将軍の宝玉

なか

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番外編 冬のぬくもり

   ふぅ、とちょうど良い温度の湯で満たされた浴槽で息を吐く。

   最近は体力づくりの他に、屋敷のことなども執事のダラスから教授してもらったりして、それなりに忙しく過ごしていた。勿論多忙な旦那様の足元にも及ばない。

   今日は昼間風は冷たかったけれど、乗馬もして気持ち良い疲れを感じていた。浴槽の中で体を伸ばす。

   身の回りのことも以前からかなり1人でやっていたが、今は髪の手入れだけは、お風呂から上がると待ち構えている侍女が担ってくれていた。

   たまに長い髪を少し邪魔に思うこともある。ただ、旦那様が気に入られているようで短くできず、ずっと背中の真ん中あたりの長さのまま過ごしている。

   女性じゃないから見苦しくない程度でいいのだけれど、一度そう言ったら侍女がとても悲しそうな顔をしてしまったので、彼女たちには彼女たちの事情があるのだろう。それ以来、黙って座っていることにしている。
   それに他の部分の手入れに関しては断ってしまっているし、髪くらいは譲歩しないと。

「お待たせ致しました。これで終了でございます」

   ぼんやりされるがままでいたら、そう声をかけられる。

   柔らかなタオルで何度も水気を優しくとり、ほのかに香る髪油を使って手入れしてくれていた髪は、自分の髪ではないようなサラサラで艶やかだ。
   それを緩く組紐でまとめられている。いつの間にか片付けも終わっていた。

「いつもありがとう」

   そう言うと、彼女は軽く微笑んで一礼して去っていった。ここの屋敷の侍女たちはとても洗練されていて、仕事は完璧だし、無駄なお喋りもしない。冷たいわけではなく、あたたかな視線で距離感を保って接してくれる。



   ドアが閉まる微かな音を聞いて、そのままベッドに移動する。部屋は程よく温められているけど、入浴を済ませたらすぐに床に入るようにきつく言われている。

   先にベッドで寝ていたミーを起こさないように、灯りを落として掛物をめくる。しかしその動きでミーは目を覚まして、自分のベッドにしているクッションと毛布の方に行ってしまった。今日も一緒には寝てくれないらしい。

   そして夕食前には今夜も旦那様は遅くなるとの連絡があった。ほんの小さな範囲だけ温かいベッドに横になる。

   今年の冬は体調を崩さずにこれているのは、体温の高い旦那様のおかげかもしれない。昼間は少し寒さが緩んでいたのに、今夜はかなり冷えている。
   何か問題があったという訳ではないようだが、あまりお仕事が遅くならないといいのだけれど。

   そんなことを考えていたら、そのまま昼間の疲れもあって寝入ってしまっていたらしい。
   ふと気配に目を覚ますと、なんだかとてもあたたかい。

「起こしてしまいましたか」

   声を潜めて尋ねられる。低い声がかすれ気味に聞こえて耳をくすぐられる。

   背後から抱き込まれて、嗅ぎ慣れた微かな石けんの香りがした。薄い夜着でも硬い筋肉の厚みと、その少し高めの体温を感じることができる。
   きゅっと優しい力で抱きしめられる。きっと、本気を出したら私の体など比喩ではなく折れてしまうだろう。
   しかし、瞼が重い。

「…お帰り、なさ、い」

   まだ半分以上眠っているような状態で、何とか言葉を紡ぐ。

   少し身じろぎして、居心地のいい場所を探す。寒さが苦手な私だけど、このぬくもりを感じられるなら冬も悪くない。

「おやすみ」

   小さく喉を震わせて笑いを含んだ声でそっと告げられる。そのまま、安心してまた深い眠りへと落ちていった。










追記
ちなみにお手入れ担当はかなり厳しい選抜試験の乗り越えた先鋭3名が担当しています。お仕事モードを保つのにエネルギーを使います。

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