35 / 36
トクザ家を買う!? の続き
しおりを挟む「見る! この立派な内装! サク家にも負けない美しさ!」
何故か不動産屋のアクトに変わって、シンが物件の案内を始めた。
「広い中庭付き! キュウ姉の大好きだったガーデニングもまたできる!」
「わぁー! この中庭素敵!」
「部屋もたくさん! 地下の倉庫はコン姉の専用トレーニングルームにしてもオッケー!」
「さっきの砦よりは脆そうだけど、いい感じじゃん!」
「そして極め付けがここ! 前所有者の書斎! ここはトーさんのもの! 蔵書も家具も全部セット!」
立派な、立派すぎる書斎だった。
それに軽く蔵書を見渡してみても、古今東西の貴重なものから、ちゃっかり質の良いアレでそれな書物まである。
まさに"男の宝箱"って感じの部屋だった。
どれどれ、この東方の叡智が詰まった珍しい本でも見てみる……ん?
パリパリ……と、本棚から本を取り出すと、中に茶色いクズのようなものが落ちてきた。
本を開くとまたパリパリと、妙な音が鳴り……
「うわっ!? な、なんだぁ!?」
蠱惑的な叡智が赤黒く染まっている。
これって血痕!?
「ぎやぁぁぁぁぁ!!!」
と、廊下の方からコンの悲鳴が。
急いで飛び出し、鉢合わせしたコンを抱き止める。
「ど、どうしたコン!?」
「で、出たんだ! 腹からこう、なんか、色々飛び出しちゃってる、お、女がぁ!?」
「なんだそりゃ!?」
「コンー? 大声出してどうしたのー?」
向こうからキュウがやってくる。
俺とコンは思わず息を呑んだ。
「どしたの2人とも? あーなんか、ここに来てからやけに肩が凝るなぁ……」
「あ、姉貴! か、肩!」
「肩? んー……!!!」
キュウの肩には真っ青な女の手が!?
しかも首がない!!
「「「ぎやぁぁぁぁ!!!」」」
キュウも、コンも、流石に俺もその場から走り出す。
もしかしてこの物件って!?
『男だ、男が……! うヒャヒャヒャ!』
『男なんて敵! 女を傷つける敵! あひゃひゃ!』
『幸せそうな女も敵ぃー!! 憎い憎いぃぃぃ!!』
周囲から聞こえ出す、怨嗟の声。
このままここに居座っちゃ、呪い殺されるに違いない。
「おー! 一杯! おぉぉぉ!! ふおぉぉぉ!!」
どこからともなく現れたシンは、まるで遊園地にいるかのような、楽しそうな声を響かせる。
「獲物、一杯! ふへへ……ドレインスピリットぉ!!」
シンは暗黒を纏った魔法の杖を掲げた。
怪しい魔力が渦を巻いてゆく。
『『『ギヤぁぁぁぁーー!!!』』』
するとさっきまで聞こえていた怨嗟の声が悲鳴をあげて、シンの魔法の杖へ吸い込まれてゆく。
なんか、シンの魔力値が高くなってるぞ……?
まさか、悪霊を吸収したとか!?
もしかしてシンって闇属性の魔法使いじゃなくて、死霊使(ネクロマンサー)いなのか?
「シ、シンこの物件ってもしかして……?」
「お化けいっぱい! だからシン、強くなれる! そして楽しい! むふー!」
「やっぱりそうか……」
「前の所有者最低最悪な男だった! 沢山の女の人を弄んだ! 結果、ここに殺到した女の人たち、血で血を洗う戦いを繰り広げて全滅した! だからここ恨みいっぱい! 呪いいっぱい! むふー! それにここ安い! だから……」
「「「買うわけねぇだろうが!!!」」」
全力で突っ込む俺たちなのだった。
いくら安くたって、事故物件なんて買うわけない。
それに事故の内容が内容なだけに、今の俺たちをみて幽霊達がどう思うか……
「あ、おっ帰りなさい! どうでした?」
きっとこのことがわかっていたから、アクトは物件の中に入らなかったんだ。
「物件自体はいいと思ったけど……」
「じゃあ、買っちゃいます?」
「買うわけないじゃん!」
「ですよね! 良かったぁ、トクザさんがここを買わなくて。だってこーんな事故物件に住みだしたら、怖くて気軽に遊びに行けなくなっちゃいますもん。それじゃあ、最後の物件を見にゆきましょー!」
ラストは俺の選んだ物件だった。
価格もちゃんと見た上で、三姉妹のことや、俺の趣味も加味しつつ選んだ物件だ。
しかし難点が一つ……
「あれー? この道でよかったのかなぁ……」
馬車を操るアクトは首を傾げつつ、山道をゆく。
価格も安い、環境もいい、建物自体もいい感じ……街からかなり離れた山奥にあること以外は。
まぁ、でもこれで、三姉妹というか主にキュウが家を買うことを諦めてくれないかなという狙いもあって、わざとこんな物件を選んだんだけど。
「わわ!?」
突然、アクトが悲鳴を上げた。
馬は激しく泣き声をあげる。そして、俺たちを乗せた馬車がぐらりと傾いた。
「不動産屋! シン達殺す気!?」
だけどアクトの反論は返ってこない。
嫌な予感がした俺は横倒しになった馬車から急いで這い出る。
「や、やぁ……!」
「げへへ! こりゃ上玉だ! おいお前ら、今夜はこの嬢ちゃんを回して楽しもうぜ!」
アクトは小汚い盗賊に拘束されていた。
どうやらこいつらが馬車を強襲してきたらしい。
アクトを捕まえた盗賊は、彼女の太ももへ汚い指先を伸ばす。
思わずカッと来て、近くに転がっていた石を、盗賊の汚い手へ向けて投げた。
「ぎゃっ! な、何すんだてめぇ!!」
「何って石投げたんだろうが。これ以上、アクトになんかしてみろ。ただじゃ済まないからな!」
