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黒豚令息と訳あり令嬢の学園生活
リディアとアリー
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ヒュリスの討伐が終わり、王家への報告も済んで、デイビッドはひとまずお役御免で、再び寸の間自由になった。
アリスティアはしばらく学園を休み、家(王家)の事に専念するらしい。
あれから黒幕も引きずり出すことができ、アーネストがこれぞ真の王家による弾劾と言わんばかりの快進撃を見せ、王都中の注目の的になったということは、新聞でようやく知った。
デイビッドはあれから、いつも以上に頻繁に温室へ足を運んでいる。
「先生!眼鏡!早く!!ちょ…待て待て!巻き付くな!見えないんだよ!服の中入って来んな!くすぐったいって!首!首しまる!!ちょ…ベルダ先生ぇーっ!?」
入るなり、見えないツタに巻き付かれ、身動きが取れないまま好き放題されてしまい、助けを呼んでもなかなか来ない。
「アッハッハッハッ!!君ホントに面白いなぁ!野生のアルラウネが懐くなんて、異例中の異例だよ?!」
「なつ…かれてんのか、コレ?」
「擬人型の植物魔物は、蔓や根を絡み合わせてお互いの感情や情報を共有し合うんだよ。君たぶん植物と思われてるんじゃないかな?」
「何系の??」
「野生だったから、人との接し方がまだ分からないのさ。ほら、眼鏡掛けてあげなよ。君に認識されてないと、へそ曲げちゃうよ?!」
デイビッドがあわてて眼鏡をかけると、無表情で中性的な顔が真横に現れた。
「うおっ!こんな近くにいたのか…正直…こう…意思疎通の図りにくい生き物とは、どう接したらいいのか…」
「そこは他の動物や魔物と同じだよ。彼女達は知性も高いし、集団行動もできるくらい感覚の共有も得意だ。愛情持って接すれば問題ないよ?!あとはリディアが色々教えるから安心したまえ。」
スルスルと現れたリディアが、デイビッドに巻き付くアルラウネをたしなめると、蔓が解けて自由になった。
「愛情ったって…植物だろ?」
「君、野菜育てるのうまいじゃないか。動物の扱いも得意だろう?同じだよ!」
「そういうもんかな?!」
「名前つけてあげなよ。愛着が湧いて接しやすくなるよ?!」
「名前…。名前かぁ。アルラウネの名前…アリーとか?」
「君けっこうかわいい趣味してるね。」
「“アル”ラウネから取ったんだよ!呼びやすいだろ!?」
「そうしたらちゃんと認識させてあげるといい。君の名前はアリーだよって!」
感情の読めない植物魔物の顔は、人に似せているだけで、目も口も鼻も耳も本当に機能しているわけでは無い。
それでも顔があるとそこを見てしまうのは、人間側の本能だ。
「えーと…?元気になったみたいで、良かったな。お前の名前はアリーだ。気に入って…待て待て待て!いきなりなんだ?!口の中なんか入れないで?!え?怖い怖い!何してんの?!頼むから抜いて…苦っっっが!!クッッソ苦ぇぇ!!なんだコレ!?ウェェッ!…ベルダ先生ぃぃ?!!」
いきなり巻き付いたアリーに、口の中に管を突っ込まれ、謎の苦い物質を流し込まれたデイビッドがひたすら悶絶している横で、ベルタは爆笑していた。
「アーーハッハッハッ!こんなに笑ったの久しぶりだよぉ!大丈夫、栄養を分けようとしてるだけだよ!君、肌が褐色だろう?枯れかけてると思われたんだよ。健気じゃないか!自分も病み上がりでコンディションも万全じゃないのに、仲間を助けようとするなんてさ!」
再びリディアに注意され、止めてはくれたが、このままでは真剣にこっちの身が危ない。
「ゲホッ、これ…飲んで大丈夫なヤツ…?」
「樹液と変わらないはずなんだけどなぁ。そんなに苦かった?成分を調べてみようか!」
ベルダが溢れた樹液のサンプルを取る間、リディアはアリーとツタを絡ませ、何かを教えようとしているようだった。
(表情も読めない、感性もズレまくってて…動物の行動はある程度予測がつくが、コレは無理だ!!)
