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エンシェントドラゴンの島に向かう道中

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あれから十分くらいして休憩できる場所を見つけて、今は休憩している。

「じゃ、ワイバーンの数を確認するか!」

そう言って俺達は自分が討伐したワイバーンの数を数えた。

「俺は十九体だな。」

「私も十九体です。」

「私もよ。」

「俺もだな。」

………なんだよ!全員一緒って…なんか張り合いないな……

「……同点ですね。」

「だな…まぁ、久しぶりに楽しんだからいいか。」

「そうね。同点は気にくわないけれど。」

「もっと手応えあるのがいいな……」

「「「バッカス……」」」

バッカスは相変わらずだよな。バトルジャンキーってわけじゃないけど……戦闘マニアって感じだよな。



俺達は少し休憩した後、再び空を飛んで辺境に向かった。

「……ん。ここか……」

辺境に行くと、どこに魔王の魂があるのかすぐに分かった。明らかに禍々しい魔力があったからな。

「ねぇ、勇輝。私達も着いていっていいの?」

「ああ。特に問題ないな。」

「やった!」

俺達は地面に降り、魔王の魂の前に立つ。

「……相変わらず、禍々しいわね。」

魔王の魂は黒く光っていて表現しにくいがビアンカの言う通り……禍々しい。

「だな。……行くぞ。」

俺は剣を収納魔法から取り出し、魔王の魂に突き刺した。パリンッとガラスが割れるような音がして白く光った後、小さな粒子になって消えていった。

「……これで終わり…なのか?」

なんというか……アッサリしてたな……

「みたいですね。……お疲れ様です。ユウキさん。」 

「ユウキ、お疲れ様。」

「お疲れさん。」

「…ああ……なんかアッサリしすぎてて、これで合ってるのか不安だな。」

『大丈夫ですよ。魔王の魂は完全に滅びました。』

「うおっ!」

いきなり、女神の声がした。

「勇輝?どうしたんだ?」

「い、いや……ちょっと待っててくれ。」

どうなってんだ?俺以外には聞こえてないみたいだな。

『貴方の頭に直接話しかけてるだけですよ?』

「だけって……とりあえず、これでいいんだな?」

『はい。ありがとうございました。……私はそろそろ失礼しますね。』

「おう。じゃあな。」

ここで女神との通信は途切れた。

「ユウキさん?誰と話していたのかしら?」

「あー…女神っすね。魔王の魂が滅びたことを知らせてくれたんすよ。」 

「まあ……女神様と……」

父さん達以外は目を見開いて驚いてるな。

「……ユウキ…女神様にタメ口って……」

いや、一人は呆れてたな……

「仕方ないだろ?俺が初めて会った時はお世辞にも女神とは言えない雰囲気だったからな。」

「どんな雰囲気だったの?」

美空が問いかけた。

「……『フィティトを救って下さい~』って半泣きだったぞ?」

『…………』 

……まぁ…完璧だと思ってた女神が半泣きなんて想像もできないか……



俺達はまたまた空を飛んで、次はエンシェントドラゴンの島に行く………前に町へ向かった。気が付けば夕方になってたから町で宿に泊まることにした。

「宿とっといたぞー」

俺達は町に入って宿を探した。良さげな宿をバッカスが予約しに行ってくれた。

「サンキュー!」

なら、とりあえずは特にすることがなくなったな。

「……なぁ、勇輝。」

「ん?どうした?父さん。」

「お前、なんでマントのフード深く被ってるんだ?見るからに怪しいぞ?」

あー…確かに怪しいか?

俺は顔がバレてるんだよな……一回、別の町でフード被らずに外を出歩いたら人が群がって大変だったんだよな……

「ふふふ。ユウキさんは顔が大陸中に知られていますから。そのまま出歩くと人だかりが出来てしまいますよ。」

「一回、大変なことになったことがあったわね……」

「流石勇者様だな?」

からかい気味にバッカスが言う。……ちょっと仕返ししてみるか……
 
「……バッカス?お前、フルネームで呼ぶぞ?」

「悪かった!それだけは勘弁してくれ!」

『バッカス』も『リリア』も『ビアンカ』も意外とよくある名前だから名前で呼ぶなら注目を集めることはないけど……名字も一緒なら勇者パーティーなのが分かるからな。凄い人だかりになるぞ?

「あら~勇輝は人気者ね~」

「ちょっと、そこの人。身分証を提示しろ。」

……やっぱり怪しいか……衛兵に話しかけられたぞ…… 

「…これでいいか?」

俺は収納魔法から市民証を他の人に見えないように見せた。

「なっ!…も、申し訳ありません!ユウ…!」

「ストップ!」

俺は衛兵の口を塞いだ。……ヤベェ…もうちょっとで名前で呼ばれるところだった……

「悪い。ここにはお忍びだ。リリアや王妃陛下のことも内密に。」

「お、王妃陛下に王女殿下まで……」

「分かったな?」

「はっ!畏まりました!」

衛兵は礼をした後、どこかに歩いていった。

……騒ぎにならなくて良かった……


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