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黒豚令息と訳あり令嬢の学園生活
再会
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「前にも言いましたけどね?!…無言でいきなり何かかき混ぜ始めるの…やっぱりちょっとホラーですよ…」
部屋に戻るなり、いきなり卵を泡立て始めたデイビッドを見て、エリックはまたかという顔をした。
別立てのメレンゲがふわふわの雲のようになったら、小麦粉と砂糖を混ぜた生地と合わせて、馴染んだら予熱したオーブンへ。
焼ける間に、生クリームにバターとヨーグルトを加え、しっかりした固めのクリームにすると、粉砂糖に紫色のシロップとリキュールを数滴加えてアイシングを作る。
それを小さな絞り袋に入れ、ワックスペーパーにスミレの花の形に絞り出した。
ケーキが焼けたら真ん中から切って冷まし、その間にオーブンに残った熱でチュイルを焼く。
その横でマドレーヌ型にバター生地を落とし、少し火力を上げてこれもオーブンへ。
チュイルはフリルを付けて冷まし、マドレーヌ用のシロップも作り、クッキーも2種類増えた。
「素朴な疑問なんですけど…お菓子の作り方なんて、どこで覚えたんですか?」
「…昔、商会の製菓職人にレシピを貰ったんだ…」
「それだけでここまでできたら、世のパティシエ全員泣きますよ?!」
「失敗もしたさ…何度も何度も…」
「…なら恋愛だって同じですよ。まさか一度失敗したらそれきりだと思ってません?何度も何度も失敗して、その都度向き合って、それでお互いの事を理解していくんですよ?!そういう人との関係の作り方わかります?!」
「……ああ………」
「あ、駄目だ。過去最高に上の空だコイツ…」
ケーキのデコレーションが済み、粗方片付けまで終えた頃、廊下から小さな足音がふたつ聞こえてきた。
しかし。それはドアの前で止まり、動かなくなってしまう。
心配したデイビッドがドアを開けると、目の前にヴィオラが立っていた。
キラキラのチョコレートの瞳が落ちそうな程目を見開いて、デイビッドを見上げている。
お互い見つめ合ったまま固まっていると、先に動いたのはヴィオラだった。
「デイビッド様…デイビッド様ぁっ!!会いたかった!すごく、会いたかったです!」
デイビッドに飛び付くと、背中に精いっぱい腕を回し、ぎゅうっと力を込めて、ポロポロ涙をこぼしている。
「ヴィオラ……?!」
(なんでそこで手が迷子になるんですか!?)
(早く抱きしめ返してやんなさいよ!このヘタレ!!)
うろたえるデイビッドに、エリックと、廊下にいたシェルリアーナがイライラし出す。
「デイビッド様…ギュッてして下さい!」
(そんな事まで女の子に言わすんじゃ無いわよ!)
(ここまでされて何もできんとか!)
何も言わずにヴィオラの身体を抱きしめると、小さくて、温かくて、軟らかくて…
「ヴィオラ、俺も…会いたかった…」
可愛さと、愛しさと、ずっとこうしていたい気持ちが溢れて、気持ちが一気に高揚して…急降下で降りてきた。
(…このあとどうしよう……)
(人に助けを求めてんじゃ無いわよ!!腰抜けが!)
(真顔でこっち見んな!!)
「…ヴィオラ、久しぶりだな?顔が見られて安心した。今日は疲れただろう?ひと休みしていかないか?」
ヴィオラをなだめてソファへ座らせると、手慣れた手つきで紅茶の支度をする。
「デイビッド様…今、私の事、ヴィオラって呼んで下さいました?」
「あ!!!」
明らかに動揺して目を背けるデイビッドに、後ろから冷ややかな視線が刺さる。
(だから言ったのに…ボロが出ますよって。)
(え?何アイツ初っ端からコケたの?救いようがないわね!)
