21 / 72
二章 姉妹ニ捧グ静寂ノ黒
20.餞別
しおりを挟む
「そう、復讐よ。」
抜剣して降りてくるゼラウスを睨んで言う。
「そうか。くだらぬ。」
くだらないかどうかなんて、お前が決める事じゃない!
ゼラウスの打ち下ろしを避けながら、短刀で手首を狙ったが察しが良い。
手を引いて飛び退き、距離を取られた。
「乗り込んで来るだけはあるな。」
エルナとユルナも始めたのが横目に入る。
それはゼラウスも同様で、気にはなっているようだ。
ただ、私にとっては姉妹の生死はどうでもいい。
向こうを意識するなら意識したまま死ね。
私は短刀を構えて間合いを詰める。
長剣相手では不利な短刀でも、速度で潜り込めば有利に変わる。
再びの打ち下ろしを左に身を逸らして避け、そのまま手首を狙いに行く。
「っ!?」
相手の右側に回った直後、剣を持っていた筈の右手で裏拳を食らった。
気付けばいつの間にか剣は左手に握られていて、よろめいた私に向かって横薙ぎが向かってくる。
私は身体を逸らして剣先を避ける。
「くっ!」
ゼラウスは横薙ぎしていた剣から手を放して勢いで私に飛ばしてきた。
寸でのところで短刀を使い軌道を逸らした瞬間、腹部に蹴りを食らって壁まで飛ばされ激突した。
「剣など道具の一つにすぎん。意識し過ぎだな。」
講釈なんか要らないわ。
「同感ね。」
「ほう。」
どこぞの肥え腐った領主とは大違い。
盗賊団とはいえ、頭だけあってそれなりの強さは持っていた。
でも関係ない。
どんなに強かろうと、必ず殺す。
短刀を左手に持ち替えて、右手の人差し指を動かしながら距離を詰める。
対峙するゼラウスは素手のまま構えた。
素手で十分ってこと?
私は間合いに入る直前で足を止める。
だが、ゼラウスに動く気配はない。
私の隙を探すかの様な鋭い視線が向けられているだけ。
後の先でも取ろうってわけ?
なら・・・
短刀で右手を狙って薙ぐ。
ゼラウスは右手を引きつつ、左手で私を掴みにきた。
私は回転を止めずに身を屈め、腱を狙って回し蹴りを放つ。
堅い!
「その様な細足で動かせるとでも思ったか!」
私に力が無いわけじゃない。
普通の男性より威力は確実にあるのに、この男の耐久性と体幹がおかしいのよ。
動きの止まった私の隙を逃さず、ゼラウスは引いた右手を勢いを付け打ち下ろしてくる。
でも、それでいい。
後の先だろうと、攻撃がわかれば。
「刃煉。」
右手に掴んだ炎の刃で拳を受け止め振りぬく。
「ぐ!ぬぅぅぅっ・・・」
私も勢いで床に叩きつけられたけど、ゼラウスの右拳から肘まで、腕を半分焼き斬った。
「塵は魔法が使えることを失念しておったわ・・・」
焼き切られた断面は尋常じゃない激痛の筈。
これで反応も鈍る。
炎の刃を持った私の手も焼け爛れているけど、この程度。
お母さんが受けた痛みに比べれば大した問題じゃない。
その結果に加担したお前も、簡単に死ねると思うなよ!
「二重・緋雨。」
続けて小さな炎の槍を生成し、ゼラウスに飛ばすと同時に距離を詰める。
ゼラウスは槍を焼き斬られた右手で受けながら、左手で迎え撃ってきた。
傷に塩を塗るどころじゃない行動を平然とやってのける精神が尋常じゃない。
私は拳を避けたが、狙っていたのは短刀を持っていた左手だったらしい。
指の骨を砕かれ短刀が宙を舞う。
本当に、予想以上の精神力。
だけど・・・
「うぬぅっ!」
後追いで飛んで来た炎の槍が左腕から左足にかけて突き刺さる。
私は舞った短刀を右手で掴み、一瞬動きの止まったゼラウスの左足首を斬り落とした。
激痛で右手から短刀が落ちる。
「何故、私を攫った?」
右膝を付いて倒れずにいるゼラウスに聞く。
「愚問にも程がある!」
「くっ・・・」
左手で左足首から溢れ出る血を、飛沫として飛ばし、体当たりをしてきた。
油断した。
まだそんなに動けるなんて。
でも、ここで止まるわけにはいかない。
それに、そろそろ。
私は短刀を銜えてもう一度ゼラウスに近付く。
体制を崩しても、迎え撃とうとまた右膝を付こうとするゼラウス。
その時、城に激震が走った。
大きな音と共に城が揺れる。
私は構わず走り、銜えた短刀を右手で掴む。
今の揺れで再び倒れたゼラウスの右足の腱を斬った。
下手に突き刺しても動きそうだから、確実に動きを止める。
「お前の仕業か!?」
「どうでもいいでしょ。」
続けて大きな爆発音が鳴る。
最初に食堂。
その音で起きた奴等は、部屋から出られずに直撃しているでしょうね。
「これでも黒鷲を率いる者だ。金になるなら何でもやったさ。」
仰向けになったゼラウスが口にした。
さっきの続きってこと。
そう。
「それ以外に理由はない。お前の境遇を聞いたところで、俺には関係ない。」
まぁ、いいわ。
内容はどうであれ、理由は聞いた。
殺すことにも変わりはない。
あの音で何人かは部屋の前に駆け付けたようだが、リリエルが扉を氷漬けにしていた。
爆音と悲鳴が扉の外から聞こえてくる。
「俺を殺すのは構わん。だが、勝手な言い分ではあるが、関与していない子供は助けてくれ。」
本当に勝手だわ。
「私は乞うても泣き叫んでも願っても、誰も止めなかったわ!」
「・・・」
死を受け入れた奴を苦しめても効果が無い。
目を閉じて何も言わないゼラウス見ると、苛立ちが込み上げてくる。
だからと言って、もう何をしても気が晴れそうな気はしない。
ふと絶叫が聞こえたので、ユルナの方に目を向ける。
二人とも床に這って、血に塗れた状態だった。
ユルナが逃げるエルナの足に短剣を突き刺している。
「やめろ!!ユルナ、それ以上は止めてくれ!」
気付いたゼラウスが、叫んでいた。
「頼む・・・」
自分の子供は助けたいらしい。
私を見上げて口を開いたが、無駄だと悟ってそれ以上は何も言わなかった。
短剣を足から抜いたユルナは、更にエルナの服を掴んで引き寄せると振り被った。
エルナは必死に、玉座の横に設えてある棚の引き出しを掴んで、ユルナの頭部を殴打する。
横倒しになったユルナに、エルナは引き出しを振り被って叩きつけた。
鈍い音と共に赤黒い液体が飛び散る。
更に振り被った瞬間、ユルナが下から突き上げるように、短剣を腹部に突き立てた。
「・・・」
それを見たゼラウスが無言で床に目線を落とす。
すべてを失くした気にでもなったのかわからない。
何を口にしているかわからない怒声と、鬼の形相でエルナはユルナの頭部に何度も引き出しを叩きつける。
服も、身体も、引き出しも、床も。
飛び散る赤黒い液体が染めていく。
「恨まれるような稼業をしていたのだから、当然覚悟の範疇でしょ?」
「・・・」
「自分だけ、自分の子供だけ、助かるなんて甘い事考えてたんじゃないでしょう!」
「くっ・・・」
何時までも項垂れるゼラウスの頭部を蹴り飛ばす。
私には手詰まりだった。
でも、私ではなくユルナが精神的苦痛を与えた。
納得は出来ないけど、少しでも苦しんだところを殺せるならいい。
「早く殺せ・・・」
「巫山戯ろ。お前はそこで死に至るまで現状に苦しんでいろ。」
そんな簡単に死なせない。
傷から言えば、もう死ぬのは確実。
だから、そこで自分のした事の後悔と、それが引き起こした現実で苦しめばいい。
「終わった?」
ゼラウスを放置して、リリエルに目を向けると聞いて来た。
「黙って見ててくれてありがとう。けどもう少し。」
「例え死んでも、手を出されたくないでしょ?」
「そうね。」
私は答えながら、ユルナの方に向かう。
ユルナの頭部は原型が無いほど殴打され、脳漿と血で髪の毛が床に張り付いている。
それでも、エルナの服を掴んだ手は固く握られていた。
死んでも離さない、逃がさない、そんな意思を感じる様な気がした。
刺傷だらけのエルナも目を見開いたまま絶命している。
全身がもともとその色だったのかと思うほど、すべてが赤黒く染まっていた。
「壮絶・・・」
普段、明るい口調のリリエルも目を逸らしてそれだけ口にする。
方向性は違えど、それぞれの自由を勝ち取りたかった姉妹は、お互いが邪魔して潰しあった。
「短い付き合いだったけど、さよなら。」
私は右手の人差し指を二人に向ける。
ユルナ、そっちで自由を掴めることを祈ってるわ。
「黒灯・蝕。」
二人の周りに黒い灯りが揺らめくと囲む。
その勢力をゆっくりと内側に広げ、二人の身体を飲み込んでいった。
「なに・・・それ・・・」
リリエルが気持ち悪そうに見ている。
私も気持ち悪い。
黒い炎は有機物を蝕み、飲み込み終わるまで燃え続ける。
骨が残る通常の火葬と違い、骨まで食らいつくす。
この場に残るより、この場所からすべて解放されたらいいね、という私からユルナへの餞別。
「気持ち悪いよね・・・」
「う、うん。」
やっぱり。
「帰る。」
踵を返して部屋から出ようとしたら、凍った扉が目に入った・・・
「残りはどうすんの?」
「出るときに火を付ける。それだけ。相手にしてられない。それよりあの扉・・・」
と言った瞬間、氷が砕けた。
リリエルが親指を立てて笑みを浮かべる。
たまたまでしょ。
一階の扉を背に、中に人差し指を向けて動かす。
このお城は、黒鷲の根城。
だったら、遠慮はいらない。
「十重・焔。」
城内で連続して吹き上げる火柱を背に、私とリリエルはゲールデリク城から立ち去った。
二章 了
抜剣して降りてくるゼラウスを睨んで言う。
「そうか。くだらぬ。」
くだらないかどうかなんて、お前が決める事じゃない!
ゼラウスの打ち下ろしを避けながら、短刀で手首を狙ったが察しが良い。
手を引いて飛び退き、距離を取られた。
「乗り込んで来るだけはあるな。」
エルナとユルナも始めたのが横目に入る。
それはゼラウスも同様で、気にはなっているようだ。
ただ、私にとっては姉妹の生死はどうでもいい。
向こうを意識するなら意識したまま死ね。
私は短刀を構えて間合いを詰める。
長剣相手では不利な短刀でも、速度で潜り込めば有利に変わる。
再びの打ち下ろしを左に身を逸らして避け、そのまま手首を狙いに行く。
「っ!?」
相手の右側に回った直後、剣を持っていた筈の右手で裏拳を食らった。
気付けばいつの間にか剣は左手に握られていて、よろめいた私に向かって横薙ぎが向かってくる。
私は身体を逸らして剣先を避ける。
「くっ!」
ゼラウスは横薙ぎしていた剣から手を放して勢いで私に飛ばしてきた。
寸でのところで短刀を使い軌道を逸らした瞬間、腹部に蹴りを食らって壁まで飛ばされ激突した。
「剣など道具の一つにすぎん。意識し過ぎだな。」
講釈なんか要らないわ。
「同感ね。」
「ほう。」
どこぞの肥え腐った領主とは大違い。
盗賊団とはいえ、頭だけあってそれなりの強さは持っていた。
でも関係ない。
どんなに強かろうと、必ず殺す。
短刀を左手に持ち替えて、右手の人差し指を動かしながら距離を詰める。
対峙するゼラウスは素手のまま構えた。
素手で十分ってこと?
私は間合いに入る直前で足を止める。
だが、ゼラウスに動く気配はない。
私の隙を探すかの様な鋭い視線が向けられているだけ。
後の先でも取ろうってわけ?
なら・・・
短刀で右手を狙って薙ぐ。
ゼラウスは右手を引きつつ、左手で私を掴みにきた。
私は回転を止めずに身を屈め、腱を狙って回し蹴りを放つ。
堅い!
「その様な細足で動かせるとでも思ったか!」
私に力が無いわけじゃない。
普通の男性より威力は確実にあるのに、この男の耐久性と体幹がおかしいのよ。
動きの止まった私の隙を逃さず、ゼラウスは引いた右手を勢いを付け打ち下ろしてくる。
でも、それでいい。
後の先だろうと、攻撃がわかれば。
「刃煉。」
右手に掴んだ炎の刃で拳を受け止め振りぬく。
「ぐ!ぬぅぅぅっ・・・」
私も勢いで床に叩きつけられたけど、ゼラウスの右拳から肘まで、腕を半分焼き斬った。
「塵は魔法が使えることを失念しておったわ・・・」
焼き切られた断面は尋常じゃない激痛の筈。
これで反応も鈍る。
炎の刃を持った私の手も焼け爛れているけど、この程度。
お母さんが受けた痛みに比べれば大した問題じゃない。
その結果に加担したお前も、簡単に死ねると思うなよ!
「二重・緋雨。」
続けて小さな炎の槍を生成し、ゼラウスに飛ばすと同時に距離を詰める。
ゼラウスは槍を焼き斬られた右手で受けながら、左手で迎え撃ってきた。
傷に塩を塗るどころじゃない行動を平然とやってのける精神が尋常じゃない。
私は拳を避けたが、狙っていたのは短刀を持っていた左手だったらしい。
指の骨を砕かれ短刀が宙を舞う。
本当に、予想以上の精神力。
だけど・・・
「うぬぅっ!」
後追いで飛んで来た炎の槍が左腕から左足にかけて突き刺さる。
私は舞った短刀を右手で掴み、一瞬動きの止まったゼラウスの左足首を斬り落とした。
激痛で右手から短刀が落ちる。
「何故、私を攫った?」
右膝を付いて倒れずにいるゼラウスに聞く。
「愚問にも程がある!」
「くっ・・・」
左手で左足首から溢れ出る血を、飛沫として飛ばし、体当たりをしてきた。
油断した。
まだそんなに動けるなんて。
でも、ここで止まるわけにはいかない。
それに、そろそろ。
私は短刀を銜えてもう一度ゼラウスに近付く。
体制を崩しても、迎え撃とうとまた右膝を付こうとするゼラウス。
その時、城に激震が走った。
大きな音と共に城が揺れる。
私は構わず走り、銜えた短刀を右手で掴む。
今の揺れで再び倒れたゼラウスの右足の腱を斬った。
下手に突き刺しても動きそうだから、確実に動きを止める。
「お前の仕業か!?」
「どうでもいいでしょ。」
続けて大きな爆発音が鳴る。
最初に食堂。
その音で起きた奴等は、部屋から出られずに直撃しているでしょうね。
「これでも黒鷲を率いる者だ。金になるなら何でもやったさ。」
仰向けになったゼラウスが口にした。
さっきの続きってこと。
そう。
「それ以外に理由はない。お前の境遇を聞いたところで、俺には関係ない。」
まぁ、いいわ。
内容はどうであれ、理由は聞いた。
殺すことにも変わりはない。
あの音で何人かは部屋の前に駆け付けたようだが、リリエルが扉を氷漬けにしていた。
爆音と悲鳴が扉の外から聞こえてくる。
「俺を殺すのは構わん。だが、勝手な言い分ではあるが、関与していない子供は助けてくれ。」
本当に勝手だわ。
「私は乞うても泣き叫んでも願っても、誰も止めなかったわ!」
「・・・」
死を受け入れた奴を苦しめても効果が無い。
目を閉じて何も言わないゼラウス見ると、苛立ちが込み上げてくる。
だからと言って、もう何をしても気が晴れそうな気はしない。
ふと絶叫が聞こえたので、ユルナの方に目を向ける。
二人とも床に這って、血に塗れた状態だった。
ユルナが逃げるエルナの足に短剣を突き刺している。
「やめろ!!ユルナ、それ以上は止めてくれ!」
気付いたゼラウスが、叫んでいた。
「頼む・・・」
自分の子供は助けたいらしい。
私を見上げて口を開いたが、無駄だと悟ってそれ以上は何も言わなかった。
短剣を足から抜いたユルナは、更にエルナの服を掴んで引き寄せると振り被った。
エルナは必死に、玉座の横に設えてある棚の引き出しを掴んで、ユルナの頭部を殴打する。
横倒しになったユルナに、エルナは引き出しを振り被って叩きつけた。
鈍い音と共に赤黒い液体が飛び散る。
更に振り被った瞬間、ユルナが下から突き上げるように、短剣を腹部に突き立てた。
「・・・」
それを見たゼラウスが無言で床に目線を落とす。
すべてを失くした気にでもなったのかわからない。
何を口にしているかわからない怒声と、鬼の形相でエルナはユルナの頭部に何度も引き出しを叩きつける。
服も、身体も、引き出しも、床も。
飛び散る赤黒い液体が染めていく。
「恨まれるような稼業をしていたのだから、当然覚悟の範疇でしょ?」
「・・・」
「自分だけ、自分の子供だけ、助かるなんて甘い事考えてたんじゃないでしょう!」
「くっ・・・」
何時までも項垂れるゼラウスの頭部を蹴り飛ばす。
私には手詰まりだった。
でも、私ではなくユルナが精神的苦痛を与えた。
納得は出来ないけど、少しでも苦しんだところを殺せるならいい。
「早く殺せ・・・」
「巫山戯ろ。お前はそこで死に至るまで現状に苦しんでいろ。」
そんな簡単に死なせない。
傷から言えば、もう死ぬのは確実。
だから、そこで自分のした事の後悔と、それが引き起こした現実で苦しめばいい。
「終わった?」
ゼラウスを放置して、リリエルに目を向けると聞いて来た。
「黙って見ててくれてありがとう。けどもう少し。」
「例え死んでも、手を出されたくないでしょ?」
「そうね。」
私は答えながら、ユルナの方に向かう。
ユルナの頭部は原型が無いほど殴打され、脳漿と血で髪の毛が床に張り付いている。
それでも、エルナの服を掴んだ手は固く握られていた。
死んでも離さない、逃がさない、そんな意思を感じる様な気がした。
刺傷だらけのエルナも目を見開いたまま絶命している。
全身がもともとその色だったのかと思うほど、すべてが赤黒く染まっていた。
「壮絶・・・」
普段、明るい口調のリリエルも目を逸らしてそれだけ口にする。
方向性は違えど、それぞれの自由を勝ち取りたかった姉妹は、お互いが邪魔して潰しあった。
「短い付き合いだったけど、さよなら。」
私は右手の人差し指を二人に向ける。
ユルナ、そっちで自由を掴めることを祈ってるわ。
「黒灯・蝕。」
二人の周りに黒い灯りが揺らめくと囲む。
その勢力をゆっくりと内側に広げ、二人の身体を飲み込んでいった。
「なに・・・それ・・・」
リリエルが気持ち悪そうに見ている。
私も気持ち悪い。
黒い炎は有機物を蝕み、飲み込み終わるまで燃え続ける。
骨が残る通常の火葬と違い、骨まで食らいつくす。
この場に残るより、この場所からすべて解放されたらいいね、という私からユルナへの餞別。
「気持ち悪いよね・・・」
「う、うん。」
やっぱり。
「帰る。」
踵を返して部屋から出ようとしたら、凍った扉が目に入った・・・
「残りはどうすんの?」
「出るときに火を付ける。それだけ。相手にしてられない。それよりあの扉・・・」
と言った瞬間、氷が砕けた。
リリエルが親指を立てて笑みを浮かべる。
たまたまでしょ。
一階の扉を背に、中に人差し指を向けて動かす。
このお城は、黒鷲の根城。
だったら、遠慮はいらない。
「十重・焔。」
城内で連続して吹き上げる火柱を背に、私とリリエルはゲールデリク城から立ち去った。
二章 了
0
あなたにおすすめの小説
忘れ去られた婚約者
かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』
甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。
レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。
恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。
サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!?
※他のサイトにも掲載しています。
毎日更新です。
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う
遊鷹太
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。
これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる