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黒豚令息と訳あり令嬢の学園生活
アルラウネ
むせ返るほどの甘い匂いに纏わりつかれながら、背の高い草をかき分けて進むと、わずかに光の差し込む場所に、何かが揺れるのが見えた。
「なんっだこりゃぁ……」
さっきまで引き抜いていた花とは比べ物にならない程巨大なヒュリスが、日差しの中にでんと構えている。
「うわ、眼鏡外すと見えねぇ!!こんなでっかいモン見失うって頭がおかしくなりそうだ…気持ち悪ぃ…」
根本を見ると、ヒュリスとは色の違う植物の葉がわずかに見えている。
(なんだろう…根本からぶった切っちまえばいいのに、それしたら、なんかダメなような気がする…うわぁ~めんどくせぇ~…)
こういう時に働く謎の勘。
デイビッドの経験則上、どんな窮地でも、これに従うとだいたい物事が上手くいく。
ひとまず近づいてみると、案の定、長い触手が伸びて来て、デイビッドを捕らえようとする。
「こういう植物系って、何で獲物を感知してんだろう…振動?体温?わかんねぇ~…」
距離を取ると引っ込むので、そこまで近づかなければ大丈夫そうだ。
それでもヒュリスの根本近くには、いくつも動物の骨が散らばっていた。
「捕まると栄養にされちまうって事か。さてと、ファルコは危ないからここにいてくれよ?!」
少し離れた所にファルコを繋ぐと、まずはエリックから借りてきたカメラで角度を変えながら撮りまくる。
それが終わると、ファルコの背中の袋から、大きめのボウガンを取り出し、一番きつく弦を張り直して矢をつがえた。
(魔物は大きくなると必ず核ができる…ヒュリスの核は…ど真ん中か。)
眼鏡越しに凝視していると、ヒュリスの花芯近くにわずかに明るくなっている場所が見える。
恐らく核の場所だろう。
狙いを定め、一発目。
刺さりはしたがまだ浅い。
そのせいで警戒されてしまい、ヒュリスの葉が核を守ろうとして動くので、二発目が撃ちにくい。
反対側に回り込み、もう一発当てはしたが、やはり核に届かない。
(もっと近くに行かないとダメか…)
じりじり距離を詰めて行くと、ヒュリスの触手がデイビッドの足を捕らえ、宙高くに吊り上げた。
「うおぉっ!!結構強ぇな!!」
巨大な花が口を開け、禍々しい中の様子がよく見える。
(げえぇぇ…中でなんか溶けかけてる…直に消化すんのか?!気味悪ぃ…)
デイビッドは花の中に放り込まれ、花弁が閉じられようとした瞬間、むき出しの花芯目掛けて、3発目を撃ち込んだ。
矢は核を撃ち抜き、ヒュリスは身を絞るように痙攣させると、ついにぐったりと動かなくなった。
「内側からだと眼鏡外してても見えるんだなぁ…」
ゴムのような分厚い花弁をナイフで切り裂きながら外に出ると、ファルコが綱を引きちぎり、半狂乱になって飛び回っていた。
「キュールルル!!キュールルル!!」
「悪い悪い!心配掛けた!もう大丈夫だ。」
改めてヒュリスの本体を見ると、人の身体の2倍はある。
「記録にはこんなデカいなんて、どこにもなかったぞ?突然変異とかか?」
花弁や触手を引き千切り、下敷きになっている植物を探すと、引き抜いた根っこの先にかろうじて何かが繋がっている。
葉を全て取り除くと、幼い少女の姿が現れた。
「人?!!じゃねぇや、眼鏡外すと見えねぇ…あーー良かった…一瞬ヒヤッとした…」
全身が薄緑色で、頭にも植物が生えているところを見ると、昨日見たドライアドの仲間かも知れない。
ぐったり萎れていて、今にも枯れてしまいそうだ。
「これがヒュリスの宿主だったのか…ヒュリスがこれだけデカいって事は、よっぽど養分を吸われたんだろな。」
人型の魔物は人を誘き寄せて襲うものと、人の姿で天敵を追い払うものの二種類に大きく分けられる。
「情が湧くわけじゃねぇけど、置いとくのもなんかなぁ…」
なんとなくそこに打ち捨てておけず、絡みついているヒュリスの根を切り離し、土ごと布袋に入れ荷物の上に横たわらせた。
「ファルコ、他に花が無いか見に行くぞ!?」
上空からヒュリスの姿を探すと、小さな花は幾つか見つかったが、魔素が無い所の物はほとんど育たず、枯れていた。
「枯れると眼鏡無しでも見えるのか!うーん…さっきから眼鏡の掛け過ぎで目が疲れてきたな…」
サンプルにと枝ごと採取した小型の記録を取り、ひと休みがてら花の構造をスケッチをして、対する大型の物と比較した情報も書き込んでいく。
巨大ヒュリスは、花弁と花芯と触手の一部を切り取り、運べない部分は写真に収めてから焼いてしまう。
根から切り離された部分は眼鏡無しでも見えるので、見えない部分は萎れていてもまだ根が生きている証拠だ。
これだから魔物は油断ができない。
火に焚べると、悪あがきに伸ばした触手もついに動かなくなった。
時計を見て、討伐証明記録に場所と日時を記して、ようやく討伐完了。
「ハァーーー…終わった終わった!!帰るかファルコ!」
「キュルルピー!!」
帰りとは少し違うルートで飛び立つと、上昇気流に乗って雲の上まで突き抜け、そこからトップスピードで一気に降下する。
「ひゃーー!!速ぇぇっ!!こんな速度地上じゃ絶対味わえないな!」
誰もいない雲の上で、デイビッドは短い空の旅を存分に楽しんだ。
学園が見えてきて、いつもの中庭に降りようとすると、丁度エリックが顔を出した。
「おーい戻ったぞー!!」
「もう帰ってきたんですか?!討伐は?まさか延期ですか?」
「採取も調査も討伐も、もう終わった!これからサンプル出してくる。」
「う…なんですかこれ?すごい匂いですね…」
「花の魔物に食われかけたからな。花粉やら消化液やらで身体中ベタベタだ…」
「甘ったるくてどぎつくて…なんか場末の娼館みたい。」
「お前、最近口の悪さに磨きが掛かってないか?!」
ファルコを小屋に戻すと、まずは採取した花を持って温室へ。
そこではベルダがそわそわしながら待っていた。
「先生、いますか?」
「デイビッド君!無事に帰って来てくれて安心したよ!それで?ヒュリスはどうなった?」
「討伐しました。サンプルが山程あるんで精査してもらっていいですかね?」
「やぁ!!すごいの獲ってきたね?!こんな大きな個体は初めて見るよ!こんなの1人で討伐したのかい?君、ポテンシャル高過ぎない?」
巨大ヒュリスの花弁にはしゃぐベルダに、デイビッドは例の魔物を入れた袋を見せた。
「あと、コレ、ヒュリスの宿主になってた魔物…なのか知らねぇけど、温室にいたドライアドに似てたから持って来た。」
「どれどれ?…これは!まさかアルラウネか?!なんてものを採ってきたんだ君は!!」
「採っちゃダメなヤツでした?!」
「そうじゃない!ここ数十年、採取記録どころか目撃情報すら無いんだ!珍しいなんてもんじゃない!!大発見だよ!!しかし、かなり弱っているね。リディア、この子を直ぐに治療してあげなさい!!」
「リディア?」
「彼女の名前さ!正式名称ドライアド・リュリディアム・クレフォリア。温厚で友好的な代表的なドライアドの仲間だよ。雌花だから女性扱いしてあげて。ちなみに君が探してるのと逆の方にいるよ?!」
しばらく掛けっぱなしにしていたので、自分が見えないことをすっかり忘れていたデイビッドがあわてて眼鏡をかけると、傷ついた同胞を労わるように、ドライアドがアルラウネを抱えてどこかへ連れて行く所だった。