「いや…その…それは…」
学園生活で気安く過している内に、最初に被っていた猫はどこかに逃げ出していた。
「すまない…俺は元から口が悪くて雑なんだ……?」
「もう一度呼んで下さい。ヴィオラって…」
「う…ヴィオラ……本当に申し訳…」
「嬉しいです…ずっとそう呼んで欲しかったんです。それに、デイビッド様はそのまま方がいいです!私の前で取り繕わないで下さい。私はどんなデイビッド様も大好きですので!」
「そう…か…そう言ってもらえると…嬉しいよ…これからもよろしくな…ヴィオラ。」
「はい!もちろんです!」
このやり取りを後ろで見ていた2人は、最早空気になっていた。
「エリック、紅茶を淹れて下さらない?口の中が甘ったるくてしかたないですわ…」
「どっちも恋愛未経験者ですからね…じれじれで見てるこっちが辛くなってきますよ。」
「ちょっと待って?ヘタレは分かるとして、彼女もこれが初めての恋愛ですの??」
「ちょっと大きな声じゃ言えませんが…実は…」
エリックがヴィオラの事情について、当たり障りのない所だけ掻い摘んで説明すると、シェルリアーナはエリックのタイをつかみ部屋の隅まで引っ張って行った。
「エリック!!あの男からは絶対に目を離しちゃ駄目よ!?」
「それは…まぁ、私は彼のお目付け役なので離れはしませんが…」
「生温いですわ!!貴方にはアレの恐ろしさが分かりませんの?一見陽だまりにいるように見せかけて、背を日に晒しながら、足元の深淵に身を乗り出しているような危うい男ですのよ?!あんな状態で万が一、あの子を失ってご覧なさい?!何が噴き出すか分かったもんじゃありませんわ!?」
「そりゃぁまぁ…お怒りになるでしょうね…」
「そんな甘いもんじゃ無いのよ!!自ら手放すならまだ良いですわ。横から誰かに掻っ攫われでもしたら?それで彼女が傷付けられて捨てられでもしたら?!アレは国なんていとも簡単に捨てて、全てを滅ぼしに掛かって来ますわよ?!あの化け物が大人しくしているのは、そこに守るべき者がいるからに過ぎないの!闇が深過ぎて底が見えない…人の心を覗いてあんなに寒気がしたのは初めてでしたわ…踏み込まなければ大丈夫と高を括っていましたけれど、そうもいかなくなりましたわ…」
「え?シェルリアーナ様?…ずいぶん言いますね?!」
「本気にしていないのでしょう?でも事実よ!?…ロシェ家は特殊な魔女の家系なの…家門を継ぐ者の他に、血を受け継ぐ者がいる。私は後者。この眼は人の本質と真意を見抜くのですわ。私は正真正銘魔女の末裔ですのよ…?!」
シェルリアーナの真剣な顔を見て、エリックも背筋が薄ら寒くなった。
「そう言えば…私は、デイビッド様についてまだ日が浅い方なんですが、デイビッド様は先祖返りの血がとても強いのだと、旦那様から聞いたことがあります…」
「何?先祖に魔王でもいたの?」
「それ、あながち本当かも知れんませんよ?デュロック家は元々、あの黒の森のある山で戦い続けていた一族だったそうですから。」
「…何にせよ、まだ本人はこれを自覚してませんわ。この話は内密に…でも、決して忘れないで!」
「わかりました…」
2人がチラ…とデイビッドの方を見ると、ヴィオラの話をただ嬉しそうに聞いているヘタレの姿が映り、なんとも言えない気持ちになった。
部屋に戻るなり、いきなり卵を泡立て始めたデイビッドを見て、エリックはまたかという顔をした。
別立てのメレンゲがふわふわの雲のようになったら、小麦粉と砂糖を混ぜた生地と合わせて、馴染んだら予熱したオーブンへ。
焼ける間に、生クリームにバターとヨーグルトを加え、しっかりした固めのクリームにすると、粉砂糖に紫色のシロップとリキュールを数滴加えてアイシングを作る。
それを小さな絞り袋に入れ、ワックスペーパーにスミレの花の形に絞り出した。
ケーキが焼けたら真ん中から切って冷まし、その間にオーブンに残った熱でチュイルを焼く。
その横でマドレーヌ型にバター生地を落とし、少し火力を上げてこれもオーブンへ。
チュイルはフリルを付けて冷まし、マドレーヌ用のシロップも作り、クッキーも2種類増えた。
「素朴な疑問なんですけど…お菓子の作り方なんて、どこで覚えたんですか?」
「…昔、商会の製菓職人にレシピを貰ったんだ…」
「それだけでここまでできたら、世のパティシエ全員泣きますよ?!」
「失敗もしたさ…何度も何度も…」
「…なら恋愛だって同じですよ。まさか一度失敗したらそれきりだと思ってません?何度も何度も失敗して、その都度向き合って、それでお互いの事を理解していくんですよ?!そういう人との関係の作り方わかります?!」
「……ああ………」
「あ、駄目だ。過去最高に上の空だコイツ…」
ケーキのデコレーションが済み、粗方片付けまで終えた頃、廊下から小さな足音がふたつ聞こえてきた。
しかし。それはドアの前で止まり、動かなくなってしまう。
心配したデイビッドがドアを開けると、目の前にヴィオラが立っていた。
キラキラのチョコレートの瞳が落ちそうな程目を見開いて、デイビッドを見上げている。
お互い見つめ合ったまま固まっていると、先に動いたのはヴィオラだった。
「デイビッド様…デイビッド様ぁっ!!会いたかった!すごく、会いたかったです!」
デイビッドに飛び付くと、背中に精いっぱい腕を回し、ぎゅうっと力を込めて、ポロポロ涙をこぼしている。
「ヴィオラ……?!」
(なんでそこで手が迷子になるんですか!?)
(早く抱きしめ返してやんなさいよ!このヘタレ!!)
うろたえるデイビッドに、エリックと、廊下にいたシェルリアーナがイライラし出す。
「デイビッド様…ギュッてして下さい!」
(そんな事まで女の子に言わすんじゃ無いわよ!)
(ここまでされて何もできんとか!)
何も言わずにヴィオラの身体を抱きしめると、小さくて、温かくて、軟らかくて…
「ヴィオラ、俺も…会いたかった…」
可愛さと、愛しさと、ずっとこうしていたい気持ちが溢れて、気持ちが一気に高揚して…急降下で降りてきた。
(…このあとどうしよう……)
(人に助けを求めてんじゃ無いわよ!!腰抜けが!)
(真顔でこっち見んな!!)
「…ヴィオラ、久しぶりだな?顔が見られて安心した。今日は疲れただろう?ひと休みしていかないか?」
ヴィオラをなだめてソファへ座らせると、手慣れた手つきで紅茶の支度をする。
「デイビッド様…今、私の事、ヴィオラって呼んで下さいました?」
「あ!!!」
明らかに動揺して目を背けるデイビッドに、後ろから冷ややかな視線が刺さる。
(だから言ったのに…ボロが出ますよって。)
(え?何アイツ初っ端からコケたの?救いようがないわね!)
「いや…その…それは…」
学園生活で気安く過している内に、最初に被っていた猫はどこかに逃げ出していた。
「すまない…俺は元から口が悪くて雑なんだ……?」
「もう一度呼んで下さい。ヴィオラって…」
「う…ヴィオラ……本当に申し訳…」
「嬉しいです…ずっとそう呼んで欲しかったんです。それに、デイビッド様はそのまま方がいいです!私の前で取り繕わないで下さい。私はどんなデイビッド様も大好きですので!」
「そう…か…そう言ってもらえると…嬉しいよ…これからもよろしくな…ヴィオラ。」
「はい!もちろんです!」
このやり取りを後ろで見ていた2人は、最早空気になっていた。
「エリック、紅茶を淹れて下さらない?口の中が甘ったるくてしかたないですわ…」
「どっちも恋愛未経験者ですからね…じれじれで見てるこっちが辛くなってきますよ。」
「ちょっと待って?ヘタレは分かるとして、彼女もこれが初めての恋愛ですの??」
「ちょっと大きな声じゃ言えませんが…実は…」
エリックがヴィオラの事情について、当たり障りのない所だけ掻い摘んで説明すると、シェルリアーナはエリックのタイをつかみ部屋の隅まで引っ張って行った。
「エリック!!あの男からは絶対に目を離しちゃ駄目よ!?」
「それは…まぁ、私は彼のお目付け役なので離れはしませんが…」
「生温いですわ!!貴方にはアレの恐ろしさが分かりませんの?一見陽だまりにいるように見せかけて、背を日に晒しながら、足元の深淵に身を乗り出しているような危うい男ですのよ?!あんな状態で万が一、あの子を失ってご覧なさい?!何が噴き出すか分かったもんじゃありませんわ!?」
「そりゃぁまぁ…お怒りになるでしょうね…」
「そんな甘いもんじゃ無いのよ!!自ら手放すならまだ良いですわ。横から誰かに掻っ攫われでもしたら?それで彼女が傷付けられて捨てられでもしたら?!アレは国なんていとも簡単に捨てて、全てを滅ぼしに掛かって来ますわよ?!あの化け物が大人しくしているのは、そこに守るべき者がいるからに過ぎないの!闇が深過ぎて底が見えない…人の心を覗いてあんなに寒気がしたのは初めてでしたわ…踏み込まなければ大丈夫と高を括っていましたけれど、そうもいかなくなりましたわ…」
「え?シェルリアーナ様?…ずいぶん言いますね?!」
「本気にしていないのでしょう?でも事実よ!?…ロシェ家は特殊な魔女の家系なの…家門を継ぐ者の他に、血を受け継ぐ者がいる。私は後者。この眼は人の本質と真意を見抜くのですわ。私は正真正銘魔女の末裔ですのよ…?!」
シェルリアーナの真剣な顔を見て、エリックも背筋が薄ら寒くなった。
「そう言えば…私は、デイビッド様についてまだ日が浅い方なんですが、デイビッド様は先祖返りの血がとても強いのだと、旦那様から聞いたことがあります…」
「何?先祖に魔王でもいたの?」
「それ、あながち本当かも知れんませんよ?デュロック家は元々、あの黒の森のある山で戦い続けていた一族だったそうですから。」
「…何にせよ、まだ本人はこれを自覚してませんわ。この話は内密に…でも、決して忘れないで!」
「わかりました…」
2人がチラ…とデイビッドの方を見ると、ヴィオラの話をただ嬉しそうに聞いているヘタレの姿が映り、なんとも言えない気持ちになった。
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