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80.我儘の代償、嫌気
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中島が意識不明になってからログインしたDEWSは、いつもと違う雰囲気に感じた。まるで、世界が変わったようにすら思える。
自分の環境の変化は、世界すら変わったように感じるのは錯覚なんだろうが、今までと同じ気持ちでゲームが出来ないのは事実だ。
その点で言えば、世界は変わったと言えるのかもしれない。それは俺自身の感覚というか、認知というか、それだけの問題なんだが。
「遅いですわ。」
そんな事を考えながら、DEWS内の景色に目を向けていたらアヤカが近付いて来た。口振りからすれば、先にログインしていたのだろう。
そんな事の確認すらしていなかった。
「ちょっと、いろいろ考えててな。」
何故そんな以外そうな顔をする・・・
実際のところ、麻璃亜とメッセージをしていたんだが。まさか全員分用意してくれるなんて思いもしなかった。という事は、こっちのメンバーの性格とか全部見抜かれてんじゃないか?とさえ思わされた。
「マリアは・・・まだですわね。」
「そうだな。」
麻璃亜との話しで、ゲーム内で質問された事に対し、それとなく答えていくように示し合わせてある。話しを振るのはアヤカからの方が無難だろう。
「で、月下の説得には失敗したのでわね。」
「まぁ、予想通りな・・・」
ログインしているメンバーを確認して言ってきたので、応えておく。むしろ俺よりも拘ってたんじゃないかって勢いだったからな。
「むしろやる気満々だったよ。」
「兄妹揃って物好きですわね。」
お前に言われたくねぇよ。
「姫も続けるってさ。」
「はい、このまま終わるのは納得できませんので。」
合流してきた二人が言う。アヤカの言葉じゃないが、揃いも揃って物好きな事だ。それでも、ELINEAに対抗可能な装備は全員分用意してくれるらしいから、その点は救いだと思えた。
何も出来ずに遭遇したら逃げるだけなんて、精神的にも疲れるよな。
だけど、そこまでしてゲームにログインするという事は、納得できないとかそれぞれの思いがあってなのだろう。
「マリアはまだなんだね。来ないのかな?」
それは無い筈なんだが・・・
「今ELINEAに対抗出来るのは、アリシアとマリアだけですからね。居ない事が不安になるなんて思いませんでした。」
なるほど、姫の言う通りだな。確かに言われてみればそう思って当然か。俺は話しをしているから、来ることは分かっているが、他のメンバーは分からないんだ。分からないから、不安が出てきて当然だよな。
まぁ、俺もログインしてくるまでは、ELINEAが今襲って来たらどうしようという不安はあるんだが。
「呼びまして?」
姫が名前を出してからちょっとして、アリシアの声が聞こえる。アリシアは会話の内容が聞こえていたのだろう。だが、その声には覇気が感じられなかった。
・・・
声の聞こえた方を見ると、エメラの肩に手を掛けて、辛そうに歩いて来るアリシアが見えた。
おいおい・・・
それってELINEAが来ても戦えないんじゃないか?
「大丈夫か?体調でも崩したのか?」
ELINEAに関しては逃げればいいだけだが、今はアリシアの方が心配だ。ELINEAの事があって負担になってなければいいが。そう思って声を掛けたのだが、アリシアは恥ずかしそうに目を逸らした。
「心配無用ですわ。」
と言われても、明らかに普通に動けていないじゃないか?
「いや、無理に出歩かなくても、休んでいていいんだぞ。こっちはこっちで何とかするし、ELINEAが出たら逃げるだけだ。」
そう言うが、アリシアは横を向いたまま軽く首を左右に振った。肩に手を置かれているエメラは、心配している素振りが無い事から、おそらく風邪や病気の類ではないのかもしれない。
むしろ、笑いを堪えているようにすら見えた。
「ただのき・・・筋肉痛、ですわ。」
「は?」
思わず間抜けな声を出しちまったじゃねぇか。筋肉痛?そんなの今まで聞いた事もないぞ。とはいえ、生身なんだからなるものはなるだろうが、何故今このタイミングなんだ。
「新しい服は、身体機能を超えた動きが可能でしたわ。ですが、身体の方への負担は軽減されない事の証明になりました。」
ほう。
証明された結果が今の状態か。
分かっただけでも良しと言えるが、それだけの負担が掛かるなら尚更、今後はアリシアに頼るのもよくないな。
「気兼ねする必要はありませんわ。わたくしは、わたくしの出来る事をしているだけなのですから。」
気を遣うなと言われても無理なんだが、気持ちだけはもらっておくか。
「ですが、移動の時はユアキスに抱きかかえて欲しいですわ。」
・・・
アリシアが右手をレイピアに伸ばした瞬間、苦痛で顔を歪めて動きを止める。その間にエメラは遠くに避難していた。
なるほど、エメラが笑いを堪えていたのはこの辺の事情なんだな。筋肉痛という理由に対してか、今の事を考えていたのかまでは不明だが。
「今なら畑の肥料にする事も容易いですわね。」
ここで挑発すんな・・・
「あら、ハンデが無いと勝てないと言っている様に聞こえますわ。」
いい加減に・・・
そう思ってアヤカとアリシアを見るが、いつもと雰囲気が違った。挑発をしたアヤカの表情は、いつもの不敵な笑みではなく、何処かつまらなさそうな表情をしていた。応えるアリシアも・・・筋肉痛の痛みに耐えているためよく分からない。
「ふふ、全力でも負ける気がしませんわ。早いところ治してもらわないと、証明できませんわね。」
すんな。
「貴女に言われるまでも無いですわ。」
まぁ、勃発しないだけ良しとしようか。一応、アヤカはアヤカなりに気を遣ったんだろうか?だとしたら素直じゃない気の遣い方だが、今までの事を考えればそれも無理な話しか。
「待たせたようね。」
・・・
やっと来たかと思い、マリアの声のした方を見て硬直した。まさかそれに時間を掛けていたわけじゃないだろうな。
「あ、サンタ衣装いいなぁ。」
「血に染まっても分かり難いですね。」
月下はいつも通りの反応だが、満面の笑みで言う姫の言葉の真意は分からん。
「ふふ、そうね。」
その姫に対しマリアも笑顔で返しているが、いいのかそれで。まぁ、本人がいいなら別にいいが。
「血に染まる前に聞きたい事がありますわ。」
そんな中、アヤカもマリアに近付くと言った。ってか、血から離れろよ!その話しはどうでもいいだろ。早速聞きに行ったかと思って見守っていればこれだ、余計な気苦労が増えただけじゃねぇか。
「分かっているわ、武器の事ね?」
血の事はさておき、考えていた最初の懸念は軽く払拭された。アヤカ自身も武器に関しては気になっていたんだろう。どうやってアヤカから話しを振らせるか、若しくは俺だったとしても自然な流れにとか考えていたのに、ちょっと損した気分になった。
すんなり話しが進んだからいいけどさ。
「そうですわ。このままでは安心して太刀を集める事も出来ません。遭遇しても何も出来ず逃げるだけなど、ストレスでしかありませんわ。」
懸念は武器収集かよ。
まぁ、あのお嬢様が他人の心配なんて、思ってても口には出さないか。ただ、その発言は要らぬ誤解を招いているのは間違いない。笑みこそ浮かべているが、姫の冷めた視線はしっかりとアヤカに向けられていた。
月下に関しては傾倒しているため、逆に頷いたりしているが。
「既に確認済みよ。パーティ全員分用意出来るわ。」
「ホントなの!?」
アヤカよりも先に月下が食いついた。
「本当よ。ただし、無条件で使えるようになるわけじゃないの。それはこれから説明するわ。」
「ELINEAに対抗出来る秘密兵器だって、なんか楽しみだね。」
兵器じゃねぇよ。
「えぇ、私も楽しみです。逃げ回るのは私も性に合わないみたいだから、これでやっと生意気な小娘の頭を爆散させられますね。」
・・・
