399 / 511
7代目デュロック辺境伯爵編
初ダンジョン
湖を渡る風が吹き抜け、朝の澄んだ空気が心地良い。
「風が気待ちいいですね!」
「朝ごはんどうしましょ?」
「ひとまず街まで出よう。駅の周りには確かいい店がけっこう出て…」
言いかけたデイビッドが突如足を振り上げ、エリックを蹴り飛ばした。
「んなっっ!!?」
「キャァ!」
同時にヴィオラを引き寄せ、自分も橋の欄干まで跳び退く。
次の瞬間、橋の真ん中に狩り用の短い矢が2本突き刺さった。
「上だぜ、兄さん!」
ヴィオラの頭を庇うデイビッドの横からトムティットが叫び、エリックは視界に入ったナニかに向けて風の刃を飛ばした。
しかし相手はすばしっこく、姿を捉える事もできず、取り逃してしまった。
「今のは…妖精?」
「妖精…ってより、あの気配は使い魔に近いな。なんだろ?俺もよく見えなかった…」
「ド…ドキドキしました!」
「今の殺気…間違いねぇ!前にサビ斧投げて来やがったヤツの仕業だ!」
「良く気が付きましたねぇ…いきなり蹴っ飛ばされたもんで、何事かと思いましたよ。」
「俺が声かけるより先に気付くとか、どんだけいい勘してんのよ?」
腰を擦りながら立ち上がったエリックは、服の砂を払い忌々し気に空中を睨み付けていた。
「売られた喧嘩、いくらで買います?」
「誰が買うかよ。安い挑発だ。ほっとけ、ここはデュロックだぞ?つまんねぇ事に時間取られちゃ勿体ねぇ。」
デイビッドはヴィオラが怪我をしていないか確認すると、橋を渡り切り、馬車を拾ってまた駅まで向かって行った。
恐ろしい目に遭ったと言うのに、デイビッドに守られている安心感からか、ヴィオラは全く怖がってはいなかった。
「大きなサンドイッチ!あっちはふわふわ系のワッフル!クレープは甘いのとしょっぱいのがあって!どれから食べましょう!?」
「全制覇する気か…?」
「車内に持ち込めるように、手で持って食べられる軽食がたくさんありますね。」
「こっちはチュロス!?おい、砂糖を振りまくな!」
「じゃ、乗る前に食べちゃいますね。」
「4本一気食い!?いつも思うけどお前の胃袋ってどうなってんだ?!」
まだ人の少ない駅の待ち合いのベンチで、朝ごはんの代わりにふわふわのイチゴワッフルを食べるヴィオラと、ローストビーフのサンドイッチの箱を膝に乗せたエリックが、楽しそうに線路を行き交う列車を眺めている。
ヴィオラは汽車がすっかり気に入ったようだ。
「このままサウラリースまで戻るつもりでいるが、寄りたい所とかあるか?」
「私は早くサウラリースに戻りたいです!」
「わかった。じゃぁ、このまま急行で行っちまおう!」
デイビッドは各駅停車の普通運行の便でなく、特急の特別機関車の切符を買い、一番奥の路線にヴィオラを案内した。
中にコンパートメントはなく、速さを重視した軽量車となっている。
甲高い汽笛の音がして車輪が動くと、一気にトップスピードまで加速した。
「早ぁぁい!!」
「最速の新型魔導機関車だとよ。」
「これは予想以上の速さですね!」
あっという間に終着駅へ着くと、サウラリース行きの馬車を拾い、今度はのんびりと入り口の門へ向かった。
「お帰りなさいませデブロック様!!」
顔パスで門を潜ると、市長のガムデルムが出迎えに来ていた。
「ご無事で何よりでございます!」
「婆ちゃんはどうしてる?」
「それは楽しそうにお孫様のお世話をされておりましたよ。今朝もウルヴスの街中を2人で散歩されて、皆に自慢なさって…」
「楽しんでるなら良かった…」
「小間使いにパンタスをつけておりますのでご安心下さい!」
「あ、アレか…」
通りの向こうの人混みに赤肌の大男が見える。
ライラはその大きな背中に肩車され、それはもうご機嫌の様だ。
「ンキャキャキャ!!」
「あら、デイビッド。もう戻って来たの?もう少し出かけて来なさいよ。私はライラちゃんとまだ遊び足りないわ。」
「パワフルな婆さんだな…」
「ご安心下さい。ワタシがしかとお世話いたしますので。」
「悪いな、パンさん…」
朝の市場に向かうライラ達と分かれると、デイビッドは手鏡を取り出し、トムティットにシェルリアーナの様子を尋ねた。
「アイツ等どうしてる?」
「ん~…あー、明け方近くまで話し込んでたからな、師弟揃ってまだ寝てら。」
「なら、街ん中回って来るか。」
「そうします!」
サウラリースはウルヴスを中心に5つの地区に別れ、森とダンジョンのある4つ目の地区は冒険者のための街となり、商業区の他は居住区や田畑となっている。
デイビッド達が出入りした入り口と反対側の門からは、デュロック領の各地の農作物や輸入品も運ばれて来て更に賑やかだそうだ。
ヴィオラはウルヴスの街中を見て回り、行き交う人々と知らない品々に興奮しっぱなしだった。
「何か入ったミルクがありますよ!?」
「沈んでるのはマンドラゴラの実と、トレントの根っこから作った餅だな。水牛のミルクで花茶を煮出して、クロミツアリの焦がし蜜を加えてあるらしい。」
「濃くて甘くてモチモチで美味しい!」
「溶けないアイスってなんでしょう?」
「溶かしたスライムに水飴とか生クリームなんか加えてひたすら混ぜると、なんかフワフワしたムースみたいなもんができ上がるんだよ。それをアイスに見立ててるんだな。」
「あの串焼きは…肉ですか?」
「大カタツムリの肉だ…貝に似た味がして酒飲みには好まれるらしい。」
「ミミックの塩茹で?」
「擬態型の魔物の中でも、甲殻類に近い奴はカニやエビと同じに扱われるんだ。あれはその脚の部分だよ。」
「なんですかアレ?!すごく小さい豚の丸焼き?!」
「あれは本物の豚じゃなくてキノコなんだ。ああやって他の生き物を真似て、そっくりな形に育つ面白い性質を持ってるのがあってな。胞子の時に特定の生物を近くに放すとその通りの姿になるんだ。」
ペラペラ説明するデイビッドを見て、ガムデルムは感心していた。
「デブロック様、すっかり博識になられて…ガムは嬉しゅうございます。」
「大袈裟だろ!」
「逃げ出した歩きキノコに追われて泣いていらした坊が、こんなに頼もしくなられて…」
「いつの話だそれ!!」
ガムデルムの話すデイビッドの幼少時の思い出に、ヴィオラはなんだか心が温かくなった。
デイビッドの人生には、きちんと手放しで楽しい時代もあったのだと知れて、一層サウラリースが好きになる。
「あのお店…コカトリスの尻尾の串焼きですって!?」
「コカトリスは尾蛇類だから、蛇肉の部分だ。」
「そんな珍しい物までいるんですか!?」
「魔素溜まりには出るんだよ。特に地下には。」
「ダンジョン…入ってみたい!」
「うーん…どう思う?エリック。」
「初心者用の浅いとこなら、そこらの森と変わらない程度ですから同伴して差し上げても良いのでは?」
「行きたいです!デイビッド様ぁ!」
「しゃぁない、行ってみるかぁ…」
「おお!ならば紹介状を出しますので、ご一緒させて下さい!」
赤い鱗のダチョウ型のトカゲが引く二輪車に乗って、目指すは世界樹の切り株。
ヴィオラはわくわくしながら大きく膨らんだ鞄を抱きしめていた。
やがて4人は巨大な切り株のそびえる街にやってきた。
ウルヴスよりも更に土地が低く、空が遠いこの街は、冒険者専用と言っても過言ではない。
地下迷宮の探索と滞在に特化した店がほとんどで、後は酒場と飯屋しかないそうだ。
人口密度の最も高い、冒険者の聖地“クロッツ”。
明るい雰囲気のウルヴスと違い、どこか緊張した空気が漂っている。
日々命懸けで戦う者達の集う場所だけあり、初心者ではとても1人では歩けそうにない。
「ファーストプレートの方ですと、ギルドはこちらがよろしいでしょう!」
ガムデルムの案内で入ったギルドにも人は多く、これからダンジョンに潜る者達が集まっているため、異様な熱気に包まれていた。
ウルヴス市長の推薦なのですんなり受付が済み、デイビッドはプレートを出すと同伴者の申請を出し、ヴィオラに特殊な魔法陣の彫られた簡易魔道具を渡した。
「これは?」
「1回使い切りの転移魔道具だよ。なんかあったらそれで同伴者を先に逃がすんだ。」
「初心者用の浅層ではほとんど使いませんけどね。」
「探索時に必ず持ってくお守りみたいなもんさ。この街を出ると効果が切れるから、使わなかったら返却してくといい。」
荷物をギルドに預け、必要な道具を持ったら、いざダンジョンの入り口へ。
「お気を付けて!」
「行ってきまーす!!」
仕事に戻るガムデルムに手を振り、一行は遂に薄暗いダンジョンの中へと入って行った。
「スゴい!ここがダンジョン!!」
「足元、気をつけろよ?」
「人がいっぱいいますね!」
「みんな駆け出しの冒険者の卵だよ。」
「ここは観光地に近い場所ですからね。賑わってるんですよ。」
エリックの灯す光魔法で明かりを得ると、奥の開けた場所で洞窟が何本も別れていた。
「え~と…採集、採掘、狩猟、探索、地下街…地下街?」
「この地下にも街があるんだ。それ目的の場合ギルドを通さなくても直通で行ける道もある。地上の街より治安が悪いから初心者向けじゃねぇよ。俺もまだ行った事がないんだ。」
「デイビッド様も知らない街があるなんて!行ってみたい!」
「年齢制限もあるから、ヴィオラは入り口で帰されるぞ。」
「そんな!!」
どんな街にも必ず影はある。
サウラリースの黒い部分は、全てこの地下街に沈んでいると言っても良い。
無放地帯とまではいかないが、司法の手は届かず、街を牛耳る複数人の主が統治する所謂「裏街」だ。犯罪率も高く、サウラリースに居られない無法者や犯罪者も潜む、かなりグレーな街だそうだ。
無論、未成年も初心者も立ち入りお断り。
正規の入り口には人が立っていて、プレートを確認し、それぞれ目的にあった道へ通してくれる。
番人達はがっかりするヴィオラを見て微笑まし気に笑っていた。
「風が気待ちいいですね!」
「朝ごはんどうしましょ?」
「ひとまず街まで出よう。駅の周りには確かいい店がけっこう出て…」
言いかけたデイビッドが突如足を振り上げ、エリックを蹴り飛ばした。
「んなっっ!!?」
「キャァ!」
同時にヴィオラを引き寄せ、自分も橋の欄干まで跳び退く。
次の瞬間、橋の真ん中に狩り用の短い矢が2本突き刺さった。
「上だぜ、兄さん!」
ヴィオラの頭を庇うデイビッドの横からトムティットが叫び、エリックは視界に入ったナニかに向けて風の刃を飛ばした。
しかし相手はすばしっこく、姿を捉える事もできず、取り逃してしまった。
「今のは…妖精?」
「妖精…ってより、あの気配は使い魔に近いな。なんだろ?俺もよく見えなかった…」
「ド…ドキドキしました!」
「今の殺気…間違いねぇ!前にサビ斧投げて来やがったヤツの仕業だ!」
「良く気が付きましたねぇ…いきなり蹴っ飛ばされたもんで、何事かと思いましたよ。」
「俺が声かけるより先に気付くとか、どんだけいい勘してんのよ?」
腰を擦りながら立ち上がったエリックは、服の砂を払い忌々し気に空中を睨み付けていた。
「売られた喧嘩、いくらで買います?」
「誰が買うかよ。安い挑発だ。ほっとけ、ここはデュロックだぞ?つまんねぇ事に時間取られちゃ勿体ねぇ。」
デイビッドはヴィオラが怪我をしていないか確認すると、橋を渡り切り、馬車を拾ってまた駅まで向かって行った。
恐ろしい目に遭ったと言うのに、デイビッドに守られている安心感からか、ヴィオラは全く怖がってはいなかった。
「大きなサンドイッチ!あっちはふわふわ系のワッフル!クレープは甘いのとしょっぱいのがあって!どれから食べましょう!?」
「全制覇する気か…?」
「車内に持ち込めるように、手で持って食べられる軽食がたくさんありますね。」
「こっちはチュロス!?おい、砂糖を振りまくな!」
「じゃ、乗る前に食べちゃいますね。」
「4本一気食い!?いつも思うけどお前の胃袋ってどうなってんだ?!」
まだ人の少ない駅の待ち合いのベンチで、朝ごはんの代わりにふわふわのイチゴワッフルを食べるヴィオラと、ローストビーフのサンドイッチの箱を膝に乗せたエリックが、楽しそうに線路を行き交う列車を眺めている。
ヴィオラは汽車がすっかり気に入ったようだ。
「このままサウラリースまで戻るつもりでいるが、寄りたい所とかあるか?」
「私は早くサウラリースに戻りたいです!」
「わかった。じゃぁ、このまま急行で行っちまおう!」
デイビッドは各駅停車の普通運行の便でなく、特急の特別機関車の切符を買い、一番奥の路線にヴィオラを案内した。
中にコンパートメントはなく、速さを重視した軽量車となっている。
甲高い汽笛の音がして車輪が動くと、一気にトップスピードまで加速した。
「早ぁぁい!!」
「最速の新型魔導機関車だとよ。」
「これは予想以上の速さですね!」
あっという間に終着駅へ着くと、サウラリース行きの馬車を拾い、今度はのんびりと入り口の門へ向かった。
「お帰りなさいませデブロック様!!」
顔パスで門を潜ると、市長のガムデルムが出迎えに来ていた。
「ご無事で何よりでございます!」
「婆ちゃんはどうしてる?」
「それは楽しそうにお孫様のお世話をされておりましたよ。今朝もウルヴスの街中を2人で散歩されて、皆に自慢なさって…」
「楽しんでるなら良かった…」
「小間使いにパンタスをつけておりますのでご安心下さい!」
「あ、アレか…」
通りの向こうの人混みに赤肌の大男が見える。
ライラはその大きな背中に肩車され、それはもうご機嫌の様だ。
「ンキャキャキャ!!」
「あら、デイビッド。もう戻って来たの?もう少し出かけて来なさいよ。私はライラちゃんとまだ遊び足りないわ。」
「パワフルな婆さんだな…」
「ご安心下さい。ワタシがしかとお世話いたしますので。」
「悪いな、パンさん…」
朝の市場に向かうライラ達と分かれると、デイビッドは手鏡を取り出し、トムティットにシェルリアーナの様子を尋ねた。
「アイツ等どうしてる?」
「ん~…あー、明け方近くまで話し込んでたからな、師弟揃ってまだ寝てら。」
「なら、街ん中回って来るか。」
「そうします!」
サウラリースはウルヴスを中心に5つの地区に別れ、森とダンジョンのある4つ目の地区は冒険者のための街となり、商業区の他は居住区や田畑となっている。
デイビッド達が出入りした入り口と反対側の門からは、デュロック領の各地の農作物や輸入品も運ばれて来て更に賑やかだそうだ。
ヴィオラはウルヴスの街中を見て回り、行き交う人々と知らない品々に興奮しっぱなしだった。
「何か入ったミルクがありますよ!?」
「沈んでるのはマンドラゴラの実と、トレントの根っこから作った餅だな。水牛のミルクで花茶を煮出して、クロミツアリの焦がし蜜を加えてあるらしい。」
「濃くて甘くてモチモチで美味しい!」
「溶けないアイスってなんでしょう?」
「溶かしたスライムに水飴とか生クリームなんか加えてひたすら混ぜると、なんかフワフワしたムースみたいなもんができ上がるんだよ。それをアイスに見立ててるんだな。」
「あの串焼きは…肉ですか?」
「大カタツムリの肉だ…貝に似た味がして酒飲みには好まれるらしい。」
「ミミックの塩茹で?」
「擬態型の魔物の中でも、甲殻類に近い奴はカニやエビと同じに扱われるんだ。あれはその脚の部分だよ。」
「なんですかアレ?!すごく小さい豚の丸焼き?!」
「あれは本物の豚じゃなくてキノコなんだ。ああやって他の生き物を真似て、そっくりな形に育つ面白い性質を持ってるのがあってな。胞子の時に特定の生物を近くに放すとその通りの姿になるんだ。」
ペラペラ説明するデイビッドを見て、ガムデルムは感心していた。
「デブロック様、すっかり博識になられて…ガムは嬉しゅうございます。」
「大袈裟だろ!」
「逃げ出した歩きキノコに追われて泣いていらした坊が、こんなに頼もしくなられて…」
「いつの話だそれ!!」
ガムデルムの話すデイビッドの幼少時の思い出に、ヴィオラはなんだか心が温かくなった。
デイビッドの人生には、きちんと手放しで楽しい時代もあったのだと知れて、一層サウラリースが好きになる。
「あのお店…コカトリスの尻尾の串焼きですって!?」
「コカトリスは尾蛇類だから、蛇肉の部分だ。」
「そんな珍しい物までいるんですか!?」
「魔素溜まりには出るんだよ。特に地下には。」
「ダンジョン…入ってみたい!」
「うーん…どう思う?エリック。」
「初心者用の浅いとこなら、そこらの森と変わらない程度ですから同伴して差し上げても良いのでは?」
「行きたいです!デイビッド様ぁ!」
「しゃぁない、行ってみるかぁ…」
「おお!ならば紹介状を出しますので、ご一緒させて下さい!」
赤い鱗のダチョウ型のトカゲが引く二輪車に乗って、目指すは世界樹の切り株。
ヴィオラはわくわくしながら大きく膨らんだ鞄を抱きしめていた。
やがて4人は巨大な切り株のそびえる街にやってきた。
ウルヴスよりも更に土地が低く、空が遠いこの街は、冒険者専用と言っても過言ではない。
地下迷宮の探索と滞在に特化した店がほとんどで、後は酒場と飯屋しかないそうだ。
人口密度の最も高い、冒険者の聖地“クロッツ”。
明るい雰囲気のウルヴスと違い、どこか緊張した空気が漂っている。
日々命懸けで戦う者達の集う場所だけあり、初心者ではとても1人では歩けそうにない。
「ファーストプレートの方ですと、ギルドはこちらがよろしいでしょう!」
ガムデルムの案内で入ったギルドにも人は多く、これからダンジョンに潜る者達が集まっているため、異様な熱気に包まれていた。
ウルヴス市長の推薦なのですんなり受付が済み、デイビッドはプレートを出すと同伴者の申請を出し、ヴィオラに特殊な魔法陣の彫られた簡易魔道具を渡した。
「これは?」
「1回使い切りの転移魔道具だよ。なんかあったらそれで同伴者を先に逃がすんだ。」
「初心者用の浅層ではほとんど使いませんけどね。」
「探索時に必ず持ってくお守りみたいなもんさ。この街を出ると効果が切れるから、使わなかったら返却してくといい。」
荷物をギルドに預け、必要な道具を持ったら、いざダンジョンの入り口へ。
「お気を付けて!」
「行ってきまーす!!」
仕事に戻るガムデルムに手を振り、一行は遂に薄暗いダンジョンの中へと入って行った。
「スゴい!ここがダンジョン!!」
「足元、気をつけろよ?」
「人がいっぱいいますね!」
「みんな駆け出しの冒険者の卵だよ。」
「ここは観光地に近い場所ですからね。賑わってるんですよ。」
エリックの灯す光魔法で明かりを得ると、奥の開けた場所で洞窟が何本も別れていた。
「え~と…採集、採掘、狩猟、探索、地下街…地下街?」
「この地下にも街があるんだ。それ目的の場合ギルドを通さなくても直通で行ける道もある。地上の街より治安が悪いから初心者向けじゃねぇよ。俺もまだ行った事がないんだ。」
「デイビッド様も知らない街があるなんて!行ってみたい!」
「年齢制限もあるから、ヴィオラは入り口で帰されるぞ。」
「そんな!!」
どんな街にも必ず影はある。
サウラリースの黒い部分は、全てこの地下街に沈んでいると言っても良い。
無放地帯とまではいかないが、司法の手は届かず、街を牛耳る複数人の主が統治する所謂「裏街」だ。犯罪率も高く、サウラリースに居られない無法者や犯罪者も潜む、かなりグレーな街だそうだ。
無論、未成年も初心者も立ち入りお断り。
正規の入り口には人が立っていて、プレートを確認し、それぞれ目的にあった道へ通してくれる。
番人達はがっかりするヴィオラを見て微笑まし気に笑っていた。
あなたにおすすめの小説
傷付いた騎士なんて要らないと妹は言った~残念ながら、変わってしまった関係は元には戻りません~
キョウキョウ
恋愛
ディアヌ・モリエールの妹であるエレーヌ・モリエールは、とてもワガママな性格だった。
両親もエレーヌの意見や行動を第一に優先して、姉であるディアヌのことは雑に扱った。
ある日、エレーヌの婚約者だったジョセフ・ラングロワという騎士が仕事中に大怪我を負った。
全身を包帯で巻き、1人では歩けないほどの重症だという。
エレーヌは婚約者であるジョセフのことを少しも心配せず、要らなくなったと姉のディアヌに看病を押し付けた。
ついでに、婚約関係まで押し付けようと両親に頼み込む。
こうして、出会うことになったディアヌとジョセフの物語。
【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
冤罪で追放された令嬢〜周囲の人間達は追放した大国に激怒しました〜
影茸
恋愛
王国アレスターレが強国となった立役者とされる公爵令嬢マーセリア・ラスレリア。
けれどもマーセリアはその知名度を危険視され、国王に冤罪をかけられ王国から追放されることになってしまう。
そしてアレスターレを強国にするため、必死に動き回っていたマーセリアは休暇気分で抵抗せず王国を去る。
ーーー だが、マーセリアの追放を周囲の人間は許さなかった。
※一人称ですが、視点はころころ変わる予定です。視点が変わる時には題名にその人物の名前を書かせていただきます。
追放された宮廷花師が辺境の荒野に花を咲かせたら、王都の庭園だけが枯れ続けているようです
歩人
ファンタジー
「花を飾るだけの令嬢は不要だ」——王城の庭園を十年守った伯爵令嬢フローラは追放された。
翌月、王城の庭園が一夜にして枯れ果てる。さらに隣国への外交花束を用意できず国際問題に——
フローラの花束に込められた花言葉が、実は外交メッセージそのものだったのだ。
一方、辺境の荒野に降り立ったフローラが地面に触れると花が芽吹き始める。
荒野を花畑に変えていくスローライフの中で、花の感情が色で見える加護が目覚めて——。
王女殿下のモラトリアム
あとさん♪
恋愛
「君は彼の気持ちを弄んで、どういうつもりなんだ?!この悪女が!」
突然、怒鳴られたの。
見知らぬ男子生徒から。
それが余りにも突然で反応できなかったの。
この方、まさかと思うけど、わたくしに言ってるの?
わたくし、アンネローゼ・フォン・ローリンゲン。花も恥じらう16歳。この国の王女よ。
先日、学園内で突然無礼者に絡まれたの。
お義姉様が仰るに、学園には色んな人が来るから、何が起こるか分からないんですって!
婚約者も居ない、この先どうなるのか未定の王女などつまらないと思っていたけれど、それ以来、俄然楽しみが増したわ♪
お義姉様が仰るにはピンクブロンドのライバルが現れるそうなのだけど。
え? 違うの?
ライバルって縦ロールなの?
世間というものは、なかなか複雑で一筋縄ではいかない物なのですね。
わたくしの婚約者も学園で捕まえる事が出来るかしら?
この話は、自分は平凡な人間だと思っている王女が、自分のしたい事や好きな人を見つける迄のお話。
※設定はゆるんゆるん
※ざまぁは無いけど、水戸○門的なモノはある。
※明るいラブコメが書きたくて。
※シャティエル王国シリーズ3作目!
※過去拙作『相互理解は難しい(略)』の12年後、
『王宮勤めにも色々ありまして』の10年後の話になります。
上記未読でも話は分かるとは思いますが、お読みいただくともっと面白いかも。
※ちょいちょい修正が入ると思います。誤字撲滅!
※小説家になろうにも投稿しました。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
【完結】聖女の私を処刑できると思いました?ふふ、残念でした♪
鈴菜
恋愛
あらゆる傷と病を癒やし、呪いを祓う能力を持つリュミエラは聖女として崇められ、来年の春には第一王子と結婚する筈だった。
「偽聖女リュミエラ、お前を処刑する!」
だが、そんな未来は突然崩壊する。王子が真実の愛に目覚め、リュミエラは聖女の力を失い、代わりに妹が真の聖女として現れたのだ。
濡れ衣を着せられ、あれよあれよと処刑台に立たされたリュミエラは絶対絶命かに思われたが…
「残念でした♪処刑なんてされてあげません。」
【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜
鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。
誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。
幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。
ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。
一人の客人をもてなしたのだ。
その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。
【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。
彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。
そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。
そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。
やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。
ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、
「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。
学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。
☆第2部完結しました☆