くじ引きで決められた転生者 ～スローライフを楽しんでって言ったのに邪神を討伐してほしいってどゆこと!?～

ただいま！

「……ん…」

僕が目を覚ますとそこは神聖国の客室だった。

「また、優依に迷惑かけちゃったな…」


コンコンッ


「おはよう、ルーク。」

「おはよう、優依。時間は夕方だけどね。」

「ふふふ、ルークさん。優依はこの三日ずっと待ってたんですよ。」

「うん！だって最近百人一首やってないんだもん！」

「…嘘でも心配って言ってほしいかも…」

「「「ふふふっ」」」




あれからどうなったかを優依とエルに聞いた。ちなみにカミラは途中で逃げたらしい。エルも追おうとしたけど別空間に移動したら戻ってこれなくなるかもしれないから優依が止めたらしい。

「あ、そうだ。ルーク、これ。リディア様が持っといてって。」

「何これ？石？」

優依に真っ黒な石を渡された。リディア様が持っといてって言ったってことは何か意味があるんだろうけど…なんだろう？

「なんか、その中に邪神の力の一部を封印してるんだって。」

「え？なんでそれを僕に？リディア様が保管しといた方がいいんじゃないの？」

「私も思ったけど、リディア様がルークにって。」

「そっか…分かった。持っとくね。」

「うん、そうしといて！」

また、どこかで使う時が来るのかな？なんとなくそんな気がする。




なんだかんだで夜が過ぎた………

「おはよう！ルーク。」

「うん、おはよう。優依、今日はどうする？」

こう言っちゃなんだけどやることないんだよね。鍛練してもいいんだけどせっかく神聖国にいるしね！

「う～ん…とりあえず、お土産買いに街に行かない？」

「そうだね！そうしよっか。」

そう話が纏まったところで…

「でしたら、私も一緒に行っていいですか？」

客室のドアのところに教皇さんがいた。

「お母さん！おはよう！一緒に行こ！」

「おはようございます。教皇様。僕も大丈夫ですよ。一緒に行きましょう。」

「おはようございます。ありがとうございます。案内致しますね。」




それから、朝食を食べて街に出た。

教皇さんはやっぱり人気でずっと注目を浴びてたよ！

「…僕は先に城に戻りますね。」

お土産を買い終わって屋台で買った昼食を広場で食べて僕は一足先に帰ることにした。

「ルーク？もういいの？」

「うん。大丈夫だよ。」

「でも、何で……!!そっか…ありがとう！」

優依は途中で何か気付いたみたい。

「僕は優依に頼まれてたフィギュアを作るだけだよ！」

「ありがとう！」

ふふ、お礼を言われるような事じゃないのにね。

「では、教皇様。僕は先に失礼しますね。」

「はい。分かりました。ありがとうございます。」


そうして僕は城に向かう。親子の時間…大切にしてね！




「ただいま！」

優依が部屋のドアを開けて入ってきた。

「お帰り。聖都は満喫できた？」

「うん！ルークのおかげで！」

「なら良かったよ。」

教皇さんと楽しめたみたいでよかったよ！…楽しめる時に楽しんでおかないとね！特に『親子』のふれあいは今しか出来ないんだから。

「…ねぇ、優依。」

「どうしたの？」

「…僕ね、ブレスレットの効果で夢を見てた時にね『両親』に会ったんだ。」

「…そう、なんだ…」

ははは…いきなりこんなこと言われても何て返せばいいか分かんないよね…

「…あのブレスレットの効果は『心の傷がない世界を見る』…だったんだよね？」

「うん…」

「そっかぁ………僕、どこかで傷ついてたんだね…知らなかったよ。両親がいなくなった当時を覚えてないから成長してからも特に何も感じないと思ってたよ。…でも、両親がいる夢を見たんだから当時ついた傷が残ってたんだね。ちょっと安心したよ。」

「…どうして？」

「僕にとっての両親は『写真』に残った人だけだった。でも、両親は『心の中』にきちんといたから。」

僕は優依に微笑みながら言った。

「僕はちゃんと両親に愛されてた。それが分かったんだ。だから……そんな顔しないで。僕は大丈夫だから。」

優依は辛そうに唇を噛んで涙を溜めていた。

「だって…だって！悠真は私と違ってちゃんと愛されてたんだよ？…私が言いたいこと、分かる？」

「うん、分かってる。」

…優依は…僕を愛してくれる人がいた。僕はそれを身を持って実感したから離れるのは辛かったはずなのに…って言いたいんだよね？

「大丈夫だよ。ちゃんと『行ってきます』って言って来たから。それに……優依が…『父様』が『母様』が『兄様達』、それにカインとノインも…みんな僕を…『ルーク』を…『今の』僕を待っててくれたから。僕はここに帰ってきたんだよ。」

「うん…うん。よかったよ…戻ってきてくれて、ありがとう。」

「…僕が戻って来たかったんだ。だから…お礼はいらない、かな。」

「うん。そうだね。…お帰り！ルーク！」

「ただいま！優依！」

ねぇ、優依。知ってる？優依が僕を呼んでくれたんだよ。優依がこっちだよって導いてくれた。だから、帰って来れたんだ。

だから……ありがとう、優依。