しばらくすると、リディアがデイビッドに近づき、アリーに手本を見せようと、人との接し方を教え始めた。
まずはツタではなくて、相手の手と同じ形の部位を使う事。
リディアのひんやりとした手がデイビッドの手を包む。
アリーも真似して反対の手をギュッとつかんだ。
多少の力加減は違うものの、人間からすればこの方が親しみやすい。
「確かに、これなら人間側はわかりやすいな…植物的にどうなのかは知らねぇけど…」
次にリディアはデイビッドの顔に触れた。
頭を撫でて目を見るようにアリーに教えると、アリーもデイビッドの頭をグシャグシャ撫でた。
「イテテ!ちょっと強いな…子供扱いされてるみてぇ。まぁさっきのよりかマシか。」
「デイビッド君、気をつけて。」
「何を?!」
「うちの子、キス魔だから。」
「それを先に言えぇぇ!!」
リディアに顔を近づけられて抵抗すると、真似してアリーも反対側から迫って来る。
「ここで隠れてする生徒が後を絶たなくて、変に覚えてしまってね。まぁ別にいいじゃないか。リンゴにキスするようなもんだよ。」
「リンゴなもんか!なんか出てる!口からなんか触手が出てる!この状況で耳になんか突っ込もうとすんな!怖い怖い!植物怖い!!」
【こら!リディア、止めなさい!】
ベルダが、何か魔法的な信号を送ると、リディアはシュンとしてデイビッドから離れ、アリーも真似して手を離した。
「ハァ…ハァ…殺されるかと思った…!」
「おかしいな。アリーはともかく、リディアが人と植物を誤認するはずは無いんだけど…ああそうか!君、魔力が無いから!枯渇してると思って魔力を注入しようとしたんだよ!って…大丈夫かい?」
「頭痛ぇ…ガンガンしてきた…」
僅かとはいえ魔力の混じった樹液は、魔力抵抗の無いデイビッドにとって毒と同じだ。
平素こういった魔力絡みに強いのは、例のとんでもベストの恩恵に他ならない。
この日は温室に行くだけだからと、ベストを置いてきたのが痛恨のミスだった。
「あーグラグラする…」
「すまない。僕がついていながら酷い目に遭わせてしまったね。少し休んで行きなさい。」
中央のベンチに座り、うなだれていると、後ろからアリーがまた絡みついてきた。
ぎょっとして逃げようとするデイビッドを、ベルダが引き止める。
「大丈夫、心配してるだけだよ。彼女達も、君とのコミュニケーション方法を探っているのさ。」
「ならいいけどよ…」
安心し掛けた矢先、抱きつくアリーの手から一瞬、電気のような激痛が走った。
「イッテェェェッッ!!なんだ今のバチバチは?!静電気の10倍くらいあったぞ?弱ってる相手にトドメを刺すな!!」
「驚いたな!今自分が注いだ魔力を逆に吸収したんだよ。君が苦しんでるのが分かったんだね。なんて賢いんだ!」
「命がいくつ合っても足りねぇよ!!」
頭痛は治まったが、今度は身体が痺れてうまく動けない。
アリーは、デイビッドの頭を何度も撫でて、心なしか悲しそうな顔をした。
「ああ、悪い、別に怒ってるわけじゃねぇよ。つってもわかんねぇか…」
「植物系の魔物とは魔力が無いと言語的コミュニケーションは取れないからね。でも気持ちは伝わってるはずだよ。」
気持ちが通じているのかいないのか、今ひとつわからないでいると、アリーがデイビッドの顔をのぞいて口を動かした。
「あー…」
「ああ、アリーな。アリー。」
「アぁーリぃー…」
「そうそう、アリー…え??」
「アリぃー」
「「喋った!!??」」
本来喋るはずの無い植物魔物が喋ると言う、前代未聞の大事件。
温室にはしばらく【改装中立入禁止】の看板が立つことになった。
アリスティアはしばらく学園を休み、家(王家)の事に専念するらしい。
あれから黒幕も引きずり出すことができ、アーネストがこれぞ真の王家による弾劾と言わんばかりの快進撃を見せ、王都中の注目の的になったということは、新聞でようやく知った。
デイビッドはあれから、いつも以上に頻繁に温室へ足を運んでいる。
「先生!眼鏡!早く!!ちょ…待て待て!巻き付くな!見えないんだよ!服の中入って来んな!くすぐったいって!首!首しまる!!ちょ…ベルダ先生ぇーっ!?」
入るなり、見えないツタに巻き付かれ、身動きが取れないまま好き放題されてしまい、助けを呼んでもなかなか来ない。
「アッハッハッハッ!!君ホントに面白いなぁ!野生のアルラウネが懐くなんて、異例中の異例だよ?!」
「なつ…かれてんのか、コレ?」
「擬人型の植物魔物は、蔓や根を絡み合わせてお互いの感情や情報を共有し合うんだよ。君たぶん植物と思われてるんじゃないかな?」
「何系の??」
「野生だったから、人との接し方がまだ分からないのさ。ほら、眼鏡掛けてあげなよ。君に認識されてないと、へそ曲げちゃうよ?!」
デイビッドがあわてて眼鏡をかけると、無表情で中性的な顔が真横に現れた。
「うおっ!こんな近くにいたのか…正直…こう…意思疎通の図りにくい生き物とは、どう接したらいいのか…」
「そこは他の動物や魔物と同じだよ。彼女達は知性も高いし、集団行動もできるくらい感覚の共有も得意だ。愛情持って接すれば問題ないよ?!あとはリディアが色々教えるから安心したまえ。」
スルスルと現れたリディアが、デイビッドに巻き付くアルラウネをたしなめると、蔓が解けて自由になった。
「愛情ったって…植物だろ?」
「君、野菜育てるのうまいじゃないか。動物の扱いも得意だろう?同じだよ!」
「そういうもんかな?!」
「名前つけてあげなよ。愛着が湧いて接しやすくなるよ?!」
「名前…。名前かぁ。アルラウネの名前…アリーとか?」
「君けっこうかわいい趣味してるね。」
「“アル”ラウネから取ったんだよ!呼びやすいだろ!?」
「そうしたらちゃんと認識させてあげるといい。君の名前はアリーだよって!」
感情の読めない植物魔物の顔は、人に似せているだけで、目も口も鼻も耳も本当に機能しているわけでは無い。
それでも顔があるとそこを見てしまうのは、人間側の本能だ。
「えーと…?元気になったみたいで、良かったな。お前の名前はアリーだ。気に入って…待て待て待て!いきなりなんだ?!口の中なんか入れないで?!え?怖い怖い!何してんの?!頼むから抜いて…苦っっっが!!クッッソ苦ぇぇ!!なんだコレ!?ウェェッ!…ベルダ先生ぃぃ?!!」
いきなり巻き付いたアリーに、口の中に管を突っ込まれ、謎の苦い物質を流し込まれたデイビッドがひたすら悶絶している横で、ベルタは爆笑していた。
「アーーハッハッハッ!こんなに笑ったの久しぶりだよぉ!大丈夫、栄養を分けようとしてるだけだよ!君、肌が褐色だろう?枯れかけてると思われたんだよ。健気じゃないか!自分も病み上がりでコンディションも万全じゃないのに、仲間を助けようとするなんてさ!」
再びリディアに注意され、止めてはくれたが、このままでは真剣にこっちの身が危ない。
「ゲホッ、これ…飲んで大丈夫なヤツ…?」
「樹液と変わらないはずなんだけどなぁ。そんなに苦かった?成分を調べてみようか!」
ベルダが溢れた樹液のサンプルを取る間、リディアはアリーとツタを絡ませ、何かを教えようとしているようだった。
(表情も読めない、感性もズレまくってて…動物の行動はある程度予測がつくが、コレは無理だ!!)
しばらくすると、リディアがデイビッドに近づき、アリーに手本を見せようと、人との接し方を教え始めた。
まずはツタではなくて、相手の手と同じ形の部位を使う事。
リディアのひんやりとした手がデイビッドの手を包む。
アリーも真似して反対の手をギュッとつかんだ。
多少の力加減は違うものの、人間からすればこの方が親しみやすい。
「確かに、これなら人間側はわかりやすいな…植物的にどうなのかは知らねぇけど…」
次にリディアはデイビッドの顔に触れた。
頭を撫でて目を見るようにアリーに教えると、アリーもデイビッドの頭をグシャグシャ撫でた。
「イテテ!ちょっと強いな…子供扱いされてるみてぇ。まぁさっきのよりかマシか。」
「デイビッド君、気をつけて。」
「何を?!」
「うちの子、キス魔だから。」
「それを先に言えぇぇ!!」
リディアに顔を近づけられて抵抗すると、真似してアリーも反対側から迫って来る。
「ここで隠れてする生徒が後を絶たなくて、変に覚えてしまってね。まぁ別にいいじゃないか。リンゴにキスするようなもんだよ。」
「リンゴなもんか!なんか出てる!口からなんか触手が出てる!この状況で耳になんか突っ込もうとすんな!怖い怖い!植物怖い!!」
【こら!リディア、止めなさい!】
ベルダが、何か魔法的な信号を送ると、リディアはシュンとしてデイビッドから離れ、アリーも真似して手を離した。
「ハァ…ハァ…殺されるかと思った…!」
「おかしいな。アリーはともかく、リディアが人と植物を誤認するはずは無いんだけど…ああそうか!君、魔力が無いから!枯渇してると思って魔力を注入しようとしたんだよ!って…大丈夫かい?」
「頭痛ぇ…ガンガンしてきた…」
僅かとはいえ魔力の混じった樹液は、魔力抵抗の無いデイビッドにとって毒と同じだ。
平素こういった魔力絡みに強いのは、例のとんでもベストの恩恵に他ならない。
この日は温室に行くだけだからと、ベストを置いてきたのが痛恨のミスだった。
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ぎょっとして逃げようとするデイビッドを、ベルダが引き止める。
「大丈夫、心配してるだけだよ。彼女達も、君とのコミュニケーション方法を探っているのさ。」
「ならいいけどよ…」
安心し掛けた矢先、抱きつくアリーの手から一瞬、電気のような激痛が走った。
「イッテェェェッッ!!なんだ今のバチバチは?!静電気の10倍くらいあったぞ?弱ってる相手にトドメを刺すな!!」
「驚いたな!今自分が注いだ魔力を逆に吸収したんだよ。君が苦しんでるのが分かったんだね。なんて賢いんだ!」
「命がいくつ合っても足りねぇよ!!」
頭痛は治まったが、今度は身体が痺れてうまく動けない。
アリーは、デイビッドの頭を何度も撫でて、心なしか悲しそうな顔をした。
「ああ、悪い、別に怒ってるわけじゃねぇよ。つってもわかんねぇか…」
「植物系の魔物とは魔力が無いと言語的コミュニケーションは取れないからね。でも気持ちは伝わってるはずだよ。」
気持ちが通じているのかいないのか、今ひとつわからないでいると、アリーがデイビッドの顔をのぞいて口を動かした。
「あー…」
「ああ、アリーな。アリー。」
「アぁーリぃー…」
「そうそう、アリー…え??」
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