マリアの話しも聞かずに、小学生男児並みの盛り上がりを見せる月下に対し、笑顔で言う姫の発言は怖い。
「そこまでしなくてもいいんじゃない?」
受け入れてんのかよ。程度の問題じゃなく、俺は内容に問題がある気がするんだが。
「とりあえず話しの続きを聞こうぜ。」
それはいいとして話しが進まん。
「そうですね。」
「簡単に言えば、ノーマルキャラじゃあの武器は使えない。」
俺は聞いているし、もう覚悟は出来ている。だが、他のメンバーはどういう反応を示すだろうか・・・
「秘密兵器を仕込むんじゃ、秘密の改造くらいしょうがないでしょ。」
そこから離れろ。
「つまり、チートキャラになるという事ですね。」
「その通りよ、察しが良くて助かるわ。」
「つまり、ELINEAをどうにかした後は、もうこのキャラは使えないという事ですね。」
「えぇっ!?」
姫の言葉に、頷くマリアに対し驚きの声を上げる月下。そこまでは考えてなかったのだろう。むしろ姫の察しの良さの方が恐ろしい。
「大した問題ではありませんわ。現状の方が異常なのですから。」
おぉ、理解してくれて良かったよ。
「もうゲームを続けるなら初めからになるのよ、キャラを作成するところから。」
念押しでマリアは確認する。月下も姫も当然とばかりに頷く。が、一人首を傾げてこちらを見た奴が居た。
理解していたと思ったのは気のせいだったようだ。
「丁度いい機会です、今度は太刀を全種類揃えながら楽しむだけですわ。」
アヤカは言うと不敵な笑みを浮かべ、俺を見た。
見んな・・・
それはアレだろう、当然手伝いますわよね、という含みだろう。面倒くせぇ。
「あぁ。」
俺は苦笑しながら頷くと、アヤカも満足そうに頷いた。
本当の意味で面倒だと昔なら思っていただろう。そういう思いは、マリアの言う通り相手に伝わるのかもしれない。ただ、今は面倒だけどそれもいいか程度に思っているから、自分の中で意識の変化があったんだろう思えた。
「みんな物好きなのね。」
「同感だ。」
「お前が言うな。」
クスっと笑って言うマリアに同意したら、月下に蹴られる。不毛・・・
しかし、みんな同じ事を言うな。類は友を呼ぶと言うか、そういう人間が集まっただけなんだろうが。
「ただ、今日の今日は無理だから、もう少し待って欲しいと言っていたわ。」
そりゃそうだろうな。魔法やなんかじゃあるまいし、一瞬で改造出来たなら苦労はしない。それ以前にそんな事が可能なら、このゲームはゲームとして成り立たないだろう。
「そうですのね・・・」
残念そうに言うアヤカは、すぐに変わると思っていたようだが。
「そうよ。だから、今日は普通にゲームをするしかないわね。」
「だったらアイツ、殺りに行く?」
言い方・・・
「私は良いですよ、丁度蜂の巣にしたい気分でしたし。」
・・・
俺は行きたくない。なんかもう、イヴェルカとかどうでもいいし、先に進んだ方がいい気がする。実際に目の前に現れたら、似たような気分になるかもしれないが、自分から飛び込む気は無い。
「とりあえず、ソイツは放置で先に進んだ方がいいんじゃないか?」
「私もそう思いますわ。」
「まぁ、どっちでもいいんだけどね。」
「私もです。」
俺同様、二人ともそこまで拘っているわけじゃなかったようだ。
とりあえずクエストを進める事になったので、街の外にみんなで向かう。その後ろを、筋肉痛に耐えながらアリシアが着いて来た。
「いや、無理せずに休んでいた方がいいんじゃないか?」
そう声を掛けてみるが、表情は引きそうにない。
「わたくしが居なければ、ELINEAが現れた時どうしますの?」
責任感なのかどうか不明だが、そこまで拘る事でもない。
「大丈夫だよ、逃げるから。」
ふと逃げると言う言葉を使って思った事がある。アリシアと俺たちでは立ち位置が違うのだから、責任感もあるかもしれないが、アリシアは自分の位置からこの場所にいるのじゃないかと。
「ありがとな。でも、その時の為に今は休んでくれないか。」
アリシアは目を丸くすると、顔を逸らした。
「今更ですわ。ですが、逆に足手まといになる可能性もあるのも確か、ここは申し出を受けておく事にしますわ。」
「あぁ、調子が戻ったらまた頼むよ。」
アリシアは頷くと、その場で姿勢を楽にした。
ログアウトで逃げる事が可能な俺たちと、その場から逃げる事なんて出来ないアリシアでは向き合い方が違うのだろう。