魔力が無ければ全くの無力になる事があると、この日デイビッドは嫌と言う程思い知った。
「なんっだこりゃぁ……」
さっきまで引き抜いていた花とは比べ物にならない程巨大なヒュリスが、日差しの中にでんと構えている。
「うわ、眼鏡外すと見えねぇ!!こんなでっかいモン見失うって頭がおかしくなりそうだ…気持ち悪ぃ…」
根本を見ると、ヒュリスとは色の違う植物の葉がわずかに見えている。
(なんだろう…根本からぶった切っちまえばいいのに、それしたら、なんかダメなような気がする…うわぁ~めんどくせぇ~…)
こういう時に働く謎の勘。
デイビッドの経験則上、どんな窮地でも、これに従うとだいたい物事が上手くいく。
ひとまず近づいてみると、案の定、長い触手が伸びて来て、デイビッドを捕らえようとする。
「こういう植物系って、何で獲物を感知してんだろう…振動?体温?わかんねぇ~…」
距離を取ると引っ込むので、そこまで近づかなければ大丈夫そうだ。
それでもヒュリスの根本近くには、いくつも動物の骨が散らばっていた。
「捕まると栄養にされちまうって事か。さてと、ファルコは危ないからここにいてくれよ?!」
少し離れた所にファルコを繋ぐと、まずはエリックから借りてきたカメラで角度を変えながら撮りまくる。
それが終わると、ファルコの背中の袋から、大きめのボウガンを取り出し、一番きつく弦を張り直して矢をつがえた。
(魔物は大きくなると必ず核ができる…ヒュリスの核は…ど真ん中か。)
眼鏡越しに凝視していると、ヒュリスの花芯近くにわずかに明るくなっている場所が見える。
恐らく核の場所だろう。
狙いを定め、一発目。
刺さりはしたがまだ浅い。
そのせいで警戒されてしまい、ヒュリスの葉が核を守ろうとして動くので、二発目が撃ちにくい。
反対側に回り込み、もう一発当てはしたが、やはり核に届かない。
(もっと近くに行かないとダメか…)
じりじり距離を詰めて行くと、ヒュリスの触手がデイビッドの足を捕らえ、宙高くに吊り上げた。
「うおぉっ!!結構強ぇな!!」
巨大な花が口を開け、禍々しい中の様子がよく見える。
(げえぇぇ…中でなんか溶けかけてる…直に消化すんのか?!気味悪ぃ…)
デイビッドは花の中に放り込まれ、花弁が閉じられようとした瞬間、むき出しの花芯目掛けて、3発目を撃ち込んだ。
矢は核を撃ち抜き、ヒュリスは身を絞るように痙攣させると、ついにぐったりと動かなくなった。
「内側からだと眼鏡外してても見えるんだなぁ…」
ゴムのような分厚い花弁をナイフで切り裂きながら外に出ると、ファルコが綱を引きちぎり、半狂乱になって飛び回っていた。
「キュールルル!!キュールルル!!」
「悪い悪い!心配掛けた!もう大丈夫だ。」
改めてヒュリスの本体を見ると、人の身体の2倍はある。
「記録にはこんなデカいなんて、どこにもなかったぞ?突然変異とかか?」
花弁や触手を引き千切り、下敷きになっている植物を探すと、引き抜いた根っこの先にかろうじて何かが繋がっている。
葉を全て取り除くと、幼い少女の姿が現れた。
「人?!!じゃねぇや、眼鏡外すと見えねぇ…あーー良かった…一瞬ヒヤッとした…」
全身が薄緑色で、頭にも植物が生えているところを見ると、昨日見たドライアドの仲間かも知れない。
ぐったり萎れていて、今にも枯れてしまいそうだ。
「これがヒュリスの宿主だったのか…ヒュリスがこれだけデカいって事は、よっぽど養分を吸われたんだろな。」
人型の魔物は人を誘き寄せて襲うものと、人の姿で天敵を追い払うものの二種類に大きく分けられる。
「情が湧くわけじゃねぇけど、置いとくのもなんかなぁ…」
なんとなくそこに打ち捨てておけず、絡みついているヒュリスの根を切り離し、土ごと布袋に入れ荷物の上に横たわらせた。
「ファルコ、他に花が無いか見に行くぞ!?」
上空からヒュリスの姿を探すと、小さな花は幾つか見つかったが、魔素が無い所の物はほとんど育たず、枯れていた。
「枯れると眼鏡無しでも見えるのか!うーん…さっきから眼鏡の掛け過ぎで目が疲れてきたな…」
サンプルにと枝ごと採取した小型の記録を取り、ひと休みがてら花の構造をスケッチをして、対する大型の物と比較した情報も書き込んでいく。
巨大ヒュリスは、花弁と花芯と触手の一部を切り取り、運べない部分は写真に収めてから焼いてしまう。
根から切り離された部分は眼鏡無しでも見えるので、見えない部分は萎れていてもまだ根が生きている証拠だ。
これだから魔物は油断ができない。
火に焚べると、悪あがきに伸ばした触手もついに動かなくなった。
時計を見て、討伐証明記録に場所と日時を記して、ようやく討伐完了。
「ハァーーー…終わった終わった!!帰るかファルコ!」
「キュルルピー!!」
帰りとは少し違うルートで飛び立つと、上昇気流に乗って雲の上まで突き抜け、そこからトップスピードで一気に降下する。
「ひゃーー!!速ぇぇっ!!こんな速度地上じゃ絶対味わえないな!」
誰もいない雲の上で、デイビッドは短い空の旅を存分に楽しんだ。
学園が見えてきて、いつもの中庭に降りようとすると、丁度エリックが顔を出した。
「おーい戻ったぞー!!」
「もう帰ってきたんですか?!討伐は?まさか延期ですか?」
「採取も調査も討伐も、もう終わった!これからサンプル出してくる。」
「う…なんですかこれ?すごい匂いですね…」
「花の魔物に食われかけたからな。花粉やら消化液やらで身体中ベタベタだ…」
「甘ったるくてどぎつくて…なんか場末の娼館みたい。」
「お前、最近口の悪さに磨きが掛かってないか?!」
ファルコを小屋に戻すと、まずは採取した花を持って温室へ。
そこではベルダがそわそわしながら待っていた。
「先生、いますか?」
「デイビッド君!無事に帰って来てくれて安心したよ!それで?ヒュリスはどうなった?」
「討伐しました。サンプルが山程あるんで精査してもらっていいですかね?」
「やぁ!!すごいの獲ってきたね?!こんな大きな個体は初めて見るよ!こんなの1人で討伐したのかい?君、ポテンシャル高過ぎない?」
巨大ヒュリスの花弁にはしゃぐベルダに、デイビッドは例の魔物を入れた袋を見せた。
「あと、コレ、ヒュリスの宿主になってた魔物…なのか知らねぇけど、温室にいたドライアドに似てたから持って来た。」
「どれどれ?…これは!まさかアルラウネか?!なんてものを採ってきたんだ君は!!」
「採っちゃダメなヤツでした?!」
「そうじゃない!ここ数十年、採取記録どころか目撃情報すら無いんだ!珍しいなんてもんじゃない!!大発見だよ!!しかし、かなり弱っているね。リディア、この子を直ぐに治療してあげなさい!!」
「リディア?」
「彼女の名前さ!正式名称ドライアド・リュリディアム・クレフォリア。温厚で友好的な代表的なドライアドの仲間だよ。雌花だから女性扱いしてあげて。ちなみに君が探してるのと逆の方にいるよ?!」
しばらく掛けっぱなしにしていたので、自分が見えないことをすっかり忘れていたデイビッドがあわてて眼鏡をかけると、傷ついた同胞を労わるように、ドライアドがアルラウネを抱えてどこかへ連れて行く所だった。
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カクヨムで公開したものに手を入れたものです。