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自分の感情…
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俺達は森から街に近づき、街の門が見えてきた。俺はそこで、あることに気付く。
「……ギルアスさん、この子って街に入れます……?」
スライムを抱えたまま聞く。
そう、このスライム、魔物なんだよな……スライムだから……
「『子』って…お前なぁ………入れない…な。スライムとはいえ、魔物だからな……」
「……そう…ですか……」
やっぱ、スライムでも魔物に違いないから街には入れないか……
――ねぇねぇ!ボクがまものだからダメなの?
「まあ……そうだな…」
ギルアスさんが居心地が悪そうに言った。
――じゃあ、これでどう?
スライムは俺の腕から飛び出し、ウニョウニョと動いた。
「スゴイ!スライムってこんなことも出来るの!?」
エレンさんが驚いたように言った。
スライムはピンク色の髪と瞳をした、5歳くらいの男の子になった。スライムの一人称が『ボク』だから男の子だろうけど、知らなかったら女の子にも見える中性的な顔立ちだ。
「へへへ!どう?すごいでしょ!これでボクもはいれる?」
「ギルアスさん、どうですか?」
「……それなら大丈夫…か?」
「やったー!ヒビキといっしょ!」
スライムがぴょんぴょんとジャンプして喜ぶ。
「そう言えば、名前は?あるの?」
エレンさんがスライムに聞く。……確かに、聞いてなかったな……
「なまえ?ないよ!つけてー!」
スライムが俺に飛び付いて来た。そのまま子供を抱っこするように抱っこした。
「う~ん…………スイ…でどうだ?」
スライムを見て、問いかけた。……我ながら単純だな…スライムだからスイ……
「単純すぎだろ……」
ギルアスさんにもツッコまれた。
「いいよ!ボクのなまえはスイだよ!」
「いいんだ……」
エレンさんにも苦笑いされた……さすがにちょっとショックだな……
それから、スイの歩調に合わせて歩いて街に帰ってきた。
「わーい!すごーい!ギルドだー!ほんものだー!」
スイは冒険者ギルドに入ると、興奮したのか跳び跳ねている。
ウチの子可愛いな……親バカみたいな発言だけど、実際に可愛いんだ……
「よし!ヒビキ、エレン。魔石を買い取ってもらってこい。」
「「…………」」
俺とエレンさんは顔を見合わせる。
「……早く行って早く終わらせたらいいだろうに……スイ、一緒に行ってやってくれ。」
「うん!はやくいこ!」
スイを先頭にギルドの魔石買い取りの受付に向かう。
「魔石の買い取りですか?」
俺達に気付いた受付嬢さんがそう聞いてくれた。
「は、はい……こ、これ…お願い…します……」
……こんな感じでガチガチになりながら、魔石を買い取ってもらい、ギルド長室に来た。
「スイは身分証ないだろ?身分証代わりにギルドカードを作るってことでいいか?」
「うん!ありがと!」
スイはソファーに座る俺の膝に座り、お菓子を食べながら元気よくお礼を言う。それを聞いたギルアスさんはギルド長室を出ていった。スイのギルドカードを作りに行ってくれたんだな。
「……ヒビキは、いまがたのしいの?」
不意にスイがそんなことを聞く。
「……俺は自分の気持ちとか、そういうのって表現するの苦手な所があるからよく分からないけど……多分、楽しんでる。」
「ならいいや!ヒビキがたのしいなら!」
……何でいきなりそんなことを聞くんだろうな?『神様』が関係してるのか?
「……ヒビキってスイには素で話すよね。」
エレンさんがボソッとそんなことを言う。
「…?エレンさん?どういう意味ですか?」
「それだよ。私には同い年なのに敬語使うのにスイには素だよね?」
……言われてみれば………エレンさんにも素で話せばいいんだろうけど……なんか…抵抗があるっていうか……なんでか分からないけど、ちょっと怖いんだよな…人とタメ口で話すっていうの……
「……ぜ、善処します…」
「あ…ごめん……責めてるわけじゃなくて……ただ……距離を感じるような気がしたから……」
「…………」
……距離を感じる、かぁ……俺、心のどこかで瞳と距離をとってるのか……?そうだとしたら、なんで……コミュ障がヤバいだけで人と距離をとろうとは思ってないはずなんだけどな……
「……ヒビキ?だいじょうぶ?」
スイが俺の顔を覗き込んだ。
「あ、ああ……大丈夫だ……」
「……ほんとに?て、ふるえてるよ?」
「え?」
スイに言われて、スイを抱いている自分の手が震えてることに気が付いた。
「…ハハ………もう…自分でも分からない……何が怖いんだろうな……」
自分でも、分からない…何が怖いのか……
それを口に出すと何故か、得体の知れない恐怖感と何かを失ったような喪失感を感じた。そして、何故そのような感情が込み上げてくるのか分からない不安もある。
「大丈夫だよ…大丈夫だから……」
気が付けば俺の背後に回っていたエレンさんが後ろから俺を抱きしめた。スイも俺の手を小さな手で握った。
「…ごめん……ごめんなさい……」
俺は自分が誰に、どうして謝っているのか分からなかった。心配をかけているエレンさんとスイに対してなのか……それとも、別に何かがあるのか……ただ……理由も分からない罪悪感が俺を襲い、涙が溢れた。……今思えば、誰かの前で泣くのはこれが初めてだった。
「ギルドカードの発行出来たぞ……ってこれ…どういう状況?」
ギルド長室に帰ってきたギルアスがこんな反応をしたのは、仕方のないことだろう……
「……ギルアスさん、この子って街に入れます……?」
スライムを抱えたまま聞く。
そう、このスライム、魔物なんだよな……スライムだから……
「『子』って…お前なぁ………入れない…な。スライムとはいえ、魔物だからな……」
「……そう…ですか……」
やっぱ、スライムでも魔物に違いないから街には入れないか……
――ねぇねぇ!ボクがまものだからダメなの?