アリシアがELINEAに認識される状況になったら、俺たちみたいにログアウトで逃げるなんて出来はしない。その辺の考えの甘さが、アリシアには無いのだろう。
中島があんな事になったのに、ログアウトで逃げれるから大丈夫だ、俺はそんな温い考えでいるんだなという事実を突き付けられた気分だった。
「どういう事だ・・・」
アリシアを置いて来て街の外に出ると、そこには敵が居た。いや、街の外なのだから居るのは普通なんだが、居る筈の無い敵がいる事が問題だ。
「あれ、どっかのボスだよね?」
「仕様が変わったんですかね・・・」
それにしたって、これは無いんじゃないか?あれは確かLV14のボスだったはずだ。激情のメルアニアはよく覚えている、LV14最後のクエストだったからな。
「みんな、ログアウトの準備を。」
マリアが小太刀を抜きながら緊張感のある声を出した。俺には分からないが、何かを感じ取ったのだろう。
「え、始めたばっかなのに。」
「ここは言われた通りにした方がいいかもですね。」
姫はそう言うと真っ先にシステムデバイスを開く。それに続いて、不満を顔に出しつつも月下も開いた。
姫と月下が消えていく中、俺とアヤカはメルアニアの動向を見守る。どうやらアヤカも俺と同じ考えなのかもしれない。ELINEAとは違うが、このおかしな状況の顛末が気になるのだろう。
「何をしているの?二人も早く!」
メルアニアから目を離さずにマリアが声を大きくした。
迷惑、だとは分かっている。だが、状況は少しでも知りたい。
その時、いつもの如くメルアニアの身体にノイズのようなものが迸った。そして狙われたのはいつもの如く俺。
何で毎回俺なんだよ。
メルアニアの拳を避けながら距離を取ろうとするが、向こうがもう片方の拳を繰り出すほうが早かった。
やっちまった・・・
マリアも急いで向かって来てはいるが、間に合いそうにない。
「だから言ったのですわ。」
メルアニアの拳をレイピアの腹で受け止めながらアリシアが言った。当たる直前、何かが目の前に飛び込んで来たのは分かったのだが。
「ごめん、アリシア・・・」
「いいから早く逃げなさい、わたくしもこれ以上は耐えられそうにありませんわ。」
苦痛に歪む顔で言うアリシアには悪いが、これ以上迷惑を掛けられないので、俺は急いでログアウトした。
危険なのは分かっていた筈だ。だが、自分の我儘で残って状況を少しでも確認しようとした。結果がこれだ。
アリシアに迷惑を掛けてしまった。
もし、アリシアが居なかったら俺はどうなっていたか分からない。
本当に、自分に嫌気がさす・・・
-CAZH社 自社データセンター 喫煙室-
「ちょっと転送プラグラムの一部を流用して組み込んでみたんだが、予想通りの結果だったなー。」
「うん、良く分からないけど。」
得意げにプレッツェルを振って言う禍月だったが、黒咲は言っている内容が理解出来ずにそう言うと紫煙を吐き出した。
「キャラ自体の特性を変更したから、特定の装備に依存する必要は無くなったわけだ。便利だろー。」
「確かに、武器を持ち替える必要がなくなったのは楽だね。私は短刀の方が使い慣れているからそっちを使うと思うけど。」
「持ち替える云々の前にな、太刀やらハルバードやら用意する方が手間だ。じーさんのコネを使えば銃も手に入れる事は可能だが、ゲーム内とはいえ学生にそんなおもちゃを持たせるわけにはいかんだろー。」
「確かに。私は仕事で使うから違和感はないけど。あ、でも銃を使うメンバーは居ないよ?」
「・・・言わんでいい。」
黒咲は中島の事を言ったのだが、それは敢えて口にする必要は無いと禍月は目を細めた。
「うん、そうだね。」
「そうだ、銃で思い出した。」
禍月はそう言うとプレッツェルを銜えて黒咲を見る。中島の事を口にして多少消沈していた黒咲だが、その反応に首を傾げた。
「欠員補充に圀光のおっさんを連れていけ。」
「え、いや、突然そんな事を言われても。」
突然の話しに黒咲は困惑した。
「話しは付けてある。おっさんがユアキスにパーティに入れてくれと言っても胡散臭いだけだろー?だからまりあ、お前がおっさんと合流して連れて行けー。」
「それは、構わないけど。」
話しの展開が急すぎる事に黒咲は戸惑う。禍月の事だから事情は説明していると思っても、現状圀光が入る事が得策なのかどうかまでは判断出来ずに。
「ELINEAの事も装備の事も問題ない。問題があるとすればおっさんってところだな。」
「・・・おっさんはともかく分かった。晶社くんに言っておくね。」
「うむ。まぁそっちは問題無いだろう。」
禍月は言うと、顎に指を当てて険しい表情をする。黒咲はその行動にまたも首を傾げた。
「いや、後はあたしの問題だから気にするな。」
「と言われてもねぇ。」
「装備に関しては飽くまで補助的なものだ、それ以上にはならん。進化と言っていいのかは不明だが、ELINEAの改変速度には人間じゃ追い付けない。決着を付けるなら早い段階じゃないといけないんだがなー・・・」
「私たちの装備じゃ、攻撃に対応は出来るけど、それ以上の事は無理って事よね?」
「そうだー。」
それ以上の事は分からないと、黒咲は天井に顔を向け紫煙を吐き出す。禍月はそれを見ると腕を組んで溜息を吐くように肯定した。
「とりあえずまりあは、ELINEAと遭遇、戦闘をしてくれればいい。」
「うん、分かった。神出鬼没だけどね。」
「いやぁ、向こうから勝手に来るぞー。」
ニヤリとして言う禍月を見て、何故来ると言い切れるのか黒咲は分からずに、また首を傾げた。
自分の環境の変化は、世界すら変わったように感じるのは錯覚なんだろうが、今までと同じ気持ちでゲームが出来ないのは事実だ。
その点で言えば、世界は変わったと言えるのかもしれない。それは俺自身の感覚というか、認知というか、それだけの問題なんだが。
「遅いですわ。」
そんな事を考えながら、DEWS内の景色に目を向けていたらアヤカが近付いて来た。口振りからすれば、先にログインしていたのだろう。
そんな事の確認すらしていなかった。
「ちょっと、いろいろ考えててな。」
何故そんな以外そうな顔をする・・・
実際のところ、麻璃亜とメッセージをしていたんだが。まさか全員分用意してくれるなんて思いもしなかった。という事は、こっちのメンバーの性格とか全部見抜かれてんじゃないか?とさえ思わされた。
「マリアは・・・まだですわね。」
「そうだな。」
麻璃亜との話しで、ゲーム内で質問された事に対し、それとなく答えていくように示し合わせてある。話しを振るのはアヤカからの方が無難だろう。
「で、月下の説得には失敗したのでわね。」
「まぁ、予想通りな・・・」
ログインしているメンバーを確認して言ってきたので、応えておく。むしろ俺よりも拘ってたんじゃないかって勢いだったからな。
「むしろやる気満々だったよ。」
「兄妹揃って物好きですわね。」
お前に言われたくねぇよ。
「姫も続けるってさ。」
「はい、このまま終わるのは納得できませんので。」
合流してきた二人が言う。アヤカの言葉じゃないが、揃いも揃って物好きな事だ。それでも、ELINEAに対抗可能な装備は全員分用意してくれるらしいから、その点は救いだと思えた。
何も出来ずに遭遇したら逃げるだけなんて、精神的にも疲れるよな。
だけど、そこまでしてゲームにログインするという事は、納得できないとかそれぞれの思いがあってなのだろう。
「マリアはまだなんだね。来ないのかな?」
それは無い筈なんだが・・・
「今ELINEAに対抗出来るのは、アリシアとマリアだけですからね。居ない事が不安になるなんて思いませんでした。」
なるほど、姫の言う通りだな。確かに言われてみればそう思って当然か。俺は話しをしているから、来ることは分かっているが、他のメンバーは分からないんだ。分からないから、不安が出てきて当然だよな。
まぁ、俺もログインしてくるまでは、ELINEAが今襲って来たらどうしようという不安はあるんだが。
「呼びまして?」
姫が名前を出してからちょっとして、アリシアの声が聞こえる。アリシアは会話の内容が聞こえていたのだろう。だが、その声には覇気が感じられなかった。
・・・
声の聞こえた方を見ると、エメラの肩に手を掛けて、辛そうに歩いて来るアリシアが見えた。
おいおい・・・
それってELINEAが来ても戦えないんじゃないか?
「大丈夫か?体調でも崩したのか?」
ELINEAに関しては逃げればいいだけだが、今はアリシアの方が心配だ。ELINEAの事があって負担になってなければいいが。そう思って声を掛けたのだが、アリシアは恥ずかしそうに目を逸らした。
「心配無用ですわ。」
と言われても、明らかに普通に動けていないじゃないか?
