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クルライリア大陸編

与太二 お前なんかに負けるか!(過去の話) 前篇

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「おはよ~。」
などと挨拶しながら教室に入るあたし。まあ基本と言えば基本なんだけどね。そしていつもの場所のいつもの席に座る。ここはあたしの場所なんだ。まあ、席が決められてると言えば決められているんだが。席くらい自由にしてくれればいいのにさ。
「おっはよ、へぼメイ!」
と言いながらあたしの背中を「ぽんっ」と誰かが叩いてきた。誰かがとか言いたいがこんな挨拶をするのはあいつしかいない。
「誰がヘボだって?マフィン。」
そう、マフィンと言って同じクラスの腐れ友達みたいな感じかな。決して友達ではない。
「あんたのことに決まってんでしょ。」
既に同じくラスで3年も一緒にいるのである。さすがに長年、あたしがいるこの第五クラスの中ではあたしとマフィンは古い。とゆーかもう三人くらいしかいない。あとは入って来た人達は上へと行ってしまうから。
「馬鹿に言われたくはないわね。」
もう一人はスフレ。あたしが思うにスフレはクラス上がってもいいと思うんだけど、テストの本番なるとどうも実力出せないタイプらしい。だいたいあたしがクラス五ってのが信じられないんだよね。
「あんたケンカ売ってるの?」
まあ、こんな会話もいつものことだ。先生が入って来たらしいが終わらないこともある。
「買うか?」
まあ腐れ縁ってやつだけど、これも1つの日課みたいなもんね。最初はめっちゃむかついてイヤだったけど、今じゃ結構慣れたし。何事も無ければ無いで寂しい時もない・・・かな?
「こらぁ!ヘボ魔術師あ~んどアホ魔術師、さっさと席に着け!」
っとどうやら先生が来てたみたいだ。だけどアホのマフィンは納得いくとして、なんであたしはヘボなのさ。
「万年クラス五のくせになに言ってんの。」
お~い、先生のくせに言うか、そんなこと・・・。
「今日は年に一度の試験についての連絡があります。」
お、ついにきたか。今度こそクラス上がらなければならないな。一応クラスが上がるのは一年に一度なんだけど、試験自体は四半期に一度行われて、成績が認められれば上のクラスに行くことが可能なのだ。
「えーと今回は一週間後になります。」
「え~!一週間後!?」
「先生もっと早く言ってよ。」
などと声があがっている。だけど今回の試験は特別なんだ。一年に一度のこの試験は、生徒同士が実践で勝負して、上位三人が無条件で上のクラスに行くことが出来る試験。このチャンスを逃すわけにはいかないのよ。
「会議で決まったことなんですが、本来の実力、つまり普段の力がどれ
くらいなのかを計るためにもなるべく試験直前まで知らせないようにと、今回から決まりました。」
なるほど、それで一週間前か。それだけあれば十分よ。あたしなんて明日でもおっけ~よ。
などと言いつつ過去四回全て一回戦負けしてるあたしって・・・
「とゆーことなので、みなさん心の準備等しておいてくださいね。ちなみに学科試験もありますけど、範囲は教えません!」
『え~っ!』
それでこそあたしの実力が試されるわ。楽しみね。と、ふと視線を感じたので横の方を見るとマフィンがあたしに向かって中指を押っ立てている。おのれ、やる気満々だな。とその時、マフィンに何かが直撃した。それが何かはすぐにわかった、黒板消しだった。
「アホ魔術師!そんなことは私の話と授業が終わってからやれ。」
先生のお怒りの黒板消しが直撃したらしい。マフィンの横っ面にチョークの粉がいっぱい付着していた。それを見たあたしは爆笑したよ。だって笑わずにはいられないって。
「お前もうるせー、ヘボ魔術師!」
ビビシッ!
はうっ・・・先生の放ったチョークがあたしのおでこと鼻にヒットする。つーかマジ痛い。先生の投げるチョークは恐ろしく強力なんだよな。
「はい、じゃあ授業始めます。」
まったく、ショコラ先生も黙って立ってたらめっちゃ美人なのになぁ。ところが中身は鬼だもんな。
ほんと、外見と内面は違うよね、特に先生は違いすぎなん痛っ!
「そうゆうことは、思っても口に出すんじゃないっつーの。」
やってしまいましたぁ・・・。しかしチョーク痛い。


学校が終わって、あたしはアリィと一緒に帰っていた。まあ、マフィンと帰りにちょっと言い合いなんかしたけどアリィのカカトで止められ
たわ。
「アリィんとこも試験あんの?」
「あるに決まってるでしょ。この試験はクラスで上位と下位三人ずつ入れ替わるのよ。もっとも、クラス六より下はないから、クラス六は三人しか入れ変わらないけど。」
最後は説明してくれなくてもわかるけどさ。
「噂によると、クラス六でも極めて成績悪いのは学院自体辞めるかどうか問題になるらしいわ。」
「げ、そりゃ大変だ。」
「メイも気を付けなきゃねぇ。」
ってあたしは大丈夫だって、なんたってクラス五にいる事自体が不思議なんだから。
「そうそう、なんで六じゃないのかしらね。」
うん、って違うから・・・。そんなことより、やる気は満々なんだけど、やっぱり不安はあるよなぁ。やっぱり練習はしておくべきだと思うんだよね。
「無駄じゃない。」
「アリィ~・・・。」
「あはは、ごめん。そんなに睨まなくても。」
そりゃ、入ってすぐにクラス一にいるアリィはいいけどさ。そういや一クラスの上位の人ってなにがあるんだろう・・・?
「卒業が確定するんだって。」
おぉ、いいじゃん。ってあたしはその前に今のクラスから上に行かないと。
「ねぇアリィ。」
「なに?」
「練習に付き合ってくれない?」
あたしは実力、というより実践に関してはアリィはかなり出来るのは知ってるし、場数もかなり踏んでるのも知ってるから、アリィと練習すればそれなりに実力が付くんじゃないかと思ってる。まあ、場数ならあたしも多いんだけどね。
「別に構わないわ。」
「良かった、ありがと♪」
「無駄だと思うけど。」
って一言余計なんだよな。まあいいわ、いよいよあたしもクラスアップの時が来たか!
「今日からやる?」
マジか、今日からか。って一週間しかないからな、早いにこしたことはないか。
「おっけ~。」
「じゃあ、準備が出来たら私の家に来て。」
「わかった。」
その後それぞれ家に向かう。


家に戻って準備して、もうすぐアリィの家に着く。あいつの家は金持ちだから家も敷地もデカイんだよね。練習するスペースくらい余裕であるだろう。羨ましいことだ。あたしは小さい頃から出入りしてるとゆーか、遊びに来て入り浸っていることが多かったので、家族や執事や使用人なんかとは顔なじみっつーか友達みたいなもんだし、屋敷に入るのも自由になっている。
「来たわね、早速裏庭に行きましょう。」
あたしは頷くとアリィの後を追いかける。ほんとは屋敷に入るのはめんどい。屋敷から離れた門のところにいる門番からまず話しを通したりして、結局入るには時間がかかるんだよね。その点あたしは、いまやフリーパス状態。
「なにからするの?」
歩きながらアリィが聞いてくる。
「そりゃもう、魔法の実践でしょう。」
アリィはこちらを振り向くと「フッ」っと笑った。おのれ、余裕だな。

「それじゃ始めましょうか。」
「じゃ、行くよ!」
あたしは速攻アリィに向かって走る。間合いに入ると同時に側頭部にむかって回し蹴りを放つ。アリィはそれを後ろに跳んでかわす。すぐさまあたしは踏み込んで拳を顔めがけて繰り出す。
「魔法の実践だろうがっ!」
ガスッ! ドカァッ!・・・
拳がとどく前に、アリィのカカトがあたしの脳天を直撃、そのまま更に蹴り飛ばされる。
「まったく、魔法の練習でしょうが!」
おっと、うっかり忘れてしまってた・・・
「・・・をい・・・」 
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