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Side Story 〜Nest〜 **
しおりを挟む「すまない、ハルカ。今日から休暇のはずだったのに。」
「大丈夫。予定通りならまだ5日あるし、アラームもあるでしょ?」
「スマホは手放さないようにするよ。」
「もう、恭一さんは心配しすぎ。」
そう言って可愛く笑う愛しい彼に口づける。
「んん……!もうこれは、いってきますのキスじゃないっ!」
「感じちゃった?」
「もうっ、恭一さん!」
「悪い悪い、行ってくる。」
「いってらっしゃい。」
ハルカと入籍して1年と少し。俺達は今、藤堂本邸ではなく、俺が以前から所有していたマンションのペントハウスで暮らしている。
藤堂本邸は藤堂グループ所有の迎賓館として役割を変え、働いていた使用人達もそれぞれ新たな勤め先へと移っていった。宮澄はこれを機に早期退職し、夫婦でゆっくりと過ごしているらしい。
ずっと番になるか迷っていた俺達だが、二人で子供を持つことを決め、同時に番になることを選んだ。全く抑制剤の影響がない状態のヒートなら、アルファとオメガでの受精率は100パーセントと言われている。
今月、俺達は二人とも抑制剤の服用を止め、ハルカの予定日に合わせヒート休暇を取れるように仕事を調整してあった。本当なら今日からその休暇のはずが、予定外のトラブルで会議が入ってしまったのだ。
「くそ、かなりフェロモンが濃くなってるのに……。」
もしヒートが来てしまったら、ハルカのオメガアラームから通知が届く。俺は落ち着かず、ずっとスマホを握り締めたままだった。
さっさと終わらせて帰るつもりが、いざ本社に来てしまえば何かとやることが出来てしまう。一段落つきそうになったのは午後になってのことだった。
「申し訳ありませんでした、恭一様。この書類で最後です。」
そう言って相川が差し出した書類に、決裁のサインをした時だった。デスクに置いていたスマホが光り、オメガアラームからの通知音が鳴った。
「相川、車を回してくれっ!」
マンションの最上階でエレベーターを降りた瞬間、そこまで漂っていたハルカの香りに心臓が大きく波打つ。
玄関に入ると、凄まじい濃さのフェロモンが充満していた。既に荒れ狂おうとしている己の中の獣を必死で抑え込みながら、俺はジャケットを脱ぎ捨てタイを外した。
「ハルカ?帰ったよ。」
リビングのテーブルの上でオメガアラームが赤く光り、ソファーの上には畳みかけの洗濯物が置いてある。そこからポツンポツンと幾つか服が廊下に落ちていて、俺達の寝室へと続いていた。
「ハルカ?」
寝室に入ってもハルカの姿は見えない。ただ、奥のウォークインクローゼットから、むせ返るほどの甘い花の香りが漂い、愛らしい喘ぎ声が聞こえてきた。
俺の中の獣が理性を叩き壊していく。俺は獲物を探すようにクローゼットの扉を開けた。
「これは…!?」
中にいたハルカは、俺のスーツやシャツをかき集め、それで自分を囲い真ん中にうずくまっている。必死に俺の中折れ帽の匂いを嗅ぎながら、ズボンも下着も脱ぎ捨て、小さな蕾に細い指を突き入れてクチュクチュと掻き回していた。
「あんっ、あっ、……ほし…い……、んんっ、恭一さんっ!」
「ハルカ。」
「っ、ああ……。」
ハルカは俺を見つけると、潤みきった瞳で両手を伸ばしてきた。
「あ、あ、早くっ、早く、ほし……、ちょうだいっ、早くぅ!」
あぁ、俺のモノだ。この香りも、声も、身体も、心さえも、全部!!