「なにカッコつけてんだ、おっさん! てめぇ1人で何ができると思ってんだ。ああん!」
まったくこれだから盗賊って奴は。
パターン通りの行動しやがって……まぁ、俺がやっても良いんだけど、ここはやっぱり……
「キュウ、コン、シン! こいつらを痛い目に合わせて、経験値に変えてやれ! これは命令だ!」
「「「了解っ!!!」」」
瓦礫を吹っ飛ばして、サク三姉妹が飛び出した。
先行したのはキュウ。
彼女は逆手に構えた片刃短剣を手に、一気に盗賊の懐へ飛び込んでゆく。
そして峰を相手の首筋へ鋭く叩きつけた。
「がっ!」
キュウより遥に大柄の盗賊がバタンと倒れる。
「さぁ、次はどなたかな? 私に弓を使わせるほどの相手はいるのかな? かなぁー!!」
どんどん切り込んでゆくキュウの傍では、コンが盗賊の首根っこを掴んで持ち上げている。
「は、離せ! このデカ女ぁー!」
「っ……てめぇ……! それだけは聞き捨てならねぇぜ!」
コンは盛大に男達を投げ飛ばしている。
そして一番後方にいたシンは暗黒を湛えた魔法の杖を、盗賊へ突きつける。
「行く、ダークネススピリット! お前達の大嫌いな女の敵を殲滅!」
『『『男なんて最悪だぁ!!! 恨めしぃ!!!』』』
シンは三件目の幽霊屋敷で捕まえた血みどろの女幽霊を呼び出し、盗賊どもを追いかけ回している。
「ま、まさか、こいつらは噂の"サク三姉妹"!?……てぇ、なると、このおっさんは!?」
「お前らのような連中にまで俺たちのこと知れ渡ってんだ? そいつは光栄だ!」
アクトを拘束していた盗賊の背後へ回り込み、首筋へ手刀を叩き込む。
盗賊は一瞬で白目を剥いて、アクトを手放す。
そして俺はアクトを抱き止めるのだった。
「うう……トクザさん! 怖かったよぉ……ひっく!」
「よしよし、泣くな泣くな。もう大丈夫だから」
「ありがとうございます、トクザさん……! ありがとうございますぅ!」
自分のことながら、動きが昔のように戻っているような気がしてならなかった。
それもこれも、三姉妹から若さをもらったからかなぁ。
にしても、こうしてワンワン泣くアクトを見ていると、出会ったばかりの頃のシオンを思い出す。
あの子も最初はすっげぇ泣き虫で、弱虫な子だったもんな……
ーーこうしてなんだかんだあった、俺たちの物件見学会は終了した。
結局、こんなこともあったもんで、家を買う計画は頓挫となる。
しかも、今回懲らしめた盗賊はこのあたりで有名な悪者だったらしい。
おかげで40万Gほどの報奨金をもらえたので、とりあえずよかったということにするかな。
⚫️⚫️⚫️
「みなさん、某に内緒でお引っ越しをしようとするなどひどいじゃないですか! あんまりです!」
「ご、ごめんね、マインちゃん?」
「マイマイ、めんご……」
「なぁ、マイン? 機嫌なおしてくれよ、なぁ? 今夜はお前が攻めで良いからさぁ……」
「プンスカプン!」
どっから情報を仕入れたのか、家に帰るとマインはお怒りモードだった。
やっぱこう言う時って何事もうまくゆかなもんなんだねぇ。
0
あなたにおすすめの小説
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。
みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。
勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。
辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。
だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。
しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。
しかし――
彼が切り捨てた仲間こそが、
実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。
事実に気づいた時にはもう遅い。
道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。
“荷物持ちがいなくなった瞬間”から、
アレクスの日常は静かに崩壊していく。
短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。
そんな彼と再び肩を並べることになったのは――
美しいのに中二が暴走する魔法使い
ノー天気で鈍感な僧侶
そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー
かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。
自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。
これは、
“間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる”
再生の物語である。
《小説家になろうにも投稿しています》
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる