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黒豚令息と訳あり令嬢の学園生活
進化
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テーブルをコロコロ転がっていく空魔石。
「中の魔力だけ吸い取られたわね。」
「こんの野郎……」
「また作ります!もっと精度が高くなるよう頑張りますから…だからディディにイジワルしないで下さい…」
「プィップィッ!」
小豚を捕まえ、握り潰す勢いでつかんでいたデイビッドは、手を離すと小豚の首根っこをつまみ上げてヴィオラの手に返した。
「よしよし、もうこんなイタズラしちゃダメよ?!」
「プィィ…」
「貴方も、こんなちっこい使い魔に嫉妬して見苦しいわよ?」
「してねぇよ…」
結局この日、ヴィオラは始終ディディに構い切りで、デイビッドは初めて過去の自分を激しく呪う事になった。
「所で、エリックは?まだ休暇中でしょ?観念して、部屋に戻ったの?」
「アイツなら風呂入ってる。」
「あらそう。…え?フロ?!お風呂ってこと?シャワーじゃなくて?」
「先週バカデカい荷物が届いて、何かと思ったら新作の風呂釜だったんだ。商会から使い心地を試してくれって来たはいいが、使わねぇと思って邪魔だから空き部屋に突っ込んどいたら、シャワー室に運び込んで朝から入ってる。」
「朝から?!もう昼よ。溺れてない?」
「たまに水分補給に来てまた戻ってく…」
「お湯…冷めちゃわないんですか?」
「保温のティーカップの応用で、適温が保たれるらしいぞ?」
「なにそれ…欲しい…」
「ちょっ…と…これはティーカップみたいにはいかねぇかな……」
昼休みが終わり、2人を見送って、戻って来た謎生物が再び眠りについた頃、ベルダが慌てたようにやって来て、研究室のドアをノックも無しに乱暴に開けた。
「デイビッド君!すぐに来てくれ!アリーが大変なんだ!」
「ベルダ先生?!アリーがどうしたって?」
「成長期だ…状態が思わしくない。急いでくれ!」
2人が走って温室に向かうと、うずくまるアリーの傍らでリディアもぐったりしていた。
「リディア!君まで無茶したのか!?こんなに弱って…」
「何が起きてんだ?」
「アリーの成長期、つまり魔物の進化が始まったんだ。しかしここには魔素が足りない!リディアが枯渇寸前まで魔力を注いだようだが、まるで効果が無い…このままではアリーは枯れてしまう!」
魔物には、自身の身体を変化させ、姿を変えるものがいる。
それを魔物の進化と呼び、変化後の姿を成体として扱う。
人型の植物系魔物の変態は、種・若葉・成体の3段階に分けられる。
この進化には、通常でも大量の魔素、または魔力が必要とされている。
「…魔力があればいいのか?!」
「アルラウネの進化に必要な魔力量がどれ程か、まだわかっていないんだ。わかるのは下手に人の魔力に頼れば、恐らく枯渇による重症者か死者が出ると言うことくらいだ。」
「ちょっと待っててくれ!」
デイビッドは、直ぐに研究室へ戻り、エリックを叩き起こした。
「エリック!起きろ!聞きたいことがある!」
「なぁんでふか…?そんなあわてて…」
「こないだ変な薬作った時、赤い樹の実使ってたよな!?」
「それがどうしました…?」
「あれ、魔力どのくらい入ってる?!」
「…国中の魔法使い集めても足りないくらいあるんじゃないですか…?」
「わかった!邪魔したな、もう寝てていいぞ!?」
デスクの中の赤い実をひとつつかむと、また急いで温室へ戻り、デイビッドはアリーの元に駆け寄った。
「アリー、大丈夫か?」
「…ディ…」
「口開けろ!ほら、コレ食ってみろ!治るかも知れないぞ?!」
「あー…」
赤い樹の実をアリーの口に押し込み、ゆっくり口が動く様子を見ていると、隣でベルダが発狂した。
「ちょっと!ちょっと!!ちょっと!!待って待って待って??!君、今ナニ入れた?!」
「え?ああ、精霊の樹の実とかなんとか言う…」
「エ?エ??え?そうだよねぇ?!精霊樹の実だよねぇ?!世界樹の実だったよねぇ???」
「すごい魔力を含んでるって聞いて…」
「そりゃそうだよ!?世界樹だよ?!世界樹の実だよ?!」
「経口摂取じゃ駄目だったとか?そういや口って形だけなのか!栄養摂るのは根っこの方?!」
「悩むとこそこ?!いやいやいや!!おかしいだろう?!」
「どうすりゃいいかわかんなかったもんで…」
「だったら聞こうよーーー!!!僕ずっと隣りに居たよねぇーーー??そりゃ治るよ!!世界樹の実だよ?!なんなら死者も生き返るって話の、地上最強のウルトラレアアイテムだよーー?!“我が生涯掛けて魔力を放出し続けても尚枯れること無く元の姿を保ったまま”って有名な賢者の書の一文知らない?知らないね?!うん!!わかった!!不思議そうな顔するのヤメて?!今初めて君に殺意が湧いたよ!!君といるとメリットもすごいけど、損失も半端ないんだね!?全世界の魔法使い敵に回すような事平然としないで!?!」
頭を掻きむしりながら、ベルダが早口でまくし立てる。
「恐らくね、数滴で良かったはずなんだ!」
「すうてき……」
「そう!そのくらい超超高濃度の魔力が詰まってるんだよ、あの樹の実の中には!!エリック君が薬作るとこ見てたんでしょ?どのくらい入れてたか覚えてる?!」
「はりさきに…つくくらい…?」
「だよねぇ?!そのくらい取扱いに気をつけないといけないの。ヘタしたら魔力過多で何が起こるかわかんないよ?!」
「このまま枯れる可能性も…?」
「あるだろうね。魔力の過剰状態が続くと人間でも辛いんだよ。」
「そんな…やっちまった…」
デイビッドが青ざめていると、アリーの足元から大きな葉が伸びてきて、アリーの体を包みこんでいった。
「アリー!大丈夫か?ごめんな!?変なもん食わして…」
「世界樹の実を変なもんとか言わないで?!思いつきまでは良かったんだけどね?!さては君パニクると意外と暴走するタイプだな!?」
「このあとどうなるんだ?」
「この塊はたぶん蕾だ。花が開けば中から出て来るよ。」
「どのくらいで開く?」
「文献に拠ると、数日から数十年とある。」
「当てにならねぇな…」
やがて蕾は動かなくなり、ツタが絡まりあって繭のようになった。
中で成長が始まったようだ。
「そのくらいわからない事だらけなのさ。ほぼ半世紀近く新しい個体の発見は無かった。現存する生きた個体はラムダ王国の研究機関に一体と、エルム帝国に二体だけ。それも厳重な管理大勢と何重にも及ぶ結界の中にいて、採取なんて滅多にできない状態なんだ。」
「閉じ込められてんのか?かわいそうに…」
「狂暴で近付く物全て破壊するような魔物の管理なんて、そんなもんだよ。」
「そんなもんなのか?!じゃ、アリーは…?」
「あれは幼体だ。暴れてもリディアの力で抑え込める。だからフリーにしておけたんだよ。成長して成体になった時どうなるか、僕にも正直わからない。」
ベルダの隣で、今更事の重大さを知ったデイビッドが震えていると、ベルダがその肩に手を置いた。
「デイビッド君。君も少し覚悟していなさい。成長を遂げたアリーが、今までのアリーではなくなっていた場合、僕は彼女を拘束しなければならない。そこはどうか飲み込んで欲しい。もしそうなったら、その時は責任持って見届けてあげてね。」
アリーの蕾に触れると、ひんやりとして滑らかな手触りが伝わってくる。
迂闊な行動を反省し、心中で何度も謝りながら、デイビッドは蕾の側でしばらく立ち尽くしていた。
「中の魔力だけ吸い取られたわね。」
「こんの野郎……」
「また作ります!もっと精度が高くなるよう頑張りますから…だからディディにイジワルしないで下さい…」
「プィップィッ!」
小豚を捕まえ、握り潰す勢いでつかんでいたデイビッドは、手を離すと小豚の首根っこをつまみ上げてヴィオラの手に返した。
「よしよし、もうこんなイタズラしちゃダメよ?!」
「プィィ…」
「貴方も、こんなちっこい使い魔に嫉妬して見苦しいわよ?」
「してねぇよ…」
結局この日、ヴィオラは始終ディディに構い切りで、デイビッドは初めて過去の自分を激しく呪う事になった。
「所で、エリックは?まだ休暇中でしょ?観念して、部屋に戻ったの?」
「アイツなら風呂入ってる。」
「あらそう。…え?フロ?!お風呂ってこと?シャワーじゃなくて?」
「先週バカデカい荷物が届いて、何かと思ったら新作の風呂釜だったんだ。商会から使い心地を試してくれって来たはいいが、使わねぇと思って邪魔だから空き部屋に突っ込んどいたら、シャワー室に運び込んで朝から入ってる。」
「朝から?!もう昼よ。溺れてない?」
「たまに水分補給に来てまた戻ってく…」
「お湯…冷めちゃわないんですか?」
「保温のティーカップの応用で、適温が保たれるらしいぞ?」
「なにそれ…欲しい…」
「ちょっ…と…これはティーカップみたいにはいかねぇかな……」
昼休みが終わり、2人を見送って、戻って来た謎生物が再び眠りについた頃、ベルダが慌てたようにやって来て、研究室のドアをノックも無しに乱暴に開けた。
「デイビッド君!すぐに来てくれ!アリーが大変なんだ!」
「ベルダ先生?!アリーがどうしたって?」
「成長期だ…状態が思わしくない。急いでくれ!」
2人が走って温室に向かうと、うずくまるアリーの傍らでリディアもぐったりしていた。
「リディア!君まで無茶したのか!?こんなに弱って…」
「何が起きてんだ?」
「アリーの成長期、つまり魔物の進化が始まったんだ。しかしここには魔素が足りない!リディアが枯渇寸前まで魔力を注いだようだが、まるで効果が無い…このままではアリーは枯れてしまう!」
魔物には、自身の身体を変化させ、姿を変えるものがいる。
それを魔物の進化と呼び、変化後の姿を成体として扱う。
人型の植物系魔物の変態は、種・若葉・成体の3段階に分けられる。
この進化には、通常でも大量の魔素、または魔力が必要とされている。
「…魔力があればいいのか?!」
「アルラウネの進化に必要な魔力量がどれ程か、まだわかっていないんだ。わかるのは下手に人の魔力に頼れば、恐らく枯渇による重症者か死者が出ると言うことくらいだ。」
「ちょっと待っててくれ!」
デイビッドは、直ぐに研究室へ戻り、エリックを叩き起こした。
「エリック!起きろ!聞きたいことがある!」
「なぁんでふか…?そんなあわてて…」
「こないだ変な薬作った時、赤い樹の実使ってたよな!?」
「それがどうしました…?」
「あれ、魔力どのくらい入ってる?!」
「…国中の魔法使い集めても足りないくらいあるんじゃないですか…?」
「わかった!邪魔したな、もう寝てていいぞ!?」
デスクの中の赤い実をひとつつかむと、また急いで温室へ戻り、デイビッドはアリーの元に駆け寄った。
「アリー、大丈夫か?」
「…ディ…」
「口開けろ!ほら、コレ食ってみろ!治るかも知れないぞ?!」
「あー…」
赤い樹の実をアリーの口に押し込み、ゆっくり口が動く様子を見ていると、隣でベルダが発狂した。
「ちょっと!ちょっと!!ちょっと!!待って待って待って??!君、今ナニ入れた?!」
「え?ああ、精霊の樹の実とかなんとか言う…」
「エ?エ??え?そうだよねぇ?!精霊樹の実だよねぇ?!世界樹の実だったよねぇ???」
「すごい魔力を含んでるって聞いて…」
「そりゃそうだよ!?世界樹だよ?!世界樹の実だよ?!」
「経口摂取じゃ駄目だったとか?そういや口って形だけなのか!栄養摂るのは根っこの方?!」
「悩むとこそこ?!いやいやいや!!おかしいだろう?!」
「どうすりゃいいかわかんなかったもんで…」
「だったら聞こうよーーー!!!僕ずっと隣りに居たよねぇーーー??そりゃ治るよ!!世界樹の実だよ?!なんなら死者も生き返るって話の、地上最強のウルトラレアアイテムだよーー?!“我が生涯掛けて魔力を放出し続けても尚枯れること無く元の姿を保ったまま”って有名な賢者の書の一文知らない?知らないね?!うん!!わかった!!不思議そうな顔するのヤメて?!今初めて君に殺意が湧いたよ!!君といるとメリットもすごいけど、損失も半端ないんだね!?全世界の魔法使い敵に回すような事平然としないで!?!」
頭を掻きむしりながら、ベルダが早口でまくし立てる。
「恐らくね、数滴で良かったはずなんだ!」
「すうてき……」
「そう!そのくらい超超高濃度の魔力が詰まってるんだよ、あの樹の実の中には!!エリック君が薬作るとこ見てたんでしょ?どのくらい入れてたか覚えてる?!」
「はりさきに…つくくらい…?」
「だよねぇ?!そのくらい取扱いに気をつけないといけないの。ヘタしたら魔力過多で何が起こるかわかんないよ?!」
「このまま枯れる可能性も…?」
「あるだろうね。魔力の過剰状態が続くと人間でも辛いんだよ。」
「そんな…やっちまった…」
デイビッドが青ざめていると、アリーの足元から大きな葉が伸びてきて、アリーの体を包みこんでいった。
「アリー!大丈夫か?ごめんな!?変なもん食わして…」
「世界樹の実を変なもんとか言わないで?!思いつきまでは良かったんだけどね?!さては君パニクると意外と暴走するタイプだな!?」
「このあとどうなるんだ?」
「この塊はたぶん蕾だ。花が開けば中から出て来るよ。」
「どのくらいで開く?」
「文献に拠ると、数日から数十年とある。」
「当てにならねぇな…」
やがて蕾は動かなくなり、ツタが絡まりあって繭のようになった。
中で成長が始まったようだ。
「そのくらいわからない事だらけなのさ。ほぼ半世紀近く新しい個体の発見は無かった。現存する生きた個体はラムダ王国の研究機関に一体と、エルム帝国に二体だけ。それも厳重な管理大勢と何重にも及ぶ結界の中にいて、採取なんて滅多にできない状態なんだ。」
「閉じ込められてんのか?かわいそうに…」
「狂暴で近付く物全て破壊するような魔物の管理なんて、そんなもんだよ。」
「そんなもんなのか?!じゃ、アリーは…?」
「あれは幼体だ。暴れてもリディアの力で抑え込める。だからフリーにしておけたんだよ。成長して成体になった時どうなるか、僕にも正直わからない。」
ベルダの隣で、今更事の重大さを知ったデイビッドが震えていると、ベルダがその肩に手を置いた。
「デイビッド君。君も少し覚悟していなさい。成長を遂げたアリーが、今までのアリーではなくなっていた場合、僕は彼女を拘束しなければならない。そこはどうか飲み込んで欲しい。もしそうなったら、その時は責任持って見届けてあげてね。」
アリーの蕾に触れると、ひんやりとして滑らかな手触りが伝わってくる。
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