「おいで。」
俺はハルカを抱きかかえると、ベッドへと歩き出す。その間にも、双丘の隙間に指を這わせ、濡れそぼった蕾を刺激する。
「あ、ヤダっ、それじゃイヤ……!挿れてっ、それ、挿れてぇ……。」
「いやらしい子だな、ハルカ。」
「ンん、それでもいいっ!早くっ、グチュグチュしてっ。」
必死にしがみつく可愛いハルカに、俺の熱はどんどんと滾ってきた。
ベッドにドサッと下ろすと、俺はすかさず指を挿れ、胸の愛らしいピンクの尖りを咥え込んだ。
「あ、あんっ……あぁっ!」
ハルカはあっという間に達すると、腹や胸まで白濁で濡らした。俺がそれを舐め取っていると、ハルカは俺の屹立した楔に手を伸ばしてきた。
「これ、欲しい……。」
そう言って起き上がったハルカは、俺を仰向けに押し倒そうとする。その可愛らしい力に俺は大人しく従った。
「奥に、欲しいの。挿れたい……。」
「いいよ、ハルカ。」
俺が誘うように微笑むと、ハルカは俺に跨って、後孔に俺の楔をあてがった。ぬちゅんとその尖端が入り込む。まるで喰われているようだ。ハルカの胎内はうねりながら俺を受け入れ、悦びながら食い締めてくる。
「くっ、んん、すごいよ、ハルカ。ほら、まだ入るだろう?」
俺はハルカの腰を掴むと、ズンと腰を突き上げた。
「っ!?ああん!」
衝撃にハルカが背中を反らす。その可愛さに俺の中の支配者が疼き出した。俺はそのまま何度もハルカの最奥を突き上げ、その喘ぎを堪能していく。
容赦なく攻め続けると、ハルカはその快感で身体を支えられなくなり、俺の胸に倒れ込んだ。
「ハルカ、そろそろ、いいか?」
俺の胸で頷くのを確認すると、ハルカから一度離れ、彼を隣に寝かせて後ろから抱き締めた。
「恭一さん。」
「ん?」
「好き……。」
「ああ、俺、もっ!」
俺は再びハルカの胎内を支配する。
「あん、あんっ!もっと……、もっと!」
俺の抽送に合わせ、ハルカも腰を揺らす。俺はハルカの胸の小さな尖りを2本の指で捏ねながら、首筋を舐め上げ吸い付いた。
「ん、ふぅん、……恭一さん、ほしいっ、奥に欲しい!……噛んでっ……噛んでっ!!」
その言葉は俺の熱杭の根元を膨らませ、アルファのそれへと形を変えさせた。二人の隙間をなくし、ピッタリとくっついて絶頂を目指す。
「あ、くぅっ、ハルカ!いくよ!」
俺は大きく腰を突き上げ熱を放ちながら、ハルカの首筋に歯をたてた。
「あ、あぁぁーーーっ!」
ハルカが大きく身もだえる。俺は彼をキツく抱き締めると、首筋の傷を舐め、優しく囁いた。
「愛してる、ハルカ。愛してる……。」
ハルカは俺の熱を受け入れ続けながら、スーッと意識を手放した………。
10ヶ月後──。
ハルカは俺に何より耀く幸せを与えてくれた。
俺は家族を知らない。でもそれは愛する人と作り上げることが出来ると、悠と耀が教えてくれた。
俺とハルカで奏でた曲を、家族でまた、奏でていく──。
▽▼▽▼▽▼▽あとがき▽▼▽▼▽▼▽
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
「お金持ち同士のベタなオメガバースが書きたい」
たったそれだけで書き始めてしまったのが、キャラクター達に動かされシリアス展開になってしまいビックリした次第です。
完結にあたり、感想などお聞かせ願えたらとても幸せです。
(ヘタれなもので、お手柔かにお願いします…。)
感謝を込めて。
水樹風
応援ありがとうございます!
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みんなの感想(3件)
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感想ありがとうございます!
貴文は本当に……どうしようもないですね。
何で恭一が息子なのか不思議です>.<
確かに、弓弦と出会ったタイミングもあるかも…。
お読みいただき、感謝です!
感想いただきまして、ありがとうございます!
こんなに感情移入していただけたのかと思うと感動しております……!
あやつは、ちょっとアレなんですが……皆んなそれぞれ、少しずつでも救いの形が描ければなぁ…なんて思っております。
後少し、お付き合い下さいませ。
感想ありがとうございます!
徳永さん、拗らせてますが、悠くんとの関係お楽しみにしていただけたらと思います。
頑張ります!