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7代目デュロック辺境伯爵編
誕生日
和やかな食事の後、片付けをデイビッドに任せたアルテミシアはヴィオラを呼んで少し外へ出た。
小高い丘の上からは、夕凪に街の灯りが美しく見える。
「ヴィオラちゃん…いえ、ヴィオラさん。改めて、デイビッドの所へ来てくれて本当にありがとう。あの子が昔のように笑っている姿を見て安心したわ。ここを出てから辛い思いばかりだと聞いていたから。貴女のおかげでどれほどあの子が救われたことか…」
「いいえ!救われたのは私の方です。今、毎日が楽しくて仕方ないのは全部デイビッド様のおかげです。」
「ギディオンから知らせが来たわ。ヴィオラさんも、聞いたのでしょう?あの子が短命であった事…」
「はい…でも、デイビッド様はもう大丈夫だと言ってくれました。」
「そうね…ずうっと心残りだった。せめて自分の思うように生きて欲しかったのに、見る度ボロボロになって、最後に会った時は、氷のように冷たい目をしてた…せめて私の血が入らなかったら…もう少し生きやすかった事でしょうに。」
「そんな事ありません!!例え色白だったとしても、もう日に焼けてこんがりいい色のはずです!」
「…フフフ…面白いのねヴィオラさん。」
「アルテ様、よろしければデイビッド様の事、もっと教えて頂けませんか?私、デイビッド様の生まれた日がいつなのかも、まだ知らないんです…」
「…そう…あの子まだ隠したままでいるのね…」
アルテミシアは、庭先のベンチに腰掛けると、ヴィオラを隣に招き、2人で夜景を眺めながら夜風に当たった。
「あの子はね、6歳の時、熱で倒れて誕生日のお祝いができなくなって以降、自分の生まれた日が近くなると姿を消すようになったの。」
「何故ですか?」
「わからないわ。誰にも言わないもの。でも、他者から掛けられる祝いの言葉を尽く嫌がっていた事は確かね。一度、生まれてこなければ良かったと言って母親と口論になって叩かれた事があったわ。」
それも仕方のない話だろう。散々他人から踏みにじられて、生を否定され続ければ、生きる気力も無くすというものだ。
感情の激しいカトレアは、息子の発言に激昂しデイビッドを責めたが、では具体的な解決に至ったかと言えばそんな事もない。
愛の鞭と言う言葉があるが、それは愛情を深く受け満たされた者にだけ通じる詭弁だ。
年に数回会うか会わないかわからない、母親と言う名のただ血が繋がっているだけの他人が与えて良いものではなかった。
完全に心を閉ざしたデイビッドは、以降、実母を血縁のある他人として扱う様になった。
分別が付く歳になり、会話ができるようになった頃から形骸的に「母上」と呼ぶ様にはなったが、それは単なる周囲への配慮で、肉親としての意識は、実のところ今現在も一切無い。
「それでもね、私が贈る物は受け取ってくれるの。お礼のカードとお返しの品が届く度に嬉しかったわ…」
それも国を飛び出してからはなくなり、年に数回送られてくる挨拶状だけが頼りになった。
自分のことは語らず、祖母を思いやる言葉と謝罪で締めくくられたカードが増える度に胸が締め付けられたと、アルテミシアは話す。
「あの子は…8歳で当主の座を引き継ぐ次代に指名された時、公表される資料から自分の生まれた日の記録を消し去ったの。それを条件に次期当主の役目を引き受けたのよ。今後一切誰にもその日を気にする者がいないようにと言ってね。12歳の時、その約束を破った両親に見切りを付けて家を出て、それから4年も帰らなかったわ。以来、あの子の誕生日は決して祝わないことになったの。」
「そんな…」
「でも…貴女にだけは教えておきましょう。あの子はね、精霊の星祭りの日に生まれたのよ。」
“精霊の星祭り”は、地方で夏のディルケの少し後に行われる精霊を迎える祭りだ。
12の星を渡り歩き、疲れた精霊を癒すための祭りなので、賑やかなものではなく、夕間暮れに人々がランプを手に川辺に集まり、精霊をこの世界に呼び戻す為の目印としてかがり火を焚いて、その周りで静かに祈りを捧げるというものだ。
「それって…確か3日後の…」
「シーー…貴女も知らない振りをしなくては駄目よ?でないと、あの子を傷付けることになるわ。」
「はい!わかっています!デイビッド様が受け入れて下さるまでちゃんと待ちます!」
「本当にいい子。こんな健気な婚約者に我慢をさせるなんて、あの子もどういうつもりかしらね。」
「いいんです!少しずつ話してもらえる様に、私がなりますから!」
「その代わり、思い切り甘えていいわよ。私が許すわ。」
「ありがとうございます。」
空に星がかかるまで2人で話をしていると、その内にライラのおしめを変えたデイビッドが、洗い物のため外へ出て来た。
「楽しそうだな、ヴィオラ。」
「あ!デイビッド様。今、デイビッド様が焚き火で焼き栗しようとして、お尻に火傷した話を聞いてました。」
「楽しそうにしてまぁ!!」
「お庭に生えてたキノコを食べて、お腹を壊した話も面白かったです。」
「なんの話してんだ!?」
「ただの孫との思い出話よ。」
「もっと他にねぇのかよ!」
「そんな事言ったって、たかが5年とちょっとの間の事よ?あっという間に話し尽くしてしまうわ。」
「それは…そうかも知れねぇけど…」
「そうそう、貴方にひとつ聞きたいことがあるのよ。」
「なんでしょう…?」
「貴方、王家から下賜された領地を、個人で買い取ったのでしょう?」
「はぁ、まぁ…」
「例えば、私がそこに住みたいと言ったら、貴方は反対するかしら?」
「まだ誰も受け入れられる状態じゃないから…なんとも…」
「整ってからで構わないわ。検討しといて頂戴。」
「検討って…ここの事は?」
「それについて、今度サウラリースの重鎮と集まって相談する事になってるのよ。サウラリース始まって以来の大きな変化の訪れようとしているわ。その時は貴方も呼ぶから来なさいね。」
「来なさいって言われても…」
何やら意味深な言葉を残し、アルテミシアはぐっと体を伸ばして部屋の中へ戻った。
お
「今夜は泊まって行くの?」
「ヴィオラだけ頼んでもいいか?俺達は一度爺さんのとこに行って来る。」
「わ、私も行きたいです!」
「それじゃ3人でいってらっしゃい。今夜もライラちゃんはバァバの所でねんねしましょ。」
「あーぃ!」
「すっかり懐いたな…」
月明かりが落ちる頃、ライラとアルテミシアに見送られ、暗い森の中に入って行くと3人の周りに何かがたくさん集まって来た。
「これは…妖精…?」
「そうですね、自我がまだはっきりしていない生まれたての妖精達です。」
「虫みてぇなもんだから、本能でしか動かねぇよ。」
「光ってる!すごくキレイ!」
蛍の様に光る小さな神秘の生命は、吸い寄せられるようにどんどん集まって来る。
「足元が明るい!」
「かなりの量集まりましたね。」
「暗くなくて助かるけどよ、何が目的なんだろうな?」
((デイビッド様では?!))
背中に山盛り小妖精を貼り付けたデイビッドは、それに気がつかず歩いて行く。
(眩しい…)
(トムが言ってたのはこれかぁ…)
どんな消えそうな妖精も生き返る、オアシスの様な存在。
力の無い小さな妖精達は、皆デイビッドを目がけて飛んで来る。
(灯りに集まる羽虫みたい…)
再びギディオンの家に辿り着いた頃には、庭先が昼間の様に明るくなり、追い払うのが大変になっていた。
「さぁ森へ帰りな ここには入れないよ?」
そこへ美しい翅を羽ばたかせ、月光精が舞い降りて来ると、小妖精達は一斉に散って行った。
「色んな話が聞けて楽しかった この森の妖精も精霊も 世界樹の再来にとても喜んでたよ みんな君を歓迎してる 良かったね」
「あんまし良くはねぇよ?!」
木の家に入ると、肉の焼ける匂いが漂い、エプロンを掛けたシェルリアーナがミトンを手に、パイ皿を持って現れた。
「いいところに来たわね!今夜は師匠に会えたお祝いよ!ごちそうを用意してるの!アンタもなんか作んなさい!」
「へいへい…」
背の低いキッチンでは、ギディオンが芋を揚げながら精霊相手に何か話していた。
「ーーそうなんだよ、こんな嬉しいことはない!ウィスタリア、君もそう思うだろ?あの坊が死の影から解き放たれたのだ!私が助けてやれんかったのは悔しいが、精霊の御手に救われたのなら納得もいく。これでハイデルヒェンとの約束も果たされたと言うものよ!ハハハハハ!!」
デイビッドはその後ろ姿を見て、いきなり出ていくのは止めて素知らぬふりをして声を掛けた。
「爺さん!何か手伝うことないか?」
「おお!デイビッド、丁度いい。角兎が焼き上がるから持って行ってくれ!」
「豪勢だな?」
「一人暮らしの年寄りが作るものだから、味は単純だがね。」
「俺もなんか作ろうか?甘いのと塩っ気のあるのとどっちがいい?」
「甘味があると嬉しいが、お前さんに作れるのか?」
「まぁな。こう見えて毎日なんかしら作ってるよ。」
手際良く粉をこねながら、デイビッドはギディオンに自分の疑問をぶつけてみた。
「なぁ、爺さん…前に言ってたよな?デュロックの初代に忠誠を捧げたって。爺さん、今いくつなんだ?」
「ふむ、ざっと50と350で、400歳といったところかな。」
「やっぱり…なんかおかしいと思ってたんだ…」
子供の頃から薄々感づいてはいたが、中々聞けなかった話…
今、ようやく真実を知ることができた。
「ガロ帝国に仕えていた頃、精霊との特殊な契約を交わした。私は死を恐れ、禁を犯してこの世に留まることを選んだ愚かな老人よ。決して真似などするなよ?茨どころではない道が待っておるぞ?」
「別に真似なんかしねぇよ。ただ、歴史の当事者ならいくつか聞きたいことがあってよ。」
「なんだ?」
「デュロックには俺と同じ体質で早死にした人間が大勢いる。生き残る方法があるなら、そいつらはなんで助けてやらなかったんだ?」
「そうだな…理由のひとつは幼過ぎると使えん方法だからだ。心身への負担が大きく、それだけで命を縮めてしまいかねん。」
それ程の苦痛に耐え、サウラリースを守ったと言う初代はどんな人物だったのだろうか。
デイビッドはますます気になった。
小高い丘の上からは、夕凪に街の灯りが美しく見える。
「ヴィオラちゃん…いえ、ヴィオラさん。改めて、デイビッドの所へ来てくれて本当にありがとう。あの子が昔のように笑っている姿を見て安心したわ。ここを出てから辛い思いばかりだと聞いていたから。貴女のおかげでどれほどあの子が救われたことか…」
「いいえ!救われたのは私の方です。今、毎日が楽しくて仕方ないのは全部デイビッド様のおかげです。」
「ギディオンから知らせが来たわ。ヴィオラさんも、聞いたのでしょう?あの子が短命であった事…」
「はい…でも、デイビッド様はもう大丈夫だと言ってくれました。」
「そうね…ずうっと心残りだった。せめて自分の思うように生きて欲しかったのに、見る度ボロボロになって、最後に会った時は、氷のように冷たい目をしてた…せめて私の血が入らなかったら…もう少し生きやすかった事でしょうに。」
「そんな事ありません!!例え色白だったとしても、もう日に焼けてこんがりいい色のはずです!」
「…フフフ…面白いのねヴィオラさん。」
「アルテ様、よろしければデイビッド様の事、もっと教えて頂けませんか?私、デイビッド様の生まれた日がいつなのかも、まだ知らないんです…」
「…そう…あの子まだ隠したままでいるのね…」
アルテミシアは、庭先のベンチに腰掛けると、ヴィオラを隣に招き、2人で夜景を眺めながら夜風に当たった。
「あの子はね、6歳の時、熱で倒れて誕生日のお祝いができなくなって以降、自分の生まれた日が近くなると姿を消すようになったの。」
「何故ですか?」
「わからないわ。誰にも言わないもの。でも、他者から掛けられる祝いの言葉を尽く嫌がっていた事は確かね。一度、生まれてこなければ良かったと言って母親と口論になって叩かれた事があったわ。」
それも仕方のない話だろう。散々他人から踏みにじられて、生を否定され続ければ、生きる気力も無くすというものだ。
感情の激しいカトレアは、息子の発言に激昂しデイビッドを責めたが、では具体的な解決に至ったかと言えばそんな事もない。
愛の鞭と言う言葉があるが、それは愛情を深く受け満たされた者にだけ通じる詭弁だ。
年に数回会うか会わないかわからない、母親と言う名のただ血が繋がっているだけの他人が与えて良いものではなかった。
完全に心を閉ざしたデイビッドは、以降、実母を血縁のある他人として扱う様になった。
分別が付く歳になり、会話ができるようになった頃から形骸的に「母上」と呼ぶ様にはなったが、それは単なる周囲への配慮で、肉親としての意識は、実のところ今現在も一切無い。
「それでもね、私が贈る物は受け取ってくれるの。お礼のカードとお返しの品が届く度に嬉しかったわ…」
それも国を飛び出してからはなくなり、年に数回送られてくる挨拶状だけが頼りになった。
自分のことは語らず、祖母を思いやる言葉と謝罪で締めくくられたカードが増える度に胸が締め付けられたと、アルテミシアは話す。
「あの子は…8歳で当主の座を引き継ぐ次代に指名された時、公表される資料から自分の生まれた日の記録を消し去ったの。それを条件に次期当主の役目を引き受けたのよ。今後一切誰にもその日を気にする者がいないようにと言ってね。12歳の時、その約束を破った両親に見切りを付けて家を出て、それから4年も帰らなかったわ。以来、あの子の誕生日は決して祝わないことになったの。」
「そんな…」
「でも…貴女にだけは教えておきましょう。あの子はね、精霊の星祭りの日に生まれたのよ。」
“精霊の星祭り”は、地方で夏のディルケの少し後に行われる精霊を迎える祭りだ。
12の星を渡り歩き、疲れた精霊を癒すための祭りなので、賑やかなものではなく、夕間暮れに人々がランプを手に川辺に集まり、精霊をこの世界に呼び戻す為の目印としてかがり火を焚いて、その周りで静かに祈りを捧げるというものだ。
「それって…確か3日後の…」
「シーー…貴女も知らない振りをしなくては駄目よ?でないと、あの子を傷付けることになるわ。」
「はい!わかっています!デイビッド様が受け入れて下さるまでちゃんと待ちます!」
「本当にいい子。こんな健気な婚約者に我慢をさせるなんて、あの子もどういうつもりかしらね。」
「いいんです!少しずつ話してもらえる様に、私がなりますから!」
「その代わり、思い切り甘えていいわよ。私が許すわ。」
「ありがとうございます。」
空に星がかかるまで2人で話をしていると、その内にライラのおしめを変えたデイビッドが、洗い物のため外へ出て来た。
「楽しそうだな、ヴィオラ。」
「あ!デイビッド様。今、デイビッド様が焚き火で焼き栗しようとして、お尻に火傷した話を聞いてました。」
「楽しそうにしてまぁ!!」
「お庭に生えてたキノコを食べて、お腹を壊した話も面白かったです。」
「なんの話してんだ!?」
「ただの孫との思い出話よ。」
「もっと他にねぇのかよ!」
「そんな事言ったって、たかが5年とちょっとの間の事よ?あっという間に話し尽くしてしまうわ。」
「それは…そうかも知れねぇけど…」
「そうそう、貴方にひとつ聞きたいことがあるのよ。」
「なんでしょう…?」
「貴方、王家から下賜された領地を、個人で買い取ったのでしょう?」
「はぁ、まぁ…」
「例えば、私がそこに住みたいと言ったら、貴方は反対するかしら?」
「まだ誰も受け入れられる状態じゃないから…なんとも…」
「整ってからで構わないわ。検討しといて頂戴。」
「検討って…ここの事は?」
「それについて、今度サウラリースの重鎮と集まって相談する事になってるのよ。サウラリース始まって以来の大きな変化の訪れようとしているわ。その時は貴方も呼ぶから来なさいね。」
「来なさいって言われても…」
何やら意味深な言葉を残し、アルテミシアはぐっと体を伸ばして部屋の中へ戻った。
お
「今夜は泊まって行くの?」
「ヴィオラだけ頼んでもいいか?俺達は一度爺さんのとこに行って来る。」
「わ、私も行きたいです!」
「それじゃ3人でいってらっしゃい。今夜もライラちゃんはバァバの所でねんねしましょ。」
「あーぃ!」
「すっかり懐いたな…」
月明かりが落ちる頃、ライラとアルテミシアに見送られ、暗い森の中に入って行くと3人の周りに何かがたくさん集まって来た。
「これは…妖精…?」
「そうですね、自我がまだはっきりしていない生まれたての妖精達です。」
「虫みてぇなもんだから、本能でしか動かねぇよ。」
「光ってる!すごくキレイ!」
蛍の様に光る小さな神秘の生命は、吸い寄せられるようにどんどん集まって来る。
「足元が明るい!」
「かなりの量集まりましたね。」
「暗くなくて助かるけどよ、何が目的なんだろうな?」
((デイビッド様では?!))
背中に山盛り小妖精を貼り付けたデイビッドは、それに気がつかず歩いて行く。
(眩しい…)
(トムが言ってたのはこれかぁ…)
どんな消えそうな妖精も生き返る、オアシスの様な存在。
力の無い小さな妖精達は、皆デイビッドを目がけて飛んで来る。
(灯りに集まる羽虫みたい…)
再びギディオンの家に辿り着いた頃には、庭先が昼間の様に明るくなり、追い払うのが大変になっていた。
「さぁ森へ帰りな ここには入れないよ?」
そこへ美しい翅を羽ばたかせ、月光精が舞い降りて来ると、小妖精達は一斉に散って行った。
「色んな話が聞けて楽しかった この森の妖精も精霊も 世界樹の再来にとても喜んでたよ みんな君を歓迎してる 良かったね」
「あんまし良くはねぇよ?!」
木の家に入ると、肉の焼ける匂いが漂い、エプロンを掛けたシェルリアーナがミトンを手に、パイ皿を持って現れた。
「いいところに来たわね!今夜は師匠に会えたお祝いよ!ごちそうを用意してるの!アンタもなんか作んなさい!」
「へいへい…」
背の低いキッチンでは、ギディオンが芋を揚げながら精霊相手に何か話していた。
「ーーそうなんだよ、こんな嬉しいことはない!ウィスタリア、君もそう思うだろ?あの坊が死の影から解き放たれたのだ!私が助けてやれんかったのは悔しいが、精霊の御手に救われたのなら納得もいく。これでハイデルヒェンとの約束も果たされたと言うものよ!ハハハハハ!!」
デイビッドはその後ろ姿を見て、いきなり出ていくのは止めて素知らぬふりをして声を掛けた。
「爺さん!何か手伝うことないか?」
「おお!デイビッド、丁度いい。角兎が焼き上がるから持って行ってくれ!」
「豪勢だな?」
「一人暮らしの年寄りが作るものだから、味は単純だがね。」
「俺もなんか作ろうか?甘いのと塩っ気のあるのとどっちがいい?」
「甘味があると嬉しいが、お前さんに作れるのか?」
「まぁな。こう見えて毎日なんかしら作ってるよ。」
手際良く粉をこねながら、デイビッドはギディオンに自分の疑問をぶつけてみた。
「なぁ、爺さん…前に言ってたよな?デュロックの初代に忠誠を捧げたって。爺さん、今いくつなんだ?」
「ふむ、ざっと50と350で、400歳といったところかな。」
「やっぱり…なんかおかしいと思ってたんだ…」
子供の頃から薄々感づいてはいたが、中々聞けなかった話…
今、ようやく真実を知ることができた。
「ガロ帝国に仕えていた頃、精霊との特殊な契約を交わした。私は死を恐れ、禁を犯してこの世に留まることを選んだ愚かな老人よ。決して真似などするなよ?茨どころではない道が待っておるぞ?」
「別に真似なんかしねぇよ。ただ、歴史の当事者ならいくつか聞きたいことがあってよ。」
「なんだ?」
「デュロックには俺と同じ体質で早死にした人間が大勢いる。生き残る方法があるなら、そいつらはなんで助けてやらなかったんだ?」
「そうだな…理由のひとつは幼過ぎると使えん方法だからだ。心身への負担が大きく、それだけで命を縮めてしまいかねん。」
それ程の苦痛に耐え、サウラリースを守ったと言う初代はどんな人物だったのだろうか。
デイビッドはますます気になった。
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