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黒豚令息の領地開拓編
水を探して
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しかし、栄華を誇った文明は、人間が精霊や妖精を怒らせるような事態を招き、ある日を境に世界樹が徐々に枯れてしまい、最後には自ら呼び寄せた雷の炎で燃えて消えてしまった事で終わりを告げた。
その際に大量に流れ出た魔素が、今尚この大陸に溢れ返り、あらゆる生き物の命の形まで変えてしまい、各地で影響を及ぼし続けている。
「すごいと思わない?たった1本の木がこの人間の世界を全く作り変えてしまったんだ!魔物や魔族なんてモノは全てこの世界樹によって生み出されたと言われてる。僕達は1000年も前に崩壊した木の影響で今現在魔法が使えているんだよ!」
歴史の長いエルムやキリフにもこの手の話は残されていて、大体場所はラムダ王国がある辺りだったとされているそうだ。
「おとぎ話にありますよね?精霊と人間が不仲になって世界がバラバラになっちゃう話。」
「神話なんかにも多く取り上げられてるわ。神の怒りとか、妖精の悲しみとか表現はそれぞれ違うけど。世界樹を通してこの世界と異界の境が曖昧になって、その恩恵を受けていた文明が大陸の中心となっていた時代があったのね。」
「ちなみにだけど、その木が生えてた場所が現在の黒の森らしいよ!」
それを聞いてデイビッドは青褪めた。
かつてこの世界の栄華と引き換えに混沌をもたらした世界樹が今目の前に生えている。
「切ったら流石にマズイよなぁ…」
「既にけっこう数の妖精が集まってるからねぇ。」
世界樹の別名は精霊樹。
既に周辺の小精霊や妖精が集まって来ている。
それを万が一切ったりすれば、どんな災いが降りかかるかも分からない。
「あんなデカいものどうやって隠せばいいんだよ…」
「大丈夫、他の人には見えないから。」
「え?!」
デイビッドが恐る恐るヴィオラの方を見ると、ヴィオラは首を横に振った。
「見えません…何も」
「私にも、森の様子がおかしい事しか分からないわ…」
「僕はこう見えてアリーの影響を受けているから見えるってだけで、普通は視覚的に捉えることは難しいんだよ。」
「アリーの影響?」
「アリーってば、僕のこと心配して、事ある毎に色んな果実を生み出しては食べさせようとしてくれてね!世界樹の実の影響を直接受けたアルラウネの果実が食べ放題で夢みたいだった!おかげで僕の中の霊質が過去最高値まで跳ね上がって、見える物の世界が一段と広がって…たぶん伝わらないと思うけど、僕は今、自分が全人類の中で最も幸福な人間だと自負できる自信があるよ!」
「よく喋るなぁ…」
「今の話、聞かなかったことにしたいわ…」
「世界樹なんて物語の中にしか出てきませんよ。」
「湖の他に、森の開拓も諦めなきゃならなくなりそうだな…」
これだけで領地の半分が消えたことになる。
「大丈夫だよ。あれ、けっこう深く行かないと辿り着けないし、なんなら精霊達が気に入ってくれれば囲ってこっちの世界と切り離してくれるよ。」
「そうあって欲しいもんだよ…」
少なくとも光の入る浅い部分は、まだ人の領域として活用しても許されそうだとベルダは言う。
「まてよ?そんなに遠くに生えてんのかアレ?!」
「遠近感おかしくなるでしょ!?実はこっから見えてる倍はあるんだよ!!」
「嬉しそうにすな!!」
木があまりにも大き過ぎて、周囲との距離が正しく認識できないらしい。
今日は水源の確認もしておきたかったが、湖に流れ込む川はこの森の中を通っている。
そうなれば、あの木に近づかなければならない…
「上流…まで行かなくともそこそこ程度入れる場所までで終わりにするか…」
「はい!私もついていきます!」
「アリーモ!」
「仕方ないわね。私も採取がてら一緒に行ってあげるわよ。」
「誰も頼んでな…いってぇ!!」
シェルリアーナの蹴りを食らい、足をさするデイビッドを置いて、他の3人と1体は先に川上を目指し歩いて行った。
森の中は案の定魔物だらけで、とてもではないが丸腰の一般人が歩ける様なものではなかったそうだ。
昨日までは。
「ミンナ アリーノコトミテ ニゲチャッタ」
「獲物がいなくなったな。」
「森の反対側へ逃げて行ったから、アリーが引き上げればまた寄って来るよ。」
「虫はいますね、いっぱい。」
「さっき、こーんなおっきな蜂が飛んでたよ!?捕まったら肉団子にされちゃうから気をつけてね!」
「リオパホネットじゃない!そんな物までいるの!?」
「ダイジョウブ アリーガ ツカマエテアゲル」
アリーは、早速偵察に寄って来た大きな蜂を二匹、素早くツタで締め上げると、針と羽を引き抜いてまだ動いている本体を絡み合うツタの中へと押し込んだ。
「アゲル!」
「い、いらな…くはないわ…リオパホネットも立派な素材だもの…」
「毒針は魔法薬の材料ですし、羽は加工品にも錬金素材にもなるんですよね!?」
針先は危なくないよう手頃な枝に刺して鞘代わりにし、羽は折れないよう、採取用の板に挟んで鞄に入れる。
「コレモイタ キラキラシテル」
「甲虫ですね、緑色に光ってますよ!」
「ブローチビートルよ。住む場所によって色が違うの。」
「あ!見て下さい、あんなに大きな三日月草!」
「魔草も薬草もけっこうな量生えてるわね。」
後ろのデイビッドが何も言わずウロチョロ動いているのはそのせいだろう。
何か生えてると採取してしまう習性を持っているので、放っておくとカゴが薬草だらけになる。
川の流れは段々険しく、やがて谷の底から続いている所まで来た。
しかし行く手は岩壁に阻まれ、進めなくなってしまっている。
崩れた大岩の隙間から、絶え間なく流れ出る川の水は、一層冷たく澄んでいた。
川だけでなく、森全体がこれ以上奥へ進むのが難しくなり、明らかに人を拒んでいる。
「ここまでか…」
「そうだね、なんとなくわかるだろう?ここから先は、もう人間の領域じゃないって。」
「こんなにはっきり境界が分かれた森も珍しいわね。」
「ここまでしっかり線引きしてくれたなら、滅多な事じゃ交わる事はないだろうね。」
「なんだかドキドキします…」
するとアリーが脇に獣道を見つけ、スルスルと進んで行く。
「コッチ」
「なんかあるのか?」
「イイニオイガスル」
「いい匂い?」
風が運ぶ爽やかな空気に溶け込む土と木々の香り。
そしてその奥に湧き出でる水の匂い。
「泉か…」
「わぁ!すごい、キレイな湧き水ですね!」
「待って…この水、もう精霊の息がかかってるわよ!」
「そうらしいね。聖水なんかよりよっぽど強い霊質と魔素に富んでるよ。既にどこかの精霊が水脈に潜んでるんだろうね。」
水系の精霊は種類が豊富で、人畜無害なモノから徹底して人を拒むモノ、命あるもの全てを水に引きずり込もうとする凶悪なモノまで様々だ。
まず、魔力の無いデイビッドが水を掬って飲んでみると、冷たく体に染み渡るように澄み切っていた。
「水質はかなりいい。こんな混じり気のない水も珍しいな。」
「うーん!冷たくて…元気が出てきます!」
続いてヴィオラ、シェルリアーナも口にして喉の渇きを潤した。
「元気が出るはずよ…魔素が豊富で、飲んだだけで魔力も体力も回復するわ!」
「アリー コノミズ スキ」
アリーは既に体が流れに半分も浸かるほど堪能していた。
「水源は良し。次は…水脈か…」
森からの戻り、デイビッドはもう次の課題に頭を悩めていた。
井戸はあれど枯れていて、地下の水脈が動いている様だ。
掘り直したいが、当てずっぽうな井戸掘りほど無謀で無意味なものはない。
探るにしてもかなりの時間と人手がいる作業だ。
森の散策から戻り、建物の横にある井戸まで来ると、デイビッドは試しに底へ降りてみた。
「大丈夫ですかー?」
「ああー!もう底も乾いちまってる!横穴もなんにも無い!」
そう言ってまたよじ登ろうとすると、アリーのツタが伸びて来て、一気に地上まで引き上げられた。
「ありがとよ、アリー。」
「デイビッド コノアナ ナンノアナ?」
「ああ、水を汲むための穴だよ。人間は地下の水のある所まで穴を掘って繋げて、水を通して使うんだ。」
「ミズ ナイヨ」
「枯れちまったんだろう。この井戸はもう使えないな…」
「ミズ デタラ デイビッド ウレシイ?」
