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シンとくっつく
しおりを挟む「もうシンったら……まだ上級魔法を使うと未だこうなっちゃうんだから気をつけるんだよ?」
「あい……ごめん、キュウ姉……」
ベッドの上で、シンは申し訳なさそうに頭を下げた。
どうやら安心して良さそうな様子だった。
治癒院への輸送やら、入院の手配やらしてくれたアクトには感謝だ。
今度、折を見て何かお礼をしないと。
「シン、ゆっくり休んで、体を治すんだぞ」
ここは姉妹水いらずが良いだろう……と、退散しようとしたところ、シンにギュッと指を握られた。
「シン?」
「や! トーさん、行っちゃ、やぁ!」
「いや、行っちゃ嫌だって……」
「別に良いんじゃね? 今夜ぐらい一緒にいてあげても」
コンはさも当然のようにそう声を上げた。
「いや、俺よりも姉妹で家族のお前達の方が……」
「それはちょっと聞き捨てなりませんね!」
何故か、キュウは少し厳しめの視線を送ってきている。
「先生はもう私たちの立派な家族なんですよ? わかってます?」
「ま、まぁ、居候のあたし等が胸張っていうことじゃないことかもしれねぇけど……」
なんだか家族って良い響きだなと思う俺だった。
そうか家族……みんな俺のことをそんな風に思ってくれているんだ……泣けてきたじゃないか、こんちくしょう!
「わかった。それじゃあ、今夜はシンのこと見てるよ。ありがとな、2人とも」
そう礼を言うと、キュウとコンは笑顔を浮かべて退出していった。
「トーさん……」
「はいはい、わかったわかった。ちゃんと側にいてやるから、ゆっくり眠りな」
「あい……」
シンはぎゅと俺の指を握り締めながら、目を閉ざす。
今日のシンはよく頑張ったと思う。
そしてやっぱりこの子も、優秀なサク三姉妹の1人なんだと改めて感じられた。
この三姉妹は良い冒険者に……ひょっとすると、伝説を打ち立てる偉大な存在になれるのかもしれない。
ならばこれからも、三姉妹が本当にそうなれるよう全力で後押ししたい。
俺自身がなし得なかった偉業を打ち立てて欲しい。
心の底からそう思う。
「すぅー……すぅー……トーさん……」
おーおー、いい寝顔してやがる。
さて、この隙に俺は風呂でも入ってきますかね。
さすがに体がベトベトだ。
どうやらこの治癒院には誰でも入湯できる、大浴場と露天風呂があるらしい。
俺はそっとシンの指を離し、病室を後にする。
「グレイトです」
と、部屋を出た途端、控えめな音量で、もうだいぶ効き慣れた声が聞こえてきた。
「こんばんは、ササフィさん。こんな時間までお仕事ご苦労さんだね」
「いえ。この仕事楽しんでますし、へっちゃらです」
仕事が楽しい……人生の大半を過ごすものをそうはっきり言い切れるのは凄いことだと思う。
たしかにササフィさんはいつ会っても楽しそうだ。
「いつも通り、取材かい?」
「はい。昼間の噂を伺いまして。今度はシン・サクさんがトクザトレーナーの下で大活躍されたとか!」
「いや、さすがに今回、俺はなんもしてないよ。頑張ったのはシンだけだ」
「きっとそういうきちんと相手の振る舞いをみて、適切に評価する点が、トクザトレーナーの良いところですね」
「そうか?」
「ええ! 結構多くのトレーナーを見てきましたけど、トクザトレーナーのように振る舞う方は少ないです。全部自分の手柄、なんて平気でいうトレーナーが多いんですよ?」
まぁ、世の中言ったもん勝ち、声のでかいやつが有利ってもんだからな。
特にトレーナーは10年前の【魔穴騒動】で被害を受けて、割と病んでいる奴が多いと聞く。だから一癖も、二癖もあるやつが多い。
まぁ、俺もこの間までは同じ穴の狢だったんだけど……
でも、こうしてササフィさんのように正当に評価をしてくれる人が居てくれるなら、こちらも頑張れるというものだ。
「ありがとうササフィさん。なら、下のカフェで良いかな? ちょっと今日は汗臭くて申し訳ないけど」
「ご協力ありがとうございます。流石に慣れてきましたね?」
「慣れ?」
「だって最初は私の取材から逃げてばかりでしたものね」
「おかげさまでな」
「ちなみにカフェでの支払は任せてください。ばっちり領収書切りますのでご遠慮なく
!」
もう少し仕事を一生懸命しているササフィさんを見習おう。
そう考えるのだった。
⚫️⚫️⚫️
なんだかんだで、ササフィさんの取材は結構な時間がかかった。
でも、そのお陰で露天風呂からは、丸くて綺麗なお月さんよく見えている。
あったかい風呂に、穏やかな月。
更に遅い時間だから、貸切状態ときたもんだ。
こりゃ良いね! つい、ウトウトしちまう。
ヒタ、ヒタ、ヒタ……と。突然、背後から足音が聞こえ始めてくる。
「トーさん……」
予想外の声が聞こえて、思わず振り返ってしまった。
そこにはタオルを一枚巻いただけのシンの姿が。
タブタブな魔法使いのローブから、いつもはっきりと存在感を主張している爆乳。
それがたった一枚のタオルで隠されているだけだった。
否が応でも視線がそこに向かってしまう。
「な、な、なんでここに!?」
「トーさんとお風呂入りたい……」
「いや、だって今男湯の時間だろ!? 誰か来たらまずいじゃん!」
「大丈夫。呪いで扉開かないようにした。暫くは2人っきり」
シンは頬を僅かに上気させながら湯へ入ってきた。
そしてスルスルと俺の隣へ寄ってくる。
真横にはフロートみたいにプカプカと浮かんでいるシンの爆乳。
もう俺、どうしたら良いのよ……
「ねぇ、トーさん」
「な、なんだ……?」
「さっき、下のカフェでお話ししてたのだぁれ?」
いつものシンの声のはずなのに、どこか冷たいような、恐ろしいような。
「カフェ……ああ、ササフィさんのことか?」
「また女の人だった……しかもみんな若い……トーさん、ロリコンさん?」
「ロリコンって……」
苦笑いを禁じ得なかった。
アクトとはそれなりに歳は離れているけど、ササフィさんは違う……はず。
「ロリコンさんなら、シンにも……きょーみある?」
シンはグッと身を寄せてきた。
爆乳が俺の二の腕辺りでむにゅんと潰れる。
「シンはロリじゃないだろ?」
「……わかってる! でも見た雰囲気、シン、トーさんの好きなロリロリ!」
いや、まぁ、そうなんだけど……って、俺は別にロリロリ好きじゃないぞ!
「やっぱ、ロリロリはぺたんこの方が良かった?」
シンは少し不安げな様子で、大きな胸を寄せて見せる。
「男の人、ここおっきいの好きって聞いた。だからシン、いつかトーさんに喜んで貰えるようがむばった! 嫌いな牛乳いっぱい飲んだ。マッサージ、毎日した! 毎日、毎日がむばった!」
真摯なシンの視線が胸へ突き刺さる。
今の言葉、そして眼差しだけで、自分がどれほど想われているのか思い知った。
未だに三姉妹は、なんで俺のことをこんなに慕っているのかわからない。
だけど、誰かにこうして必要とされることは無茶苦茶嬉しい。
「ねぇ、トーさん」
「ん?」
「シンと……く……くっついてくれる?」
「くっつく? 抱っこしろってことか?」
「キュウ姉とコン姉と同じこと……!」
「なっ――!?」
いきなりすぎて、言葉を失ってしまった。
てか、バレてたのね……。
「一応確認するけど、意味わかってるんだよな……?」
「うん! 本読んだから知ってる! 愛し合う男と女は……が、がっしーん!」
「……しかも今、ここで?」
「そう! ダメぇ……?」
ああ、またそんな寂しそうな顔するな。
もはやここまで話を進めていながら、怖気付く訳には行かない。
だけど、一応確認を……キュウとコンにもしたから。
「俺みたいな冴えないおっさんで良いのか?」
「冴えないなんて言わない! トーさんは、シンの大事な人! シンにとっての英雄(ヒーロー)!」
シンはザバン! と湯船から飛び出ると、俺の上へ跨った。
もはや逃れることは難しい……というか、俺自身も既に……
「い、行く……ちゅ!」
シンは強引に唇を奪ってきた。
小鳥が食べ物を啄むような、小さくて愛らしいキス。
だけど肩はブルブル震えていて、華奢な体もカチコチに緊張しきっている。
流石に無理やり何かをするのはどうかと思ったので、しばらくシンの好きなようにさせた。
やがてシンは軽く重なっただけの唇を離した。
「こ、これ、シンの覚悟と気持ち……! こっから先、トーさんの好きにして良い……」
「わかったよ。ありがとな、勇気出してくれて」
俺はいつも以上に優しくすると決め、まずは頭を撫でた。
湯気でしっとりと濡れた髪の触り心地は良く、シンは撫でるたびに愛らしい笑みを浮かべてくれる。
「ナデナデ嬉しい……ふへ……」
「俺もナデナデできてうれしいぞ」
「嬉しい一緒、凄く嬉しい!」
そして俺はそっとシンのカラダへ触れてゆく。
「じゃあ、行くぞシン。乱暴なことはしないから安心してくれな」
「あい……トーさん、信じてる……」
……これで俺はサク三姉妹全員とそういうことをしちまった訳だが……この先、俺一体どうなっちゃうんだろ……?
……
……
……
【観光地に魔穴!? 新人冒険者シン・サク、騒動を早期収束させる!】
『がむばった! トーさんのおかげ! これからもトーさんと一緒! きゃっほー!』
(シン・サク談)
『シンの魔法は凄いと感じています。シン・サクへのご用命お待ち申しております。併せて、キュウ・サクとコン・サクもよろしくお願い致します!』(専属冒険者訓練士トクザ談)
――以上、日刊冒険者たち♪より一部抜粋――
*一部表現は本人の意向により、インタビューのまま書かせていただきました。
……この記事の影響で巷では暫くの間『がむばった』と『きゃっほー』が流行ったらしい。
【またしてもP役立たず! もはや勇者の資格なし!】
過日発生したグラブロの滝での魔穴騒動が、新人冒険者の手によって早期解決されたのは記憶に新しい。
そこにはまたしても勇者P の姿があり、いつものことながら全くの役立たずであった。
血税で支えられている勇者としてあるまじき行為と言わざるを得ない!
これまでのPの失態を以下へ列挙してゆく……
――以上、週間冒険者春秋より一部抜粋――
……さすがに鈍感なパルディオスでも、ようやく世間の批判に気が付き始めたらしい……
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