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黒豚特別非常勤講師
一勝負
「きっと…じゃなくて確定してからするもんじゃないのか?そういうのは。」
「そう言って逃げるつもりだろう?王太子殿下の推薦を取り消されたくなくて!殿下も、僕の方が優秀だとわかれば、きっと僕を選んで下さるに違いない!」
「不確定要素の多い奴だな。どうします?学園長。」
「さて、どうしたものかの…」
「よろしいではありませんか学園長!」
黄色い歓声と共に現れたのは、生徒会室でデイビッドに詰め寄った青年だった。
「アレックス君。では君はこの勝負を承認するのかね?」
「もちろん!我々生徒は正しく公平で高度な知識を求めます。この勝負、私が見届けましょう!全生徒の前で真の知者を決めたいと思います。」
「デイビッド先生、どう致しましょう?お受けなさいますか?」
「正直受けたくはないですね。時間の無駄なので。でもここで終わらせとかないと、後々クソ面倒なことになりそうなんで、しかたなく受けるしかないかと…」
「うーむ、学園として生徒の意思をどこまで尊重するべきか、悩ましいところではあるが、両人の意思があるなら、ひとつの行事として行う事を許可しよう。但し、その後の対応については王太子殿下と王弟殿下の判断にお任せしたい。」
「では明日、朝10時に講堂で2人の試合を執り行う!テレンス、君の実力を見せてやるが良い!」
わぁっという歓声と拍手の中、颯爽と立ち去る生徒会メンバー達を見送り、デイビッドは侯爵家からの抗議の手紙を学園長へ渡した。
「休みなのに、みんな忙しいな。」
「いやはや、しかし来て頂いて早々に大変なことになりましたな。」
「まぁ喧嘩腰でおっ始めたのは自分なんで、ある程度は覚悟してました。しかし、勝負ってなにする気だ?」
疲れに疲れたデイビッドは、もう何が来ても相手にしたくないという顔で研究室へ戻って来た。
「疲れた…今日は精神的に削られた…」
「ぐっ…いい匂いの中で耐え続けた僕ももう限界です…」
オーブンから出できたのは、ミートパイと蒸し焼きのプリン。
オーブンの余熱でパンを温め、上で湯を沸かし、お茶をいれて、残りの湯でソーセージを茹でる。
葉野菜に松の実とチーズを削り、サラダにして今日の早めの夕飯ができた。
「いただきますっ!!」
「早い!主人立たせて食い始めるな!」
「ところでずいぶん遅かったですけど、何かありました?」
「明日、生徒会の青髪と決闘することになった。」
「けっ……え?生徒とですか?でも、許可は…」
「学園長と生徒会長が承認したんで、公開でやるよ。安心しろ、ただの知識比べだ。剣は持たない。」
「よ…良かったぁ…でも知識って何競うつもりですかね?」
「知らん。休日割いてまで、ご苦労なこった。」
「このソーセージ美味しい~!この弾力がたまりませんね!?ミートパイがサクサクでお肉がほろほろで…う~ん至福です!」
「話聞けよ?!」
「デザートはプリンですね!?」
「あれは今夜冷やして明日だ。」
「そ…そんな……!」
後片付けの後、デイビッドが書き物をしている間に、エリックはあの変な部屋着でまたカウチで寝てしまった。
デイビッドはソファの座面を開き、布団を出してかけてやると、自分はソファ側に寝転んで目を閉じた。
次の朝。
ゆっくり目を覚ましたデイビッドは、残り物のパンとスープを温め、それからエッグソーセージとプリンにクリームを添えてテーブルに置くと部屋から出て行った。
(しかしエリックの奴起きなかったな…)
従者とは…と考えながら講堂に向かう。
中はもう生徒が集まっていて、壇上の生徒会メンバーの話を聞いていた。
「みんな、応援ありがとう!必ず勝ってみせるよ!」
「朝から元気だなぁ…」
「来たなデイビッド・デュロック!覚悟はできているだろうな?!」
「なんなら帰りたいくらいだよ。大騒ぎにしやがって…」
「時間には少々早いが、では初めてもらおう!まずは筆記だ!デイビッド・デュロック、お前はこの学園に通った事がないそうだな?!これは領地経営学の過去の試験問題だ。お前に解けるか?制限時間は20分!さぁ始めたまえ!」
「…今時の学生は娯楽に飢えてんのかな…?」
デイビッドはしぶしぶ壇上に置かれた机に座り、問題用紙を開いた。
相手の手は淀みなく動き、解答欄を埋めているようだ。
デイビッドは眉をしかめながら問題を読み、首を傾げている。
「アイツ、答えがわからないんじゃないのか?」
「そんな奴が講師とか笑わせてくれるな!」
「見てよ、椅子から肉がはみ出てみっともない。」
クスクス…ざわざわ…講堂に生徒達の話声が響く。
「それまで!では採点をする。」
答案用紙を持った生徒会のメンバーが、まずはテレンスの解答を採点した。
「見てくれ!満点だ!!どうだ!これが彼の実力だ!」
テレンスは立ち上がり生徒達の拍手と声援に応えた。
続いて、デイビッドの机に来た生徒は顔をしかめる。
「なんだ?この解答欄は!?答えも書いてないし、問題がぐちゃぐちゃにされているじゃないか!」
「ん~…そもそもこの問題がもう古い!郊外の水路は3年前から大幅に工事が入って流れが変わったし、街道の名前も、どの領地の呼び名で通すか揉めてる所もある。あと、地図が10年前の写しまんまなのは、北方領の反感を食らうぞ?!開拓でずいぶん広げたからな。それに、ラムダ王国が小麦の特産地だったのは15年以上前の話。今は帝国からの輸入が半分を占めてる。漁獲量も、港が近年2つも開いて年々上昇傾向だし、ブドウの収穫量は減少傾向にある。あと、2年前にアーネスト王太子が開いたとされる南方諸国の港だが、地図が間違ってる。これがアデラ王国に知れたら苦情が来るレベルだ…それより気になるのは、国の地図に対して穀倉地帯がデカく描かれすぎてる事だ。縮尺の計算違いか、誇張表現なのか知らんが、正しくは無い。誰だ?こんな杜撰な問題作った奴は…情報が古いのは仕方ないが、地図や航路はもっと正確に描くべきだ!領地経営にとって情報は鮮度と正確さが命だ。歴史や自領の話ならいざ知らず、この程度の話、ここで学ぶ意味は無いと思うぞ?!」
講堂が一気に静まり返り、デイビッドは喋りすぎたと後悔した。
(エリックじゃないが…ホントによく喋るブタだよ俺は…)
そこへバタバタと女性の教師が駆けてきた。
(教員室で会ったな。名乗られんかったが…)
そして引きつった顔でデイビッドから問題用紙をひったくり、講堂に向かって叫んだ。
「今の勝負は無効!無効とします!!」
「そう言って逃げるつもりだろう?王太子殿下の推薦を取り消されたくなくて!殿下も、僕の方が優秀だとわかれば、きっと僕を選んで下さるに違いない!」
「不確定要素の多い奴だな。どうします?学園長。」
「さて、どうしたものかの…」
「よろしいではありませんか学園長!」
黄色い歓声と共に現れたのは、生徒会室でデイビッドに詰め寄った青年だった。
「アレックス君。では君はこの勝負を承認するのかね?」
「もちろん!我々生徒は正しく公平で高度な知識を求めます。この勝負、私が見届けましょう!全生徒の前で真の知者を決めたいと思います。」
「デイビッド先生、どう致しましょう?お受けなさいますか?」
「正直受けたくはないですね。時間の無駄なので。でもここで終わらせとかないと、後々クソ面倒なことになりそうなんで、しかたなく受けるしかないかと…」
「うーむ、学園として生徒の意思をどこまで尊重するべきか、悩ましいところではあるが、両人の意思があるなら、ひとつの行事として行う事を許可しよう。但し、その後の対応については王太子殿下と王弟殿下の判断にお任せしたい。」
「では明日、朝10時に講堂で2人の試合を執り行う!テレンス、君の実力を見せてやるが良い!」
わぁっという歓声と拍手の中、颯爽と立ち去る生徒会メンバー達を見送り、デイビッドは侯爵家からの抗議の手紙を学園長へ渡した。
「休みなのに、みんな忙しいな。」
「いやはや、しかし来て頂いて早々に大変なことになりましたな。」
「まぁ喧嘩腰でおっ始めたのは自分なんで、ある程度は覚悟してました。しかし、勝負ってなにする気だ?」
疲れに疲れたデイビッドは、もう何が来ても相手にしたくないという顔で研究室へ戻って来た。
「疲れた…今日は精神的に削られた…」
「ぐっ…いい匂いの中で耐え続けた僕ももう限界です…」
オーブンから出できたのは、ミートパイと蒸し焼きのプリン。
オーブンの余熱でパンを温め、上で湯を沸かし、お茶をいれて、残りの湯でソーセージを茹でる。
葉野菜に松の実とチーズを削り、サラダにして今日の早めの夕飯ができた。
「いただきますっ!!」
「早い!主人立たせて食い始めるな!」
「ところでずいぶん遅かったですけど、何かありました?」
「明日、生徒会の青髪と決闘することになった。」
「けっ……え?生徒とですか?でも、許可は…」
「学園長と生徒会長が承認したんで、公開でやるよ。安心しろ、ただの知識比べだ。剣は持たない。」
「よ…良かったぁ…でも知識って何競うつもりですかね?」
「知らん。休日割いてまで、ご苦労なこった。」
「このソーセージ美味しい~!この弾力がたまりませんね!?ミートパイがサクサクでお肉がほろほろで…う~ん至福です!」
「話聞けよ?!」
「デザートはプリンですね!?」
「あれは今夜冷やして明日だ。」
「そ…そんな……!」
後片付けの後、デイビッドが書き物をしている間に、エリックはあの変な部屋着でまたカウチで寝てしまった。
デイビッドはソファの座面を開き、布団を出してかけてやると、自分はソファ側に寝転んで目を閉じた。
次の朝。
ゆっくり目を覚ましたデイビッドは、残り物のパンとスープを温め、それからエッグソーセージとプリンにクリームを添えてテーブルに置くと部屋から出て行った。
(しかしエリックの奴起きなかったな…)
従者とは…と考えながら講堂に向かう。
中はもう生徒が集まっていて、壇上の生徒会メンバーの話を聞いていた。
「みんな、応援ありがとう!必ず勝ってみせるよ!」
「朝から元気だなぁ…」
「来たなデイビッド・デュロック!覚悟はできているだろうな?!」
「なんなら帰りたいくらいだよ。大騒ぎにしやがって…」
「時間には少々早いが、では初めてもらおう!まずは筆記だ!デイビッド・デュロック、お前はこの学園に通った事がないそうだな?!これは領地経営学の過去の試験問題だ。お前に解けるか?制限時間は20分!さぁ始めたまえ!」
「…今時の学生は娯楽に飢えてんのかな…?」
デイビッドはしぶしぶ壇上に置かれた机に座り、問題用紙を開いた。
相手の手は淀みなく動き、解答欄を埋めているようだ。
デイビッドは眉をしかめながら問題を読み、首を傾げている。
「アイツ、答えがわからないんじゃないのか?」
「そんな奴が講師とか笑わせてくれるな!」
「見てよ、椅子から肉がはみ出てみっともない。」
クスクス…ざわざわ…講堂に生徒達の話声が響く。
「それまで!では採点をする。」
答案用紙を持った生徒会のメンバーが、まずはテレンスの解答を採点した。
「見てくれ!満点だ!!どうだ!これが彼の実力だ!」
テレンスは立ち上がり生徒達の拍手と声援に応えた。
続いて、デイビッドの机に来た生徒は顔をしかめる。
「なんだ?この解答欄は!?答えも書いてないし、問題がぐちゃぐちゃにされているじゃないか!」
「ん~…そもそもこの問題がもう古い!郊外の水路は3年前から大幅に工事が入って流れが変わったし、街道の名前も、どの領地の呼び名で通すか揉めてる所もある。あと、地図が10年前の写しまんまなのは、北方領の反感を食らうぞ?!開拓でずいぶん広げたからな。それに、ラムダ王国が小麦の特産地だったのは15年以上前の話。今は帝国からの輸入が半分を占めてる。漁獲量も、港が近年2つも開いて年々上昇傾向だし、ブドウの収穫量は減少傾向にある。あと、2年前にアーネスト王太子が開いたとされる南方諸国の港だが、地図が間違ってる。これがアデラ王国に知れたら苦情が来るレベルだ…それより気になるのは、国の地図に対して穀倉地帯がデカく描かれすぎてる事だ。縮尺の計算違いか、誇張表現なのか知らんが、正しくは無い。誰だ?こんな杜撰な問題作った奴は…情報が古いのは仕方ないが、地図や航路はもっと正確に描くべきだ!領地経営にとって情報は鮮度と正確さが命だ。歴史や自領の話ならいざ知らず、この程度の話、ここで学ぶ意味は無いと思うぞ?!」
講堂が一気に静まり返り、デイビッドは喋りすぎたと後悔した。
(エリックじゃないが…ホントによく喋るブタだよ俺は…)
そこへバタバタと女性の教師が駆けてきた。
(教員室で会ったな。名乗られんかったが…)
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