追放された成長スキル持ちと三姉妹冒険者~彼は希望を取り戻し、勇者は没落す~

シトラス=ライス

文字の大きさ
21 / 36

鬼神流奥義 双刃輪剣

しおりを挟む

「せ、先生!? なんで……」

「お、おい、トク兄!? どうして……」

「トーさん、泣いてる……?」

「えっ……?」

 無事なサク三姉妹を前にして、俺はようやく目がしがら熱くなっていることに気がついた。
 ここはガツンと叱って、もう二度とこんな無茶なことはしないよう叫ぶところ。
しかしどうにも胸が詰まり、足から力が抜け、俺はその場に蹲った。

「頼むから、もう二度とこんな無謀なことはしないでくれ! ちゃんと自分の実力を見極めて行動してくれ! もうごめんなんだ! 冒険なんかで、大事な奴らが命を落とすことなんて!!」

 意図せず本音が溢れ出た。
 かつて同じ夢に向かって走り、そして俺のせいで命を落とした槍使いのサフトと白術師のシオンの姿が頭の中に浮かんだ。

「すみません、先生……」

 かがみ込んできたキュウは心底申し訳なさそうを謝罪を述べた。

「ごめん、トク兄。すっげぇ心配かけて……」
 
 コンは深々と頭を下げる。

「ごめんなさい、トーさん……もう泣かないで?」

 だけど、まだこうして三姉妹はこうして無事でいてくれている。
 そのことが嬉しくてたまらず、俺は3人をまとめて抱き寄せた。

「良いか、お前ら! もう一度だけ言うぞ! もう二度とこんな無茶なことをするな! もし次したら俺はお前らの訓練士を降りるし、家からも追い出すからな! 俺は本気だ! いいな! 分かったなっ!?」

「「「申し訳ありませんでした! もう二度とこんなことはしません!!!」」」

「うう、ひっく……ああ、なんと素晴らしい師弟愛……ぐすん! さすがはトクザ殿!!」

 なんかマインがめちゃくちゃ感動していたのだった。
 
「パルディオス・マリーン!」

「うえぇ!? お、俺?」

 ずっと蚊帳の外だったパルディオスくんは素っ頓狂な声を上げた。
そんな彼へ、俺は深々と頭を下げた。

「ありがとう。この子達を保護してくれて、本当に……」

「え? あ、ああ、まぁ……」

「逆ですよ先生?」

 俺の胸の中で突然、キュウがクスクス笑い出した。

「そうさ。あたしらはここに落っこちたりはしたけど、別にあの唐変木に助けられてなんかいないぜ?」

「逆にシンたちポーション上げた。だから、パルディオスたち、なんとかここまで持ち堪えられた」

「あ、そうなの?」

 俺がそう聞き返すと、パルディオスは頬を真っ赤に染めて、そっぽを向いた。

「だ、だけど、とりあえず一緒にいたのは確かだし! こいつらが分けてくれたアイテムのおかげでマインが戦えるようになって、みんなでここまで踏ん張ったのは事実だし!」

 まったくこのお坊ちゃんは相変わらず……まぁ、でも今はこんなことでムカムカしているのも時間の無駄か。

 俺は雑嚢から巻物を取り出し、パルディオスへ放り投げた。

「転移魔法のスクロールだ。それでこんなところからはさっさと脱出するぞ」

「お、おう! 助かる」

「あとお前らの生還には多額の賞金がかかってるんだ。脱出したら必ず隠さず"自分たちはサク三姉妹のおかげで生還できた"とギルドへ報告するんだぞ! 俺もここからでたらお前の親父さんのフィクサー・マリーン子爵へ報告に行くからな!」

「分かった……はぁー……」

 あえて親父さんの名前を出してみると、パルディオスくんは珍しく素直に首を縦に振る。
どうやら親父さんには逆らえないらしい。

 しかしこれにて一件落着。
 俺たちもこんな危険な場所からはさっさと退散しないとな。

「……うう……!」

「シン、どうかしたか?」

 突然、腕の中のシンがブルブルと震え出した。

「嫌なの来る……ヤバイの、来ちゃうゥゥゥ!!」


「「「「「――――――!?」」」」」


 全員がシンの言葉に息を呑んだ瞬間だった。

「ひぎゃぁぁぁぁー! ごふっ!」

 突然、背後から吹き付けてきた瘴気にパルディオスくんは吹き飛ばされ、岩壁に叩きつけられた。
奴の仲間のほとんども、同じように吹き飛ばされてしまう。

「こ、この気配は……まさか!?」

 パルディオス一行で唯一瘴気を浴びずに済んだマインは、刀剣を構えつつ膝を震わせている。
 俺の腕の中の三姉妹も、初めて肌で感じる圧倒的な力の感覚に身体を強張らせている。

「グオォォォン!!」

 闇の奥から這い出てきた巨大な威容が激しい咆哮を上げた。

 どうやら危惧したことが現実に……ドラゴンの出現を許してしまったらしい。

「ど、どうしよう! 本当に出ちゃった!! ドラゴン出ちゃった!」

「お、落ち着け姉貴! だ、大丈夫だ、きっと!」

「なんかちょっとちっちゃい?」

 不幸中の幸いか、今目の前に現れたのは、この石室に収まるくらいの成長途中の竜だった。
だけど若いとはいえど、相手は大災害級とも言われる危険度SSの相手に代わりはない。

 俺たちだけはなんとか逃げ延びることができるだろう。

「……な、なんで最近、俺こんなのばっかり……」

 しかし、ドラゴンの後ろには瘴気で吹っ飛ばされて、すっかり伸びてしまったパルディオスやその仲間たちの姿があった。
ここで放置してしまえば、パルディオスくんたちは、若ドラゴンの餌になってしまうのは必至だ。

(正直、パルディオスとの良い思い出なんて無いんだよなぁ……)

 態度だってでかいし、好きな部類の人間じゃない。
だからといって、ここで見捨てるのはどうにも後味が悪くなって仕方がないと思う。

 それにキュウ達が偶然とはいえ、せっかく見つけた賞金だ。
 勝算があるなら、これをみすみす見逃すわけには行かない。

「キュウ、コン、シン、そしてマイン。絶対に無理や無茶はしないという前提で聞いてほしい。俺はあのドラゴンを倒して、パルディオス達を助けたいと考えている」

 一瞬、みんなが息を呑んだのが分かった。
だけど異論は沸き起こらなかった。

「そのためにもほんの少しで良いから俺が集中できる時間がほしい。大体30秒ほどだ。できそうか?」」

「勝算があるということですね?」

 マインの問いに首肯を返す。
すると彼は刀剣を構え直した。

「承知した! 某はトクザ殿を信じましょう! お弟子さん方は如何か!?」

「さ、30秒くらいでしたら頑張ります!」

 すぐさまキュウは頼もしい返事を返してくれた。

「30秒と言わず、い、1分ぐらいあたしがなんとかしてやるぜ!」

 コンも僅かに震えながらも、ハルバートを構えだす。

「シンもがむばる!」

 シンは大きな胸を揺らし、そう勇ましく答えてくれる。

「ありがとう、お前達。だが忘れるな。自分の命が最優先だ! 良いな!?」

「「「「了解ッ!!」」」」

 かくしてサク三姉妹とマインは若ドラゴンへ向かって飛び出してゆく。

(あの子達の信頼に応えるためにも、必ず……シオン、サフト、見ていてくれ!)

 俺は心を落ち着け、邪念を払い、意識を集中させ始めた。

「某に続かれよ、戦士のお弟子さん!」

「お、おう! だりゃぁぁぁ!!」

 マインとコンは同時に飛び、若ドラゴンへ斬撃を見舞う。
鋭く、そして激しい一撃を受けて、ドラゴンが怯んだ。

「ギャオォォォンッ!!」

 若ドラゴンはぐるりと首を振って、マインとコンを吹っ飛ばす。
そんなドラゴンの頭へ間髪入れずに、キュウの矢が打ち込まれた。

「こっちよ! こっち!! さぁ、さぁ、さぁぁぁ!!」

 キュウは悲鳴をあげつつも、正確な射でドラゴンの頭を狙い続けている。
 筋力と命中精度を増したキュウの矢は次々とドラゴンの鱗の間へ突き刺さる。
ドラゴンはその度に怯んで、苦しそうな悲鳴をあげていた。

「キュウ姉! 下がる!」

 キュウがひらりを身を翻し射線を開けた。
そこにはすでに魔法の杖へ、漆黒の闇を湛えたシンの姿が。

「お前を穿つ! ダークネスバンカーぁぁぁ!!」

「グギャ!!」

 シンの杖から打ち出された巨大な闇の杭が、若ドラゴンの巨体を吹っ飛ばす。

 俺は集中している中、それでも三姉妹の成長ぶりを喜んでいた。
 やっぱりサク三姉妹は凄い。日々、成長し、強くなってゆくあの子達を見ているのが楽しい。

 だからこれからも一緒にいたいと思った。
あの子達の行く末を、いつまでも見守って行きたいと強く願った。

「グオォォォォーーン!!」

 突然、若ドラゴンが怒る狂った咆哮を上げた。
強い圧力を持った瘴気が溢れ出て、取り囲んでいた三姉妹とマインを紙切れのように吹き飛ばす。

 しかし、時間稼ぎはもう十分だった。
 みんなが時間を稼いでくれたおかげで、いつでも行けた。

「鬼神流――!」

 地面を蹴り、矢のような速度で若ドラゴンへ突き進む。
 ドラゴンはようやく俺の接近に気付いたらしいが、もう遅い。

「奥義が一つ!」

 高く飛び、竜の首を切り上げた。
 刀剣は硬い鱗を割り、肉を引き裂く。
しかしドラゴンは自分の首が切り裂かれたことに未だ気が付いてはいない。
 俺は素早く首の飛び越え、反対側へ回った。
そして再び、ドラゴンの首を激しく切りつける。

「これぞ双刃輪剣そうはりんけん!」

 ほんの一瞬で、竜の首を左右から挟み込むように、円形の軌道が浮かんでいた。

 刃渡りの長い刀剣であっても、一撃でドラゴンの首を跳ねることは難しい。
ならば神速の斬撃で、左右からほぼ同時に切り込めば良いのではないか……なんていう無茶ぶりから生まれたのが、双刃輪剣という技だった!

 俺は地面へ降り立ち、呼吸を整えつつ残心を取る。

 10年ぶりに放った大技にしては良くできたと感じた。
しかし、腕に妙な違和感を覚えているのもまた事実だった。

「――ッ!?」

「ガ、ガオォォォォーーン!!」

 跳ね飛ばした筈のドラゴンの首が俺へ迫る。

 やはり10年ぶりがいけなかったようだ。
俺はドラゴンの首を跳ね損ねていたようだった。
 
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。

みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。 勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。  辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。  だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。

しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。 しかし―― 彼が切り捨てた仲間こそが、 実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。 事実に気づいた時にはもう遅い。 道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。 “荷物持ちがいなくなった瞬間”から、 アレクスの日常は静かに崩壊していく。 短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。 そんな彼と再び肩を並べることになったのは―― 美しいのに中二が暴走する魔法使い ノー天気で鈍感な僧侶 そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。 自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。 これは、 “間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる” 再生の物語である。 《小説家になろうにも投稿しています》

処理中です...