「いや、無理に出歩かなくても、休んでいていいんだぞ。こっちはこっちで何とかするし、ELINEAが出たら逃げるだけだ。」
そう言うが、アリシアは横を向いたまま軽く首を左右に振った。肩に手を置かれているエメラは、心配している素振りが無い事から、おそらく風邪や病気の類ではないのかもしれない。
むしろ、笑いを堪えているようにすら見えた。
「ただのき・・・筋肉痛、ですわ。」
「は?」
思わず間抜けな声を出しちまったじゃねぇか。筋肉痛?そんなの今まで聞いた事もないぞ。とはいえ、生身なんだからなるものはなるだろうが、何故今このタイミングなんだ。
「新しい服は、身体機能を超えた動きが可能でしたわ。ですが、身体の方への負担は軽減されない事の証明になりました。」
ほう。
証明された結果が今の状態か。
分かっただけでも良しと言えるが、それだけの負担が掛かるなら尚更、今後はアリシアに頼るのもよくないな。
「気兼ねする必要はありませんわ。わたくしは、わたくしの出来る事をしているだけなのですから。」
気を遣うなと言われても無理なんだが、気持ちだけはもらっておくか。
「ですが、移動の時はユアキスに抱きかかえて欲しいですわ。」
・・・
アリシアが右手をレイピアに伸ばした瞬間、苦痛で顔を歪めて動きを止める。その間にエメラは遠くに避難していた。
なるほど、エメラが笑いを堪えていたのはこの辺の事情なんだな。筋肉痛という理由に対してか、今の事を考えていたのかまでは不明だが。
「今なら畑の肥料にする事も容易いですわね。」
ここで挑発すんな・・・
「あら、ハンデが無いと勝てないと言っている様に聞こえますわ。」
いい加減に・・・
そう思ってアヤカとアリシアを見るが、いつもと雰囲気が違った。挑発をしたアヤカの表情は、いつもの不敵な笑みではなく、何処かつまらなさそうな表情をしていた。応えるアリシアも・・・筋肉痛の痛みに耐えているためよく分からない。
「ふふ、全力でも負ける気がしませんわ。早いところ治してもらわないと、証明できませんわね。」
すんな。
「貴女に言われるまでも無いですわ。」
まぁ、勃発しないだけ良しとしようか。一応、アヤカはアヤカなりに気を遣ったんだろうか?だとしたら素直じゃない気の遣い方だが、今までの事を考えればそれも無理な話しか。
「待たせたようね。」
・・・
やっと来たかと思い、マリアの声のした方を見て硬直した。まさかそれに時間を掛けていたわけじゃないだろうな。
「あ、サンタ衣装いいなぁ。」
「血に染まっても分かり難いですね。」
月下はいつも通りの反応だが、満面の笑みで言う姫の言葉の真意は分からん。
「ふふ、そうね。」
その姫に対しマリアも笑顔で返しているが、いいのかそれで。まぁ、本人がいいなら別にいいが。
「血に染まる前に聞きたい事がありますわ。」
そんな中、アヤカもマリアに近付くと言った。ってか、血から離れろよ!その話しはどうでもいいだろ。早速聞きに行ったかと思って見守っていればこれだ、余計な気苦労が増えただけじゃねぇか。
「分かっているわ、武器の事ね?」
血の事はさておき、考えていた最初の懸念は軽く払拭された。アヤカ自身も武器に関しては気になっていたんだろう。どうやってアヤカから話しを振らせるか、若しくは俺だったとしても自然な流れにとか考えていたのに、ちょっと損した気分になった。
すんなり話しが進んだからいいけどさ。
「そうですわ。このままでは安心して太刀を集める事も出来ません。遭遇しても何も出来ず逃げるだけなど、ストレスでしかありませんわ。」
懸念は武器収集かよ。
まぁ、あのお嬢様が他人の心配なんて、思ってても口には出さないか。ただ、その発言は要らぬ誤解を招いているのは間違いない。笑みこそ浮かべているが、姫の冷めた視線はしっかりとアヤカに向けられていた。
月下に関しては傾倒しているため、逆に頷いたりしているが。
「既に確認済みよ。パーティ全員分用意出来るわ。」
「ホントなの!?」
アヤカよりも先に月下が食いついた。
「本当よ。ただし、無条件で使えるようになるわけじゃないの。それはこれから説明するわ。」
「ELINEAに対抗出来る秘密兵器だって、なんか楽しみだね。」
兵器じゃねぇよ。
「えぇ、私も楽しみです。逃げ回るのは私も性に合わないみたいだから、これでやっと生意気な小娘の頭を爆散させられますね。」
・・・
マリアの話しも聞かずに、小学生男児並みの盛り上がりを見せる月下に対し、笑顔で言う姫の発言は怖い。
「そこまでしなくてもいいんじゃない?」
受け入れてんのかよ。程度の問題じゃなく、俺は内容に問題がある気がするんだが。
「とりあえず話しの続きを聞こうぜ。」
それはいいとして話しが進まん。
「そうですね。」
「簡単に言えば、ノーマルキャラじゃあの武器は使えない。」
俺は聞いているし、もう覚悟は出来ている。だが、他のメンバーはどういう反応を示すだろうか・・・
「秘密兵器を仕込むんじゃ、秘密の改造くらいしょうがないでしょ。」
そこから離れろ。
「つまり、チートキャラになるという事ですね。」
「その通りよ、察しが良くて助かるわ。」
「つまり、ELINEAをどうにかした後は、もうこのキャラは使えないという事ですね。」
「えぇっ!?」
姫の言葉に、頷くマリアに対し驚きの声を上げる月下。そこまでは考えてなかったのだろう。むしろ姫の察しの良さの方が恐ろしい。
「大した問題ではありませんわ。現状の方が異常なのですから。」
おぉ、理解してくれて良かったよ。
「もうゲームを続けるなら初めからになるのよ、キャラを作成するところから。」
念押しでマリアは確認する。月下も姫も当然とばかりに頷く。が、一人首を傾げてこちらを見た奴が居た。
理解していたと思ったのは気のせいだったようだ。
「丁度いい機会です、今度は太刀を全種類揃えながら楽しむだけですわ。」
アヤカは言うと不敵な笑みを浮かべ、俺を見た。
見んな・・・
それはアレだろう、当然手伝いますわよね、という含みだろう。面倒くせぇ。
「あぁ。」
俺は苦笑しながら頷くと、アヤカも満足そうに頷いた。
本当の意味で面倒だと昔なら思っていただろう。そういう思いは、マリアの言う通り相手に伝わるのかもしれない。ただ、今は面倒だけどそれもいいか程度に思っているから、自分の中で意識の変化があったんだろう思えた。
「みんな物好きなのね。」
「同感だ。」
「お前が言うな。」
クスっと笑って言うマリアに同意したら、月下に蹴られる。不毛・・・
しかし、みんな同じ事を言うな。類は友を呼ぶと言うか、そういう人間が集まっただけなんだろうが。
「ただ、今日の今日は無理だから、もう少し待って欲しいと言っていたわ。」
そりゃそうだろうな。魔法やなんかじゃあるまいし、一瞬で改造出来たなら苦労はしない。それ以前にそんな事が可能なら、このゲームはゲームとして成り立たないだろう。
「そうですのね・・・」
残念そうに言うアヤカは、すぐに変わると思っていたようだが。
「そうよ。だから、今日は普通にゲームをするしかないわね。」
「だったらアイツ、殺りに行く?」
言い方・・・
「私は良いですよ、丁度蜂の巣にしたい気分でしたし。」
・・・
俺は行きたくない。なんかもう、イヴェルカとかどうでもいいし、先に進んだ方がいい気がする。実際に目の前に現れたら、似たような気分になるかもしれないが、自分から飛び込む気は無い。
「とりあえず、ソイツは放置で先に進んだ方がいいんじゃないか?」
「私もそう思いますわ。」
「まぁ、どっちでもいいんだけどね。」
「私もです。」
俺同様、二人ともそこまで拘っているわけじゃなかったようだ。
とりあえずクエストを進める事になったので、街の外にみんなで向かう。その後ろを、筋肉痛に耐えながらアリシアが着いて来た。
「いや、無理せずに休んでいた方がいいんじゃないか?」
そう声を掛けてみるが、表情は引きそうにない。
「わたくしが居なければ、ELINEAが現れた時どうしますの?」
責任感なのかどうか不明だが、そこまで拘る事でもない。
「大丈夫だよ、逃げるから。」
ふと逃げると言う言葉を使って思った事がある。アリシアと俺たちでは立ち位置が違うのだから、責任感もあるかもしれないが、アリシアは自分の位置からこの場所にいるのじゃないかと。
「ありがとな。でも、その時の為に今は休んでくれないか。」
アリシアは目を丸くすると、顔を逸らした。
「今更ですわ。ですが、逆に足手まといになる可能性もあるのも確か、ここは申し出を受けておく事にしますわ。」
「あぁ、調子が戻ったらまた頼むよ。」
アリシアは頷くと、その場で姿勢を楽にした。
ログアウトで逃げる事が可能な俺たちと、その場から逃げる事なんて出来ないアリシアでは向き合い方が違うのだろう。
アリシアがELINEAに認識される状況になったら、俺たちみたいにログアウトで逃げるなんて出来はしない。その辺の考えの甘さが、アリシアには無いのだろう。
中島があんな事になったのに、ログアウトで逃げれるから大丈夫だ、俺はそんな温い考えでいるんだなという事実を突き付けられた気分だった。
「どういう事だ・・・」
アリシアを置いて来て街の外に出ると、そこには敵が居た。いや、街の外なのだから居るのは普通なんだが、居る筈の無い敵がいる事が問題だ。
「あれ、どっかのボスだよね?」
「仕様が変わったんですかね・・・」
それにしたって、これは無いんじゃないか?あれは確かLV14のボスだったはずだ。激情のメルアニアはよく覚えている、LV14最後のクエストだったからな。
「みんな、ログアウトの準備を。」
マリアが小太刀を抜きながら緊張感のある声を出した。俺には分からないが、何かを感じ取ったのだろう。
「え、始めたばっかなのに。」
「ここは言われた通りにした方がいいかもですね。」
姫はそう言うと真っ先にシステムデバイスを開く。それに続いて、不満を顔に出しつつも月下も開いた。
姫と月下が消えていく中、俺とアヤカはメルアニアの動向を見守る。どうやらアヤカも俺と同じ考えなのかもしれない。ELINEAとは違うが、このおかしな状況の顛末が気になるのだろう。
「何をしているの?二人も早く!」
メルアニアから目を離さずにマリアが声を大きくした。
迷惑、だとは分かっている。だが、状況は少しでも知りたい。
その時、いつもの如くメルアニアの身体にノイズのようなものが迸った。そして狙われたのはいつもの如く俺。
何で毎回俺なんだよ。
メルアニアの拳を避けながら距離を取ろうとするが、向こうがもう片方の拳を繰り出すほうが早かった。
やっちまった・・・
マリアも急いで向かって来てはいるが、間に合いそうにない。
「だから言ったのですわ。」
メルアニアの拳をレイピアの腹で受け止めながらアリシアが言った。当たる直前、何かが目の前に飛び込んで来たのは分かったのだが。
「ごめん、アリシア・・・」
「いいから早く逃げなさい、わたくしもこれ以上は耐えられそうにありませんわ。」
苦痛に歪む顔で言うアリシアには悪いが、これ以上迷惑を掛けられないので、俺は急いでログアウトした。
危険なのは分かっていた筈だ。だが、自分の我儘で残って状況を少しでも確認しようとした。結果がこれだ。
アリシアに迷惑を掛けてしまった。
もし、アリシアが居なかったら俺はどうなっていたか分からない。
本当に、自分に嫌気がさす・・・
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「ちょっと転送プラグラムの一部を流用して組み込んでみたんだが、予想通りの結果だったなー。」
「うん、良く分からないけど。」
得意げにプレッツェルを振って言う禍月だったが、黒咲は言っている内容が理解出来ずにそう言うと紫煙を吐き出した。
「キャラ自体の特性を変更したから、特定の装備に依存する必要は無くなったわけだ。便利だろー。」
「確かに、武器を持ち替える必要がなくなったのは楽だね。私は短刀の方が使い慣れているからそっちを使うと思うけど。」
「持ち替える云々の前にな、太刀やらハルバードやら用意する方が手間だ。じーさんのコネを使えば銃も手に入れる事は可能だが、ゲーム内とはいえ学生にそんなおもちゃを持たせるわけにはいかんだろー。」
「確かに。私は仕事で使うから違和感はないけど。あ、でも銃を使うメンバーは居ないよ?」
「・・・言わんでいい。」
黒咲は中島の事を言ったのだが、それは敢えて口にする必要は無いと禍月は目を細めた。
「うん、そうだね。」
「そうだ、銃で思い出した。」
禍月はそう言うとプレッツェルを銜えて黒咲を見る。中島の事を口にして多少消沈していた黒咲だが、その反応に首を傾げた。
「欠員補充に圀光のおっさんを連れていけ。」
「え、いや、突然そんな事を言われても。」
突然の話しに黒咲は困惑した。
「話しは付けてある。おっさんがユアキスにパーティに入れてくれと言っても胡散臭いだけだろー?だからまりあ、お前がおっさんと合流して連れて行けー。」
「それは、構わないけど。」
話しの展開が急すぎる事に黒咲は戸惑う。禍月の事だから事情は説明していると思っても、現状圀光が入る事が得策なのかどうかまでは判断出来ずに。
「ELINEAの事も装備の事も問題ない。問題があるとすればおっさんってところだな。」
「・・・おっさんはともかく分かった。晶社くんに言っておくね。」
「うむ。まぁそっちは問題無いだろう。」
禍月は言うと、顎に指を当てて険しい表情をする。黒咲はその行動にまたも首を傾げた。
「いや、後はあたしの問題だから気にするな。」
「と言われてもねぇ。」
「装備に関しては飽くまで補助的なものだ、それ以上にはならん。進化と言っていいのかは不明だが、ELINEAの改変速度には人間じゃ追い付けない。決着を付けるなら早い段階じゃないといけないんだがなー・・・」
「私たちの装備じゃ、攻撃に対応は出来るけど、それ以上の事は無理って事よね?」
「そうだー。」
それ以上の事は分からないと、黒咲は天井に顔を向け紫煙を吐き出す。禍月はそれを見ると腕を組んで溜息を吐くように肯定した。
「とりあえずまりあは、ELINEAと遭遇、戦闘をしてくれればいい。」
「うん、分かった。神出鬼没だけどね。」
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ニヤリとして言う禍月を見て、何故来ると言い切れるのか黒咲は分からずに、また首を傾げた。
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