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黒豚令息と訳あり令嬢の学園生活〜怒涛の進学編〜
釣れた魚
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デイビッド・デュロックが何者かに襲われ殺された。
事件から2日目。
その噂は教会の大失態の穴埋めのため集まった貴族達の間を、瞬く間に駆け巡った。
噂を耳にして、驚いて直ぐに貴族院へ死亡者記録を調べに行き、事実確認を急ぐ者と、大笑いして仲間内でザマァ見ろと馬鹿騒ぎする者とが、非常に顕著に分かれたと、アーネストの元へ影からの報告が寄せられた。
既に捕らえたクロードの元側近は、デイビッドに腕を潰され骨は無事だったものの、利き手の握力が半減した事で地位を失い、軍学校を卒業後、教会預かりの身辺護衛として家門から切り離されていたそうだ。
デイビッドに個人的な恨みを持っていて、捨て駒としても使いやすかったのだろう。
あっさり教会の口車に乗せられて高位貴族と引き合わされ、実行犯にされてしまったようだ。
更には聖女を信奉しているひとりらしく、「あの方のため」「あの方が喜んで下さるなら」と、黒幕を吐かず、罪をひとりで被るつもりでいる。
「良く飼い慣らされた忠犬のようだな?」
「サラム殿…頼むからしれっと他国の問題に首を突っ込まないで頂きたいのだが…?」
「良いではないか!どうせ最後には公開するんだろう?」
「伏せるトコとか!上手く隠したいコトとか!あるだろ普通!」
「ダイジェスト版て嫌いなんだよなぁ…」
「だからってリアルタイムで見ようとするんじゃない!!」
実行犯は口を割らなかったが、使われたナイフに残された複数の魔力の残滓から関わった貴族達を特定し、アンジェリーナ率いる特殊部隊が調査した結果、ルミネラ公爵と教会派の貴族達の指示に寄るものと結論付けられ、デイビッド襲撃事件は割とあっさり片付いた。
「公爵は子息の仇討ちのつもりだったそうだ…仇もなにも、始めに手を出してきたのはそっちだろうに…」
「すごいなぁ!そんな奴も居る場所で教壇に立てとか!敵陣のど真ん中に刺されて来いって放り出されるようなもんだろ?よく断らなかったなぁアイツ!」
「半王命だからな…父上にも、いい加減目を覚ましてもらいたいものだ。なぜアイツにばかり負担を押し付けようとするのか…」
「なんとなく分かる気はするな。恐らくラムダ現国王はデイビッドをお前の下に付けさせようとしてるんだろう。」
「は?!僕の!?何故だ!あんなに断られているのに?!」
「だから逃げ場も退路も失わせた上で、無理難題を押し付けてるんだろ。矢面に立たされ、王太子の後ろ盾なくして身の安全が保てなくなれば、嫌でも王家に膝を付くしかないからな。汚いやり方だが、新たに忠臣が欲しい時なんかにゃ良く使われる手だ。」
「そんな……」
甘い菓子を頬張りながら、机に行儀悪く腰掛けたサラムは、人の悪意に不慣れな友人の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
「なにするんだよ!?」
「お前は甘いなぁ!もっと腹黒くないと国の象徴なんざやってられんぞ?!」
「じゃぁどうしろって言うんだ?!私は…お前達程狡猾にはなれない…」
「お前はいい奴だ、しかしその正直さは王族として危ういぞ?数少ない友人の一人として、そこだけは心配だ。」
「だからそんなに少なくないって!!」
「安心しろ。アイツはその程度で潰れるようなタマじゃない。何処かでこちらのコマ盤をひっくり返しに来る。覚悟しておけよ!?」
流石に公爵家を潰す訳にもいかず、他家同様、いくつかの権利を凍結し、代償を払わせた上で当主の挿げ替えを要求すると、家門を護るため残った者達はすんなり従った。
罪人達は投獄され、あとには名前すら残らない。
教会で甘い汁を吸っているだけだった貴族家も、今回の件で王都を騒がせた代償をかなり払うことになった。
中には貴族の名を捨てる羽目になったり、離婚や勘当を受けた者達も大勢いるとか。
かなりの数の貴族が街から消え、またそこへ新たな家が呼ばれて入る。
