37 / 46
第37話~美食~
しおりを挟む蒼魔族の長、ミスラは四つん這いでお尻を突き上げていた。こんなはしたない姿は、一族の誰にも見せたことがない。蒼魔族の長として、常に気丈に振舞うミスラだが、魔王の前ではただの女でしかなかった。
四つん這いのミスラに、双頭の蛇である魔王が絡みつく。衣服の中に入り込んだ片方の頭は胸に、もう片方は腰に巻き付き、脚の付け根に進む。
勇者に敗れ転生する前は、この姿のミスラを見下ろしながら、幾本もの触手をその身体に這わせ、快楽と共に力を注いでいたものだ。
「どうだ、久しぶりの感触は?」
「姿は変われど、この触れ方は魔王様の……ひゃうん!」
片方の頭が、ミスラの胸にしゃぶりつく。二つに割れた長い舌で、その突起をチロチロと舐めた。
「あっ、あぁああ!」
いともたやすく突起は隆起した。舌が絡みつき締め上げるとミスラは悲鳴のような声を上げた
「んぁあああ!」
魔王が部屋に《沈黙》の結界を張ったのは、これが理由でもあった。ミスラは行為中の声が大きく。本人にも抑制できないのだ。
もう一方の頭は尻の割れ目を添い、秘部へと達した。既に潤っているそこへ、矢じり型の頭を挿し込む。
「はぁぁぁ! い、いきなり、そこはっ!」
蛇の頭がミスラの中で動く。鱗のザラザラが膣内を擦り上げる。柔らかな触手とはまた違った感触に、ミスラの腰がうねる。
「あぁっ! いぃ、中で、擦れて……あっ、そこっ!」
幾度となく抱いた身体だ。どこが弱いかは手に取るようにわかっていた。しかし、今回はミスラを絶頂へと導くのは避けなければならなかった。魔力を与えるのが目的であり、奪うことではないからだ。今の器では、魔王は自らの精を女の胎内に放つことはできない。それが、魔王にはもどかしかった。早く完全な肉体を取り戻し、以前のように女と交わりたかった。
「いくぞ、受け取れ!」
魔王蛇の頭から胎内へと魔力が注がれる。
「うくぅぅ!」
歓喜に震えるミスラの肌には艶が戻り、力が満ちていた。
ミスラから離れた魔王は《沈黙》の結界を解いた。ミスラは立ち上がると、拳を二回ほど握った。胎内に注がれた魔力が身体に満ちていた。それは、まだ十分ではなかったが、少なくともこれで無様な戦いにはならないと思われた。
「魔王様、感謝いたします」
「それはまだ早い。お前には完全に力を取り戻してもらうつもりだからな」
「しかし……」
「そろそろ、良い時間だと思うが……」
「時間?」
魔王蛇は外を気にしていた。すると、里の様子が騒がしく、喚声のような声が聞こえてきた。
「あの声はいったい……」
「どうやら、上手くいったみたいだな」
魔王はアンジェに思念を送り、話合いは終わったと告げた。すると、しばらくして、アンジェと共にミスリアが駆け込んできた。ミスリアは少し興奮状態にあった。
「あ、姉上! これを!」
「これは?」
それは皿の上に乗せられたはいたが、加工された鉱石であった。
「アンジェ様と共にいた人間が作ったものです。私はこれほどまでに美味いものを食べたことがありません。いや、そもそも、あのような調理法があったとは」
蒼魔族は主に鉱石を糧とする。採掘した鉱石を食べやすい大きさに砕いたりはするが、基本は鉱石そのものを食す。人間の鍛冶のように複数の鉱石を混ぜ合わせることで、強度を増したり、特性を変化させたりする技術は持ち合わせていなかった。
「さぁ、姉上も! 熱いうちにどうぞ」
ミスラは恐る恐る皿の上のものを手にすると、一口噛んだ。
……パリッ!
芳醇なミスリル銀の香りが鼻腔に抜ける。しかし、純度の高いモノにありがちなしつこさは全くなく、滑らかな舌触りで、後に引く微かな苦みが、アクセントになっている。
「う、うまいっ!」
ミスラはバリバリと一気に料理をたいらげた。
「この、後に引く微かな苦みは……鉄だな」
「さすがは姉上! ですが、これだけではないのです。あの男にかかれば、酸味の強すぎる銅なども、実に美味になるのです」
その様子を不思議そうに見ているアンジェの元に、魔王蛇は飛び移ると、定位置である胸元に潜り込んだ。
「いったいどういう事なんですか?」
「タルスは一流の鍛冶屋だ。つまり鉱物を食す蒼魔中では一流の料理人となりえる。美味いモノを食べたいと思うのは、どの種族だろうと共通だ」
タルスはミスティから蒼魔族が持つミスリル銀の加工法を教わり、それを自らの技術に取り入れていた。魔族と人間の技術の融合は、新しい可能性だ。魔王はその技術を自らの陣営に取り入れるつもりであった。優れた武器は、それだけで力のバランスを変えてしまう。そして、ミスリル銀を加工させ食事にした理由は他にもあった。
ミスラは震える身体を自らの両手で抱きしめた。魔力がさらにミスラの身体に満ちて来ていた。
「あぁ、力が……」
ミスリル銀は、ミスラ達の一族にとっては、もっとも魔力吸収のできる食料、力の源でもある。魔王によって注がれた魔力と、ミスリル銀の力で、ミスラの筋肉は一回り大きくなっていた。
「これで良い。ミスラ、アダマン族のやつらを、再度従えるのだ」
「はい!」
自信に満ちた表情で、ミスラは頷いた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる