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7代目デュロック辺境伯爵編
辺境の地へ
夏休み目前、一学期終業まで1週間を切った。
学生達は最後のテストに余力を振り絞り、来る休暇に各々向けて思いを馳せている。
そんな中、デイビッドはハルフェン侯爵家への抗議文と、アーネストへしばらく王都を空けることの報告を書いていた。
その後乳児院へも改めて謝罪に行き、また子供たちに色々振る舞って一仕事終えると、商会で急ぎの書類がないかだけ確認し、留守を頼むついでにエリザベス達へも話を通しておいた。
「へぇ~!じゃ、しばらく会えないのかぁ…さみしいなぁ!」
「休み明けには戻って来るからよ。それまでに例の物だけは頼む!」
「オッケ~イ!楽しみにしててよぉ~!?お土産よろしくね!」
何やら約束を交わし、だいぶ乗り慣れた自転車に跨って来た道を戻って行くと、今度はテッドが現れた。
「デイビッド様!いいですね、その自転車!」
「よぉテッド!お前がいつも乗ってるの見てて、俺にも乗れねぇかと思ってよ。」
「え?僕の自転車見ててくれてたんですか?!嬉しいなぁ!」
「まだ街中は慣れねぇけど、馬車用の道路なら速さも出せるようになった。」
「転ばないよう気を付けて下さいね!」
「練習以降コケてはねぇよ。」
旅の用品を買い込み、いつもより多めに現金を持って学園へ戻ると、放課後で門番が交代しウィルムが立っていた。
「お疲れ様であります!!」
「へぇ~真面目に続いてんだな。」
デイビッドは詰所の顔馴染みに差し入れを渡すと、留守にすることを伝え研究室へ戻って行った。
「やっぱ足は船に決めた。」
「それがいいですよ。ムスタも暑さには弱いですし、ファルコも当分帰って来そうにありませんしね。」
「領地にグリフォンがいるんでどうするか考えてたら、いつの間にか人が入れなくなっててよ…」
「あー…あの中も妖精がわんさか居ますからねぇ…」
先日、アーネストからの知らせで、貴族院の領地管理関係の者達が、抜き打ちでデイビッドの領地の様子を見に行ったところ、目的地へ辿り着けず帰って来たと聞かされ、試しに行ってみると、デイビッドが近づく時だけ道が開かれる事が分かった。
念の為転移門も切って来たので、留守の間あの領地には誰も入ることは出来ない。
「万全のセキュリティ…」
「鉄壁要塞なんかより頼りになるな…」
全く、精霊様々だ。
(さてと…船旅か…ヴィオラは大丈夫かな?)
酔い止めや他の薬なども用意し、着替えをトランクに詰め込んでも、いつもの荷物の半分も無い。
野営道具も自前の用意もいらないので、荷物は最低限で良い。
それでも自衛と万一の時のために、刃物はいくらか持って行く。
一番荷物が多いのがライラ。着替えにおしめによだれ掛け、上着、帽子、お気に入りの布団とぬいぐるみ。タオル、塗り薬、オヤツ…どれだけ鞄に詰めても何か足りないような気がしてしまう。
「後は現地調達でいいか。」
「貴族のお出かけなんて普通はほぼ現地調達ですよ…」
テスト期間中は、ヴィオラは部屋へはほとんど帰って来ない。
代わりに朝だけ現れ、とびきり甘やかされてお弁当を持って出ていくのだ。
今朝はもっちもちのクランペットにたっぷりのジャムと、オムレツにソーセージ。
大好きなコーンスープにはクルトンを山と浮かべて食べる。
淑女としてはややはしたないのだろうが、デイビッドはそんな事気にもせず、いつもヴィオラが美味しいと思う方を勧めてくれる。
(これが天然の甘やかしか…)
デイビッドのやり口は、放任で好き勝手させるのではなく、礼節も作法も踏まえた相手の“口に出せない望み”をそっと後押しするというもの。
だから人は簡単に堕ちてしまう。
人前ではできないがやってみたい、誰にも言えないが実は好き、こっそりと楽しみにしている秘密を、“ここだけ”という甘い誘惑と共に許されてしまうので抗えないのだ。
改めて、人の心の隙を入り込むのが上手いデイビッドに、エリックは舌を巻いた。
「デイビッド様にメガネ掛けたらカッコいいかなぁ…」
自習室の片隅に集まった女生徒達の中で、ヴィオラが虚ろな目で何か呟いている。
「ヴィオラが疲れたからそろそろ休憩にしましょ!」
「今日はだいぶ長かったね。」
「先に食べたジャムサンドクッキーが効いたのかもね。」
ヴィオラは集中力が長い方なので、そのヴィオラが思考停止するタイミングを目処に友人達も休憩を入れている。
「今日のオヤツなぁに?」
「さっきのクッキーの残りと、わぁ!見てオレンジのケーキ!」
「ちゃんと人数分と少し余る程度入れてるのね。」
「これをお弁当付きで毎日…」
「マメ通り越してそういう機械みたい。」
この日は元々中の良かった6人で集まって勉強会。
高得点を取らねばならない特待生は、明日のテストにも気が抜けない。
「今読んでる小説のセリフ言ってくれないかなぁ…」
「その気持ちわかる!私もロナルド様に言われたいセリフいっぱいある!」
「2人は何読んでるの?」
「これ…」
「なになに…“捨てられ王女の魔境生活”?ヴィオラこんなの読むの!?」
「私のはコレ!“婚約破棄されたので新たに迎えた最強の旦那様とお礼参り致します!”ってやつ!今2巻目!」
ヴィオラは女性が主人公の冒険譚。ソフィアは恋愛要素の多い復讐劇。どちらも女性向けの娯楽小説だ。
「今流行りの恋愛小説でしょ?」
「ローラも似たの書いてるよね。」
「私のは「なんか毛色が違うね」って言われて、どこのジャンルにも属してない!」
「ミランダはメルバシリーズ読破したんだっけ?」
「後は外伝版と最新刊読み切ったら終わり…続編出るまで辛いかも…」
「アニスも何か読んでるの?」
「私は“お針子の成り上がり~王宮専属テーラーの秘密~”」
「読む本までブレないのすごい。」
束の間のお喋りに花を咲かせる少女達は、今日も明日もテスト勉強に勤しむのであった。
「そうですか、ご領地に帰省されると…」
「え!?デュロック先生休みの間いなくなっちゃうの?」
「まぁ、それでは何かステキなお話があったらお聞かせ下さいな!」
「道中お気をつけテ!」
「いいなぁー!思いっきりバカンス旅行じゃないですか!私は留学前だからって遊ばせてもらえなかったのに!」
王族組にも話を通し、それぞれに日持ちする焼き菓子などを渡したりしていると、いよいよ出発の日がやって来た。
「午後に馬車を手配してあるから、テストが終わったら荷物を持って来てくれ。」
「はいっ!それでは最後のテスト行って来ます!!」
新作のホワイトチョコとレモンピール入りのふわふわパネトーネをいくつも持ってヴィオラが廊下へ出て行った。こちらも友人達に配るらしい。
デイビッドは眠っているライラを起こさないよう、手持ちの軽食を作っていると、トムティットが鏡から現れて手招きして来た。
「ちょいとちょいと、こっち来て見てよ黒豚ちゃん!!」
「なんだよ、今忙し…」
言いかけて、デイビッドは思わず手を止めた。
「じゃ~~ん!!すっげぇな、あの元王子様!妖魔の俺でもこれは感動したぜ!?」
トムティットが支える大きなカンバスには、花の咲く泉の絵が描かれていた。水面に飛び交う妖精と、水に映る白い服の乙女の横顔が物悲しくも美しい。
ラフ画しか目にしなかったため、完成した絵画の迫力には、流石のデイビッドも脱帽するしかない。
「なんだよ…これでプロじゃねぇって、嘘だろ?」
「あと、こっちも出来たって。」
渡された紙の方には、劇場で人気の女優が踊る絵と、銀色の妖精画が、注文通り描かれていた。
こちらも繊細で、しかし躍動感と大胆な構図でしっかりと描いてある。
「一気に仕上げたのか!?あれからまだ1週間くらいしか経ってねぇのに!」
「んで、アイツ今何してると思う?新しい絵描くのに夢中になってんの!」
「そりゃ世話が大変だなぁ。」
「食い物が傷まないようにだけしてやんねぇと、差し入れすら忘れて放ったらかしちまうから、簡易の保冷庫入れてやってよ。」
「んじゃ、今回の報酬と合わせて送ってやるか。」
デイビッドはカンバスに布をかけ、仕事用の絵を丁寧にしまい、満足そうにした。
「あとコレ!すげぇ大事な物なんだって、預かった。」
「ノートも描いてたのか!?」
「なんか…絵を描く間のひと休みに描いてんだとよ…絵を!」
「よっぽど好きなんだろうな。」
何やら手紙の挟まったノートを、デイビッドはこっそりミランダに届け、念を押して秘密を守るように伝えた。
ミランダは深く頭を下げ、それはもう大切そうにノートを鞄へしまった。
「先生ありがとう!はい、こっちは私のノート。また届けてくれますか?」
「もちろん。だだし、誰にも言うなよ?頼むから詮索はしないでくれ。そしたらまた持って来る。」
「誰にも言いません!絶対!」
トムティットにノートを渡し、騎士科にまた留守の間の家畜の世話を頼んで鍵を預けると、ムスタの世話をしてやる。
「やんちゃな弟分が居なくて精々するか?」
「ブルルル…」
「…やっぱさみしいか。帰って来たらまた良くしてやってくれよ?」
背中にブラシを当て、餌を足して寝藁を新しくすると、外から馬車の音が聞こえて来た。
「終わりました!!!」
勢い良く壁から飛び出て来たヴィオラは、手に大きな旅行鞄を持ち、いつもより少しお洒落をしている。
「時間なの?待ちくたびれたわよ!」
シェルリアーナも他所行きのパンツスタイルに、小さなトランクを持って現れた。
「よし、行くか!」
馬車にはエリックとシェルリアーナが隣同士、その向かいにヴィオラとライラを抱いたデイビッドが並んで座る。
まずは運河の港まで数時間の馬車の旅が始まった。
学生達は最後のテストに余力を振り絞り、来る休暇に各々向けて思いを馳せている。
そんな中、デイビッドはハルフェン侯爵家への抗議文と、アーネストへしばらく王都を空けることの報告を書いていた。
その後乳児院へも改めて謝罪に行き、また子供たちに色々振る舞って一仕事終えると、商会で急ぎの書類がないかだけ確認し、留守を頼むついでにエリザベス達へも話を通しておいた。
「へぇ~!じゃ、しばらく会えないのかぁ…さみしいなぁ!」
「休み明けには戻って来るからよ。それまでに例の物だけは頼む!」
「オッケ~イ!楽しみにしててよぉ~!?お土産よろしくね!」
何やら約束を交わし、だいぶ乗り慣れた自転車に跨って来た道を戻って行くと、今度はテッドが現れた。
「デイビッド様!いいですね、その自転車!」
「よぉテッド!お前がいつも乗ってるの見てて、俺にも乗れねぇかと思ってよ。」
「え?僕の自転車見ててくれてたんですか?!嬉しいなぁ!」
「まだ街中は慣れねぇけど、馬車用の道路なら速さも出せるようになった。」
「転ばないよう気を付けて下さいね!」
「練習以降コケてはねぇよ。」
旅の用品を買い込み、いつもより多めに現金を持って学園へ戻ると、放課後で門番が交代しウィルムが立っていた。
「お疲れ様であります!!」
「へぇ~真面目に続いてんだな。」
デイビッドは詰所の顔馴染みに差し入れを渡すと、留守にすることを伝え研究室へ戻って行った。
「やっぱ足は船に決めた。」
「それがいいですよ。ムスタも暑さには弱いですし、ファルコも当分帰って来そうにありませんしね。」
「領地にグリフォンがいるんでどうするか考えてたら、いつの間にか人が入れなくなっててよ…」
「あー…あの中も妖精がわんさか居ますからねぇ…」
先日、アーネストからの知らせで、貴族院の領地管理関係の者達が、抜き打ちでデイビッドの領地の様子を見に行ったところ、目的地へ辿り着けず帰って来たと聞かされ、試しに行ってみると、デイビッドが近づく時だけ道が開かれる事が分かった。
念の為転移門も切って来たので、留守の間あの領地には誰も入ることは出来ない。
「万全のセキュリティ…」
「鉄壁要塞なんかより頼りになるな…」
全く、精霊様々だ。
(さてと…船旅か…ヴィオラは大丈夫かな?)
酔い止めや他の薬なども用意し、着替えをトランクに詰め込んでも、いつもの荷物の半分も無い。
野営道具も自前の用意もいらないので、荷物は最低限で良い。
それでも自衛と万一の時のために、刃物はいくらか持って行く。
一番荷物が多いのがライラ。着替えにおしめによだれ掛け、上着、帽子、お気に入りの布団とぬいぐるみ。タオル、塗り薬、オヤツ…どれだけ鞄に詰めても何か足りないような気がしてしまう。
「後は現地調達でいいか。」
「貴族のお出かけなんて普通はほぼ現地調達ですよ…」
テスト期間中は、ヴィオラは部屋へはほとんど帰って来ない。
代わりに朝だけ現れ、とびきり甘やかされてお弁当を持って出ていくのだ。
今朝はもっちもちのクランペットにたっぷりのジャムと、オムレツにソーセージ。
大好きなコーンスープにはクルトンを山と浮かべて食べる。
淑女としてはややはしたないのだろうが、デイビッドはそんな事気にもせず、いつもヴィオラが美味しいと思う方を勧めてくれる。
(これが天然の甘やかしか…)
デイビッドのやり口は、放任で好き勝手させるのではなく、礼節も作法も踏まえた相手の“口に出せない望み”をそっと後押しするというもの。
だから人は簡単に堕ちてしまう。
人前ではできないがやってみたい、誰にも言えないが実は好き、こっそりと楽しみにしている秘密を、“ここだけ”という甘い誘惑と共に許されてしまうので抗えないのだ。
改めて、人の心の隙を入り込むのが上手いデイビッドに、エリックは舌を巻いた。
「デイビッド様にメガネ掛けたらカッコいいかなぁ…」
自習室の片隅に集まった女生徒達の中で、ヴィオラが虚ろな目で何か呟いている。
「ヴィオラが疲れたからそろそろ休憩にしましょ!」
「今日はだいぶ長かったね。」
「先に食べたジャムサンドクッキーが効いたのかもね。」
ヴィオラは集中力が長い方なので、そのヴィオラが思考停止するタイミングを目処に友人達も休憩を入れている。
「今日のオヤツなぁに?」
「さっきのクッキーの残りと、わぁ!見てオレンジのケーキ!」
「ちゃんと人数分と少し余る程度入れてるのね。」
「これをお弁当付きで毎日…」
「マメ通り越してそういう機械みたい。」
この日は元々中の良かった6人で集まって勉強会。
高得点を取らねばならない特待生は、明日のテストにも気が抜けない。
「今読んでる小説のセリフ言ってくれないかなぁ…」
「その気持ちわかる!私もロナルド様に言われたいセリフいっぱいある!」
「2人は何読んでるの?」
「これ…」
「なになに…“捨てられ王女の魔境生活”?ヴィオラこんなの読むの!?」
「私のはコレ!“婚約破棄されたので新たに迎えた最強の旦那様とお礼参り致します!”ってやつ!今2巻目!」
ヴィオラは女性が主人公の冒険譚。ソフィアは恋愛要素の多い復讐劇。どちらも女性向けの娯楽小説だ。
「今流行りの恋愛小説でしょ?」
「ローラも似たの書いてるよね。」
「私のは「なんか毛色が違うね」って言われて、どこのジャンルにも属してない!」
「ミランダはメルバシリーズ読破したんだっけ?」
「後は外伝版と最新刊読み切ったら終わり…続編出るまで辛いかも…」
「アニスも何か読んでるの?」
「私は“お針子の成り上がり~王宮専属テーラーの秘密~”」
「読む本までブレないのすごい。」
束の間のお喋りに花を咲かせる少女達は、今日も明日もテスト勉強に勤しむのであった。
「そうですか、ご領地に帰省されると…」
「え!?デュロック先生休みの間いなくなっちゃうの?」
「まぁ、それでは何かステキなお話があったらお聞かせ下さいな!」
「道中お気をつけテ!」
「いいなぁー!思いっきりバカンス旅行じゃないですか!私は留学前だからって遊ばせてもらえなかったのに!」
王族組にも話を通し、それぞれに日持ちする焼き菓子などを渡したりしていると、いよいよ出発の日がやって来た。
「午後に馬車を手配してあるから、テストが終わったら荷物を持って来てくれ。」
「はいっ!それでは最後のテスト行って来ます!!」
新作のホワイトチョコとレモンピール入りのふわふわパネトーネをいくつも持ってヴィオラが廊下へ出て行った。こちらも友人達に配るらしい。
デイビッドは眠っているライラを起こさないよう、手持ちの軽食を作っていると、トムティットが鏡から現れて手招きして来た。
「ちょいとちょいと、こっち来て見てよ黒豚ちゃん!!」
「なんだよ、今忙し…」
言いかけて、デイビッドは思わず手を止めた。
「じゃ~~ん!!すっげぇな、あの元王子様!妖魔の俺でもこれは感動したぜ!?」
トムティットが支える大きなカンバスには、花の咲く泉の絵が描かれていた。水面に飛び交う妖精と、水に映る白い服の乙女の横顔が物悲しくも美しい。
ラフ画しか目にしなかったため、完成した絵画の迫力には、流石のデイビッドも脱帽するしかない。
「なんだよ…これでプロじゃねぇって、嘘だろ?」
「あと、こっちも出来たって。」
渡された紙の方には、劇場で人気の女優が踊る絵と、銀色の妖精画が、注文通り描かれていた。
こちらも繊細で、しかし躍動感と大胆な構図でしっかりと描いてある。
「一気に仕上げたのか!?あれからまだ1週間くらいしか経ってねぇのに!」
「んで、アイツ今何してると思う?新しい絵描くのに夢中になってんの!」
「そりゃ世話が大変だなぁ。」
「食い物が傷まないようにだけしてやんねぇと、差し入れすら忘れて放ったらかしちまうから、簡易の保冷庫入れてやってよ。」
「んじゃ、今回の報酬と合わせて送ってやるか。」
デイビッドはカンバスに布をかけ、仕事用の絵を丁寧にしまい、満足そうにした。
「あとコレ!すげぇ大事な物なんだって、預かった。」
「ノートも描いてたのか!?」
「なんか…絵を描く間のひと休みに描いてんだとよ…絵を!」
「よっぽど好きなんだろうな。」
何やら手紙の挟まったノートを、デイビッドはこっそりミランダに届け、念を押して秘密を守るように伝えた。
ミランダは深く頭を下げ、それはもう大切そうにノートを鞄へしまった。
「先生ありがとう!はい、こっちは私のノート。また届けてくれますか?」
「もちろん。だだし、誰にも言うなよ?頼むから詮索はしないでくれ。そしたらまた持って来る。」
「誰にも言いません!絶対!」
トムティットにノートを渡し、騎士科にまた留守の間の家畜の世話を頼んで鍵を預けると、ムスタの世話をしてやる。
「やんちゃな弟分が居なくて精々するか?」
「ブルルル…」
「…やっぱさみしいか。帰って来たらまた良くしてやってくれよ?」
背中にブラシを当て、餌を足して寝藁を新しくすると、外から馬車の音が聞こえて来た。
「終わりました!!!」
勢い良く壁から飛び出て来たヴィオラは、手に大きな旅行鞄を持ち、いつもより少しお洒落をしている。
「時間なの?待ちくたびれたわよ!」
シェルリアーナも他所行きのパンツスタイルに、小さなトランクを持って現れた。
「よし、行くか!」
馬車にはエリックとシェルリアーナが隣同士、その向かいにヴィオラとライラを抱いたデイビッドが並んで座る。
まずは運河の港まで数時間の馬車の旅が始まった。
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