将軍の宝玉

なか

文字の大きさ
30 / 50

29.結末

   いつものごとく2人きりの執務室に何回目かのレイノルドのため息が響く。
   今回の件は軍部も一部関わっていたこともあり、煩雑な事後処理に追われているのは俺もこいつも変わらない。

    終わったらしばらく休みをもぎ取る!と息巻いていたが、2人とも定期の休みすらまともに取れていない。
   叩けば埃だらけのガリアス公爵家の家宅捜査に始まって、武器商人やら出入りの業者、さらに関係する貴族や文官たちを調べ上げている。

   内容が内容だけに、数人の信頼できる部下に限定して、追加調査と過去資料の精査を含め、様々な処理にあたっていることも仕事量が膨大になっている要因でもある。
   それ故に、一刻も早く片をつけたいという気持ちは一致している。


「にしてもさぁ、動機があんまにあんまりじゃない?」

「俺たちには分からない世界だな」

「いや、お前だって貴族なんだしって…、無理か。結局、要は、気に食わないからだなんて、我儘なクソガキかよ」

   地方の弱小貴族の俺が、将軍までなったのが気にくわないから始まり、そこそこ邪魔や妨害工作も多かった。それはそれで、老害だと思い無視してきたが、それが気に食わなかったらしい。

   さらに先日の褒賞としての伯爵の地位と、王族であるシェリルノーラとの結婚が、貴族として許せないというのが、公爵の動機といえば動機のようだった。戦も終わり、目障りだから潰してやるという。

   軍部の改革で、長年裏で受け取っていた金が得られなくなったこともあるようだが。
   そんなに金を溜め込んで何がしたいのか、俺には分からないが奴には奴の論理があるのだろう。例え、腐り切っていたとしても。


   姑息な手や悪事にだけ頭が回る男だったようだ。今まで影でこそこそ動くことは得意なのか、意外と尻尾を出さなかった。
   それがここに来て気が急いたのか、おおっぴらに動きすぎた。

   南はガリアス公爵家の広大な領地もある。屋敷に浸入した男の南の訛りも、そちらの関係者だろう。
   行方をくらませているが、残していった剣を分析させた結果、一部に南の領地でしか使われない鉱石が使われていた。


   部下であるザイルは妹と母親をガリアス公爵の手の者に誘拐され、それを元に脅されていたらしい。俺の情報を流すだけで解放すると言われ、休みや耳にしたことを伝えていた。
   それを元に遠乗の際も金を使い、野盗に襲わせたことが分かっている。

   この時点で相談してくれていたらとは思うが、怪しい動きを少しでもしたら2人がどうなるか分からないと脅されれば仕方なかっただろう。しかし、上司として信頼されてなかったのは自分の責任でもある。


   業を煮やした公爵は直接屋敷に忍び込み、俺に罪を擦りつけるための証拠を仕込みたかったようだ。
   そのために警備の者たちを使えなくしたのもザイルだった。予定があるからと担当を交代し、その夜の警備に付いて隙を見て渡された薬を使った。この時も薬で動けなくさせるだけで、誰も危害は加えないと言われ、やむなく協力したと。

   自分も薬の影響が出たが、正気になり状況が分かると自害しようとした。そこをレイノルドに阻まれ、縛りつけられていた。事情を聞いた後は、自害防止に見張りをつけていたが最近は家族の支えもあり落ち着いたようだった。

   どんな事情があれ仲間を裏切った事は事実であり、規律違反の者をこのまま軍に置いておく訳にはいかない。処分は免れないが、時期を見て何かしら仕事を紹介するつもりでいる。


「これで愚か者たちを排除できれば、結果としてはまずまずだろ。とにかくさっさと片をつけるぞ」

「はいはい、分かってますよ。俺、ちょっと会計のほう行ってくる。帰りになんか食べ物持ってくるわ、そろそろ腹が限界」

   紙の束を持って、うちであったかいごはん食べたーいと呟きながら去っていったレイノルドの背中を見送る。
   息を吐き出し、俺も再度手元の資料に目を通し始めた。
   



あなたにおすすめの小説

期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています

ぽんちゃん
BL
 病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。  謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。  五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。  剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。  加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。  そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。  次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。  一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。  妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。  我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。  こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。  同性婚が当たり前の世界。  女性も登場しますが、恋愛には発展しません。

拾われた後は

なか
BL
気づいたら森の中にいました。 そして拾われました。 僕と狼の人のこと。 ※完結しました その後の番外編をアップ中です

【完結】マジで婚約破棄される5秒前〜婚約破棄まであと5秒しかありませんが、じゃあ悪役令息は一体どうしろと?〜

明太子
BL
公爵令息ジェーン・アンテノールは初恋の人である婚約者のウィリアム王太子から冷遇されている。 その理由は彼が侯爵令息のリア・グラマシーと恋仲であるため。 ジェーンは婚約者の心が離れていることを寂しく思いながらも卒業パーティーに出席する。 しかし、その場で彼はひょんなことから自身がリアを主人公とした物語(BLゲーム)の悪役だと気付く。 そしてこの後すぐにウィリアムから婚約破棄されることも。 婚約破棄まであと5秒しかありませんが、じゃあ一体どうしろと? シナリオから外れたジェーンの行動は登場人物たちに思わぬ影響を与えていくことに。 ※小説家になろうにも掲載しております。

氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された

楽矢
BL
【完結/番外編準備中】 目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。 何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。 記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。 ---------- ※注) かっこいい攻はいません。 タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意! 貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。 ハッピーエンドです。 激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします! 全16話 完結済み 他サイトにも同作品を投稿しています。 様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。 初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです! ---------- 追記:読んでくださった皆さま、本当にどうもありがとうございました!! 完結しましたが回収しきれていないエピソードが私の中でいくつかあるので笑、後日番外編をアップしたいなと現在準備中です。 詳しい更新日まだ未定ですが、もしよろしかったらゼヒまた覗いてやってくださいねー!

別れたはずの元彼に口説かれています

水無月にいち
BL
 高三の佐倉天は一歳下の松橋和馬に一目惚れをして告白をする。お世話をするという条件の元、付き合えることになった。  なにかと世話を焼いていたが、和馬と距離が縮まらないことに焦っている。  キスを強請った以降和馬とギクシャクしてしまい、別れを告げる。  だが別れたのに和馬は何度も会いに来てーー?  「やっぱりアレがだめだった?」    アレってなに?  別れてから始まる二人の物語。

【完結】流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。

時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!? ※表紙のイラストはたかだ。様 ※エブリスタ、pixivにも掲載してます ◆この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」もあります。そちらも気になったら覗いてみてください。 ◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います

婚約破棄された悪役令息は隣国の王子に持ち帰りされる

kouta
BL
婚約破棄された直後に前世の記憶を思い出したノア。 かつて遊んだことがある乙女ゲームの世界に転生したと察した彼は「あ、そういえば俺この後逆上して主人公に斬りかかった挙句にボコされて処刑されるんだったわ」と自分の運命を思い出す。 そしてメンタルがアラフォーとなった彼には最早婚約者は顔が良いだけの二股クズにしか見えず、あっさりと婚約破棄を快諾する。 「まぁ言うてこの年で婚約破棄されたとなると独身確定か……いっそのこと出家して、転生者らしくギルドなんか登録しちゃって俺TUEEE!でもやってみっか!」とポジティブに自分の身の振り方を考えていたノアだったが、それまでまるで接点のなかったキラキライケメンがグイグイ攻めてきて……「あれ? もしかして俺口説かれてます?」 おまけに婚約破棄したはずの二股男もなんかやたらと絡んでくるんですが……俺の冒険者ライフはいつ始まるんですか??(※始まりません)

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。