王都の教会は解体されたが、女神マナを信奉する信仰自体は残り、建物は新たに建てられ今まで通り信者を集めて神に祈る場所となる。宗教とは本来そういうものだ。
結界の恩恵や教会の影響力を盾に、金銭をかき集め特定の者達を優遇するものではない。
しかし、長きに渡る教会の統治が無くなり、王都は大混乱。
立て直しにもかなりの時間を要するということで、そちらの方が大変だ。
中でもランドール家は、聖女の名を使いかなり荒稼ぎをしていたそうで、教会が解体された今では外を歩くこともできないそうだ。
聖女だなんだと担ぎ上げられていた令嬢は後ろ盾は失ったが
彼女自身を支持する声は残り、学園でどうなるか不明なところだ。
「で?どうなんだ?!何か獲物は釣れたのか?」
「政務官と貴族院の重鎮が数名、貴族名簿を勝手に書き換えようとして執務違反で処分を受けた。侯爵家も2家がデイビッドが所有してる事業の買収を急ごうとして来たんで、かなり強めに釘が刺せたよ。伯爵家からも数件、個人で譲渡した権利を回収しようとして来た。後は、各事業でアイツを邪魔に思ってる商家系の貴族共が、後釜に入ろうとして来て抗議されてるのが大半だな。」
「ご令嬢の方は?教会に睨まれて迫害されてたんだろ? 」
「そっちはいきなり環境は変わらんだろうな。人の意識の問題だ…それより元実家が何か言って来ないか心配だな…」
「家に戻って来いって?婚約者の金目当てなのが丸わかりだな。」
「用心するようには言っておくよ…」
アーネストは報告書を閉じるとグッと身体を反り起こし、机の端に置かれた瓶に手を伸ばした。
「あれ…減ってる…?」
「ああ、それな!めちゃくちゃ美味かったからさっき頂いた。」
「そんな!大事に食べてたのに!あと2粒しかない!!」
「酒の味が強くて俺好みだ!もう無いのか?」
「これはデイビッドがくれる分しか手に入らない貴重な僕の癒しなんだ!どこで作られているかも分からない…前は定期的に贈ってくれたのに、最近は数も頻度もめっきり減ってこれが最後だったのに…」
「また送ってもらえよ!おれも欲しいな、頼んでみるか!」
ケラケラ笑いながら机から飛び降りたサラムは、ほとんど空の大瓶を前に絶望するアーネストを置いて部屋を出て行った。
「クリームチーズというのは随分と白いのですね?」
「そうか、アデラじゃ気候もあってあんま出回らねぇのか。」
「乳製品が貴重だからね。でも、シャーリーン様のおかげで冬水晶の輸入が緩和されたから、加工品もかなり普及してはきてるよ。」
「私はチーズが好きで…つい何にでもチーズをかけてしまうんです…」
「ウマいもんな、チーズ…」
膨らんだ大きなシュー生地に、チーズクリームを絞って積み上げ、粉砂糖を振りかけるとディアナが少女の顔になった。
「これは…なんて魅力的な…」
「姉上、僕にもひとつ……ごめんなさい!なんでもないです!!」
ディアナに睨まれたジャファルは、大人しく自分のプリンを持ってそそくさと部屋へ逃げて行く。
「冷たくて甘いチーズがこんなに美味しいとは知りませんでした。」
「熟成させないで作ると、水気が多くてクセがねぇから何にでも合うんだよ。ただ日持ちはしねぇし、コクや旨みはどうしても足りなくなるから好みは分かれるな。」
焼き上がったスフレにも、黄金色のタルトにもチーズチーズたっぷりチーズ…
目をキラキラさせるディアナの横でカミールが苦笑いしている。
「幸せ過ぎて日常に戻れなくなったらどうしよう…」
「すまないなデイビッド、妹は君の料理にとことんやられてしまったみたいだ。」
「お前はどうなんだよ?」
「実は僕は料理もいいけど、エリック君の作るあの1杯が忘れられないんだよね。今夜も相伴させたいから呼ばせてもっていい?」
「かまわねぇよ。どうせ俺にはしばらく付かなくていいんだから、昼間も連れてけよ。」
「そしたら我慢出来なくて昼から飲んじゃうよ~!」
アデラの兄妹が居なくなると、今度はセルジオがテオを連れて現れた。
「あぁっ!!良かった…やっぱりご無事だった!」
「静かにして!これでも身柄を秘匿中なんだ…」
「元気に魚捌いてますけど…」
「ここに居る間はコックって事になってるらしい。」
「めちゃくちゃ馴染んでる…もうこのままコックになってもおかしくないのでは?」
「聞こえてるぞ?!」
