くじ引きで決められた転生者 ~スローライフを楽しんでって言ったのに邪神を討伐してほしいってどゆこと!?~

はなとすず

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母親

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「ユイさん、少しこちらに来てくださいますか?」 

「?分かりました。」

優依は不思議そうに首を傾げたけどすぐに席を立ち教皇さんの所に行った。

「教皇様?どうしまし…え?」

「ふふふ。私はずっと娘が欲しかったんですよ。」

教皇さんは近くに来た優依を少し腕を引き、隣に座らせてそのまま頭を撫で始めた。

「…えーと?」

ふふ、少し恥ずかしいのかな?顔が赤らんでるね。

「ユイさん、私はユイさんの事を知りません。ですが、今少し話しただけですが私は貴女は愛に餓えていると感じました。…どんな事情があったかは聞きません。貴女には母親が必要です。私がなれるかは分かりませんが…私で良ければいつでもこうして甘えてください。」

教皇さんは優依の方を向き、優しく抱き締めた。

「…あ……」

優依も抵抗せずに受け入れて教皇さんの服に顔を埋めた。

「…う…うぅ…」

…また、静かに泣いてる…

「…我慢なんてしなくていいんですよ。」

「…うぅ……うわぁぁん!」

「そうです。それでいいんです。全部、吐き出しましょう。」

…今日、優依は初めて声をあげて泣いた。

僕も似たようなことは言ったことがあるけどやっぱり、同級生の子供とお母さん世代じゃ響き方が違うよね。…教皇さんがこの世界での優依のお母さんになってくれるといいな。



「ふふ、とても可愛いわ。」

あのまま優依は寝ちゃって教皇さんの膝枕で寝てるよ!

「…教皇様、あの…」

「大丈夫ですよ。この子の事情は聞きません。」

「いえ、違うんです。僕が聞いて欲しいんです。」

「…いいのですか?ユイさんの過去を貴方が話しても。」

「はい。大丈夫です。僕としては全てを話したいですが、それは流石に優依と話し合わないといけないので一部になりますがそれでよろしければ。」

優依の過去は全部話すけどそれが前世だということは話さない。…間違ってはないよね?この表現で。優依も懐いたみたいだし信用出来そうだから話しても大丈夫だと思う。教皇さんも優依を我が子のように優しい目で見てるしね!……もし、裏切られたら僕は教皇さんを赦さない。

「…私が聞いてもいい所まで聞かせてください。」

「はい。分かりました。」

「ありがとうございます。」

それから僕は優依の過去を話し始めた。

「まず、優依は幼い時、両親から暴力を受けていたんです。4歳の時にはそれが当たり前になっていました。」

教皇さんは自分の事でもないのにとても辛そうな顔をした。

「そして、5歳の誕生日の日に祖父母が事故で亡くなり優依は用済みだと言われ捨てられたそうです。何故かは僕には分かりませんが優依の両親は優依の祖父母がいたから優依を自分達の側に置いていたみたいです。」

「その祖父母は…」

「間違いなく優依を愛してました。」

「そうだったのですね。」

僕の言葉を聞いて教皇さんは少しホッとしたような顔をした。

「…優依は捨てられてから一人の男性に出会い拾われました。」

「そうですか…良かったです。」

「…そう思いますよね?ですが、全然良くなどありませんでした。」

「…?どういう意味ですか?」

不思議そうに首を傾げる。

「……裏切られたんですよ。その人に。」

「裏切られた…ですか?」

ますます、意味が分からないといったように眉間にシワをよせる。

「はい。その人は優依を拾い、『大切』に育てました。…ですが、結局6歳の誕生日の時に殺そうとしました。ソイツは幸せな顔をした子供を絶望に叩き落とすのが好きだったそうです。」

「そんなっ…!」

教皇さんの顔はさっきと違って怒りに満ちていた。

「…それから優依は何とか隙をみて逃げ、町にたどり着きました。…その時に初めて優依に会ったんです。あの時の優依は感情がありませんでした…大好きだった人から裏切られたショックだと思います。」

「…それからルークさんの所に来たのですね…」

「はい、そういうことです。」

正確には優依を迎え入れてくれた夫婦だけどね!

「…ルークさん…私は…ユイさんに母だと認められると思いますか?勿論、ルークさんのお母様もユイさんを大切にしているとは思うのですが、ユイさんの性格的に一歩引いているのではないかと思ったんです。ルークさんのお母様も他に自分が産んだ子供がいますからユイさんは気にしているのでは、と。その点、私なら結婚もしておらずに勿論子供もいませんからユイさんも甘えやすいと思ったのですが…いえ、これは建前ですね。」

そこで教皇さんが言葉を区切り少し間を開けてから話し始めた。

「…私がユイさんの側にいたいと思ったんです。この子はずっと寂しかった。でも、甘えれる人がいない。本当の気持ちを隠すのに無理して笑顔を作る。…昔の私に似ていると思いました。私も両親とは一緒に過ごした記憶はないんです。聖魔法の適性が高く幼い頃から神殿に引き取られ、それから一度も会っていないんです。事情は違いますが…両親からの愛に餓えている…けど、それを隠してひたすら笑顔を作る。それが辛いのはよく知っています。」

教皇さんは優依の頭を撫でながら優しく微笑んだ。

「ですから、少しでも『親』からの愛情を注いであげたいんです。今なら…今ならまだ間に合いますから。」

…うん、分かるよ………この人は、優依を大切にしてくれる…他にも大切にしてくれた人はたくさんいた。でもやっぱり優依は一歩引いて後ろから眺めていた…けど、この人となら…一歩踏み出してくれるような気がする。







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