「あー、まぁ、出たらな。でもそのためにはまた水のあるところを探して始めから掘らないと…」
「アリーモ サガス! ミズサガス!!」
アリーはにっこり笑って井戸に飛び込むと、地下目掛けて大量の根を張り出した。
その際に大量に流れ出た魔素が、今尚この大陸に溢れ返り、あらゆる生き物の命の形まで変えてしまい、各地で影響を及ぼし続けている。
「すごいと思わない?たった1本の木がこの人間の世界を全く作り変えてしまったんだ!魔物や魔族なんてモノは全てこの世界樹によって生み出されたと言われてる。僕達は1000年も前に崩壊した木の影響で今現在魔法が使えているんだよ!」
歴史の長いエルムやキリフにもこの手の話は残されていて、大体場所はラムダ王国がある辺りだったとされているそうだ。
「おとぎ話にありますよね?精霊と人間が不仲になって世界がバラバラになっちゃう話。」
「神話なんかにも多く取り上げられてるわ。神の怒りとか、妖精の悲しみとか表現はそれぞれ違うけど。世界樹を通してこの世界と異界の境が曖昧になって、その恩恵を受けていた文明が大陸の中心となっていた時代があったのね。」
「ちなみにだけど、その木が生えてた場所が現在の黒の森らしいよ!」
それを聞いてデイビッドは青褪めた。
かつてこの世界の栄華と引き換えに混沌をもたらした世界樹が今目の前に生えている。
「切ったら流石にマズイよなぁ…」
「既にけっこう数の妖精が集まってるからねぇ。」
世界樹の別名は精霊樹。
既に周辺の小精霊や妖精が集まって来ている。
それを万が一切ったりすれば、どんな災いが降りかかるかも分からない。
「あんなデカいものどうやって隠せばいいんだよ…」
「大丈夫、他の人には見えないから。」
「え?!」
デイビッドが恐る恐るヴィオラの方を見ると、ヴィオラは首を横に振った。
「見えません…何も」
「私にも、森の様子がおかしい事しか分からないわ…」
「僕はこう見えてアリーの影響を受けているから見えるってだけで、普通は視覚的に捉えることは難しいんだよ。」
「アリーの影響?」
「アリーってば、僕のこと心配して、事ある毎に色んな果実を生み出しては食べさせようとしてくれてね!世界樹の実の影響を直接受けたアルラウネの果実が食べ放題で夢みたいだった!おかげで僕の中の霊質が過去最高値まで跳ね上がって、見える物の世界が一段と広がって…たぶん伝わらないと思うけど、僕は今、自分が全人類の中で最も幸福な人間だと自負できる自信があるよ!」
「よく喋るなぁ…」
「今の話、聞かなかったことにしたいわ…」
「世界樹なんて物語の中にしか出てきませんよ。」
「湖の他に、森の開拓も諦めなきゃならなくなりそうだな…」
これだけで領地の半分が消えたことになる。
「大丈夫だよ。あれ、けっこう深く行かないと辿り着けないし、なんなら精霊達が気に入ってくれれば囲ってこっちの世界と切り離してくれるよ。」
「そうあって欲しいもんだよ…」
少なくとも光の入る浅い部分は、まだ人の領域として活用しても許されそうだとベルダは言う。
「まてよ?そんなに遠くに生えてんのかアレ?!」
「遠近感おかしくなるでしょ!?実はこっから見えてる倍はあるんだよ!!」
「嬉しそうにすな!!」
木があまりにも大き過ぎて、周囲との距離が正しく認識できないらしい。
今日は水源の確認もしておきたかったが、湖に流れ込む川はこの森の中を通っている。
そうなれば、あの木に近づかなければならない…
「上流…まで行かなくともそこそこ程度入れる場所までで終わりにするか…」
「はい!私もついていきます!」
「アリーモ!」
「仕方ないわね。私も採取がてら一緒に行ってあげるわよ。」
「誰も頼んでな…いってぇ!!」
シェルリアーナの蹴りを食らい、足をさするデイビッドを置いて、他の3人と1体は先に川上を目指し歩いて行った。
森の中は案の定魔物だらけで、とてもではないが丸腰の一般人が歩ける様なものではなかったそうだ。
昨日までは。
「ミンナ アリーノコトミテ ニゲチャッタ」
「獲物がいなくなったな。」
「森の反対側へ逃げて行ったから、アリーが引き上げればまた寄って来るよ。」
「虫はいますね、いっぱい。」
「さっき、こーんなおっきな蜂が飛んでたよ!?捕まったら肉団子にされちゃうから気をつけてね!」
「リオパホネットじゃない!そんな物までいるの!?」
「ダイジョウブ アリーガ ツカマエテアゲル」
アリーは、早速偵察に寄って来た大きな蜂を二匹、素早くツタで締め上げると、針と羽を引き抜いてまだ動いている本体を絡み合うツタの中へと押し込んだ。
「アゲル!」
「い、いらな…くはないわ…リオパホネットも立派な素材だもの…」
「毒針は魔法薬の材料ですし、羽は加工品にも錬金素材にもなるんですよね!?」
針先は危なくないよう手頃な枝に刺して鞘代わりにし、羽は折れないよう、採取用の板に挟んで鞄に入れる。
「コレモイタ キラキラシテル」
「甲虫ですね、緑色に光ってますよ!」
「ブローチビートルよ。住む場所によって色が違うの。」
「あ!見て下さい、あんなに大きな三日月草!」
「魔草も薬草もけっこうな量生えてるわね。」
後ろのデイビッドが何も言わずウロチョロ動いているのはそのせいだろう。
何か生えてると採取してしまう習性を持っているので、放っておくとカゴが薬草だらけになる。
川の流れは段々険しく、やがて谷の底から続いている所まで来た。
しかし行く手は岩壁に阻まれ、進めなくなってしまっている。
崩れた大岩の隙間から、絶え間なく流れ出る川の水は、一層冷たく澄んでいた。
川だけでなく、森全体がこれ以上奥へ進むのが難しくなり、明らかに人を拒んでいる。
「ここまでか…」
「そうだね、なんとなくわかるだろう?ここから先は、もう人間の領域じゃないって。」
「こんなにはっきり境界が分かれた森も珍しいわね。」
「ここまでしっかり線引きしてくれたなら、滅多な事じゃ交わる事はないだろうね。」
「なんだかドキドキします…」
するとアリーが脇に獣道を見つけ、スルスルと進んで行く。
「コッチ」
「なんかあるのか?」
「イイニオイガスル」
「いい匂い?」
風が運ぶ爽やかな空気に溶け込む土と木々の香り。
そしてその奥に湧き出でる水の匂い。
「泉か…」
「わぁ!すごい、キレイな湧き水ですね!」
「待って…この水、もう精霊の息がかかってるわよ!」
「そうらしいね。聖水なんかよりよっぽど強い霊質と魔素に富んでるよ。既にどこかの精霊が水脈に潜んでるんだろうね。」
水系の精霊は種類が豊富で、人畜無害なモノから徹底して人を拒むモノ、命あるもの全てを水に引きずり込もうとする凶悪なモノまで様々だ。
まず、魔力の無いデイビッドが水を掬って飲んでみると、冷たく体に染み渡るように澄み切っていた。
「水質はかなりいい。こんな混じり気のない水も珍しいな。」
「うーん!冷たくて…元気が出てきます!」
続いてヴィオラ、シェルリアーナも口にして喉の渇きを潤した。
「元気が出るはずよ…魔素が豊富で、飲んだだけで魔力も体力も回復するわ!」
「アリー コノミズ スキ」
アリーは既に体が流れに半分も浸かるほど堪能していた。
「水源は良し。次は…水脈か…」
森からの戻り、デイビッドはもう次の課題に頭を悩めていた。
井戸はあれど枯れていて、地下の水脈が動いている様だ。
掘り直したいが、当てずっぽうな井戸掘りほど無謀で無意味なものはない。
探るにしてもかなりの時間と人手がいる作業だ。
森の散策から戻り、建物の横にある井戸まで来ると、デイビッドは試しに底へ降りてみた。
「大丈夫ですかー?」
「ああー!もう底も乾いちまってる!横穴もなんにも無い!」
そう言ってまたよじ登ろうとすると、アリーのツタが伸びて来て、一気に地上まで引き上げられた。
「ありがとよ、アリー。」
「デイビッド コノアナ ナンノアナ?」
「ああ、水を汲むための穴だよ。人間は地下の水のある所まで穴を掘って繋げて、水を通して使うんだ。」
「ミズ ナイヨ」
「枯れちまったんだろう。この井戸はもう使えないな…」
「ミズ デタラ デイビッド ウレシイ?」
「あー、まぁ、出たらな。でもそのためにはまた水のあるところを探して始めから掘らないと…」
「アリーモ サガス! ミズサガス!!」
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