「まあ……そうだな…」
ギルアスさんが居心地が悪そうに言った。
――じゃあ、これでどう?
スライムは俺の腕から飛び出し、ウニョウニョと動いた。
「スゴイ!スライムってこんなことも出来るの!?」
エレンさんが驚いたように言った。
スライムはピンク色の髪と瞳をした、5歳くらいの男の子になった。スライムの一人称が『ボク』だから男の子だろうけど、知らなかったら女の子にも見える中性的な顔立ちだ。
「へへへ!どう?すごいでしょ!これでボクもはいれる?」
「ギルアスさん、どうですか?」
「……それなら大丈夫…か?」
「やったー!ヒビキといっしょ!」
スライムがぴょんぴょんとジャンプして喜ぶ。
「そう言えば、名前は?あるの?」
エレンさんがスライムに聞く。……確かに、聞いてなかったな……
「なまえ?ないよ!つけてー!」
スライムが俺に飛び付いて来た。そのまま子供を抱っこするように抱っこした。
「う~ん…………スイ…でどうだ?」
スライムを見て、問いかけた。……我ながら単純だな…スライムだからスイ……
「単純すぎだろ……」
ギルアスさんにもツッコまれた。
「いいよ!ボクのなまえはスイだよ!」
「いいんだ……」
エレンさんにも苦笑いされた……さすがにちょっとショックだな……
それから、スイの歩調に合わせて歩いて街に帰ってきた。
「わーい!すごーい!ギルドだー!ほんものだー!」
スイは冒険者ギルドに入ると、興奮したのか跳び跳ねている。
ウチの子可愛いな……親バカみたいな発言だけど、実際に可愛いんだ……
「よし!ヒビキ、エレン。魔石を買い取ってもらってこい。」
「「…………」」
俺とエレンさんは顔を見合わせる。
「……早く行って早く終わらせたらいいだろうに……スイ、一緒に行ってやってくれ。」
「うん!はやくいこ!」
スイを先頭にギルドの魔石買い取りの受付に向かう。
「魔石の買い取りですか?」
俺達に気付いた受付嬢さんがそう聞いてくれた。
「は、はい……こ、これ…お願い…します……」
……こんな感じでガチガチになりながら、魔石を買い取ってもらい、ギルド長室に来た。
「スイは身分証ないだろ?身分証代わりにギルドカードを作るってことでいいか?」
「うん!ありがと!」
スイはソファーに座る俺の膝に座り、お菓子を食べながら元気よくお礼を言う。それを聞いたギルアスさんはギルド長室を出ていった。スイのギルドカードを作りに行ってくれたんだな。
「……ヒビキは、いまがたのしいの?」
不意にスイがそんなことを聞く。
「……俺は自分の気持ちとか、そういうのって表現するの苦手な所があるからよく分からないけど……多分、楽しんでる。」
「ならいいや!ヒビキがたのしいなら!」
……何でいきなりそんなことを聞くんだろうな?『神様』が関係してるのか?
「……ヒビキってスイには素で話すよね。」
エレンさんがボソッとそんなことを言う。
「…?エレンさん?どういう意味ですか?」
「それだよ。私には同い年なのに敬語使うのにスイには素だよね?」
……言われてみれば………エレンさんにも素で話せばいいんだろうけど……なんか…抵抗があるっていうか……なんでか分からないけど、ちょっと怖いんだよな…人とタメ口で話すっていうの……
「……ぜ、善処します…」
「あ…ごめん……責めてるわけじゃなくて……ただ……距離を感じるような気がしたから……」
「…………」
……距離を感じる、かぁ……俺、心のどこかで瞳と距離をとってるのか……?そうだとしたら、なんで……コミュ障がヤバいだけで人と距離をとろうとは思ってないはずなんだけどな……
「……ヒビキ?だいじょうぶ?」
スイが俺の顔を覗き込んだ。
「あ、ああ……大丈夫だ……」
「……ほんとに?て、ふるえてるよ?」
「え?」
スイに言われて、スイを抱いている自分の手が震えてることに気が付いた。
「…ハハ………もう…自分でも分からない……何が怖いんだろうな……」
自分でも、分からない…何が怖いのか……
それを口に出すと何故か、得体の知れない恐怖感と何かを失ったような喪失感を感じた。そして、何故そのような感情が込み上げてくるのか分からない不安もある。
「大丈夫だよ…大丈夫だから……」
気が付けば俺の背後に回っていたエレンさんが後ろから俺を抱きしめた。スイも俺の手を小さな手で握った。
「…ごめん……ごめんなさい……」
俺は自分が誰に、どうして謝っているのか分からなかった。心配をかけているエレンさんとスイに対してなのか……それとも、別に何かがあるのか……ただ……理由も分からない罪悪感が俺を襲い、涙が溢れた。……今思えば、誰かの前で泣くのはこれが初めてだった。
「ギルドカードの発行出来たぞ……ってこれ…どういう状況?」
ギルド長室に帰ってきたギルアスがこんな反応をしたのは、仕方のないことだろう……
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