373 / 411
7代目デュロック辺境伯爵編
マダムのお願い
しおりを挟む
本格的な夏の日差しが王都に降り注ぐ。
通例であれば、実家や避暑地で悠々自適に過ごしているはずの貴族子女達にこの暑さは厳しい。
汗もかくため私服が許可されたが、見栄っ張りな王都貴族出の令嬢達は頑なに制服を着用したり、返って暑いだろうお洒落着に化粧を怠らないため、涼しい部屋は毎日争奪戦だそうだ。
教員達も授業を早めに切り上げたりと対策しているが、とにかく暑さが辛いと言って教員室に居ることが多い。
そんな中、暑さなど全く気にせず快適に過ごしている人物がひとり…
「あ゙ぁ゙ぁ゙!ムカつくぅぅ!!」
「落ち着きなよチェルシー…」
「だって!ローラも見たでしょアレ!?」
「確かに…アレはうらやましいね…」
「1人で美味しい思いして…」
「後でネタにしてやろ…」
教室の移動中、中庭の菜園で見かけた光景にチェルシーが怒りを爆発させている。
そこには、空き時間に畑仕事を終わらせ、椅子に腰掛けて一休みしているデイビッドがいた。
サラッとした麻のシャツに半ズボン。ツバの広い麦わら帽子に、植物の繊維を編んだサンダルを投げ出し、タライに張った水に両足を突っ込んで、傍らにはソーダ水の瓶。
そして手にはキラキラ光る雪の様な氷を盛った器に、果物のシロップをたっぷりかけて口に運んでいる。
「あんなん見せられるこっちの身にもなれ!!」
「“いーなー”じゃ済まない案件よね。」
「ナニあの美味しそうなもの!?冷たいんでしょ?!甘くてひんやりしてるんでしょ!?あーもーハラ立つぅっ!!」
「食べ過ぎて頭キーンてなれ…」
実はこの氷、キリフから送られて来た雪の魔石をスプーンに乗せて振らせた雪でできている。
口溶けの良い雪が降り積もった上からプリザーブのイチゴソースをかけた一品。
暑い中、一仕事終えた身体に冷たい甘味が染み渡る。
「すっごい…王族差し置いて超絶快適に暮らしてますね…」
「あの方については考えたら負けですよディアナ様…」
「いいなぁ…あのシャツ、市井でも人気のアデラスタイルですよね?」
「地元では派手な色で大柄の模様をつけるのですが、生地の色そのままというのもイイですね。」
「ハッ!むしろ王族の僕等が着崩せば、全体的に涼しい格好が流行るのでは!?」
「セルジオ様、その考えは危険ですよ?」
「ディアナ様のアデラ式の衣装だってもっと流行っていいのに!」
「いきなりは難しいですよ。肌が出る仕様の服装はラムダでもエルムでも、貴族には特に忌避されがちですから。」
夏は汗をよく吸う綿の肌着に、サラサラの麻の半袖が定番のデイビッドを巡り、王族達も自分達の服装について協議している。
夏くらい、暑い時期くらい、快適に過ごせる服が着たい。
「その願い!このアニスが解決します!!」
目指すのは、フォーマル感を残しつつ、涼しく動きやすい素材を使い、爽やかで着心地の良い夏服。
肌触りと風通しを優先し、かつ、お洒落な一着を!
親善会では僅差で師匠に負けたアニスは、この夏のお洒落の常識を塗り替えるべく、再び燃えていた。
その甲斐あって、数日後には王族3人とテオ、テレンスの5人から夏全開アニスモードが開始された。
「着やすい!涼しい!動きやすい!」
「すっきりとして清楚で清潔な印象は残しつつ、見た目以上にラフ。素敵な夏仕様ですね!」
「エルムでも流行らないかなぁ…」
アニスの夏服は、かっちりとした服装を余儀なくされていた王族組には大好評だった。
「何故…僕まで…」
「よくお似合いですわよテオ様!」
ユェイはアデラの巻きスカートが気に入ってずっとそれで過ごしている。
テオと並ぶと南国調の取り合わせになり喜んでいた。
その次の日から、学園全体がラフで涼し気な服装で溢れたのは言うまでもない…
「ハァ…涼しい…」
一方でヴィオラは素肌の出る姿がはしたないという事で、麻のロングキュロットに、同じく裾がリボンになった麻のシャツを着(させられ)て過ごしていた。
ライラもお揃いのスタイルで、着替えも楽なので洗い替えも多めに用意してこの夏は重宝している。
皿の上にシャンシャンと降り積もる雪を眺め、こんもり山になったら好きなソースを掛けて涼と甘味を楽しんでいると、嫌なことも忘れてしまう。
「マズイわ…去年より快適過ぎる!!」
「何気に食事の味も質も更に上がりましたからね。」
「ここが研究室って忘れそうで怖いわ!」
「もう半分くらい忘れてるクセに…」
「私来年には卒業よ?!この先どうやって暮らせって言うの!?」(←実は家出娘)
「どうすんでしょうね。ここまで甘やかされて…」
迫る現実から目を背けるように、シェルリアーナは雪をすくって口に入れていた。
くつろぐ3人を横に、この日は少し書き物に専念していたデイビッドは、外から軽快なベルの音がして顔を上げた。
「若だ…デイビッド様!商会にお客様がいらしてます!」
「よぉテッド!悪いな知らせに来てもらって。暑いだろ?なんか飲んでくか?」
「ありがとうございます!喉カラカラなんですよ!」
冷たいソーダ水を開けるテッドは、毎日自転車を漕いでいるためすっかり日に焼けて肌が小麦色だ。
日焼けを忌避する王都の貴族からは考えられない事だろうが、これがなかなか様になっている。
本人も密かにデイビッドと同じ色になった自分の肌を誇らしく思っていた。
デイビッドはやりかけの仕事を残し、歩いて商会へ向かった。
ムスタ号は元がキリフ出身のため暑さには弱く、日陰で寝転がって動けない。
ファルコもガールフレンドの所からなかなか帰らないので、デイビッドはテッドの様に自転車の購入を検討していた。
(乗れなかねぇはず…なんだよな…)
商会に着く頃には汗もかき、人に会うなら着替えがいるかと考えていると、廊下から凛とした声が聞こえてきた
「あら、来てくれたのね?嬉しいわ、そのままでいいから少し話があるの、こちらへいらっしゃい。」
現れたのはマダム・ネリー。しかしなんだか機嫌が悪そうだ。
苛立つ女性の恐ろしさをよく知っているデイビッドは、素直に従った。
「ねぇ、これを見て頂戴。」
「これ…?ああ、最近噂の菓子職人ですか。」
渡された雑誌の片隅には、例のパティシエが写っていて、記事にはこう書かれている。
ー“新進気鋭のイケメンパティシエ!老舗ケーキ店に物申す!マダム・ネリーと一騎打ちか?!”ー
「いきなり私のお店に来てね、「ここのやり方はもう古くさいから、僕の傘下で新しいケーキを作りませんか?」なんて言い出したのよ?失礼しちゃうと思わない?!」
「そりゃずいぶんな自信家ですね。」
「だから私、こう言ってやったの。「私の一番弟子に勝てたら考えてあげるわ!」って。」
「それもなかなか好戦的な…」
「だからあなた、頑張ってね?」
「へ?あの…弟子って、まさか…」
「あなた以上の教え子が私にいると思って?ちょっとした年寄りのお願いよ、叶えて頂戴な?!」
「全っ然ちょっとじゃない!!叶えるって、相手はプロでしょ?!素人に毛が生えた程度の経験しかない俺にどうしろと?!」
「何言ってるの!姫殿下の舌を満足させた事はとっくに知れ渡っているわよ?」
「それは単に部屋に来てケーキ食ってくだけで…」
マダム・ネリーの菓子店は王家の御用達で有名だ。
だと言うのに、姫が別のケーキに心を移しているとなるとそれは問題となる。
王族の御用達は店にとってとても重要な看板。
その大切な看板がハリボテになる事だけは避けなければならない。
「それも学園生活に忙しい妃殿下のために、私の弟子が代わりに作ってると言うなら体面も保てるわ。その上、巷で有名な職人より腕があると実証されればこちらのプライドも守れるの。だから頑張って頂戴ね?」
「断らせる気ないですよね!?」
「涼しくなったら改めて知らせるわ。あちらさんもかなり気合を入れてるみたいだから、外で鉢合わせて先に喧嘩なんてしないように気をつけてね?」
「はいはいはい……」
深いため息をつくデイビッドとは逆に、闘志の湧いたマダムはニコニコしながら新しいレシピの材料を手に入れるべく供の者達と一緒に帰って行った。
(ま、暑い内はケーキ屋はみんな縮小するから、秋過ぎてからだな…)
また厄介事に巻き込まれ、どうするか考えていると、今度は明るい声が聞こえてくる。
「わ~かだ~んな~!!」
「リズ?!」
「エッへへへ!久しぶりだね。何か用があったの?」
「まぁな。そっちはどうだ?学園であんま顔見ねぇけど。」
「うん!資格の目処が立ちそうなんで、工房にこもらせてもらってるの!」
「ああ、あとひとつ取れたらって奴か?」
「そう!」
エリザベスは魔道具制作に必要な資格のため学園に通っていたが、それも残すところ一つとなり、ひとまず仕事に専念していた。
「資格の試験に丁度いい会場がなかなか見つからないんだって。」
「へぇ、なんか作らされるのか?」
「ううん?その逆で、解体とか分解の資格なんだ。意外と作るより大変なんだよ。」
「早いとこ見つかるといいな。」
「あとねあとね!アデラの王太子殿下から連絡来たよ!すっごい褒めてもらっちゃった!かなりしっかり調整したから、お披露目までもう少し!!」
「それが聞けて良かった。必要な物は揃えるから、言ってくれよ?!」
「ありがとう!あ、ところで今借りてる部屋って空間拡張付けても大丈夫?」
「部屋広げるのか?」
「うん、今イヴェットとルームシェアしてるの。」
「ああ!アイツ結局下宿先を出たって言ってたな!こっちに転がり込んでんのか!」
あれから貴族の肩書も家の恩恵も捨てたイヴェットは、ノープランで下宿先を解約してしまい、路頭に迷いかけているところを見かねたエリザベスが声を掛け、今は2人で生活しているそうだ。
通例であれば、実家や避暑地で悠々自適に過ごしているはずの貴族子女達にこの暑さは厳しい。
汗もかくため私服が許可されたが、見栄っ張りな王都貴族出の令嬢達は頑なに制服を着用したり、返って暑いだろうお洒落着に化粧を怠らないため、涼しい部屋は毎日争奪戦だそうだ。
教員達も授業を早めに切り上げたりと対策しているが、とにかく暑さが辛いと言って教員室に居ることが多い。
そんな中、暑さなど全く気にせず快適に過ごしている人物がひとり…
「あ゙ぁ゙ぁ゙!ムカつくぅぅ!!」
「落ち着きなよチェルシー…」
「だって!ローラも見たでしょアレ!?」
「確かに…アレはうらやましいね…」
「1人で美味しい思いして…」
「後でネタにしてやろ…」
教室の移動中、中庭の菜園で見かけた光景にチェルシーが怒りを爆発させている。
そこには、空き時間に畑仕事を終わらせ、椅子に腰掛けて一休みしているデイビッドがいた。
サラッとした麻のシャツに半ズボン。ツバの広い麦わら帽子に、植物の繊維を編んだサンダルを投げ出し、タライに張った水に両足を突っ込んで、傍らにはソーダ水の瓶。
そして手にはキラキラ光る雪の様な氷を盛った器に、果物のシロップをたっぷりかけて口に運んでいる。
「あんなん見せられるこっちの身にもなれ!!」
「“いーなー”じゃ済まない案件よね。」
「ナニあの美味しそうなもの!?冷たいんでしょ?!甘くてひんやりしてるんでしょ!?あーもーハラ立つぅっ!!」
「食べ過ぎて頭キーンてなれ…」
実はこの氷、キリフから送られて来た雪の魔石をスプーンに乗せて振らせた雪でできている。
口溶けの良い雪が降り積もった上からプリザーブのイチゴソースをかけた一品。
暑い中、一仕事終えた身体に冷たい甘味が染み渡る。
「すっごい…王族差し置いて超絶快適に暮らしてますね…」
「あの方については考えたら負けですよディアナ様…」
「いいなぁ…あのシャツ、市井でも人気のアデラスタイルですよね?」
「地元では派手な色で大柄の模様をつけるのですが、生地の色そのままというのもイイですね。」
「ハッ!むしろ王族の僕等が着崩せば、全体的に涼しい格好が流行るのでは!?」
「セルジオ様、その考えは危険ですよ?」
「ディアナ様のアデラ式の衣装だってもっと流行っていいのに!」
「いきなりは難しいですよ。肌が出る仕様の服装はラムダでもエルムでも、貴族には特に忌避されがちですから。」
夏は汗をよく吸う綿の肌着に、サラサラの麻の半袖が定番のデイビッドを巡り、王族達も自分達の服装について協議している。
夏くらい、暑い時期くらい、快適に過ごせる服が着たい。
「その願い!このアニスが解決します!!」
目指すのは、フォーマル感を残しつつ、涼しく動きやすい素材を使い、爽やかで着心地の良い夏服。
肌触りと風通しを優先し、かつ、お洒落な一着を!
親善会では僅差で師匠に負けたアニスは、この夏のお洒落の常識を塗り替えるべく、再び燃えていた。
その甲斐あって、数日後には王族3人とテオ、テレンスの5人から夏全開アニスモードが開始された。
「着やすい!涼しい!動きやすい!」
「すっきりとして清楚で清潔な印象は残しつつ、見た目以上にラフ。素敵な夏仕様ですね!」
「エルムでも流行らないかなぁ…」
アニスの夏服は、かっちりとした服装を余儀なくされていた王族組には大好評だった。
「何故…僕まで…」
「よくお似合いですわよテオ様!」
ユェイはアデラの巻きスカートが気に入ってずっとそれで過ごしている。
テオと並ぶと南国調の取り合わせになり喜んでいた。
その次の日から、学園全体がラフで涼し気な服装で溢れたのは言うまでもない…
「ハァ…涼しい…」
一方でヴィオラは素肌の出る姿がはしたないという事で、麻のロングキュロットに、同じく裾がリボンになった麻のシャツを着(させられ)て過ごしていた。
ライラもお揃いのスタイルで、着替えも楽なので洗い替えも多めに用意してこの夏は重宝している。
皿の上にシャンシャンと降り積もる雪を眺め、こんもり山になったら好きなソースを掛けて涼と甘味を楽しんでいると、嫌なことも忘れてしまう。
「マズイわ…去年より快適過ぎる!!」
「何気に食事の味も質も更に上がりましたからね。」
「ここが研究室って忘れそうで怖いわ!」
「もう半分くらい忘れてるクセに…」
「私来年には卒業よ?!この先どうやって暮らせって言うの!?」(←実は家出娘)
「どうすんでしょうね。ここまで甘やかされて…」
迫る現実から目を背けるように、シェルリアーナは雪をすくって口に入れていた。
くつろぐ3人を横に、この日は少し書き物に専念していたデイビッドは、外から軽快なベルの音がして顔を上げた。
「若だ…デイビッド様!商会にお客様がいらしてます!」
「よぉテッド!悪いな知らせに来てもらって。暑いだろ?なんか飲んでくか?」
「ありがとうございます!喉カラカラなんですよ!」
冷たいソーダ水を開けるテッドは、毎日自転車を漕いでいるためすっかり日に焼けて肌が小麦色だ。
日焼けを忌避する王都の貴族からは考えられない事だろうが、これがなかなか様になっている。
本人も密かにデイビッドと同じ色になった自分の肌を誇らしく思っていた。
デイビッドはやりかけの仕事を残し、歩いて商会へ向かった。
ムスタ号は元がキリフ出身のため暑さには弱く、日陰で寝転がって動けない。
ファルコもガールフレンドの所からなかなか帰らないので、デイビッドはテッドの様に自転車の購入を検討していた。
(乗れなかねぇはず…なんだよな…)
商会に着く頃には汗もかき、人に会うなら着替えがいるかと考えていると、廊下から凛とした声が聞こえてきた
「あら、来てくれたのね?嬉しいわ、そのままでいいから少し話があるの、こちらへいらっしゃい。」
現れたのはマダム・ネリー。しかしなんだか機嫌が悪そうだ。
苛立つ女性の恐ろしさをよく知っているデイビッドは、素直に従った。
「ねぇ、これを見て頂戴。」
「これ…?ああ、最近噂の菓子職人ですか。」
渡された雑誌の片隅には、例のパティシエが写っていて、記事にはこう書かれている。
ー“新進気鋭のイケメンパティシエ!老舗ケーキ店に物申す!マダム・ネリーと一騎打ちか?!”ー
「いきなり私のお店に来てね、「ここのやり方はもう古くさいから、僕の傘下で新しいケーキを作りませんか?」なんて言い出したのよ?失礼しちゃうと思わない?!」
「そりゃずいぶんな自信家ですね。」
「だから私、こう言ってやったの。「私の一番弟子に勝てたら考えてあげるわ!」って。」
「それもなかなか好戦的な…」
「だからあなた、頑張ってね?」
「へ?あの…弟子って、まさか…」
「あなた以上の教え子が私にいると思って?ちょっとした年寄りのお願いよ、叶えて頂戴な?!」
「全っ然ちょっとじゃない!!叶えるって、相手はプロでしょ?!素人に毛が生えた程度の経験しかない俺にどうしろと?!」
「何言ってるの!姫殿下の舌を満足させた事はとっくに知れ渡っているわよ?」
「それは単に部屋に来てケーキ食ってくだけで…」
マダム・ネリーの菓子店は王家の御用達で有名だ。
だと言うのに、姫が別のケーキに心を移しているとなるとそれは問題となる。
王族の御用達は店にとってとても重要な看板。
その大切な看板がハリボテになる事だけは避けなければならない。
「それも学園生活に忙しい妃殿下のために、私の弟子が代わりに作ってると言うなら体面も保てるわ。その上、巷で有名な職人より腕があると実証されればこちらのプライドも守れるの。だから頑張って頂戴ね?」
「断らせる気ないですよね!?」
「涼しくなったら改めて知らせるわ。あちらさんもかなり気合を入れてるみたいだから、外で鉢合わせて先に喧嘩なんてしないように気をつけてね?」
「はいはいはい……」
深いため息をつくデイビッドとは逆に、闘志の湧いたマダムはニコニコしながら新しいレシピの材料を手に入れるべく供の者達と一緒に帰って行った。
(ま、暑い内はケーキ屋はみんな縮小するから、秋過ぎてからだな…)
また厄介事に巻き込まれ、どうするか考えていると、今度は明るい声が聞こえてくる。
「わ~かだ~んな~!!」
「リズ?!」
「エッへへへ!久しぶりだね。何か用があったの?」
「まぁな。そっちはどうだ?学園であんま顔見ねぇけど。」
「うん!資格の目処が立ちそうなんで、工房にこもらせてもらってるの!」
「ああ、あとひとつ取れたらって奴か?」
「そう!」
エリザベスは魔道具制作に必要な資格のため学園に通っていたが、それも残すところ一つとなり、ひとまず仕事に専念していた。
「資格の試験に丁度いい会場がなかなか見つからないんだって。」
「へぇ、なんか作らされるのか?」
「ううん?その逆で、解体とか分解の資格なんだ。意外と作るより大変なんだよ。」
「早いとこ見つかるといいな。」
「あとねあとね!アデラの王太子殿下から連絡来たよ!すっごい褒めてもらっちゃった!かなりしっかり調整したから、お披露目までもう少し!!」
「それが聞けて良かった。必要な物は揃えるから、言ってくれよ?!」
「ありがとう!あ、ところで今借りてる部屋って空間拡張付けても大丈夫?」
「部屋広げるのか?」
「うん、今イヴェットとルームシェアしてるの。」
「ああ!アイツ結局下宿先を出たって言ってたな!こっちに転がり込んでんのか!」
あれから貴族の肩書も家の恩恵も捨てたイヴェットは、ノープランで下宿先を解約してしまい、路頭に迷いかけているところを見かねたエリザベスが声を掛け、今は2人で生活しているそうだ。
63
あなたにおすすめの小説
国王一家は堅実です
satomi
恋愛
オスメーモ王国…そこは国王一家は麗しくいつも輝かんばかりのドレスなどを身につけている。
その実態は、国王一家は国民と共に畑を耕したり、国民(子供)に読み書きを教えたり庶民的な生活をしている。
国王には現在愛する妻と双子の男女の子に恵まれ、幸せに生活している。
外部に行くときは着飾るが、領地に戻れば庶民的で非常に無駄遣いをしない王族である。
国庫は大事に。何故か、厨房担当のワーグが王家の子どもたちからの支持を得ている。
『伯爵令嬢 爆死する』
三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。
その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。
カクヨムでも公開しています。
結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
傍観している方が面白いのになぁ。
志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」
とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。
その彼らの様子はまるで……
「茶番というか、喜劇ですね兄さま」
「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」
思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。
これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。
「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。
力は弱くて魔法も使えないけど強化なら出来る。~俺を散々こき使ってきたパーティの人間に復讐しながら美少女ハーレムを作って魔王をぶっ倒します
枯井戸
ファンタジー
──大勇者時代。
誰も彼もが勇者になり、打倒魔王を掲げ、一攫千金を夢見る時代。
そんな時代に、〝真の勇者の息子〟として生を授かった男がいた。
名はユウト。
人々は勇者の血筋に生まれたユウトに、類稀な魔力の才をもって生まれたユウトに、救世を誓願した。ユウトもまた、これを果たさんと、自身も勇者になる事を信じてやまなかった。
そんなある日、ユウトの元へ、ひとりの中性的な顔立ちで、笑顔が爽やかな好青年が訪ねてきた。
「俺のパーティに入って、世界を救う勇者になってくれないか?」
そう言った男の名は〝ユウキ〟
この大勇者時代にすい星のごとく現れた、〝その剣技に比肩する者なし〟と称されるほどの凄腕の冒険者である。
「そんな男を味方につけられるなんて、なんて心強いんだ」と、ユウトはこれを快諾。
しかし、いままで大した戦闘経験を積んでこなかったユウトはどう戦ってよいかわからず、ユウキに助言を求めた。
「戦い方? ……そうだな。なら、エンチャンターになってくれ。よし、それがいい。ユウトおまえはエンチャンターになるべきだ」
ユウトは、多少はその意見に疑問を抱きつつも、ユウキに勧められるがまま、ただひたすらに付与魔法(エンチャント)を勉強し、やがて勇者の血筋だという事も幸いして、史上最強のエンチャンターと呼ばれるまでに成長した。
ところが、そればかりに注力した結果、他がおろそかになってしまい、ユウトは『剣もダメ』『付与魔法以外の魔法もダメ』『体力もない』という三重苦を背負ってしまった。それでもエンチャンターを続けたのは、ユウキの「勇者になってくれ」という言葉が心の奥底にあったから。
──だが、これこそがユウキの〝真の〟狙いだったのだ。
この物語は主人公であるユウトが、持ち前の要領の良さと、唯一の武器である付与魔法を駆使して、愉快な仲間たちを強化しながら成り上がる、サクセスストーリーである。
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
【完結】婚約破棄される未来見えてるので最初から婚約しないルートを選びます
22時完結
恋愛
レイリーナ・フォン・アーデルバルトは、美しく品格高い公爵令嬢。しかし、彼女はこの世界が乙女ゲームの世界であり、自分がその悪役令嬢であることを知っている。ある日、夢で見た記憶が現実となり、レイリーナとしての人生が始まる。彼女の使命は、悲惨な結末を避けて幸せを掴むこと。
エドウィン王子との婚約を避けるため、レイリーナは彼との接触を避けようとするが、彼の深い愛情に次第に心を開いていく。エドウィン王子から婚約を申し込まれるも、レイリーナは即答を避け、未来を築くために時間を求める。
悪役令嬢としての運命を変えるため、レイリーナはエドウィンとの関係を慎重に築きながら、新しい道を模索する。運命を超えて真実の愛を掴むため、彼女は一人の女性として成長し、幸せな未来を目指して歩み続ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる