92 / 411
黒豚令息と訳あり令嬢の学園生活
ヒュリス討伐
しおりを挟む
朝早く、大きなバスケットにこれでもかと詰めこまれた、ヴィオラ達のために作られたかわいいランチを見て、エリックは1人考え込んでいた。
「毎度毎度こういうのはどういった視点で作るんですか?」
「え……ヴィオラが喜ぶかな…とか?」
「女子力と程遠い人がコレ作ってる思うと、脳が軽くパニック起こすんですよねぇ…」
「市井の流行りとか見本に作ってんだよ!悪いか?!」
対してデイビッドは大きな手斧と、短剣を掛けたベルトを手に討伐の支度をしている。
「今までで一番似合ってますよ?!」
「このかっこで二度も野盗に間違われてんだけどなぁ?!」
ファルコの背に荷物を乗せ、自分も飛行体勢に入り鐙に足をかける。
「じゃ、あとは頼んだ!!」
「気をつけて!」
ファルコは早くも速度を上げ、王都は一瞬で遠く離れて行った。
ムスタが4時間で駆けた大街道も、わずか数十分で追い越してしまう。
(速い!!想像以上だ!)
上空から見る景色は相変わらず壮大で、狭いと思っていた世界が広々として目に映る。
(これなら、ルフト領まで1時間かからないかも知れない…ヒポグリフすげぇ…)
山の峰を横切り、渓谷を真下に、雲を抜けて、ファルコはどんどん速度を上げていく。
時々コンパスで方角を確認し、地図を見ながらしばらく飛んでいると、地平線に何かが光って見えた。
「ファルコ!ここから海が見えるぞ?!」
以前のデイビッドなら、こんな景色を目の当たりにしたら最後、最低限の荷物片手にサッサと国を飛び出していた事だろう。
それが今は早く用事を終わらせて、帰ることを考えている。
なんとも成長したものだ。
「ここをもう少し南東に…お!コリンの言ってたルフト領の風車が見えてきた!!もう一息だ!」
谷間にいくつも建てられた鮮やかな風車小屋に迎えられ、ついにデイビッドはルフト領までやって来た。
少しずつ高度を下げ、人気のない場所を選んでファルコを降ろすと、そこからは徒歩になる。
ファルコは疲れた様子もなく、ご機嫌でデイビッドの後について歩いた。
やがて、コリンが見つけたという、謎の養蜂施設のある山の麓が見えて来た。
「そろそろだな…本腰入れてくぞファルコ!」
「キュルルルル!!」
ベルタにもらった眼鏡をかけて辺りを見回すと、不思議な光景が現れた。
「なんだありゃ…」
草むらにちらほら腹に赤い斑点のある虫が飛んでいる。
甲虫、蝶、蜂…種類はバラバラだが共通点がひとつ。
(送粉昆虫!あの模様、眼鏡越しじゃないと見えない…ってことはアレがヒュリスの媒介か!!)
斑点のついた虫は、先へ進むとどんどん増える。
「どっかにあるはずなんだよな…ヒュリスの花。こんだけ虫がいるなら、そろそろ見つかっても良いはずなんだが…」
父親から送られてきた記録の挿絵の写しを見ながら、森をあちこち回るが、それらしい花はどこにも咲いていない。
「どこだろうなぁ…」
「キュルルルル…」
「どうしたファルコ、もう飽きたか?」
「クルルルル…」
「さっきから上ばっか見て、一体何が……げっ……」
ファルコが見上げるミツアカシアの木の上には、拳大程の赤い斑模様の、大きな蘭のような花がいくつも寄生していた。
「気持ち悪ぃ!アレがヒュリスか…!!眼鏡を外すと消える…見えないっておっかねぇな!あんなもんがいくつもあるのか?!よく見つけたなお前!!エライぞ?!」
絡んだツタを足場に木に登り、花に近づくと異様な甘い匂いが漂っていた。
「これがヒュリス…ヤドリギみてぇに他の植物に寄生してデカくなんのか!早いとこ切り落としちまおう。」
ナイフで木に食い込んだ根の部分を切ると、ベタベタした汁が溢れてくる。
サンプルを色々採取してから、根元を引き千切ると、簡単に抜けた。
「抜けるのはいいが数が多い。この木だけでも20はあるな…討伐が遅れたって言うのも頷ける…おいおいおい…ちょっと待てよぉ……」
イヤな予感がして、木の梢の方に登り、上から辺りを見回すと、そこかしこのミツアカシアでヒュリスの空中庭園ができていた。
「気持ち悪ぅっ!!良くもまぁこんだけ増えたな!?」
ひとまず登っている木のヒュリスを片っ端から抜いて落とすと、下にいたファルコが、落ちた花をつつき始めた。
「ファルコ~?何してんださっきから。あ…食ってる…お前…ソレ、食うの?!見た目結構アレな気がするけど…腹壊すなよ?うーん…美味そうに食ってんな……魔獣の好みはわからん…」
ヒポグリフは雑食だ。
頭の本能で狩りもするし、脚の本能で草も喰む。
好みはそれぞれで、野生の場合、糞の形状で趣向を読み、肉食嗜好の個体には近づかないよう気をつけるという。
ファルコは美味しい物を見つけたと!とでも言うように、デイビッドの落とす花を次々とついばみ、飲み込んでいた。
「火で一掃したい所だが…山火事が怖ぇし、地道に行くしかねぇなこりゃぁ…」
登って、抜いて、降りて、また登って…
地味かつ地道で単調な作業。
デイビッドは日が高くなる頃まで、黙々とヒュリスを抜き続けた。
(なんか…こう…魔草を食う生き物っていないのかな…こういう隠れる系のヤツも見つけて食ってくれるような…逆か!食われないように外て出て来たんだ!魔物に食われちまうから、天敵のいない場所に種を飛ばして……西風に乗って空から新天地を目指したとしたら?…森の中にまだ本体がいるんじゃねぇのか…?)
ヒュリスは魔草。
少なくとも魔素の薄い場所では育たない。
デイビッドが今いるのは、その昔魔の森と呼ばれていた土地の跡。
繁殖が可能だったのもそのせいだろう。
風の吹いてくる方角には、薄暗い灰色の森が鬱蒼と広がっている。
「仕方ねぇ、行くぞファルコ!」
森の中に入ると、辺りの空気がいきなり重々しくなる。
「そら!偵察隊のお出ましだぞ!?ファルコじっとしてろよ?!」
男の腕位はある巨大な蜂が2匹、デイビッドの周りを飛び回る。
肉食の巨大毒蜂リオパホネット。
これを見逃すと、仲間を呼ばれてしまうため、ここで仕留めないといけない。
虫の動向は人間には読み難い。
耐えて耐えて、ギリギリまで近づかせ、ナイフを一振りすると蜂は真っ二つに切れて落ちた。
一匹は容易いが、2匹目には警戒されてしまうので難しい。
巣に報告に戻ろうと向きを変えた所で、短刀を投げつけ、これも何とか仕留めることができた。
「ハァー…毎回これ躱すのが厄介なんだよな。」
ナイフを回収し、眼鏡を掛け直して、再び斑点のついた虫を追う。
度々眼鏡を外して辺りを見ると、それまで見えていたはずの飛んでいた物や、隠れていたものがフッと見えなくなる。
「こんなに見逃してたのか…そういや、適性がねぇと討伐隊に入るのは難しいって前に言われたっけ…こういう訳か…」
僅かでも魔力があれば、何とかして気配や影くらいは探れるだろうが、魔力抵抗皆無のデイビッドにはそれすらできない。
「この眼鏡無しじゃ、俺なんざ役立たずもいいとこだ。ベルタ先生様々だな。」
森の中を歩いて行くと、その内に異様に重く甘ったるい匂いが辺りに漂い始めた。
「毎度毎度こういうのはどういった視点で作るんですか?」
「え……ヴィオラが喜ぶかな…とか?」
「女子力と程遠い人がコレ作ってる思うと、脳が軽くパニック起こすんですよねぇ…」
「市井の流行りとか見本に作ってんだよ!悪いか?!」
対してデイビッドは大きな手斧と、短剣を掛けたベルトを手に討伐の支度をしている。
「今までで一番似合ってますよ?!」
「このかっこで二度も野盗に間違われてんだけどなぁ?!」
ファルコの背に荷物を乗せ、自分も飛行体勢に入り鐙に足をかける。
「じゃ、あとは頼んだ!!」
「気をつけて!」
ファルコは早くも速度を上げ、王都は一瞬で遠く離れて行った。
ムスタが4時間で駆けた大街道も、わずか数十分で追い越してしまう。
(速い!!想像以上だ!)
上空から見る景色は相変わらず壮大で、狭いと思っていた世界が広々として目に映る。
(これなら、ルフト領まで1時間かからないかも知れない…ヒポグリフすげぇ…)
山の峰を横切り、渓谷を真下に、雲を抜けて、ファルコはどんどん速度を上げていく。
時々コンパスで方角を確認し、地図を見ながらしばらく飛んでいると、地平線に何かが光って見えた。
「ファルコ!ここから海が見えるぞ?!」
以前のデイビッドなら、こんな景色を目の当たりにしたら最後、最低限の荷物片手にサッサと国を飛び出していた事だろう。
それが今は早く用事を終わらせて、帰ることを考えている。
なんとも成長したものだ。
「ここをもう少し南東に…お!コリンの言ってたルフト領の風車が見えてきた!!もう一息だ!」
谷間にいくつも建てられた鮮やかな風車小屋に迎えられ、ついにデイビッドはルフト領までやって来た。
少しずつ高度を下げ、人気のない場所を選んでファルコを降ろすと、そこからは徒歩になる。
ファルコは疲れた様子もなく、ご機嫌でデイビッドの後について歩いた。
やがて、コリンが見つけたという、謎の養蜂施設のある山の麓が見えて来た。
「そろそろだな…本腰入れてくぞファルコ!」
「キュルルルル!!」
ベルタにもらった眼鏡をかけて辺りを見回すと、不思議な光景が現れた。
「なんだありゃ…」
草むらにちらほら腹に赤い斑点のある虫が飛んでいる。
甲虫、蝶、蜂…種類はバラバラだが共通点がひとつ。
(送粉昆虫!あの模様、眼鏡越しじゃないと見えない…ってことはアレがヒュリスの媒介か!!)
斑点のついた虫は、先へ進むとどんどん増える。
「どっかにあるはずなんだよな…ヒュリスの花。こんだけ虫がいるなら、そろそろ見つかっても良いはずなんだが…」
父親から送られてきた記録の挿絵の写しを見ながら、森をあちこち回るが、それらしい花はどこにも咲いていない。
「どこだろうなぁ…」
「キュルルルル…」
「どうしたファルコ、もう飽きたか?」
「クルルルル…」
「さっきから上ばっか見て、一体何が……げっ……」
ファルコが見上げるミツアカシアの木の上には、拳大程の赤い斑模様の、大きな蘭のような花がいくつも寄生していた。
「気持ち悪ぃ!アレがヒュリスか…!!眼鏡を外すと消える…見えないっておっかねぇな!あんなもんがいくつもあるのか?!よく見つけたなお前!!エライぞ?!」
絡んだツタを足場に木に登り、花に近づくと異様な甘い匂いが漂っていた。
「これがヒュリス…ヤドリギみてぇに他の植物に寄生してデカくなんのか!早いとこ切り落としちまおう。」
ナイフで木に食い込んだ根の部分を切ると、ベタベタした汁が溢れてくる。
サンプルを色々採取してから、根元を引き千切ると、簡単に抜けた。
「抜けるのはいいが数が多い。この木だけでも20はあるな…討伐が遅れたって言うのも頷ける…おいおいおい…ちょっと待てよぉ……」
イヤな予感がして、木の梢の方に登り、上から辺りを見回すと、そこかしこのミツアカシアでヒュリスの空中庭園ができていた。
「気持ち悪ぅっ!!良くもまぁこんだけ増えたな!?」
ひとまず登っている木のヒュリスを片っ端から抜いて落とすと、下にいたファルコが、落ちた花をつつき始めた。
「ファルコ~?何してんださっきから。あ…食ってる…お前…ソレ、食うの?!見た目結構アレな気がするけど…腹壊すなよ?うーん…美味そうに食ってんな……魔獣の好みはわからん…」
ヒポグリフは雑食だ。
頭の本能で狩りもするし、脚の本能で草も喰む。
好みはそれぞれで、野生の場合、糞の形状で趣向を読み、肉食嗜好の個体には近づかないよう気をつけるという。
ファルコは美味しい物を見つけたと!とでも言うように、デイビッドの落とす花を次々とついばみ、飲み込んでいた。
「火で一掃したい所だが…山火事が怖ぇし、地道に行くしかねぇなこりゃぁ…」
登って、抜いて、降りて、また登って…
地味かつ地道で単調な作業。
デイビッドは日が高くなる頃まで、黙々とヒュリスを抜き続けた。
(なんか…こう…魔草を食う生き物っていないのかな…こういう隠れる系のヤツも見つけて食ってくれるような…逆か!食われないように外て出て来たんだ!魔物に食われちまうから、天敵のいない場所に種を飛ばして……西風に乗って空から新天地を目指したとしたら?…森の中にまだ本体がいるんじゃねぇのか…?)
ヒュリスは魔草。
少なくとも魔素の薄い場所では育たない。
デイビッドが今いるのは、その昔魔の森と呼ばれていた土地の跡。
繁殖が可能だったのもそのせいだろう。
風の吹いてくる方角には、薄暗い灰色の森が鬱蒼と広がっている。
「仕方ねぇ、行くぞファルコ!」
森の中に入ると、辺りの空気がいきなり重々しくなる。
「そら!偵察隊のお出ましだぞ!?ファルコじっとしてろよ?!」
男の腕位はある巨大な蜂が2匹、デイビッドの周りを飛び回る。
肉食の巨大毒蜂リオパホネット。
これを見逃すと、仲間を呼ばれてしまうため、ここで仕留めないといけない。
虫の動向は人間には読み難い。
耐えて耐えて、ギリギリまで近づかせ、ナイフを一振りすると蜂は真っ二つに切れて落ちた。
一匹は容易いが、2匹目には警戒されてしまうので難しい。
巣に報告に戻ろうと向きを変えた所で、短刀を投げつけ、これも何とか仕留めることができた。
「ハァー…毎回これ躱すのが厄介なんだよな。」
ナイフを回収し、眼鏡を掛け直して、再び斑点のついた虫を追う。
度々眼鏡を外して辺りを見ると、それまで見えていたはずの飛んでいた物や、隠れていたものがフッと見えなくなる。
「こんなに見逃してたのか…そういや、適性がねぇと討伐隊に入るのは難しいって前に言われたっけ…こういう訳か…」
僅かでも魔力があれば、何とかして気配や影くらいは探れるだろうが、魔力抵抗皆無のデイビッドにはそれすらできない。
「この眼鏡無しじゃ、俺なんざ役立たずもいいとこだ。ベルタ先生様々だな。」
森の中を歩いて行くと、その内に異様に重く甘ったるい匂いが辺りに漂い始めた。
51
あなたにおすすめの小説
国王一家は堅実です
satomi
恋愛
オスメーモ王国…そこは国王一家は麗しくいつも輝かんばかりのドレスなどを身につけている。
その実態は、国王一家は国民と共に畑を耕したり、国民(子供)に読み書きを教えたり庶民的な生活をしている。
国王には現在愛する妻と双子の男女の子に恵まれ、幸せに生活している。
外部に行くときは着飾るが、領地に戻れば庶民的で非常に無駄遣いをしない王族である。
国庫は大事に。何故か、厨房担当のワーグが王家の子どもたちからの支持を得ている。
『伯爵令嬢 爆死する』
三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。
その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。
カクヨムでも公開しています。
結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
傍観している方が面白いのになぁ。
志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」
とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。
その彼らの様子はまるで……
「茶番というか、喜劇ですね兄さま」
「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」
思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。
これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。
「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。
力は弱くて魔法も使えないけど強化なら出来る。~俺を散々こき使ってきたパーティの人間に復讐しながら美少女ハーレムを作って魔王をぶっ倒します
枯井戸
ファンタジー
──大勇者時代。
誰も彼もが勇者になり、打倒魔王を掲げ、一攫千金を夢見る時代。
そんな時代に、〝真の勇者の息子〟として生を授かった男がいた。
名はユウト。
人々は勇者の血筋に生まれたユウトに、類稀な魔力の才をもって生まれたユウトに、救世を誓願した。ユウトもまた、これを果たさんと、自身も勇者になる事を信じてやまなかった。
そんなある日、ユウトの元へ、ひとりの中性的な顔立ちで、笑顔が爽やかな好青年が訪ねてきた。
「俺のパーティに入って、世界を救う勇者になってくれないか?」
そう言った男の名は〝ユウキ〟
この大勇者時代にすい星のごとく現れた、〝その剣技に比肩する者なし〟と称されるほどの凄腕の冒険者である。
「そんな男を味方につけられるなんて、なんて心強いんだ」と、ユウトはこれを快諾。
しかし、いままで大した戦闘経験を積んでこなかったユウトはどう戦ってよいかわからず、ユウキに助言を求めた。
「戦い方? ……そうだな。なら、エンチャンターになってくれ。よし、それがいい。ユウトおまえはエンチャンターになるべきだ」
ユウトは、多少はその意見に疑問を抱きつつも、ユウキに勧められるがまま、ただひたすらに付与魔法(エンチャント)を勉強し、やがて勇者の血筋だという事も幸いして、史上最強のエンチャンターと呼ばれるまでに成長した。
ところが、そればかりに注力した結果、他がおろそかになってしまい、ユウトは『剣もダメ』『付与魔法以外の魔法もダメ』『体力もない』という三重苦を背負ってしまった。それでもエンチャンターを続けたのは、ユウキの「勇者になってくれ」という言葉が心の奥底にあったから。
──だが、これこそがユウキの〝真の〟狙いだったのだ。
この物語は主人公であるユウトが、持ち前の要領の良さと、唯一の武器である付与魔法を駆使して、愉快な仲間たちを強化しながら成り上がる、サクセスストーリーである。
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
【完結】婚約破棄される未来見えてるので最初から婚約しないルートを選びます
22時完結
恋愛
レイリーナ・フォン・アーデルバルトは、美しく品格高い公爵令嬢。しかし、彼女はこの世界が乙女ゲームの世界であり、自分がその悪役令嬢であることを知っている。ある日、夢で見た記憶が現実となり、レイリーナとしての人生が始まる。彼女の使命は、悲惨な結末を避けて幸せを掴むこと。
エドウィン王子との婚約を避けるため、レイリーナは彼との接触を避けようとするが、彼の深い愛情に次第に心を開いていく。エドウィン王子から婚約を申し込まれるも、レイリーナは即答を避け、未来を築くために時間を求める。
悪役令嬢としての運命を変えるため、レイリーナはエドウィンとの関係を慎重に築きながら、新しい道を模索する。運命を超えて真実の愛を掴むため、彼女は一人の女性として成長し、幸せな未来を目指して歩み続ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる