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終章 私ニ捧グ決別ノ滅光
71.心機
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「お母さん、ただいま。」
私は墓石の前に立つと、笑顔で言う。
この日をどんなに待ち望んだ事か。
最初は、復讐からすべてを終わらせ、それを報告するつもりだった。
でも今は違う。
今の私と、これからの私を伝えたい。
私を生かすために守ってくれたと思うから。
「おねぇのお母さんが此処に?」
「まぁ、石だけなんだけどね。」
「そうなんだ。」
「村ぐるみで殺した後、その遺体がどうされたのかまでは追えなくて。」
「ごめん・・・」
「気にしなくて良いよ。それが大事じゃないから。」
大切なのはお母さんに対する私の想い。
「こっちの石は?」
「その村、唯一の生き残りで、私の最初の友達。」
「死んだんだ。」
「ううん、私が殺した。」
ガリウ。
もう少し待ってて。
私の我儘だけど、私はまだ生きていたいから。
「そうなんだ。おねぇもいろいろ大変だったんだね。」
「まぁ、塵なんてそんなもんでしょ。」
「でも、ワタシに手を差し出してくれた事、ホントに嬉しかった。今が一番幸せだよ。」
「そう。私もウリカに気持ちを伝えられて、受け止めてくれて嬉しいよ。」
言って頭を撫でると、ウリカは微笑んでくれた。
丘の下には、ガリウの居た村があった。
煤けた石等はまだ残っているが、焼けた木は風化してほとんどわからない。
というよりは、生い茂った雑草がほとんどを隠してしまっている。
もう、この場所に人が住んでいたなんてわからないくらいに。
「これからが始まりね。」
「ウン、楽しみ。」
先ずは、この国を南下してスォーウェル地方へ。
新しい土地を、ウリカと旅する。
「じゃ、行ってくるね。いつ戻るかわからないけど。」
私は言うと、鞄から短刀の鞘を取り出してお墓の前に置く。
長年愛用した短刀は、女神の手向けにくれてやった。
流されただけだけど。
この鞘も、もう必要ない。
「新しいの買う?」
「気が向いたらね。」
買う時は復讐のためじゃない、自分のために。
眩しいくらいの朝日は、まるですべてを洗い流してくれるようだった。
復讐に使った短刀もこれでお別れ。
右の肩甲骨付近にあった烙印も、消えかけている。
もう黒翼を含めたあの力も無くなった。
魔法は使えるけれど、普通の魔法使い程度。
復讐への執着も、女神の力も、使った道具も、すべてここで最後。
後悔も慙愧も無い。
本当に、最後にすべて流してくれるような陽の光。
私は、やっと新しい道に足を踏み入れた気がした。
ウリカもその影響か、身体が大きくなる事は出来なくなった。
大の男を殴り飛ばすほどの膂力ももう無い。
それでも、私とウリカには闘ってきた記憶が残っている。
身体もそれを覚えている。
身体能力は低下したが、その辺の奴らに負ける気はあまりしない。
だから、二人での旅もそこまでの不安はない。
今までの旅に比べれば、どうって事ない。
新しい場所、新しい出来事、二人で楽しめると思う。
「行こうか。」
「ウン。」
女神を殺して戻った時の悪天は、あれから数日で落ち着いた。
だから、女神が死んだ影響だったのだろうという事にした。
それは、あの場所にいた私たちだけの話し。
女神の居場所が崩落した事により、その上にあった王都の城下町の一部が沈下した。
真上が王城ってわけではなかったみたい。
幸い死人は出なかったものの、重軽傷含めかなりの数の人が被災したのは悪い事をしたと思う。
もちろん、通路にあたる部分の地上にも影響はあった。
道路や畑が陥没したり、何もない草原が沈下したりと影響は少なくない。
勝手に地下を造った女神の所為って事にした。
エルメラはそのまま領に残り、エウスを手伝っている。
もちろん、リリエルもだ。
今のところ何処かに行こうというつもりは無いらしい。
王城には行かないのか?
と、リリエルやエウスは言うが、エルメラははぐらかして相手にしようとしない。
フィナも暫くはエルメラデウス領に滞在し、貸借地の管理や今後の動向、拡充の計画等いろいろとやる事になっている。
現地の管理含め、それをカラフが補佐する事になった。
ユーテは何故か、私について来ようとしたので断った。
それを見たリリエルとウリカは笑っていたが、意味がわからない。
先ずは、カラフ同様にフィナを手伝うという事で落ち着いた。
石になっていた男、名をフリオールというらしい。
彼はエルメラデウス領で、お城と領内の雑用係として使われていたが、私がお城を出てからどうなったかは不明。
グエンとオルディヌはバルグセッツに戻った。
といっても、弔いの旅らしい。
オルディヌがレウとメウにちゃんとお礼を言いたいからというのが始まりだった。
グエンは護衛と言い張っていたが、思うところがあるのは明らかだった。
それは自分で解決しなければいけない事だから、誰も突っ込まなかったが。
旅が終わったら、エルメラデウス領に戻る予定らしい。
庭園の一部にエルメラが石碑を建てた。
石碑の周りには囲いを作り、入り口は白の半円状の梁。
薔薇で囲まれた石碑には、マリウテリア・テウベンツィーの名前が彫られている。
当然、烙印を示す名前はもう無い。
気持ちはきっと、一緒にいてくれるよね。
マリアと言えば、黒翼で焼け爛れた背中がもう戻る事は無い。
この痕は、私が一生付き合っていくものだ。
でも、気にはしていない。
この痕がある限り、私は何も忘れないのだから。
大切な人達と出会い、過ごし、闘い、今もどこかで生きている事を。
終
私は墓石の前に立つと、笑顔で言う。
この日をどんなに待ち望んだ事か。
最初は、復讐からすべてを終わらせ、それを報告するつもりだった。
でも今は違う。
今の私と、これからの私を伝えたい。
私を生かすために守ってくれたと思うから。
「おねぇのお母さんが此処に?」
「まぁ、石だけなんだけどね。」
「そうなんだ。」
「村ぐるみで殺した後、その遺体がどうされたのかまでは追えなくて。」
「ごめん・・・」
「気にしなくて良いよ。それが大事じゃないから。」
大切なのはお母さんに対する私の想い。
「こっちの石は?」
「その村、唯一の生き残りで、私の最初の友達。」
「死んだんだ。」
「ううん、私が殺した。」
ガリウ。
もう少し待ってて。
私の我儘だけど、私はまだ生きていたいから。
「そうなんだ。おねぇもいろいろ大変だったんだね。」
「まぁ、塵なんてそんなもんでしょ。」
「でも、ワタシに手を差し出してくれた事、ホントに嬉しかった。今が一番幸せだよ。」
「そう。私もウリカに気持ちを伝えられて、受け止めてくれて嬉しいよ。」
言って頭を撫でると、ウリカは微笑んでくれた。
丘の下には、ガリウの居た村があった。
煤けた石等はまだ残っているが、焼けた木は風化してほとんどわからない。
というよりは、生い茂った雑草がほとんどを隠してしまっている。
もう、この場所に人が住んでいたなんてわからないくらいに。
「これからが始まりね。」
「ウン、楽しみ。」
先ずは、この国を南下してスォーウェル地方へ。
新しい土地を、ウリカと旅する。
「じゃ、行ってくるね。いつ戻るかわからないけど。」
私は言うと、鞄から短刀の鞘を取り出してお墓の前に置く。
長年愛用した短刀は、女神の手向けにくれてやった。
流されただけだけど。
この鞘も、もう必要ない。
「新しいの買う?」
「気が向いたらね。」
買う時は復讐のためじゃない、自分のために。
眩しいくらいの朝日は、まるですべてを洗い流してくれるようだった。
復讐に使った短刀もこれでお別れ。
右の肩甲骨付近にあった烙印も、消えかけている。
もう黒翼を含めたあの力も無くなった。
魔法は使えるけれど、普通の魔法使い程度。
復讐への執着も、女神の力も、使った道具も、すべてここで最後。
後悔も慙愧も無い。
本当に、最後にすべて流してくれるような陽の光。
私は、やっと新しい道に足を踏み入れた気がした。
ウリカもその影響か、身体が大きくなる事は出来なくなった。
大の男を殴り飛ばすほどの膂力ももう無い。
それでも、私とウリカには闘ってきた記憶が残っている。
身体もそれを覚えている。
身体能力は低下したが、その辺の奴らに負ける気はあまりしない。
だから、二人での旅もそこまでの不安はない。
今までの旅に比べれば、どうって事ない。
新しい場所、新しい出来事、二人で楽しめると思う。
「行こうか。」
「ウン。」
女神を殺して戻った時の悪天は、あれから数日で落ち着いた。
だから、女神が死んだ影響だったのだろうという事にした。
それは、あの場所にいた私たちだけの話し。
女神の居場所が崩落した事により、その上にあった王都の城下町の一部が沈下した。
真上が王城ってわけではなかったみたい。
幸い死人は出なかったものの、重軽傷含めかなりの数の人が被災したのは悪い事をしたと思う。
もちろん、通路にあたる部分の地上にも影響はあった。
道路や畑が陥没したり、何もない草原が沈下したりと影響は少なくない。
勝手に地下を造った女神の所為って事にした。
エルメラはそのまま領に残り、エウスを手伝っている。
もちろん、リリエルもだ。
今のところ何処かに行こうというつもりは無いらしい。
王城には行かないのか?
と、リリエルやエウスは言うが、エルメラははぐらかして相手にしようとしない。
フィナも暫くはエルメラデウス領に滞在し、貸借地の管理や今後の動向、拡充の計画等いろいろとやる事になっている。
現地の管理含め、それをカラフが補佐する事になった。
ユーテは何故か、私について来ようとしたので断った。
それを見たリリエルとウリカは笑っていたが、意味がわからない。
先ずは、カラフ同様にフィナを手伝うという事で落ち着いた。
石になっていた男、名をフリオールというらしい。
彼はエルメラデウス領で、お城と領内の雑用係として使われていたが、私がお城を出てからどうなったかは不明。
グエンとオルディヌはバルグセッツに戻った。
といっても、弔いの旅らしい。
オルディヌがレウとメウにちゃんとお礼を言いたいからというのが始まりだった。
グエンは護衛と言い張っていたが、思うところがあるのは明らかだった。
それは自分で解決しなければいけない事だから、誰も突っ込まなかったが。
旅が終わったら、エルメラデウス領に戻る予定らしい。
庭園の一部にエルメラが石碑を建てた。
石碑の周りには囲いを作り、入り口は白の半円状の梁。
薔薇で囲まれた石碑には、マリウテリア・テウベンツィーの名前が彫られている。
当然、烙印を示す名前はもう無い。
気持ちはきっと、一緒にいてくれるよね。
マリアと言えば、黒翼で焼け爛れた背中がもう戻る事は無い。
この痕は、私が一生付き合っていくものだ。
でも、気にはしていない。
この痕がある限り、私は何も忘れないのだから。
大切な人達と出会い、過ごし、闘い、今もどこかで生きている事を。
終
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