情報は入っていた。何故ここへ来ようとした?」
「こ、ここでならなんとかしてくれると思って!」
「こちらの被害も考えず?魔物は本来縄張りから出てまで獲物は追わない。万が一の際には街には近づかず、救難の信号を上げるものだ!荷運びなら常識だろう!?」
「知らなかったんだ!いきなり襲われて逃げるのに必死で…」
「荷主は誰だ?」
「し…知らない…」
「依頼主は?」
「酒場で行きずりの男に頼まれて…金は払うからと…」
御者の男がペラペラ喋っていると、後ろの3人が素早く逃げ出し、馬車に乗り込んで来た道を戻ろうと馬に鞭を当てた。
「待てっ!!」
「大丈夫、逃がしゃしねぇよ。」
デイビッドが軽く口笛を吹くと、ファルコが勢い良く馬の前に飛び出した。
驚いた馬達はてんでに逃げ出そうとし、御者台の男が振り落とされる。
落ちた男を見捨てて走り出す2人もファルコが追いかけ、1人の頭をくわえ、もうひとりを鉤爪に引っ掛け戻って来た。
ファルコを追って行ったデイビッドが落ちた男を縄で縛り、残る2人も数珠繋ぎにして憲兵の所へ戻ると、残された御者も既に縄を打たれて青褪めていた。
「キュピィッキュルピィィィッ!!」
「おう、お手柄だったなファルコ!」
「ギュピィッ!キュピピピィッ!ギュピィィッ!!」
「どうした…?ファルコ、落ち着けよ…」
ファルコは毛を逆立てて男達に威嚇している。
様子のおかしいファルコを宥めようとして、デイビッドはある事に気がついた。
「まさか…コイツ等なのか?!お前をここへ連れて来たのは!」
「キュルピィ…」
「なるほど…コイツ等組織の下っ端か…ってこたぁ絞れば幾らか情報も掴めるかもな…」
ファルコは元々輸送中に盗まれた闇取り引きの商品だったが、密輸の最中に麻酔が切れて見捨てられ、本来なら討伐されても仕方がないところをデイビッドに命を救われて引き取られた過去がある。
当時の運び屋は、ファルコが運河の港で暴れた時は取り逃がしてしまったが、今度はがっちり捕まえる事ができた。
デイビッドは憲兵の詰め所で、魔物の闇取り引きに関わっている事も含めて話し、男達を引き渡すと再び領地へ戻って行った。
森の中ではグリフォンが卵を守る様に蹲り、腹の下で温めている。
本来は番で卵の世話をするため、雌が卵を温める間、餌を捕るのは雄の役目だ。
なんとかならないかと様子を見ていると、いつの間にか居なくなったファルコが、口にチャージラビットを咥えて戻って来た。
「クルルルルル…」
「大丈夫か?お前ごと食われたりしないよな!?」
ヒョコヒョコとファルコがグリフォンに近づくと、鋭い目で威嚇はされたが、獲物を置いて距離を取ると、首をもたげてファルコをじっと見つめていた。
禽翼類の中でも最大最強種のグリフォンは、ファルコの2倍以上の大きさはあり、迫力も段違いだ。
大きなウサギ肉を一飲みにすると、両の目にファルコを映し、また卵の世話に戻る。
(あれじゃ卵が温まり切らない…やっぱり巣が無いと…)
本で見るグリフォンの巣は岩山の上にツタや木の枝で台座を作り羽毛や毛皮を敷いた物だった。
(なんか…なんとかできねぇかな…)
心配ながら昼前には帰ると約束した手前、正午の鐘がなる前に学園へ戻ると、デイビッドは予想以上の疲労感に襲われた。
ファルコを離して部屋へ入るとライラを抱いたヴィオラが顔を出す。
「お帰りなさい!今日のお昼は、夏野菜とソーセージたっぷりのスープと、ライラちゃんも捏ねてくれたバターロールです!」
「作ってくれてたのか!」
「たまにはゆっくりして下さい!」
「きゃーーう!」
ヴィオラとライラの笑顔が嬉しくて、デイビッドは思わずライラごとヴィオラを抱きしめた。
「!!デイビッドさま!???」
「あ、悪い!…ぼーっとしてた…」
慌てて離れたが自分でも信じられない行動に、どうして良いかわからず、あたふたしているとヴィオラがクスクス笑ってデイビッドにライラを渡した。
「最近お疲れなんですよ。ずーっと動き回っててお部屋にいませんし、考え事も増えました。もう少し自分を労って下さい。一休みも大切だって、いつも言ってくれるじゃないですか!」
「あ…ああ…」
今度はライラを抱いたデイビッドにヴィオラが抱きついた。
片手づつにライラとヴィオラを抱えた状態で、固まるデイビッドを、シェルリアーナが後ろから睨んでいる。
「私、お邪魔?」
「今はそっとしといてあげましょうよ…こっちに気が付かないくらい疲れてんですよアレは…」
「疲れてるっつーか、なんか上の空なんだよなぁ。」
「今日は誰に会って来たんですか?」
「ん?ホラあれだよ、例の断罪王子の本家の方。」
「ちょっと!幽閉中の王族に会ったの?!」
「もう除籍されてんだろ?それに、何がどうしてかこっちに囲っちまってたぞ?アイツ腹の内側どうなってんの?やっぱ人間ってわかんねぇや…」
「わかんないのは基本あの人だけですよ。」
「そうね、何考えてるかさっぱりなのよねぇ…」
ただ、魔女の眼には最初に出会った頃の危うさが消え、深淵に背を向けて光を見上げているような印象が強く映る。
ただし、足元の暗闇は影になり、更に色を濃くしている。
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