31 / 62
二十四話
しおりを挟む
「……智顕さあ。静弥と、過去になんかあった?」
俺の自尊心と尊厳が破壊される前に、今日一番聞きたいことを口にした。
デリケートな話かもしれないし、個人間のメッセージにした方が良いのは分かっている。
だけどこの言葉足らずで、誤用やら誤字脱字が多い奴だもん。
絶対顔が見えない文面じゃ、理解出来ない。
智顕は、うん。ってだけ、返事をした。
「……いや、その内容を聞いてんだけど」
「ごめん。俺のおばあちゃん、絵本作家でさ」
職業として、絵本作家って言うのがあるのは知っている。だけど、こんな身近に居るって思わないだろ。
え? 家太で、タワマン住んでて、ばあちゃんが絵本作家!? コイツ、プリキュアのキャラかなんか!?
「俺が高校の頃に、おばあちゃん大阪で絵本のワークショップをしたんだよね。観光がてらついていって、おれも参加したの。そうしたら、そこにセイヤ君居て」
お、おお……。絵本のワークショップに、参加するって中々だな。
俺の頭の中におばあさんや五十路くらいの主婦に混じって、黙々と絵本を描いてる静弥の図が浮かんだ。
「あー、っぽいぽい」
歩夢が腕を組みながら、一人で頷いてる。
「本好きだしな」
「ちげーよ。作家志望っぽいってこと」
「え? あいつ、作家志望なの!?」
そんなん、一言も聞いてないんだけど……! って言うか、今の話で分かるもんなんか!?
「お前、ガチ鈍いな……。心配なるわ」
「うるせぇ」
智顕が罰が悪そうに、俺から視線を逸らしながら口を開いた。
智顕がこう言う仕草をする時、大概とんでもない爆弾ぶち込んで来るんだよな。
乾いた喉に、カフェオレを流し込む。
「合評会の時に、オレ、失言しちゃって」
「何、言ったんだよ」
「『こりゃダメだな』って」
「お前さあ……ちなみに、なんで、そんなこと言ったんだよ?」
「セイヤ君が描いた絵本、この世と人へのうらみつらみって感じで、オレ落ち込んだ。読者に感情乗せられるのは才能だけど、余りにもトゲがすごくて。プロ目指すなら、たましいがはげしくて、読者引くだろうし。この方向でプロ目指すのは、きびしいって」
「お前は、編集か」
だけど、智顕の言わんとすることは分かる。日頃のアレコレから、想像つくもん。
上坂さんが菩薩のような笑顔で、まとめるようにこう言った。
「言い方って、大事だよね。正論だけで、他人がついて来たら苦労しないよ」
言ってることは大人なのに、格好が格好だから怪しい自己啓発系のセミナー感すんな……。
*
接客業の人間にとって、土日に来店する客はトー横でストゼロをストロー飲みする女より地雷だ。
普段どうして生きてんの? お前社長にも、同じ態度で接するの? って言いたくなるような客が、とても多い。
そんな地獄の戦場に、俺は居る。
元々シフトは入っていなかったのだが、体調不良で休みが三人も出て急きょ出勤することになったのだ。
「シニアがこんなコンピューターで、注文出来る訳がないだろう!」
量産型ハゲメガネジジイは、ツバを飛ばしながら吠えている。
来ましたよ~! 老害確定演出!
「お客様。今大体の居酒屋は、タブレットでございまあ~す」
日曜の夜六時半から放映されている、あの特徴的な頭の主婦のように俺はそう言った。
「なんだその不遜な態度は! 君、名前は!」
「田所です」
「姓名で、言え!」
「田所 浩次です」
横で酎ハイに焼き鳥を運んでいる、淫夢仲間のスタッフが吹き出した。
俺は量産型老害ジジイにタブレットの使い方を教えて、近くの客が帰ったばかりの席のグラスや皿をバックへと運んだ。
「なあ~。ひかる。また、あいつ、トイレ清掃行ってないの」
横で一緒に皿洗いをしているよっしーが、そう漏らした。
その言葉で、俺は誰のことか察した。
「あいつ、絶対行かねーよな」
「だからって、他の仕事してる訳でもないのムカつかね? オーダー届けにしか、行かないじゃん。これで同じ時給なん、ズルいわ~」
日本のシステムの悪いところだ。同じ時給で、真面目に働く方が損するヤツ。
よっしーは愚痴を言うけど、じゃあオレもサボるか! なんて思わず、働いてくれる。ミスした時も誤魔化さずに、ちゃんと社員に謝ってるし。
「社員に、言った?」
「言ったけど、変わってない…」
いや、それ、無理じゃん。
だからと言って、法律がある以上クビに出来ないのも分かる。
「ちょっと、言って来るわ」
「え、ええ……? 大丈夫?」
「大丈夫大丈夫。量産型老害でウォーミングアップ済んだし、態度によったら店長に言う」
「お前からの店長コンボ、飛ぶって……」
歩夢達と言い、他人のことをなんだと思ってんだよ……。
休憩時間でもないのに、店舗の外の長い廊下を渡った先にある非常階段でスマホを弄っている例の「あいつ」を、見下ろす。
誰も掃除してないであろう、埃まみれの場所に尻つけられるのやべえな。ガサツ柱すら、引くレベル。
「今って、休憩時間だっけ?」
あくまで、確認してる体で話しかける。
「そうだよー」
例のあいつは、スマホの画面から顔を上げない。
俺はシフト表を掲げながら、言う。
「休憩時間、変わったの? みんな知らないみたいだよ」
「うっぜえな! どうせ吉田が『トイレ清掃しなくて、ずるい!』とか言ってんだろ。小三の学級委員かよ!」
うん。例えとしてすごく分かるんだけど、ここはお仕事の場なんだよ。
「なんで、やらんの?」
「だって、俺じゃないとダメな理由ないじゃん」
まあ、確かに社会の論理ではある。自分以外に替えが効かないなんて存在は、よっぽどの天才だろう。
だけどそれって、無理矢理正当化した逃げの理屈でしかなくね?
しかもお金を貰う場で、労働力を提供しないことを正当化するのは違うだろ。
……アレ? なんか、急に冷えて来た気がする。
夜風にさらされてるからか?
いや、違う。
自分に向いた、ブーメランだと分かったからだ。
俺の代わりは、居る。俺よりダンスが上手い奴も、沢山居る。
=俺がやらなくて良い理由には、ならないよな。
「分かった。やりたくなったら、やって」
多分コイツは、まだ気付く段階じゃない。
俺は、それを裁く人間じゃない。
正論で優しく伝えても、向こうが歩み寄る気がなければ無理だ。
身をもって、知った後だから。
俺は、何も言わなかった。
まあ……店長には、チクるけどな。
*
急きょシフトに入ったこともあり、社員の気配りで早めに上がらせて貰えた。
数時間の差だけど、ラストまで居るのと居ないのでは体の疲れが全然違う気がする。
時刻は、夜十一時前。
「ただいまー」
そう言って玄関の扉を開けたのに、いつもの定位置に静弥が居ない。
そう言えば『今から帰る』ってメッセージしたけど、未だに既読ついてないんだよな。
もしかして、もう寝てるのか? って思ったけど、リビングのガラス戸から薄明るい黄色の灯りが漏れている。
玄関の左横にある風呂場の洗面台で手洗いうがいを済まして、リビングの中へと入った。
静弥はテレビを、釘付けで見ている。
薄型の液晶テレビに映っているのは、生配信中のヒョーマだった。
「あ、おかえり。晄君。ご飯、温めるよ」
「いいよ、自分でやる」
静弥は小さく頷いてから、ものすごく真剣な目で俺を見て来た。
「え、なに」
「あのね。晄君のお父さんから【ファミリーレストランのドリンクバーをお風呂代わりにするカヲル君】の動画が、送られて来たんだ」
あ、あいつ! さも自分が、見つけたように……!!
「なんで公共の場……それも飲み物を注ぐ機械をお風呂にしたのか、動画を何回見ても分からなくてさ」
そこ、真面目に考察するとこなのか!? なんも考えず、勢いで笑うところだろ!
「オールウェイズ ホスト」を考察する奴だもんな。考察するわな。
「ネタなの! カヲル君のセリフで有名な風呂に入ってるシーンのセリフがあって、それでトンチキなことやらせたら面白いよね! ってネタ!」
「ああ、そうなんだ。ヒョーマさんとしての配信を見たら、なんであのモノマネ動画を撮ったか分かるかな? って思って」
こんなパターンの考察厨、居るんだ。
テレビの中のヒョーマは、リスナーから貰ったモノマネのリクエストに応えているようだった。
リクエスト内容は『猗窩座の真似して~』とか『ナンバーワンホストの五条 悟やって』とか『どしたん? 話聞こか? のハクして』とかアニメ系のリクエストばかりだった。
ヒョーマが面白そうだと思ったものを選び、そっくりな声で演じて見せるのだ。
コイツ、アドリブ力高ぇ!! 配信者としての、ポテンシャルありすぎだろ!!
静弥はスマホを手に取り、何か文字を打ち込んでいる。
静弥が文字を打ち終わってから数秒後。テレビの画面のコメント欄に、沼黒のコメントが流れて来た。
『初めまして。動画、面白いです。良かったら、作家の浅井 りゅう先生の物真似をして欲しいです。毎日暑いので、ご自愛下さい』
作家ぁ!? 作家なんて、一番どう話すのか分からねー職業筆頭じゃん!!
自分がリクエストされたら、絶妙に困る。
挨拶をしっかりして、流れの空気読んで、相手に対する気配りもしている。
だけど、ズレてんだよなあ……。そこが、静弥なんだけどな。
ヒョーマは青空に向かって咲く向日葵のような顔で、俺達に向かって微笑んだ。
『沼黒。初見さんかな? 配信、見てくれて嬉しいけん! 浅井 りゅうって、霧島とかの人よな? ちょっと待ってな』
リアコ生産機か! お前は!
ヒョーマは咳払いをして、少し猫背気味に姿勢を正した。
『はい。皆様、こんにちは。作家の浅井 りゅうです』
出来るんかいっ!!
高くも低くもない、柔らかい声音。だけどちょっと前のめり気味な早口が、すごい作家感する。
『今日はですね。私の作品が映画化した際の原作料で、本屋さんの本を買い占めようと思います』
言いそう!! めちゃくちゃ言いそう!!
静弥もツボに入ったのか、ケタケタと笑っている。
や、ヤバい。このままじゃ……!
「ヒョーマ君、作家さんの真似出来るなんてすごい(ポチャーン)」
「喜んでくれるなんて、やりがいあるのう! 西野圭吾も、伊坂幸次郎も、なんでもしたるけん! モノマネ王に、俺はなる!(どんっ!!)」
「夢を追う人、素敵……! 僕は世界一の大作家になる!(ポチャーン)(ポチャーン)」
「おう! 一緒に、ワンピース目指そうや!」
「うん!(ポチャーン)(ポチャーン)(ポチャーン)」
なんてことに!!
よしっ! エヴァの動画なんて、後回しだ! 静弥が好きな作家のモノマネをマスターしよう!
俺の自尊心と尊厳が破壊される前に、今日一番聞きたいことを口にした。
デリケートな話かもしれないし、個人間のメッセージにした方が良いのは分かっている。
だけどこの言葉足らずで、誤用やら誤字脱字が多い奴だもん。
絶対顔が見えない文面じゃ、理解出来ない。
智顕は、うん。ってだけ、返事をした。
「……いや、その内容を聞いてんだけど」
「ごめん。俺のおばあちゃん、絵本作家でさ」
職業として、絵本作家って言うのがあるのは知っている。だけど、こんな身近に居るって思わないだろ。
え? 家太で、タワマン住んでて、ばあちゃんが絵本作家!? コイツ、プリキュアのキャラかなんか!?
「俺が高校の頃に、おばあちゃん大阪で絵本のワークショップをしたんだよね。観光がてらついていって、おれも参加したの。そうしたら、そこにセイヤ君居て」
お、おお……。絵本のワークショップに、参加するって中々だな。
俺の頭の中におばあさんや五十路くらいの主婦に混じって、黙々と絵本を描いてる静弥の図が浮かんだ。
「あー、っぽいぽい」
歩夢が腕を組みながら、一人で頷いてる。
「本好きだしな」
「ちげーよ。作家志望っぽいってこと」
「え? あいつ、作家志望なの!?」
そんなん、一言も聞いてないんだけど……! って言うか、今の話で分かるもんなんか!?
「お前、ガチ鈍いな……。心配なるわ」
「うるせぇ」
智顕が罰が悪そうに、俺から視線を逸らしながら口を開いた。
智顕がこう言う仕草をする時、大概とんでもない爆弾ぶち込んで来るんだよな。
乾いた喉に、カフェオレを流し込む。
「合評会の時に、オレ、失言しちゃって」
「何、言ったんだよ」
「『こりゃダメだな』って」
「お前さあ……ちなみに、なんで、そんなこと言ったんだよ?」
「セイヤ君が描いた絵本、この世と人へのうらみつらみって感じで、オレ落ち込んだ。読者に感情乗せられるのは才能だけど、余りにもトゲがすごくて。プロ目指すなら、たましいがはげしくて、読者引くだろうし。この方向でプロ目指すのは、きびしいって」
「お前は、編集か」
だけど、智顕の言わんとすることは分かる。日頃のアレコレから、想像つくもん。
上坂さんが菩薩のような笑顔で、まとめるようにこう言った。
「言い方って、大事だよね。正論だけで、他人がついて来たら苦労しないよ」
言ってることは大人なのに、格好が格好だから怪しい自己啓発系のセミナー感すんな……。
*
接客業の人間にとって、土日に来店する客はトー横でストゼロをストロー飲みする女より地雷だ。
普段どうして生きてんの? お前社長にも、同じ態度で接するの? って言いたくなるような客が、とても多い。
そんな地獄の戦場に、俺は居る。
元々シフトは入っていなかったのだが、体調不良で休みが三人も出て急きょ出勤することになったのだ。
「シニアがこんなコンピューターで、注文出来る訳がないだろう!」
量産型ハゲメガネジジイは、ツバを飛ばしながら吠えている。
来ましたよ~! 老害確定演出!
「お客様。今大体の居酒屋は、タブレットでございまあ~す」
日曜の夜六時半から放映されている、あの特徴的な頭の主婦のように俺はそう言った。
「なんだその不遜な態度は! 君、名前は!」
「田所です」
「姓名で、言え!」
「田所 浩次です」
横で酎ハイに焼き鳥を運んでいる、淫夢仲間のスタッフが吹き出した。
俺は量産型老害ジジイにタブレットの使い方を教えて、近くの客が帰ったばかりの席のグラスや皿をバックへと運んだ。
「なあ~。ひかる。また、あいつ、トイレ清掃行ってないの」
横で一緒に皿洗いをしているよっしーが、そう漏らした。
その言葉で、俺は誰のことか察した。
「あいつ、絶対行かねーよな」
「だからって、他の仕事してる訳でもないのムカつかね? オーダー届けにしか、行かないじゃん。これで同じ時給なん、ズルいわ~」
日本のシステムの悪いところだ。同じ時給で、真面目に働く方が損するヤツ。
よっしーは愚痴を言うけど、じゃあオレもサボるか! なんて思わず、働いてくれる。ミスした時も誤魔化さずに、ちゃんと社員に謝ってるし。
「社員に、言った?」
「言ったけど、変わってない…」
いや、それ、無理じゃん。
だからと言って、法律がある以上クビに出来ないのも分かる。
「ちょっと、言って来るわ」
「え、ええ……? 大丈夫?」
「大丈夫大丈夫。量産型老害でウォーミングアップ済んだし、態度によったら店長に言う」
「お前からの店長コンボ、飛ぶって……」
歩夢達と言い、他人のことをなんだと思ってんだよ……。
休憩時間でもないのに、店舗の外の長い廊下を渡った先にある非常階段でスマホを弄っている例の「あいつ」を、見下ろす。
誰も掃除してないであろう、埃まみれの場所に尻つけられるのやべえな。ガサツ柱すら、引くレベル。
「今って、休憩時間だっけ?」
あくまで、確認してる体で話しかける。
「そうだよー」
例のあいつは、スマホの画面から顔を上げない。
俺はシフト表を掲げながら、言う。
「休憩時間、変わったの? みんな知らないみたいだよ」
「うっぜえな! どうせ吉田が『トイレ清掃しなくて、ずるい!』とか言ってんだろ。小三の学級委員かよ!」
うん。例えとしてすごく分かるんだけど、ここはお仕事の場なんだよ。
「なんで、やらんの?」
「だって、俺じゃないとダメな理由ないじゃん」
まあ、確かに社会の論理ではある。自分以外に替えが効かないなんて存在は、よっぽどの天才だろう。
だけどそれって、無理矢理正当化した逃げの理屈でしかなくね?
しかもお金を貰う場で、労働力を提供しないことを正当化するのは違うだろ。
……アレ? なんか、急に冷えて来た気がする。
夜風にさらされてるからか?
いや、違う。
自分に向いた、ブーメランだと分かったからだ。
俺の代わりは、居る。俺よりダンスが上手い奴も、沢山居る。
=俺がやらなくて良い理由には、ならないよな。
「分かった。やりたくなったら、やって」
多分コイツは、まだ気付く段階じゃない。
俺は、それを裁く人間じゃない。
正論で優しく伝えても、向こうが歩み寄る気がなければ無理だ。
身をもって、知った後だから。
俺は、何も言わなかった。
まあ……店長には、チクるけどな。
*
急きょシフトに入ったこともあり、社員の気配りで早めに上がらせて貰えた。
数時間の差だけど、ラストまで居るのと居ないのでは体の疲れが全然違う気がする。
時刻は、夜十一時前。
「ただいまー」
そう言って玄関の扉を開けたのに、いつもの定位置に静弥が居ない。
そう言えば『今から帰る』ってメッセージしたけど、未だに既読ついてないんだよな。
もしかして、もう寝てるのか? って思ったけど、リビングのガラス戸から薄明るい黄色の灯りが漏れている。
玄関の左横にある風呂場の洗面台で手洗いうがいを済まして、リビングの中へと入った。
静弥はテレビを、釘付けで見ている。
薄型の液晶テレビに映っているのは、生配信中のヒョーマだった。
「あ、おかえり。晄君。ご飯、温めるよ」
「いいよ、自分でやる」
静弥は小さく頷いてから、ものすごく真剣な目で俺を見て来た。
「え、なに」
「あのね。晄君のお父さんから【ファミリーレストランのドリンクバーをお風呂代わりにするカヲル君】の動画が、送られて来たんだ」
あ、あいつ! さも自分が、見つけたように……!!
「なんで公共の場……それも飲み物を注ぐ機械をお風呂にしたのか、動画を何回見ても分からなくてさ」
そこ、真面目に考察するとこなのか!? なんも考えず、勢いで笑うところだろ!
「オールウェイズ ホスト」を考察する奴だもんな。考察するわな。
「ネタなの! カヲル君のセリフで有名な風呂に入ってるシーンのセリフがあって、それでトンチキなことやらせたら面白いよね! ってネタ!」
「ああ、そうなんだ。ヒョーマさんとしての配信を見たら、なんであのモノマネ動画を撮ったか分かるかな? って思って」
こんなパターンの考察厨、居るんだ。
テレビの中のヒョーマは、リスナーから貰ったモノマネのリクエストに応えているようだった。
リクエスト内容は『猗窩座の真似して~』とか『ナンバーワンホストの五条 悟やって』とか『どしたん? 話聞こか? のハクして』とかアニメ系のリクエストばかりだった。
ヒョーマが面白そうだと思ったものを選び、そっくりな声で演じて見せるのだ。
コイツ、アドリブ力高ぇ!! 配信者としての、ポテンシャルありすぎだろ!!
静弥はスマホを手に取り、何か文字を打ち込んでいる。
静弥が文字を打ち終わってから数秒後。テレビの画面のコメント欄に、沼黒のコメントが流れて来た。
『初めまして。動画、面白いです。良かったら、作家の浅井 りゅう先生の物真似をして欲しいです。毎日暑いので、ご自愛下さい』
作家ぁ!? 作家なんて、一番どう話すのか分からねー職業筆頭じゃん!!
自分がリクエストされたら、絶妙に困る。
挨拶をしっかりして、流れの空気読んで、相手に対する気配りもしている。
だけど、ズレてんだよなあ……。そこが、静弥なんだけどな。
ヒョーマは青空に向かって咲く向日葵のような顔で、俺達に向かって微笑んだ。
『沼黒。初見さんかな? 配信、見てくれて嬉しいけん! 浅井 りゅうって、霧島とかの人よな? ちょっと待ってな』
リアコ生産機か! お前は!
ヒョーマは咳払いをして、少し猫背気味に姿勢を正した。
『はい。皆様、こんにちは。作家の浅井 りゅうです』
出来るんかいっ!!
高くも低くもない、柔らかい声音。だけどちょっと前のめり気味な早口が、すごい作家感する。
『今日はですね。私の作品が映画化した際の原作料で、本屋さんの本を買い占めようと思います』
言いそう!! めちゃくちゃ言いそう!!
静弥もツボに入ったのか、ケタケタと笑っている。
や、ヤバい。このままじゃ……!
「ヒョーマ君、作家さんの真似出来るなんてすごい(ポチャーン)」
「喜んでくれるなんて、やりがいあるのう! 西野圭吾も、伊坂幸次郎も、なんでもしたるけん! モノマネ王に、俺はなる!(どんっ!!)」
「夢を追う人、素敵……! 僕は世界一の大作家になる!(ポチャーン)(ポチャーン)」
「おう! 一緒に、ワンピース目指そうや!」
「うん!(ポチャーン)(ポチャーン)(ポチャーン)」
なんてことに!!
よしっ! エヴァの動画なんて、後回しだ! 静弥が好きな作家のモノマネをマスターしよう!
10
あなたにおすすめの小説
氷の檻に閉じ込められた月~兄上のすべては、私のもの~
春野ふぶき
BL
『兄上は私のものだ。魂も、肉体も。永遠に―—』
アーヴェント侯爵家の長男ライカは、妾腹として正妻に虐げられ続けてきた。
唯一の救いは、次期当主を目される異母弟カイエンの存在。
美しく聡明で、氷の騎士と呼ばれる彼だけは、常にライカの味方だった。
だが、その愛情は兄を守るものではなく、深く歪んだ執着だった。
母を排除し、兄を囲い込み、逃げれば鎖で捕らえる。
そしてついに、ライカの心身は限界に追い詰められていく。
——カイエンが下す「最後の選択」とは。
ふたりが辿る結末は、幸福か、それとも狂気の果てか。
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~
青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」
その言葉を言われたのが社会人2年目の春。
あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。
だが、今はー
「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」
「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」
冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。
貴方の視界に、俺は映らないー。
2人の記念日もずっと1人で祝っている。
あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。
そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。
あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。
ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー
※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。
表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
強欲なる花嫁は総てを諦めない
浦霧らち
BL
皮肉と才知と美貌をひっさげて、帝国の社交界を渡ってきた伯爵令息・エルンスト──その名には〝強欲〟の二文字が付き纏う。
そんなエルンストが戦功の褒美と称されて嫁がされたのは、冷血と噂される狼の獣人公爵・ローガンのもとだった。
やがて彼のことを知っていくうちに、エルンストは惹かれていく心を誤魔化せなくなる。
エルンストは彼に応える術を探しはじめる。荒れた公爵領を改革し、完璧な伴侶として傍に立つために。
強欲なる花嫁は、総てを手に入れるまで諦めない。
※性描写がある場合には*を付けています。が、後半になると思います。
※ご都合主義のため、整合性は無いに等しいです、雰囲気で読んでください。
※自分の性癖(誤用)にしか配慮しておりません。
※書き溜めたストックが無くなり次第、ノロノロ更新になります。
【連載中/BL】どうやら精霊術師として召喚されたようですが5分でクビになりましたので、最高級クラスの精霊獣と駆け落ちしようと思います。
架月ひなた
BL
異世界に召喚されたけど、即クビ!?
しかも壊した魔法陣を直せと無茶振りされ、住む場所として案内されたところも廃墟のような別邸。
食事は小さなパンのカケラにグラスに三割しか入っていない水のみ。
帰還手段もなくどうやって生きていこうか悩んでいた千颯の前に現れたのは、もふもふ癒し系のホワイトタイガーだった(のち超絶イケメンに変化)。
「名をくれたお前をこれから先ずっと守ると誓おう」
溺愛MAXのもふもふイケメン精霊獣に「駆け落ちするぞ」ともちかけられ、元の世界へ戻る為に旅をする事になった平凡社会人(無自覚チート精霊術師)の契約異世界BLファンタジー。
行方不明になっていた祖父がこの世界で聖女に拉致されたのを知り、探し出して一緒にニホンへと帰るつもりだったが!?
※コメディよりのラブコメ。時にシリアス。
※ざまあ展開にもなりそうな予感。
※想定文字数10万〜13万文字くらい。
病み墜ちした騎士を救う方法
無月陸兎
BL
目が覚めたら、友人が作ったゲームの“ハズレ神子”になっていた。
死亡フラグを回避しようと動くも、思うようにいかず、最終的には原作ルートから離脱。
死んだことにして田舎でのんびりスローライフを送っていた俺のもとに、ある噂が届く。
どうやら、かつてのバディだった騎士の様子が、どうもおかしいとか……?
※欠損表現有。本編が始まるのは実質中盤頃です
モブなんかじゃ終わらない!?
MITARASI_
BL
気がつけばそこは、人気BLゲームの世界。
けれど与えられた役割は、攻略対象でも悪役でもない――ただのモブ。
本来なら物語の外でひっそりと生きていくはずだった。
だが、そんな彼の存在が、少しずつ“運命のルート”を揺さぶっていく。
選ばれないはずのモブが紡ぐ、新たな恋の物語。
ゲームの定めを超えて、彼が辿り着く未来とは――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる