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五章 在処ニ捧グ這生ノ炎
47.決別
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準備が終わりウリカの部屋に行くと、既に待っていた。
「行こうか。」
「うん。」
本当に、闘う前とは違うなぁ。
もともとこういう性格だったのかな。
わからないけれど。
「どうしたの?」
部屋を出ようとした私の、服の腰当たりをウリカが引っ張った。
「おねぇ・・・って呼んでいい?」
「おねぇ?」
「お姉さん、だから。」
!?
いいかも。
「もちろん、いいよ。」
言うと、ウリカが笑顔になった。
かわいい。
人殺ししか出来ない私が、こんな思いをしていいのだろうか。
でも、この思いはエルメラが、リリエルが、マリアが、エウスがくれたもの。
だから、ウリカにもしてあげたい。
ウリカは、私が守る。
お母さんはどんな気持ちで私を守ってくれたのだろう。
それはわからない。
でも、今は私も誰かを守りたいと思っている。
そう思えるのは、きっとお母さんが最期まで私を守ってくれたからかもしれない。
「お待たせ。」
屋敷の外に出ると、既にリリエルが待っていた。
「どこ行こうか。決めてなかったけど。」
「そりゃもちろん。」
ウリカと出かけたいと思っただけだから、考えてなかった。
が、リリエルは決まっているのかニヤニヤしている。
「旅に出るんだから新しい服を調達しないとねー。交易都市なだけあって、お店も結構あるよ。」
・・・
そう来たか。
私とウリカはリリエルの着せ替え人形じゃないんだけどな。
嬉々として服を選んでは試着させるリリエルを見ながら思う。
ただ、楽しそうなので受け入れてはいるけど。
暫く、リリエルとも会えなくなるし。
しかし、またこんな足を出した服を・・・
「見立て通り、アリアちゃんもウリカちゃんも可愛い!」
と言ってリリエルが親指を立てる。
この娘は本当になんなのかしら。
私はもう少し動きやすい・・・
いや、動きやすくはあるんだけど、機能的な服が欲しいわ。
と思って隣を見ると、ウリカが嬉しそうに私を見上げた。
まぁ、いいか。
「リリエルは買わないの?」
「とっくに欲しい物は買ったもん。」
そうですか。
時間はいくらでもあったものね。
「よし、次はご飯行こう!美味しいお店見つけといたからね。」
「もうそんな時間か。」
「ワタシ、お腹空いたー。」
と言ってウリカが両手をお腹に当てる。
それを見ると、嬉しくなった。
殺し合いまでしたのに、慣れてくれて来ているウリカに。
「誰のお墓?」
食事後、私の我儘で共同墓地に来ている。
場所は、屋敷の人に確認していた。
何故そんな思いになったかは、私もわからない。
私をあんな目に追いやって、殺した奴の墓に来るとは、私自身夢にも思わなかった。
「デダリオ。」
「はぁっ!?」
リリエルの反応はわかる。
「私も意味不明なんだけどね。」
「なんで、来たの?ワタシにもう用はないんだけど。」
ウリカはあまりいい顔をしていない。
でも、嫌な思いをさせたかったわけじゃない。
「ウリカが大切だった。それだけは、知っておいて欲しかったから。」
「は?こいつが?」
ウリカは墓標に向かって冷めた目を向ける。
「ウソ。」
そういうウリカに、私はデダリオからの手紙を渡した。
「最後の方。」
受け取ったウリカが渋々読み始める。
「あと、私も言いたい事があって。」
読んだウリカの肩に手を回して抱き寄せる。
「ウリカは私がもらった。自分が生きるための駆け引きに使ったお前はずっと後悔し続けろ、馬鹿。」
これでいい。
あんたの願いを聞いてやるわけじゃない。
私が、私のためにウリカの居場所になる。
それだけ、言いたかった。
「おねぇ・・・ありがとう・・・」
ウリカは私に抱き着いて、泣きながら言った。
「アリアちゃん、変わったねぇ。」
と言って、リリエルが隣で遠い目をする。
たまに思うけど、お前は何歳なんだ?って思わされる。
「そうだね。みんなのおかげ。」
「そうか、感謝しろ。」
するけど、言われるとなんかなぁ。
「デダリオにとっても、ウリカの存在は大切だった。それだけは知っておいて欲しくて。」
「うん。」
「馬鹿だけど。」
「うん。」
「場数が違うとか豪語してたよね、でもバカじゃん。」
リリエルが追い打ちをかける。
言ってたなぁ、そういえば、そんな事。
これだけ言っても、デダリオはもう何も反応できないけどね。
それでも、ウリカと共に決別はしておきたいと思って来たんだ。
もう、来る事も無いだろう。
「目的地はゲイオーブ大森林だ。塞壁の町トルヘンは知っているか?」
夕食時、グエンが聞いてくる。
私たちが明日から向かう場所の話しだ。
「うん。」
「そこから少し北東に進むとその森林がある。」
森の中なんだ。
「じゃぁ、トルヘンに向かうの?」
「いや、現状ではメイオーリア国内を通るのは避けたい。そもそも国境をすんなり通れるか自体不明だしな。」
「そうじゃな、狸の邪魔が入るやもしれぬ。」
あぁ、そっか。
「ここから北に向かって、ランフェルツからバルグセッツに入る。」
え・・・
「北って、山だよね。」
「そうだ。心配しなくても山道はちゃんとある。来るとき、俺も通ってきたしな。」
なら良かった。
まぁ、道が無くても私だけならどうとでもなるんだけど。
そうじゃないし。
「どれくらかかるの?」
「国境を越えるだけなら一週間もあれば行けるだろう。」
おぉ、メイオーリアの国境より全然近い。
半分くらいか。
「そこから大森林までは、急いでも二週間だな。」
それくらいなら、慣れているからいい。
と思ってウリカを見る。
「大丈夫。ワタシ、体力あるほうだし。」
だよね。
勝手にそう思っていただけだけど。
「お姉さんの心配もして欲しいなぁ。」
マリアが頬を膨らませて首を傾げて私を見る。
どうして欲しいの・・・
マリアには感謝してもしきれない。
私の傷跡もそうだけど、一番はウリカの事。
私がやった事なのに、それでも治してくれた。
「マリアは大丈夫?まだ疲れが取れてないんじゃない?」
と聞いてみたら、笑顔になった。
構って欲しいだけだろうか。
「まだ疲労感は残っているけれど、大丈夫よ。いざとなったら、アリアちゃんが守ってくれるでしょ?」
「もちろん。」
「心配するな、俺も居るからな。」
グエンが会話に混ざった途端、マリアから笑顔が消えた。
「おい!なんで俺の場合はそうなんだよ。」
「当たり前でしょ。頼まなくてもちゃんと三人守りなさい。」
「増えてんぞ・・・」
もともとウリカについては当てにしてないから。
「心配しなくてもウリカとマリアは守るわよ。」
「ワタシも。おねぇとマリアは守ってあげるー。」
と言ったら、グエンがマリアを見る。
「自分の身は自分で守るものよ。」
グエンの顔が引き攣った。
「いや、危なくなったら助けようとかねぇの?」
「しょーがない、あたしが守ってあげるよ。氷で包んで。」
リリエルが右手を開いたり握ったりしてみせる。
それは最後に潰すやつじゃ・・・
「やめろ!ってか居ねぇだろうが。」
「グエンらが旅立った後は、余も準備し出発する。」
私たちが戻った頃には、領が取り戻せているといいけれど。
「あたしは何すればいいの?」
「どのみち、王城までは何もする事は無い。」
内部で戦闘とか起きなければいいけど。
「えぇ、つまんない。」
「心配せずとも、狸が逃げようとしたら足を凍らせてやれ。反旗を翻すやもしれぬしな。」
「それならまかせて。」
「ローデに情報を流し、玉座の前で糾弾してやるのじゃ。」
「面白そうじゃん。」
「それ、俺らが国境越えるまでに終わんのか?」
「単純に距離があるからのぅ。何とも言えん。その時は国境で待っておれ。」
そうするしかなさそうね。
「まぁそれは構わん。どのみち、マリアの魔法も時間がかかるだろうからな。」
という事は、例外無く酷い状態なのでしょうね。
やった奴等、近くにいないといいけど。
って、グエンが助け出したんだからそれは無いか。
「明日もあるし、今日は早めに寝るか。」
食べ終わったグエンが早々に席を立って言った。
久しぶりの長旅。
私も部屋に行こうかな。
「私も。」
と言って席を立つと、ウリカも一緒に立って部屋を出た。
「おねぇ、部屋行っていい?一緒に寝る。」
「いいよ。その前に、お風呂行こうか。」
「うん。」
「その傷・・・ワタシが・・・」
お風呂に入ると、ウリカが私のお腹を見て悲しそうな顔をした。
そういえば、ウリカに抉られたんだっけ。
なんか、随分前の事の様に感じる。
「気にしない。」
私はウリカの頭を撫でる。
「でも・・・」
「あの時は、お互い自分の事で譲れないから闘った。それだけの事。」
って、私が言っていいのかな。
「今は、違うよね?」
「うん。」
「じゃ、この話しは終わり。」
頷いたウリカとお風呂に入った後、部屋に行って寝台に横になった。
「今日、楽しかった。」
「私もだよ。」
腕の中で、ウリカが嬉しそうに言う。
それを見たら、安堵の気持ちが込み上げてくる。
多分、これで良かったんだって。
「これからも、こんな日があるんだよね?無くならないよね?」
売られたあの日から、きっと不安だったんだ。
攻撃的だったのは、その裏返しだろうか。
世界が変わって、不安で不安で恐かったんだね。
「そうだよ。今日は始まり、もっともっと楽しもうね。」
それは、自分に言い聞かせているようだった。
私も、きっと同じだから。
「嬉しい。」
ウリカがそう言って少し経つと、寝息が聞こえて来た。
目覚めたばかりなのに、連れ回したから疲れたのかもしれない。
復讐がすべてだった時、寝なくても平気だったのに、今は当たり前のように寝ている。
少しは、心が楽になったからだろうか。
だったら、いいな。
「行こうか。」
「うん。」
本当に、闘う前とは違うなぁ。
もともとこういう性格だったのかな。
わからないけれど。
「どうしたの?」
部屋を出ようとした私の、服の腰当たりをウリカが引っ張った。
「おねぇ・・・って呼んでいい?」
「おねぇ?」
「お姉さん、だから。」
!?
いいかも。
「もちろん、いいよ。」
言うと、ウリカが笑顔になった。
かわいい。
人殺ししか出来ない私が、こんな思いをしていいのだろうか。
でも、この思いはエルメラが、リリエルが、マリアが、エウスがくれたもの。
だから、ウリカにもしてあげたい。
ウリカは、私が守る。
お母さんはどんな気持ちで私を守ってくれたのだろう。
それはわからない。
でも、今は私も誰かを守りたいと思っている。
そう思えるのは、きっとお母さんが最期まで私を守ってくれたからかもしれない。
「お待たせ。」
屋敷の外に出ると、既にリリエルが待っていた。
「どこ行こうか。決めてなかったけど。」
「そりゃもちろん。」
ウリカと出かけたいと思っただけだから、考えてなかった。
が、リリエルは決まっているのかニヤニヤしている。
「旅に出るんだから新しい服を調達しないとねー。交易都市なだけあって、お店も結構あるよ。」
・・・
そう来たか。
私とウリカはリリエルの着せ替え人形じゃないんだけどな。
嬉々として服を選んでは試着させるリリエルを見ながら思う。
ただ、楽しそうなので受け入れてはいるけど。
暫く、リリエルとも会えなくなるし。
しかし、またこんな足を出した服を・・・
「見立て通り、アリアちゃんもウリカちゃんも可愛い!」
と言ってリリエルが親指を立てる。
この娘は本当になんなのかしら。
私はもう少し動きやすい・・・
いや、動きやすくはあるんだけど、機能的な服が欲しいわ。
と思って隣を見ると、ウリカが嬉しそうに私を見上げた。
まぁ、いいか。
「リリエルは買わないの?」
「とっくに欲しい物は買ったもん。」
そうですか。
時間はいくらでもあったものね。
「よし、次はご飯行こう!美味しいお店見つけといたからね。」
「もうそんな時間か。」
「ワタシ、お腹空いたー。」
と言ってウリカが両手をお腹に当てる。
それを見ると、嬉しくなった。
殺し合いまでしたのに、慣れてくれて来ているウリカに。
「誰のお墓?」
食事後、私の我儘で共同墓地に来ている。
場所は、屋敷の人に確認していた。
何故そんな思いになったかは、私もわからない。
私をあんな目に追いやって、殺した奴の墓に来るとは、私自身夢にも思わなかった。
「デダリオ。」
「はぁっ!?」
リリエルの反応はわかる。
「私も意味不明なんだけどね。」
「なんで、来たの?ワタシにもう用はないんだけど。」
ウリカはあまりいい顔をしていない。
でも、嫌な思いをさせたかったわけじゃない。
「ウリカが大切だった。それだけは、知っておいて欲しかったから。」
「は?こいつが?」
ウリカは墓標に向かって冷めた目を向ける。
「ウソ。」
そういうウリカに、私はデダリオからの手紙を渡した。
「最後の方。」
受け取ったウリカが渋々読み始める。
「あと、私も言いたい事があって。」
読んだウリカの肩に手を回して抱き寄せる。
「ウリカは私がもらった。自分が生きるための駆け引きに使ったお前はずっと後悔し続けろ、馬鹿。」
これでいい。
あんたの願いを聞いてやるわけじゃない。
私が、私のためにウリカの居場所になる。
それだけ、言いたかった。
「おねぇ・・・ありがとう・・・」
ウリカは私に抱き着いて、泣きながら言った。
「アリアちゃん、変わったねぇ。」
と言って、リリエルが隣で遠い目をする。
たまに思うけど、お前は何歳なんだ?って思わされる。
「そうだね。みんなのおかげ。」
「そうか、感謝しろ。」
するけど、言われるとなんかなぁ。
「デダリオにとっても、ウリカの存在は大切だった。それだけは知っておいて欲しくて。」
「うん。」
「馬鹿だけど。」
「うん。」
「場数が違うとか豪語してたよね、でもバカじゃん。」
リリエルが追い打ちをかける。
言ってたなぁ、そういえば、そんな事。
これだけ言っても、デダリオはもう何も反応できないけどね。
それでも、ウリカと共に決別はしておきたいと思って来たんだ。
もう、来る事も無いだろう。
「目的地はゲイオーブ大森林だ。塞壁の町トルヘンは知っているか?」
夕食時、グエンが聞いてくる。
私たちが明日から向かう場所の話しだ。
「うん。」
「そこから少し北東に進むとその森林がある。」
森の中なんだ。
「じゃぁ、トルヘンに向かうの?」
「いや、現状ではメイオーリア国内を通るのは避けたい。そもそも国境をすんなり通れるか自体不明だしな。」
「そうじゃな、狸の邪魔が入るやもしれぬ。」
あぁ、そっか。
「ここから北に向かって、ランフェルツからバルグセッツに入る。」
え・・・
「北って、山だよね。」
「そうだ。心配しなくても山道はちゃんとある。来るとき、俺も通ってきたしな。」
なら良かった。
まぁ、道が無くても私だけならどうとでもなるんだけど。
そうじゃないし。
「どれくらかかるの?」
「国境を越えるだけなら一週間もあれば行けるだろう。」
おぉ、メイオーリアの国境より全然近い。
半分くらいか。
「そこから大森林までは、急いでも二週間だな。」
それくらいなら、慣れているからいい。
と思ってウリカを見る。
「大丈夫。ワタシ、体力あるほうだし。」
だよね。
勝手にそう思っていただけだけど。
「お姉さんの心配もして欲しいなぁ。」
マリアが頬を膨らませて首を傾げて私を見る。
どうして欲しいの・・・
マリアには感謝してもしきれない。
私の傷跡もそうだけど、一番はウリカの事。
私がやった事なのに、それでも治してくれた。
「マリアは大丈夫?まだ疲れが取れてないんじゃない?」
と聞いてみたら、笑顔になった。
構って欲しいだけだろうか。
「まだ疲労感は残っているけれど、大丈夫よ。いざとなったら、アリアちゃんが守ってくれるでしょ?」
「もちろん。」
「心配するな、俺も居るからな。」
グエンが会話に混ざった途端、マリアから笑顔が消えた。
「おい!なんで俺の場合はそうなんだよ。」
「当たり前でしょ。頼まなくてもちゃんと三人守りなさい。」
「増えてんぞ・・・」
もともとウリカについては当てにしてないから。
「心配しなくてもウリカとマリアは守るわよ。」
「ワタシも。おねぇとマリアは守ってあげるー。」
と言ったら、グエンがマリアを見る。
「自分の身は自分で守るものよ。」
グエンの顔が引き攣った。
「いや、危なくなったら助けようとかねぇの?」
「しょーがない、あたしが守ってあげるよ。氷で包んで。」
リリエルが右手を開いたり握ったりしてみせる。
それは最後に潰すやつじゃ・・・
「やめろ!ってか居ねぇだろうが。」
「グエンらが旅立った後は、余も準備し出発する。」
私たちが戻った頃には、領が取り戻せているといいけれど。
「あたしは何すればいいの?」
「どのみち、王城までは何もする事は無い。」
内部で戦闘とか起きなければいいけど。
「えぇ、つまんない。」
「心配せずとも、狸が逃げようとしたら足を凍らせてやれ。反旗を翻すやもしれぬしな。」
「それならまかせて。」
「ローデに情報を流し、玉座の前で糾弾してやるのじゃ。」
「面白そうじゃん。」
「それ、俺らが国境越えるまでに終わんのか?」
「単純に距離があるからのぅ。何とも言えん。その時は国境で待っておれ。」
そうするしかなさそうね。
「まぁそれは構わん。どのみち、マリアの魔法も時間がかかるだろうからな。」
という事は、例外無く酷い状態なのでしょうね。
やった奴等、近くにいないといいけど。
って、グエンが助け出したんだからそれは無いか。
「明日もあるし、今日は早めに寝るか。」
食べ終わったグエンが早々に席を立って言った。
久しぶりの長旅。
私も部屋に行こうかな。
「私も。」
と言って席を立つと、ウリカも一緒に立って部屋を出た。
「おねぇ、部屋行っていい?一緒に寝る。」
「いいよ。その前に、お風呂行こうか。」
「うん。」
「その傷・・・ワタシが・・・」
お風呂に入ると、ウリカが私のお腹を見て悲しそうな顔をした。
そういえば、ウリカに抉られたんだっけ。
なんか、随分前の事の様に感じる。
「気にしない。」
私はウリカの頭を撫でる。
「でも・・・」
「あの時は、お互い自分の事で譲れないから闘った。それだけの事。」
って、私が言っていいのかな。
「今は、違うよね?」
「うん。」
「じゃ、この話しは終わり。」
頷いたウリカとお風呂に入った後、部屋に行って寝台に横になった。
「今日、楽しかった。」
「私もだよ。」
腕の中で、ウリカが嬉しそうに言う。
それを見たら、安堵の気持ちが込み上げてくる。
多分、これで良かったんだって。
「これからも、こんな日があるんだよね?無くならないよね?」
売られたあの日から、きっと不安だったんだ。
攻撃的だったのは、その裏返しだろうか。
世界が変わって、不安で不安で恐かったんだね。
「そうだよ。今日は始まり、もっともっと楽しもうね。」
それは、自分に言い聞かせているようだった。
私も、きっと同じだから。
「嬉しい。」
ウリカがそう言って少し経つと、寝息が聞こえて来た。
目覚めたばかりなのに、連れ回したから疲れたのかもしれない。
復讐がすべてだった時、寝なくても平気だったのに、今は当たり前のように寝ている。
少しは、心が楽になったからだろうか。
だったら、いいな。
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