デイビッドは手を止めると、休憩室へ移動しテオの話を聞くことにした。
事件から2日目。
その噂は教会の大失態の穴埋めのため集まった貴族達の間を、瞬く間に駆け巡った。
噂を耳にして、驚いて直ぐに貴族院へ死亡者記録を調べに行き、事実確認を急ぐ者と、大笑いして仲間内でザマァ見ろと馬鹿騒ぎする者とが、非常に顕著に分かれたと、アーネストの元へ影からの報告が寄せられた。
既に捕らえたクロードの元側近は、デイビッドに腕を潰され骨は無事だったものの、利き手の握力が半減した事で地位を失い、軍学校を卒業後、教会預かりの身辺護衛として家門から切り離されていたそうだ。
デイビッドに個人的な恨みを持っていて、捨て駒としても使いやすかったのだろう。
あっさり教会の口車に乗せられて高位貴族と引き合わされ、実行犯にされてしまったようだ。
更には聖女を信奉しているひとりらしく、「あの方のため」「あの方が喜んで下さるなら」と、黒幕を吐かず、罪をひとりで被るつもりでいる。
「良く飼い慣らされた忠犬のようだな?」
「サラム殿…頼むからしれっと他国の問題に首を突っ込まないで頂きたいのだが…?」
「良いではないか!どうせ最後には公開するんだろう?」
「伏せるトコとか!上手く隠したいコトとか!あるだろ普通!」
「ダイジェスト版て嫌いなんだよなぁ…」
「だからってリアルタイムで見ようとするんじゃない!!」
実行犯は口を割らなかったが、使われたナイフに残された複数の魔力の残滓から関わった貴族達を特定し、アンジェリーナ率いる特殊部隊が調査した結果、ルミネラ公爵と教会派の貴族達の指示に寄るものと結論付けられ、デイビッド襲撃事件は割とあっさり片付いた。
「公爵は子息の仇討ちのつもりだったそうだ…仇もなにも、始めに手を出してきたのはそっちだろうに…」
「すごいなぁ!そんな奴も居る場所で教壇に立てとか!敵陣のど真ん中に刺されて来いって放り出されるようなもんだろ?よく断らなかったなぁアイツ!」
「半王命だからな…父上にも、いい加減目を覚ましてもらいたいものだ。なぜアイツにばかり負担を押し付けようとするのか…」
「なんとなく分かる気はするな。恐らくラムダ現国王はデイビッドをお前の下に付けさせようとしてるんだろう。」
「は?!僕の!?何故だ!あんなに断られているのに?!」
「だから逃げ場も退路も失わせた上で、無理難題を押し付けてるんだろ。矢面に立たされ、王太子の後ろ盾なくして身の安全が保てなくなれば、嫌でも王家に膝を付くしかないからな。汚いやり方だが、新たに忠臣が欲しい時なんかにゃ良く使われる手だ。」
「そんな……」
甘い菓子を頬張りながら、机に行儀悪く腰掛けたサラムは、人の悪意に不慣れな友人の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
「なにするんだよ!?」
「お前は甘いなぁ!もっと腹黒くないと国の象徴なんざやってられんぞ?!」
「じゃぁどうしろって言うんだ?!私は…お前達程狡猾にはなれない…」
「お前はいい奴だ、しかしその正直さは王族として危ういぞ?数少ない友人の一人として、そこだけは心配だ。」
「だからそんなに少なくないって!!」
「安心しろ。アイツはその程度で潰れるようなタマじゃない。何処かでこちらのコマ盤をひっくり返しに来る。覚悟しておけよ!?」
流石に公爵家を潰す訳にもいかず、他家同様、いくつかの権利を凍結し、代償を払わせた上で当主の挿げ替えを要求すると、家門を護るため残った者達はすんなり従った。
罪人達は投獄され、あとには名前すら残らない。
教会で甘い汁を吸っているだけだった貴族家も、今回の件で王都を騒がせた代償をかなり払うことになった。
中には貴族の名を捨てる羽目になったり、離婚や勘当を受けた者達も大勢いるとか。
かなりの数の貴族が街から消え、またそこへ新たな家が呼ばれて入る。
王都の教会は解体されたが、女神マナを信奉する信仰自体は残り、建物は新たに建てられ今まで通り信者を集めて神に祈る場所となる。宗教とは本来そういうものだ。
結界の恩恵や教会の影響力を盾に、金銭をかき集め特定の者達を優遇するものではない。
しかし、長きに渡る教会の統治が無くなり、王都は大混乱。
立て直しにもかなりの時間を要するということで、そちらの方が大変だ。
中でもランドール家は、聖女の名を使いかなり荒稼ぎをしていたそうで、教会が解体された今では外を歩くこともできないそうだ。
聖女だなんだと担ぎ上げられていた令嬢は後ろ盾は失ったが
彼女自身を支持する声は残り、学園でどうなるか不明なところだ。
「で?どうなんだ?!何か獲物は釣れたのか?」
「政務官と貴族院の重鎮が数名、貴族名簿を勝手に書き換えようとして執務違反で処分を受けた。侯爵家も2家がデイビッドが所有してる事業の買収を急ごうとして来たんで、かなり強めに釘が刺せたよ。伯爵家からも数件、個人で譲渡した権利を回収しようとして来た。後は、各事業でアイツを邪魔に思ってる商家系の貴族共が、後釜に入ろうとして来て抗議されてるのが大半だな。」
「ご令嬢の方は?教会に睨まれて迫害されてたんだろ? 」
「そっちはいきなり環境は変わらんだろうな。人の意識の問題だ…それより元実家が何か言って来ないか心配だな…」
「家に戻って来いって?婚約者の金目当てなのが丸わかりだな。」
「用心するようには言っておくよ…」
アーネストは報告書を閉じるとグッと身体を反り起こし、机の端に置かれた瓶に手を伸ばした。
「あれ…減ってる…?」
「ああ、それな!めちゃくちゃ美味かったからさっき頂いた。」
「そんな!大事に食べてたのに!あと2粒しかない!!」
「酒の味が強くて俺好みだ!もう無いのか?」
「これはデイビッドがくれる分しか手に入らない貴重な僕の癒しなんだ!どこで作られているかも分からない…前は定期的に贈ってくれたのに、最近は数も頻度もめっきり減ってこれが最後だったのに…」
「また送ってもらえよ!おれも欲しいな、頼んでみるか!」
ケラケラ笑いながら机から飛び降りたサラムは、ほとんど空の大瓶を前に絶望するアーネストを置いて部屋を出て行った。
「クリームチーズというのは随分と白いのですね?」
「そうか、アデラじゃ気候もあってあんま出回らねぇのか。」
「乳製品が貴重だからね。でも、シャーリーン様のおかげで冬水晶の輸入が緩和されたから、加工品もかなり普及してはきてるよ。」
「私はチーズが好きで…つい何にでもチーズをかけてしまうんです…」
「ウマいもんな、チーズ…」
膨らんだ大きなシュー生地に、チーズクリームを絞って積み上げ、粉砂糖を振りかけるとディアナが少女の顔になった。
「これは…なんて魅力的な…」
「姉上、僕にもひとつ……ごめんなさい!なんでもないです!!」
ディアナに睨まれたジャファルは、大人しく自分のプリンを持ってそそくさと部屋へ逃げて行く。
「冷たくて甘いチーズがこんなに美味しいとは知りませんでした。」
「熟成させないで作ると、水気が多くてクセがねぇから何にでも合うんだよ。ただ日持ちはしねぇし、コクや旨みはどうしても足りなくなるから好みは分かれるな。」
焼き上がったスフレにも、黄金色のタルトにもチーズチーズたっぷりチーズ…
目をキラキラさせるディアナの横でカミールが苦笑いしている。
「幸せ過ぎて日常に戻れなくなったらどうしよう…」
「すまないなデイビッド、妹は君の料理にとことんやられてしまったみたいだ。」
「お前はどうなんだよ?」
「実は僕は料理もいいけど、エリック君の作るあの1杯が忘れられないんだよね。今夜も相伴させたいから呼ばせてもっていい?」
「かまわねぇよ。どうせ俺にはしばらく付かなくていいんだから、昼間も連れてけよ。」
「そしたら我慢出来なくて昼から飲んじゃうよ~!」
アデラの兄妹が居なくなると、今度はセルジオがテオを連れて現れた。
「あぁっ!!良かった…やっぱりご無事だった!」
「静かにして!これでも身柄を秘匿中なんだ…」
「元気に魚捌いてますけど…」
「ここに居る間はコックって事になってるらしい。」
「めちゃくちゃ馴染んでる…もうこのままコックになってもおかしくないのでは?」
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デイビッドは手を止めると、休憩室へ移動しテオの話を聞くことにした。
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