光彩濁りて愛となる

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ニ十一話

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「あっ、ヤだ、硬っ……」
 あの後。静弥の私室に連行された俺は、脚をM字に開かされて太腿と脛をガムテープでぐるんぐるん巻きにされた。
 おまけに荷造り紐で、デスクチェアに縛りつけられて、あの、ハイ。ガチAVみたいっス……。
 縄とかじゃなく生活感丸出しのガムテープと荷造り紐ってのが、かえってエロい。
 俺の後孔にカプセル状のローターが挿れられて、ナカで微かに震えている。
 ナカに異物が入っている感じがして、少し怖い。
 コレがどう言う用途で作られた物なのかとか、身体に害はないことは知っている。
 だけど、だからこそ、こんな遊びを覚えたらヤバいってことは分かる。
 冷静に自分の状況の把握を、再開する。
 天使界隈ワンピースのファスナーは下ろされて、性器が丸見え。
 風呂やトイレで見る時は何も思わないのに、今は自分の性器は形とか大きさとか色とか変じゃないか? って、不安になる。
 それを知ったところで、何か変わるワケでもないのに。
 腕は頭の後ろで組まされ、漏れなく手首もガムテープで縛られている。
 え? 珍獣先輩ポーズですか? いいよぉこいよ。
 有名なネットミームを頭の片隅に浮かべながら目でローターのコードの先を追うと、静弥が右手でスイッチを操作していた。
 空いているもう片方の手は、服の隙間から胸の突起をいじっている。
 静弥の細い指になぞられ、摘まれ、マッチ売りの少女のマッチかのように芯が明るくなったような錯覚を覚える。
 気のせいか、たくさんのご馳走も見えて来た。
 チキン南蛮に、家系ラーメンに、ビーフシチュー。ヤバい、どれも庶民的過ぎる。
「ンっ……」
 そんな俺の思考を遮るように、ローターの振動が激しくなった。
 今まではすき間風が体に当たるくらいしか思っていなかったのに、一段階振動レベルが上げられたローターの振動は突風に晒されているようなレベル。
 高校時代。有名なインフルエンサーが使っていると言っていたワックスとヘアオイルをバイト代で買い、早起きして髪の毛をセットした。
 家の姿見に映った、パーマ風のニュアンスショートの自分を見て顔が緩んだ。
 人生とは、本当に上手く行かないもので、ウキウキで家を出たら山南村一帯を吹き飛ばすような突風に晒された。
 その結果。折角セットした髪の毛が鳥の巣頭になってしまい、誰の目から見ても不潔な寝癖がついたまま登校する高校生にグレードダウンしたのだった。
 心なしかローターの振動音も、やけにはっきりと聞こえる。
 静弥の六畳一間の部屋は、実家と変わらずベッドとパソコンデスクとデスクチェアと箪笥と本棚くらいしか家具がなく味気ない。
 そんな部屋だからこそ、ローターの振動音がやけに響いて聞こえるのかもしれない。
 静弥は床に膝をついて俺の真正面で屈み込み、まるで蟻の巣を眺める少年のような目で俺の後孔を見ている。
「み、見んなよ……!」
「どうして?」
「恥ずいだろ、フツーに!」
「晄君の身体は、何処も恥ずかしい所なんてないよ」
 こんな少女漫画みたいなセリフを、よくシラフで言えんな……!
 甘い言葉で悶えている内に、静弥はまるで証明するかのように亀頭に口付けた。
「ちょッ……」
 そのまま竿全体を飲み込み、口全体で俺のを舐め上げる静弥。
 何回見てもこの顔が良い男が自分の性器を舐めている図は、見慣れない。
 どくどくと、心臓が高鳴る。
「ひゃ、ンあっ、やっ……!」
「気持ちいい?」
 上目遣いに問われて、首と一緒に腰も縦に揺らす。
 腰が揺れる度に荷造り紐に更に縛り上げられているようで、ナカで微弱な電流が走った。
 静弥は俺のささいな反応を見逃さず、細い眉を吊り上げた。
 ローターのスイッチを握っていた手を上部に移動して、測り終わったメジャーを戻すかのような勢いでローターのコードを引いたのだ。
「あっ、んあっっっ……!!」
 一気に自分のナカで一体化していたものを引き抜かれ、男の脳内はばちばちと先行花火のように燃えている。
 ついでに言うと、思いっ切り射精してしまった。恥ずかしい……。
 真っ黒なデスクチェアに、白濁の水溜りが出来ていてすげえ目立つ。
 後で、文句言われませんように……。いやなんで、俺が怒られないといけないんだよ。
 縛ったのも、フェラしたんも、ローター使ったんもそっちだろう。
「晄君のアナル、ヒクヒクしてて可愛い……」
 そう言いながらスマホを構えて、俺の後孔を撮ろうとする静弥。
 あ。大丈夫そう。良かった~。遠慮なく、二回目も射精決めよう。
 じゃなくって!
「お前、本当にキモい! ケツ穴なんか、撮んなよ!」
 静弥に向かって吠えるも、静弥はくつくつと笑っているだけだった。
「おかしいなあ。晄君、アナル大好きだよね?」
「い、挿れられんのは好きだけど! 撮られる趣味は、ねぇよ!」
 なんてことを、言わされているのだろう。親が聞いたら、泣いて喜ぶだろうなあ。
「へえ。じゃあ、コレは何かな?」
 そう言って、スマホの画面を見せて来る静弥。
 静弥のスマホの画面には、俺が購入したBLもんのAVの動画のスクショが映っていた。
 受け役の俳優が攻め役の俳優に尻を広げられ、後ろの穴がアップになっている見せ場のシーンだ。
「なっ……!?」
「『完全彼氏視点♡BLカップル ラブラブえっち♡』だよね。ボーイズラブのアダルト ビデオのシリーズの中でも、人気があるタイトルみたいだね。晄君も気に入ったのかな? ネコ役の子がタチ役の人にアナルを弄られてヒクついてるアナルのアップとか、ペニスが挿入されて拡がっているアナルの様子とか、逆に抜かれた後のぽっかり空いたアナルの様子とか、スクリーンショットを三十八枚も撮ったよね? その内厳選した十枚を、USBメモリーにも保存してるよね」
 静弥の言葉には棘がなく、裁判の冒頭陳述のように事実を話しているだけだ。
 逆にサイコ味あって、怖い。
「他人のUSBまで、見んな!!」
 コイツ、ガチで信じられねえ!! 拘束されてなかったら、しばき回してるところだぞ!!
 隠してたAVに、USBまで見られた。俺の頭に、とある心配事が浮かんだ。
 他人の家に押しかけるような人間なのだから、日記とか読んでてもおかしくない。
 静弥はニコニコ笑いながら、通勤用の鞄から真っ黒な表紙に修正ペンで「雄ノート」と書かれたA5サイズのノートを取り出した。
 それはBLもんのAVとか、BL漫画の感想ノートなのだ。
「雄ノート」が、静弥の通勤用鞄にあるってことは……。
「すごく、面白かった。晄君へのエッチに対する解像度が、上がったよ。前より、上手く出来ると思う」
 静弥はまるで文学の新時代を切り開く名作小説を読んだかのような、満足感溢れる笑みでそう言った。
「殺してくれーーーッ!!」
 こんな己性欲のまま書き殴った、感想ノートを他人に見られるなんて後ろの穴を公開するより恥ずかしい。
「どうして? エッチ大好きなのに」
「好きだけど、知られたくない部分って、あるの! みんなが、お前みたいにオープンじゃないの! クソ田舎者がよ! プライバシーの勉強して来いや!!」
 静弥は呑気に「大丈夫だよ。職場で定期的にコンプライアンスの読み合わせしてるから」って、笑っている。
 喜善堂書店のお偉いさんへ。お宅のところの従業員は、コンプライアンスを守れていません。もっと、指導して下さい。
 だけど、コイツになんでダメなのか? を説くのって、智顕に中学校レベルの漢字を教えるくらいに骨が折れそうなんだよな。
「あのさ。この服、着る意味ある? 緊縛なら、裸で良いじゃん」
「アダルト ビデオみたいに、お芝居したいって事?」
 この学祭以下の女装とすら呼べない格好で、芝居……!?
「そんなん、イモハイじゃん!! ヤダよ!!」
「そっかそっか。お着替えしましょうねぇ」
 そう言いながら静弥がクローゼットから取り出したのは、新品のメイド服だった。
「やめてーッ!! 俺の人権、侵害しないでーっ!!」







 拘束が解かれた代わりに、フリルぴらぴらのミニスカメイド服を着せられてしまった。
 が。
 洋服に疎い静弥さんが、脅威の安さを売りにしている量販店で買って来たものだからサイズが合っていない。
 そう。MはMでも女性用のMなので、俺の身体にしては小さくてぴったぴたなのだ。ヤンキーが着ているフレンチクルーラーシャツよりも、身体に張り付いている。はち切れそうな、勢いだ。
 きっと自分の身体に合わせてイケる! と思って、買ったんだろうな……。
 背丈こそ俺達に差はないが、体格には差がはっきりとある。
 言うまでもなく静弥は痩せ型だし、俺は身長の割に筋肉があってがっしりとしている方だと思う。
 天使界隈ワンピースは、ダボっとしたオーバーサイズだから難なく着られた。
 女基準のMのメイド服はまず肩でつっかえ、次に胸筋によりボタンが吹っ飛んだ。
 智顕がやっているソシャゲのように、メイド服の胸に謎の穴が空いてしまっている。
 何が嬉しくて、男なのに乳見せなきゃいけないんだよ。何の為の穴だよ、コレ。
 案の定メイド服のウエストも細くて、服の縫製がはち切れる音がした。
 俺の羞恥心を煽るかのように、エプロンドレスの腰の後ろのリボンがエアコンの風で蝶のようにふわふわと舞っているのが憎たらしい。
 リボンは、静弥に結んで貰った。相変わらずめちゃくちゃ綺麗で、店のサンプルのような形状をしている。
 自力でリボンを結んだら、片方だけデカいとかそもそも形が歪とかになる未来しか見えない。
 リボンを結んで貰った時。俺は中世時代のロココドレスのコルセットを、締め上げられたかのような痛みに襲われ汚い悲鳴を上げたのだった。
 そんなギャグか罰ゲームとしか思えないメイド服姿をしている俺は、今現在静弥のベッドの上で仰向けにされて脚をM字に開かされている。
 静弥は右手の人差し指と中指にゴムを被せて、俺の後孔を弄っている。
 さっきみたいにフェラまでしてくれているわ、器用なことに空いている左手で胸の頂きを指の腹で転がしてみたり摘んでみたりもしている。
 これ、どっちがご主人様か分かんねーな……。
「んゥ!? あっ、あ、あー!」
 静弥の指が、俺のナカの深いところに届いた。いつもと違って、表側と言ったら良いのだろうか? 腹側の方へトンネルを掘り進めるように、静弥の指が肉壁を抉っていく。
「え、な、なニ!? これ、なニ!? にゃ、何、されへんの!?」
 自分でも素っとんきょうだと思う裏返った声で、頭の悪い質問を口にしてしまった。
 後ろを弄られてるのは、理解出来る。だけど、いつもと何故違うのか分からない。
 な、なんか、くぼんでるところに静弥の指がある気はする……?
「前立腺を苛められてるんだよ、晄君」
 前立腺……? 読んだBL漫画で、挿れる側がそんなことを言っていた気がする。
 最初は嫌がる挿れられる側だけど、挿れる側に前立腺を刺激された途端に「嫌」が「快感」に変わって、ハートマークたっぷりのセリフで喘いでいた。
「フィクションを、間に受けんな! アホ!」
「そのフィクションでオナニーして、雄ノートまで書く人に言われてもなあ……」
 ヤバい。正論過ぎて、ぐうの音も出ない。コイツに口で勝てるワケがない。と頭では分かっていても、言い返さないと気がすまない性分だ。
「うんこちんちん! アホ! アホ! タコ! 性欲モンスター!」
 静弥は描いた絵を見せに来る幼稚園児を見るような目で、俺に微笑みかけている。
 この視線、地味に傷付く……。
「前立腺を刺激するとねーー苦労知らずで自分が世界の中心だと思っている生意気な男の人も、立ち振る舞いすらご両親に叩き込まれた高潔な男の人も、雌になるんだよ」
 まるで文学のようなセリフだと聞いていたのに、後半の雌発言で全てが消し飛んだ。
 静弥は白く平たい左手で俺の腹筋をぐっと押し、右手の指を後孔から引き抜いた。
 何する気なんだよ。
 静弥の左手は腹筋を刺激し続けたまま、右手は亀頭をこねくり回したり裏筋をなぞり出す。
 己の性器はどくどくと、脈打ってるのが分かる。
 いつもと、違うことも。
「ひっ……あっ、ああっ……!!」
 何かヤバいのが、来る!! 漏らしちゃダメだ、漏らしちゃダメだ……!!
 俺の性器から、透明な液体が缶を振った炭酸ジュースのように放出された。
「え、え……?」
 小便でも、精液でもない、この液体。何、コレ……。
「今のが、ドライだよ」
「ど、ドライ?」
「男性版の潮吹きだよ。折角だから、日記に書こう」
 そう言いながら静弥はパソコンデスクの引き出しを開けて、真っ暗なノートを取り出した。
 真っ暗なノートには「晄君の雌ノート」と、教科書の明朝体のような字体で真っ白なペンで書かれていた。
「殺すぞ!! ガチで!! お揃い感出すな!! もういい!! 俺の雄ノート捨てる!!」
「晄君が雄ノートを捨てても、僕は書き続けるよ? ちなみにこれ以外に、晄君の観察日記に、コウ君の配信推し活ノートに、晄君の寝言記録帳に、食べた物記録帳と、他には」
「やめろ! せめて一冊にしろ!!」
 脚をばたつかせて抗議すると、ビリッ! とスカートが鈍い音を鳴らして、大破した。
 いやもう、これ、着てる意味なくね? 脱いでヤった方が……。
「しねぇからな! お前は、ちょっと反省しろ!! 今日はセックスしませーん! 閉店でーす!」
 
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