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黒豚令息と訳あり令嬢の学園生活
二学期の終わり
「アーッハッハッハッ!!アルラウネに世界樹の実丸ごと食わせるとか!!もーーホント毎回バカみたいなこと平気でホイホイに仕出かしますね!?ベルダ先生もかわいそうに!!」
「今回は笑い事じゃねぇんだよ!!」
すっかり元気になったエリックが、先程の話を聞いてカウチの上で笑い転げている。
「大丈夫じゃないですか?植物は強いって言うし、なんなら余分な魔力を放出すれば元に戻りますよ。」
「そんな単純にいくか?」
「これに懲りたら少しは自重して下さいね?最近特に好き勝手しましたけど、そろそろ落ち着いて本業に取り組んでもらわないと!」
エリックの休暇も終わり、そろそろ二学期もラストスパート。
もうすぐノエルの時期がやって来る。
「先生!こんなにとれた!!」
「この芋すごく色が濃いですね!?」
「ニンジンもキレイな色!」
「豆も大粒で、こんなにたくさん!」
「大収穫ですよ?!」
領地経営科の授業は二学期から屋外実習も不定期で行ってきた。
この日は食堂の裏手を耕して、肥料や土の実験で育てた畑の収穫日。
月に2~3回実習を挟み、生徒に作らせた畑はプロ顔負けの仕様となり、これにはデイビッドも驚かされた。
農業関係に強い生徒が多く、気合いの入り方が違う。
「よし、じゃぁ、食ってみるか!?」
「「「やったー!」」」
皆で水場まで移動すると、野菜を洗い、皮を剥いて、豆の鞘を外す。
調理場を借りて、まずはシンプルに塩茹でと蒸かし芋。
「グリーンピース甘い!」
「じゃが芋ホックホク!バター欲しい!!」
その間に寸胴鍋でスープを作り、塩漬けにしておいた干し肉を適当に放り込んで仕上げに茹で豆を入れる。
「なにこれ!ニンジンがめちゃくちゃ美味しい!」
「玉ねぎがとろけて最高~!」
「先生、この肉なんですか?!」
「保存食のレパートリー増やそうと思って試作したヤツなんだが、意外とイケるな!?」
「ぷるぷるで脂が出て、スープに合いますね!」
次々と手が出て来て、大鍋はあっと言う間に空になった。
「片付けたら、教室戻って成果と反省点の見直しするぞ!?」
「「はーーい!!」」
寸動鍋を洗っていると、1人の生徒がデイビッドに話しかけてきた。
「あの…先生って帝国風の料理って作れますか…?」
「帝都風か?帝国土風か?」
「何か違うんですか?」
「帝都風は前皇帝が持ち込んだ西国の貴族風。帝国土風は属国や吸収された小国の文化が色濃く残った伝統食が多い。どこの料理かハッキリしないと判断が難しいな。」
「うーん…確か、カラン地方…とか言ってた気がします。」
「カランなら、独特な発酵調味料が多い地域だな。作れなくはねぇけど、食いたいのか?」
「私じゃなくて、テオ君が…最近全然ご飯食べてなくて、聞いたら味付けが口に合わないって言ってたんです。」
テオは帝国から来た政務科の留学生の一人だ。
背が高く、がっしりした体格の青年だが、このところ元気がないらしい。
仲良くなった友人達は皆して心配しているそうだ。
「カラン料理か…できなくはないな。あんま種類は作れねぇけど、調味料が手に入らないか見て来る。週末にでもまた声掛けさせてくれ。」
新しい課題が手に入ると、直ぐに動きたくなるのは長所か短所か。
「ありがとうございます!ノール君に聞いたら先生に相談するのが一番だって聞いて。話してみて良かったです!」
「アイツ俺を何と思ってんだろう…」
教室で少しだけ授業の続きをして、予鈴と共に解散し廊下を歩いていると、後ろから誰かがついて来る気配がした。
「なんだ、お前か。なんか用か?!」
無表情のテレンスが、俯きがちに歩いてくる。
そして近くまで来ると、ボソボソ何か話し出した。
「…ちょっと、話があって…」
「いつでも話せばいいだろ?」
「あ…アレックスさんが…ノエルの前に、また何か考えがあるみたいで…」
「誰だそいつ?!」
「生徒会長だよ!何度も会ってただろう?覚えてないのか?」
「名乗られた事ねぇからな。」
「そんな…そこまで生徒に舐められてて悔しくないのかよ?!」
「別に?なんなら王都中の人間に舐められてるぞ?!」
テレンスは、それを聞いて絶望的な目でデイビッドを見つめた。
「なんだそれ…僕なら生きていけないな…」
「で?そのアレックスが何だって?」
「ノエルの前に、また絡んでくるかも知れない。気をつけろよ…って話…」
「お前からそんな話が出るとはな。どういう風の吹き回しだ?!」
「借りを返そうと思っただけだよ!!レオニードさんも戻って来るし…あの人狡猾だから、人を陥れるのは得意だぞ?注意しとけよ!…それだけ…」
そう言って、テレンスは背中を向けて行ってしまう。
「成長しましたねテレンス君。あれも彼なりの歩み寄りのつもりなんでしょうね。良かったですね懐かれて。」
横から現れたエリックが、デイビッドの背中をポンポン叩いて喜んでいる。
「アレは懐いたっつーより、群れからあぶれて拠り所探してるって感じだな。野良猫みたいな奴…」
「デレたらカワイイタイプですね。躾けてみます?」
「生徒相手にその発言はどうなんだ?!」
どこからどこまでが本気で嘘なのか、エリックについては未だに良くわからない。
今日は温室には寄らず、真っ直ぐ研究室へ。
昼前に仕込んだクロケットを油で揚げたら、ちょっと珍しいパン種を使って丸パンを焼き上げ、間引いた野菜でサラダを作る。
後ろからそろそろと近づいて来たヴィオラに気付かない振りをし、抱き着いてくるのかと思ったら何かを腹回りに通されて、まじまじと計測された。
「測るのは…ちょっと止めて欲しかったな…」
「どのくらいか気になって……」
メジャーを手にヴィオラがオロオロしている。
「測んなくてもこんだけ肉がついてりゃ一目でデブってわかるだろ?!数値化されると余計悲しくなるから止めてくれ!」
「そんなに太ってますか?!」
見慣れたせいで目がおかしくなってしまったのだろうか。
ヴィオラはデイビッドの腹の肉を見ても、それが贅肉と認識出来ていないようだった。
「太ってますが…?」
「だって、もっとブヨブヨでたぷたぷしてる人もいるのに。なんでデイビッド様だけそんなに言われるんですか?」
「目立つからだろ…?」
「本当に太ってるだけの人は、剣を振るったりファルコに乗ったりできませんよ!?デイビッド様はきっと骨太なんですよ!!」
「どんだけぶっとい骨が入ってる想定なのよ!?」
隣で聞いていたシェルリアーナが、我慢し切れずついに声を上げた。
「良く見て!少なくとも横にいるエリックの2倍の太さはあるでしょ?!」
「じゃぁ筋肉太り?」
「だったらあんな弾まないわよ!腹回りポヨポヨじゃない!?」
「でも確実にエリック様より力はありますよ?!絶対筋肉も入ってますよね!?」
「筋肉があっても、その周りにしっかり肉がまとわりついてるでしょ?!固太りよ!ガッツリ霜降りに決まってんじゃないの!」
「そしたらいつか痩せちゃいませんか…?」
「痩せない人間もいるのよ!どんなに動いても体型変わんないの!そういう体質なのよ!動けるデブって聞いたことない?」
謎の会話を聞かされながら、デイビッドはただひたすら無心でクロケットを揚げ続けていた。
「今回は笑い事じゃねぇんだよ!!」
すっかり元気になったエリックが、先程の話を聞いてカウチの上で笑い転げている。
「大丈夫じゃないですか?植物は強いって言うし、なんなら余分な魔力を放出すれば元に戻りますよ。」
「そんな単純にいくか?」
「これに懲りたら少しは自重して下さいね?最近特に好き勝手しましたけど、そろそろ落ち着いて本業に取り組んでもらわないと!」
エリックの休暇も終わり、そろそろ二学期もラストスパート。
もうすぐノエルの時期がやって来る。
「先生!こんなにとれた!!」
「この芋すごく色が濃いですね!?」
「ニンジンもキレイな色!」
「豆も大粒で、こんなにたくさん!」
「大収穫ですよ?!」
領地経営科の授業は二学期から屋外実習も不定期で行ってきた。
この日は食堂の裏手を耕して、肥料や土の実験で育てた畑の収穫日。
月に2~3回実習を挟み、生徒に作らせた畑はプロ顔負けの仕様となり、これにはデイビッドも驚かされた。
農業関係に強い生徒が多く、気合いの入り方が違う。
「よし、じゃぁ、食ってみるか!?」
「「「やったー!」」」
皆で水場まで移動すると、野菜を洗い、皮を剥いて、豆の鞘を外す。
調理場を借りて、まずはシンプルに塩茹でと蒸かし芋。
「グリーンピース甘い!」
「じゃが芋ホックホク!バター欲しい!!」
その間に寸胴鍋でスープを作り、塩漬けにしておいた干し肉を適当に放り込んで仕上げに茹で豆を入れる。
「なにこれ!ニンジンがめちゃくちゃ美味しい!」
「玉ねぎがとろけて最高~!」
「先生、この肉なんですか?!」
「保存食のレパートリー増やそうと思って試作したヤツなんだが、意外とイケるな!?」
「ぷるぷるで脂が出て、スープに合いますね!」
次々と手が出て来て、大鍋はあっと言う間に空になった。
「片付けたら、教室戻って成果と反省点の見直しするぞ!?」
「「はーーい!!」」
寸動鍋を洗っていると、1人の生徒がデイビッドに話しかけてきた。
「あの…先生って帝国風の料理って作れますか…?」
「帝都風か?帝国土風か?」
「何か違うんですか?」
「帝都風は前皇帝が持ち込んだ西国の貴族風。帝国土風は属国や吸収された小国の文化が色濃く残った伝統食が多い。どこの料理かハッキリしないと判断が難しいな。」
「うーん…確か、カラン地方…とか言ってた気がします。」
「カランなら、独特な発酵調味料が多い地域だな。作れなくはねぇけど、食いたいのか?」
「私じゃなくて、テオ君が…最近全然ご飯食べてなくて、聞いたら味付けが口に合わないって言ってたんです。」
テオは帝国から来た政務科の留学生の一人だ。
背が高く、がっしりした体格の青年だが、このところ元気がないらしい。
仲良くなった友人達は皆して心配しているそうだ。
「カラン料理か…できなくはないな。あんま種類は作れねぇけど、調味料が手に入らないか見て来る。週末にでもまた声掛けさせてくれ。」
新しい課題が手に入ると、直ぐに動きたくなるのは長所か短所か。
「ありがとうございます!ノール君に聞いたら先生に相談するのが一番だって聞いて。話してみて良かったです!」
「アイツ俺を何と思ってんだろう…」
教室で少しだけ授業の続きをして、予鈴と共に解散し廊下を歩いていると、後ろから誰かがついて来る気配がした。
「なんだ、お前か。なんか用か?!」
無表情のテレンスが、俯きがちに歩いてくる。
そして近くまで来ると、ボソボソ何か話し出した。
「…ちょっと、話があって…」
「いつでも話せばいいだろ?」
「あ…アレックスさんが…ノエルの前に、また何か考えがあるみたいで…」
「誰だそいつ?!」
「生徒会長だよ!何度も会ってただろう?覚えてないのか?」
「名乗られた事ねぇからな。」
「そんな…そこまで生徒に舐められてて悔しくないのかよ?!」
「別に?なんなら王都中の人間に舐められてるぞ?!」
テレンスは、それを聞いて絶望的な目でデイビッドを見つめた。
「なんだそれ…僕なら生きていけないな…」
「で?そのアレックスが何だって?」
「ノエルの前に、また絡んでくるかも知れない。気をつけろよ…って話…」
「お前からそんな話が出るとはな。どういう風の吹き回しだ?!」
「借りを返そうと思っただけだよ!!レオニードさんも戻って来るし…あの人狡猾だから、人を陥れるのは得意だぞ?注意しとけよ!…それだけ…」
そう言って、テレンスは背中を向けて行ってしまう。
「成長しましたねテレンス君。あれも彼なりの歩み寄りのつもりなんでしょうね。良かったですね懐かれて。」
横から現れたエリックが、デイビッドの背中をポンポン叩いて喜んでいる。
「アレは懐いたっつーより、群れからあぶれて拠り所探してるって感じだな。野良猫みたいな奴…」
「デレたらカワイイタイプですね。躾けてみます?」
「生徒相手にその発言はどうなんだ?!」
どこからどこまでが本気で嘘なのか、エリックについては未だに良くわからない。
今日は温室には寄らず、真っ直ぐ研究室へ。
昼前に仕込んだクロケットを油で揚げたら、ちょっと珍しいパン種を使って丸パンを焼き上げ、間引いた野菜でサラダを作る。
後ろからそろそろと近づいて来たヴィオラに気付かない振りをし、抱き着いてくるのかと思ったら何かを腹回りに通されて、まじまじと計測された。
「測るのは…ちょっと止めて欲しかったな…」
「どのくらいか気になって……」
メジャーを手にヴィオラがオロオロしている。
「測んなくてもこんだけ肉がついてりゃ一目でデブってわかるだろ?!数値化されると余計悲しくなるから止めてくれ!」
「そんなに太ってますか?!」
見慣れたせいで目がおかしくなってしまったのだろうか。
ヴィオラはデイビッドの腹の肉を見ても、それが贅肉と認識出来ていないようだった。
「太ってますが…?」
「だって、もっとブヨブヨでたぷたぷしてる人もいるのに。なんでデイビッド様だけそんなに言われるんですか?」
「目立つからだろ…?」
「本当に太ってるだけの人は、剣を振るったりファルコに乗ったりできませんよ!?デイビッド様はきっと骨太なんですよ!!」
「どんだけぶっとい骨が入ってる想定なのよ!?」
隣で聞いていたシェルリアーナが、我慢し切れずついに声を上げた。
「良く見て!少なくとも横にいるエリックの2倍の太さはあるでしょ?!」
「じゃぁ筋肉太り?」
「だったらあんな弾まないわよ!腹回りポヨポヨじゃない!?」
「でも確実にエリック様より力はありますよ?!絶対筋肉も入ってますよね!?」
「筋肉があっても、その周りにしっかり肉がまとわりついてるでしょ?!固太りよ!ガッツリ霜降りに決まってんじゃないの!」
「そしたらいつか痩せちゃいませんか…?」
「痩せない人間もいるのよ!どんなに動いても体型変わんないの!そういう体質なのよ!動けるデブって聞いたことない?」
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カクヨムで公開したものに手を入れたものです。